ろくおん通信第167号テキスト版ろくおん通信第167号 2009年2月発行 製作 日本ライトハウス盲人情報文化センター 録音製作係 ★ 聞いてわかる図書を作るために (第30回) 久保 洋子 「音声訳開始前に行う処理」について 原本は様々です。例えば@小説などのように初めから終わりまで順に通して読むもの、A参考書、料理の本、家庭の医学などのように一部を取り出して読みたいもの。この@とAを同じ作り方をしたのではAのような使い方はできません。 現在作っているデイジー図書は従来のテープ図書に比べるとかなり“活字の本を読む読み方に近い使い方”が出来ます。 例えば ・章、節などをえらんで読める・・・セクション分け ・ページを指定して読める・・・ページ付け ・図や表をくり返しきける、とばして読める・・・グループチェック これらの利点を最大限生かして、使いやすいデイジー図書を作るのは編集の力だけではありません。音声訳者が原本の利用のされ方を考えて工夫して録音することが大切です。 そのために情文の録音製作では録音をはじめる前に、 ・目次の読み方 ・図、表、写真などの扱い ・その他、その原本の特別な作り方 などを記入するブルーの用紙(「音声訳開始前に行う処理」)を作っています。 提出していただいた用紙は職員がチェックしてよければ「音声訳を開始してください。」の欄にチェックしてお返しします。必ずこの手続きを済ませてから録音を開始して下さい。 チェックする職員(係)は音声訳者のように丹念に原本を読んでいませんので指示に疑問があれば職員に問い合わせてください。 どのように作るかは、当然のことですが利用者が利用し易いようにということを第一に考えます。 原本通りという大原則を押さえた上で、原本の内容が私たちが活字を読むのと同じように正しく伝わること、そして活字の本を利用するのと同じように便利に利用できることが大切です。 音声訳者も、是非、利用者と同じ立場でデイジー図書を読んでみてください。皆の力を合わせてよりよいデイジー図書が出来るよう頑張っていきましょう! ★3月録音製作予定 『自宅録音チーム』 10日(火) 『マトリョーシカ』 10時〜12時 18日(水) 『はなみずき』 1時半〜3時半 26日(木) 『二十四の瞳』10時〜12時 『スタジオ曜日別チーム』 −日(月) 『月曜チーム』お休み 24日(火) 『火曜チーム』12時45分〜 18日(水) 『水曜チーム』12時45分〜 19日(木) 『木曜チーム』12時45分〜 27日(金) 『金曜チーム』12時45分〜 21日(土) 『土曜チーム』12時45分〜 『プライベートチーム』 4日(水) 定例勉強会  1時半〜3時 講師 中井 はつみ 氏 『専門図書音訳チーム』 14日(土) 『古典チーム』1時〜3時 13日(金) 『東洋医学チーム』3時〜5時 18日(水) 『 理数チーム』10時半〜12時 27日(金) 『英語チーム』10時半〜3時 28日(土) 『パソコンチーム 』1時半〜4時 13日(金)『音声解説チーム 』 1時半〜3時半 『橋本勝利のフォローアップ講座』 11日(水) 1時〜3時 随時受け入れ中 13日(金) 1時〜3時 『北川富美代先生の読み方講座』 3月24日(火)10時〜12時 『月曜日出勤当番』 3月9日・23日 林田 3月2日・16日・30日 清水 ★ 校正について 第15回 大林 緑 日本ライトハウスの校正について 日本ライトハウスの校正は、自宅録音、急ぎのもの、リクエストなど一部を除いて4校正まで行っています。 第1校正→スタジオの外でモニターしながら校正する。自宅録音の方は自己校正。 原本との照合のほか、音のつなぎ方・ボリュームにも注意。 第2校正→1回45分程度の量を自宅で校正する。 音源が届いたら手元に長く留め置かずなるべく早く校正し、1度だけでなく出来れば間を置いて再度聞いてみることが望ましい。また校正の済んだ音源はすぐに返却せず最後まで手元に置いて全体の読みの参考にするとよい。 