ろくおん通信第178号テキスト版ろくおん通信第178号 2010年2月発行 製作 日本ライトハウス情報文化センター 録音製作係 ★“聞いてわかる図書を作るために”(第37)  久保 洋子 図・表・写真のある本の音訳を考える 図・表・写真などは文章以上に視覚にうったえるものです。録音図書製作ではこれら文章以外のものも含めて原本通りに音訳することが求められます。 写真集とか学術文献とか特殊なものを除いてここでは一般書の中の図・表・写真などについて考えてみたいと思います。 図・表・写真などのある本を音訳する時、図・表・写真などの処理を考える前に、本文をよく読んでください。読んでいるうちに図や表を見たくなるところがあります。図や表を見なければ本文がわからない所があればそこで図や表の説明が絶対に必要です。 説明する時、どの程度の説明をするのかとか考えてみたいと思います。 原本通りということから考えれば図や表も出来るだけくわしく全部を読む(説明する)ということになります。しかし、このように読まれたものを本文と合わせてきいてみると、図や表の説明のために本文がわかりにくくなってしまう場合があります。本文中に読み込む図・表の説明は本文の理解を妨げないことが第一です。 例えば地図について考えてみましょう。その本の為に書き起こした地図が使われていることもありますが、多くの場合都道府県地図の一部に、必要な書き込みをしたものが使われたりしています。この場合、地図上の情報を本文と関係ないものも含めて説明すると本文から離れてしまって本文が理解しにくくなります。 表などで本文に関係があるのはごく一部であるような時、全体を読むかどうかも難しい問題です。 本文に関係のある部分は本文を理解する助けになるよう本文中に読み込む必要がありますが、その時全体を読んでしまうと膨大な量になり、肝心な情報が伝わりにくくなります。 以上、いろいろなことを考えて本文中で図や表の説明をする時の基本を考えてみたいと思います。 図や表の説明を入れたために本文がわかりにくくなったのでは何にもなりません。 又、図や表の説明がなくて本文がわからないのも困ります。最低、本文が理解できるように説明をいれます。その上で他の部分の説明を入れたい時には入れる場所を考えて本文の理解を妨げないようにします。 又、図や表の説明を省略する時には、凡例等でどのようなものを、どのような理由で省略するかを少し丁寧に断ってください。 図や表が一つ一つがわかることも大切ですが、図や表を含めた原本の内容が伝わることを第一に工夫してください。 ★3月 録音製作予定 『自宅録音チーム』 9日(火)『マトリョーシカ』1時 〜 3時 17日(水)『はなみずき』1時半〜3時半 25日(木)『二十四の瞳』10時 〜12時 『スタジオ曜日別チーム』 23日(火) 『火曜チーム』12時45分〜 10日(水) 『水曜チーム』12時45〜 25日(木) 『木曜チーム』12時45分〜 19日(金) 『金曜チーム』12時45分〜 20日(土) 『土曜チーム』12時45分〜 『専門図書音訳チーム』 5日(金) 『音声解説チーム 』1時半〜3時半 10日(水)『 理数チーム』10時半〜12時 13日(土) 『古典チーム』1時〜3時 19日(金) 『東洋医学チーム』3時〜5時 26日(金) 『英語チーム』10時半〜3時 27日(土) 『パソコンチーム 』1時半〜4時 『橋本勝利のフォローアップ講座』 10日(水)1時〜3時 12日(金) 1時〜3時 ※随時受け入れ中 『3月の月曜当番』 3月1日・15日 林田 3月8 日・29日 清水 『プライベートチーム』 ※3月はお休みです。 定例勉強会はボランティア交流会の為、17日(水)に変更する予定でしたが講師の都合でお休みになりました。 4月は予定通り4月7日(水)に行います。 ★ 画面校正結果 その3 大林 緑 デイジー図書凡例(階層) デイジー図書凡例の最初は、多くは階層のお知らせから始まります。 階層を決めるには、まず目次を見て、目次と文中とを照合して、文中の目次にない小項目なども見た上で利用に最適な階層を決めます。 そのためには階層がプレクストークではどう聞こえるのか、利用者にとってどんな役目をするのかを知っておかなくてはなりません。 一参考― 目次:第一部 無名時代9、1−1 上京 10、1−2 佛子寿満との同棲 22、1−3 ・・・ 〜〜 第二部 関西時代103、2−1「苦楽」編集と作家デビュー 104、2−2 ・・・ 〜〜 デイジー図書凡例:「この図書の階層はレベル2まであります」 プレクストークには十字キーがあり、十字キーの上下キーを押すと音声で「レベル1」「レベル2」・・・・・と聞こえて来ます。これが階層です。 その「レベル1」のところで十字キーの左右キーを押すと、階層でレベル1とした項目に順次移動します。(例:第一部 無名時代9、第二部 関西時代103、) 「レベル2」のところでの左右キーはレベル1+レベル2の項目に順次移動します。 (例:第一部 ・・・、1−1 ・・・、1−2 ・・・、1−3 ・・・〜〜 第二部 ・・・、2−1 ・・・、2−2 ・・・) 利用者は凡例の階層のお知らせと目次の情報から十字キーで聞きたい箇所に移動します。 目次通りに階層化すればいい場合もあれば、文中に目次にない小項目があったり、目次そのものがない本もあります。1冊の本の中で項目によって階層の数が2までの所、3までの所と統一しない場合もあれば、目次の項目が章・節・1−1などよりもっと深くあってレベル数は増やさずグループで処理する場合もあります。画面校正した中にもさまざまなケースが見られました。 