第2校正はデイジー図書の仕上がりの良し悪しに大きく影響する。原本全体をじっくり見ることが出来るので、原文の読みのみならずマニュアルから処理に至るまで幅広く校正することが求められる。校正の要といえる。 第2校正のとき最後に来てから気がついて、もっと早くに、始めにあげればよかったと思うようなことが時たま起こる。それからでは訂正が多くて大変、読み直さなくてはとか、内容によっては今回はこのままでということにもなりかねない。全体に関わるような事項はなるべく早い段階で、読み始めの第1回目の校正であげ、あとの録音に活かすことが望ましい。 第2校正者は、あとの編集校正表、デイジーマスター校正表に目を通し、自分の校正はどうだったか、何かあげきれていないものはなかったかを確認して、以後の校正の参考にする。(編集校正やマスター校正で驚くほど多くの事項があがることがある) 全体に関わるような事項の例 ・デイジー図書凡例の事項。録音に際して決められた処理事項。 ・原本凡例・編集部注・あとがきなどに書かれている事項の録音図書への配慮の仕方。 ・階層を含むタイトルの読み方 ・目次の項目にページがない。読んでいない。本文中も読んでいない。 「録音の順序」目次の項 注意1:項目には原本にない場合でも必ずページを付けて読む。 ・字の説明やカッコの処理方法が理解されていない。 不要な字の説明が沢山入っている。 (  )などの箇所の入れ方を一冊ほとんど同じにしている。例えば“カッコ”“トジ”を入れそのあと戻る、又はカッコ・トジなしで戻る方法にしている、など。 ・本文中に引用文が多くあるが“引用・引用終わり”や“カギカッコ・トジ”など区別するものがなく分かりにくい。 ・原本全体にたびたび出てくる語句・固有名詞・ルビなどの読み方。 “あとがき”に主人公のルビがあり読み間違っていた例もある。 ・録音のつなぎ方 ― 間がない、または間が開きすぎている。 録音のつなぎの際にかすかに外の音が入る。(モニター者の操作) ・その他 第3校正→デイジー編集しながら校正する。 デイジー編集者は録音されたものをプレクストークでの利用に適するように編集しつつ中身の校正も行っている。そのため校正に限度がある。 第4校正→デイジーマスター校正。 編集の終わったCDをプレクストークを使って通して聞き校正する。 プレクストークでの利用はどうか、発行に際しての形が整っているかを判断する。 次回は最終回「校正表への記入・おわりに」です。 ★リスナ−の窓 (8) 福井哲也 漢字の説明は聞き手の知識を予測しながら 噺家の古今亭志ん生(ここんていしんしょう)といえば、昭和の時代に大活躍した五代目志ん生があまりにも有名ですが、その五代目について書かれたある本に次のような内容の記述がありました。今回はこれを例に、漢字の説明の入れ方について考えます。 例文:五代目が志ん生を襲名した当時、志ん生の名は縁起が良くないと思われていた。初代・二代目が若死にした後、雷門助六という人が真正(しんしょうにかせんあり)と文字を変えて三代目を継いだが、やはり長生きしなかった。四代目も、襲名後短期間で病没していたからだ。 この下線部分には当然注釈が必要です。では、例えばここを「シンショウ マコトにダタシイのシンショウと文字を変えて……」と読んだらどうでしょう。「真正」という字については明瞭な説明ですが、ここで一つの疑問がわきます。果たしてどれだけの視覚障害者が、元の「志ん生」の字を知っているでしょうか。 ここでは、「文字を変えたがやはりうまくいかなかった」ことがポイントなので、「志ん生」の字を知らなくても文意は追えます。しかし、「文字を変えたが……」とくれば、「では元の字は?」と思うのが人情というものです。 それでは、どんな説明の入れ方が考えられるでしょぅか。注釈がやや長くなりますので、本文を「……あまり成功しなかった」まで読んでしまい、その後に、「シンショウはココロザシに平仮名のん イキルという字を書きますが、三代目だけマコトにタダシイの字です」とするあたりが一案かと思います。 聞き手の漢字に関する知識の量は人により様々ですが、特に固有名詞の漢字には理屈がなく、推量が利かないという点は重要です。漢字の説明は文意を伝える上での必要最小限にとどめるのが基本ですが、その中でも要点をおさえた説明を工夫していただきたいと考えています。 ★Q&A 質問 本のタイトルについている記号は読む方がいいいのですか? 答え 書名についている記号を読むべきか、どうかで迷っている方が結構おられるようです。最近の本には記号類がいろいろ付いている本も結構あります。 『パッチギ!』この本のタイトルを読むのに、「パッチギ カンタンフ」と読むと、利用者はタイトルが「パッチギカンタンフ」と誤解するケースもでてきます。タイトルに付いている、「?」、「・」「・・・」、『 』、「」、などの記号は普通は無視して読みます。それと同様、カンタンフなどの記号も無視して読むのが普通です。 例『裁判長!これで執行猶予はあまくないすか』 『たたかう!ジャーナリスト宣言』『給食の味は なぜなつかしいのか?』『お言葉ですが・・・7』 これらの記号はすべて無視して読みます。ただし、たとえば、本のタイトルが『 ! 』という時は「かんたんふ」と読みますが、「感嘆符」なのか「!」なのかの説明は必要でしょう。 書名の字の説明は、@説明をするかしないか、Aするとすれば、書名のすぐ後でするか、原本奥付で説明するか、などを検討する必要があります。例『死叉路』 『奄美食紀行』 ★特別講座ご案内 NHK文化センター 主催 わかりやすい録音図書製作のためのアレンジテクニック 日 時:4月3日(金)14:00〜15:30 講 師:福井 哲也(日本ライトハウス編集主幹)      林 曠子(グルーブN−BUN代表) カッコなどの記号の扱い、耳で聞いただけではわからない言葉の説明など、どうすれば意味が伝わりやすいでしょうか。DAISYで、セクションをどこまで細かく分け、階層をどうするかは、どのように決めたらよいでしょうか。音訳図書作りでは、規則に合わせた「正しい処理」も大事ですが、それぞれの本に合ったアレンジを自由な発想で工夫してみることがもっと大切ではないかと、私は考えています。 自然でわかりやすい読み方(音訳処理)やDAISY(デジタル録音図書)の編集について、実例を元に考えます。 ◆受講料 (会員)2625円、(一般)2835円 ◆持ち物 筆記用具・靴を入れるビニール袋 ※ 上記の講座の参加を希望される方は、直接NHK文化センター大阪教室(電話06−6343−2281)へお申し込み下さい。 ★新製品案内 「プレクストークポケット」 小型デイジープレーヤー「プレクストークポケット」(シナノケンシ製)の基本的な使い方をやさしく解説した冊子を、福井哲也が執筆。タイトルは『ええとこ先取りプレクストークポケットPTP1』。びぶりおネットから図書をダウンロードして聞く方法など、PTP1の取扱説明書には載っていない事項も少し取り上げています。大活字・点字・カセット・音楽CD版、いずれも1000円。 お問い合わせは日本ライトハウス・エンジョイ!グッズサロン(TEL:06−6211−8700)まで。 ★新潮音訳者の正誤表 @原文       A誤読          B正しい読み 習い性となる   ならいしょうとなる    ならい、せいとなる 如実        じょじつ           にょじつ 方舟        かたぶね          はこぶね 一方ならぬ    いっぽうならぬ      ひとかたならぬ 呆然        あぜん(唖然)       ぼうぜん 日本郵政     にほんゆうせー      にっぽんゆうせー 委嘱        いたく(委託)        いしょく 下咽頭ガン    したいんとうがん      かいんとうがん 伺島        むかいじま          むこうじま 酷似        こくち              こくじ ★以上で『ろくおん通信』NO.167号テキスト版おわり 戻る