以下は“階層についてのデイジー図書凡例”の一例です。凡例作成の一助として下さい。 例1:「この図書の階層はレベル1です」 例2:「この図書の階層はレベル○まであります」 例3:「この図書の階層はレベル2まであります。レベル2は目次にない小項目です」 例4:目次にはないがその項の“コラム”や“ひとこと”など同じレベルで聞いたほうがいい項目がある場合、「この図書の階層はレベル2まであります。レベル2には目次にない項目も含まれています」例5:凡例では「〜レベル2まであります」としているが、レベル2にあたる項目で目次にあるのは巻末の10番目の項目にある二つだけであとは目次にはないといった場合、「この図書の階層はレベル2まであります。レベル2は巻末の1項目を除き目次にない小項目です」など。 例6:本文中に目次がない場合、「この図書には目次はありません。本文中の項目をレベル1で区切っています」 本文中に項目などが無くて、記号(※ ☆ ・・・)段落、空白などで区切る時はそのコメントを入れる。 階層の凡例は、始めに本全体に目を通すことが出来る音声訳者がまず録音して頂きたいと思います。 そのあと編集者はその凡例に合うかどうか判断しながら編集し、変更があればデイジー図書用の連絡表で録音を依頼します。 ★リスナーの窓 (19) 福井哲也 視覚障害者と漢字 視覚障害者とりわけ全盲者にとって、漢字というものは重たい存在です。日本語には同音異義語が多いので、漢字を使わなければ意味を正しく伝えるのが難しいといわれますが、国語を書き表すのに漢字を使ってきたことが同音異義語の増殖を生んだのは間違いありません。漢字には新しい言葉を作り出す優れた力があるのは事実ですが、漢字があることで音や点字(仮名)で読書する我々は、他の言語を使う人たちより苦労が多いのです。そして、音訳者の皆さんも、その苦労を一緒に背負ってくださっています。 漢字には形・音・義の3つの要素があります。視覚障害者の漢字の知識は、失明時期により大きく異なりますが、一般に幼少期より墨字を目で見ることなく育った人たちは、漢字の形をほとんど知りません。もっぱら音と義の組み合わせとして漢字をとらえています。例えば、「蜂起」という言葉について、どんな字を書くかは知らず意味だけを知っている視覚障害者も少なくないと思いますが、「ホウ」は「はち」という字で「養蜂」などの熟語もあり、「キ」は「おきる」「おこす」という字で「起床」「想起」などにも使われる字とわかれば、蜂が群れ飛ぶ様子から「多くの者が一斉に行動を起こす」という意味を容易に覚えられます。このように、漢字のない世界に暮らす我々も、実は漢字と縁の深い言語生活をしているのです。 しかし、字の形となると話は別です。漢字の知識の豊富な中途視覚障害者でも、失明から長い期間がたつと、字の形が徐々に思い出しにくくなるといいます。ですから、「蜂」を「虫偏に、ミネという字のつくり」などと説明しても、伝わらない可能性が大きいのです。 そして、音訳で同音異義語に説明を添える場合は、どんな漢字を書くかを伝えるのが目的ではありません。あくまで同音の他の言葉と区別し、文意が誤って伝わらないようにするのが目的です。従って、「蜂起」に音訳注が必要な場面があったとしたら、「はちという字と、おきるという字」などというより、「一斉に行動する意味」とすれば明快です。「放棄」や「箒」と区別できればよいのですから。 ★Q&Aコーナー 質問 スタジオ録音で訂正した時、頭に「カチッ」と操作音がはいりますがどうしてですか? 答え スタジオ録音でどうして操作音が入るのか不思議に思われるかもしれませんが、これはモニター者の切り替えスイッチの操作ミスによって起きる問題です。 切り替えスイッチは録音した声を音訳者に聞かせる時や、会話をする時に「ON」にしますが、録音する時は、外の音を拾わないように「OFF」にします。この「OFF」にする時のタイミングが、録音ボタンを押した後になると、パソコンのキーボードの音(押さえたキーを離す時に出る「カチッ」という音)がモニター者のマイクを通して、スタジオの中のスピーカーから漏れ、その音を中のマイクが拾うからです。スイッチを「OFF」にするタイミングは録音ボタンを押す前か、同時にしてください。 この操作音は自宅録音でも頻繁に入る方があります。これも同じことで、録音ボタンを「押してすぐに離す」と「カチッ」という音をマイクが拾うからです。録音ボタンを離す時は、読み始めてからゆっくり離すようにしましょう。自分の声が操作音を消してくれます。 ★各種講習会のご案内 ●2010年度 橋本勝利先生の「フォローアップ講座」のご案内 橋本勝利先生による、現在活動中の音訳者を対象にした、「フォローアップ講座」(前期・後期 各6回)を実施します。この講座は、音訳活動中の方の技術アップを図る講座として実施します。前期と後期と分けて実施しますが、通しの申し込みも受け付けます。日程は、2コース(第2水曜と第2金曜の午後)実施します。受付は申し込み順に行い、試験はありません。定員になり次第しめきらせていただきます。 *申込は情報文化センター 録音製作係へ 実施要項 時期:@前期講座(水曜コース・金曜コース 各6回) 2010年4月14日(水)・9日(金)〜9月8日(水)・10日(金)     A後期講座(水曜コース・金曜コース 各6回) 2010年10月13日(水)・8日(金)〜2011年3月9日(水)・11(金) ※ いずれも13:00〜15:00 内容:テキストを使用した読みの勉強 講師:橋本 勝利 氏 定員:10〜12人程度 費用:前期5000円(全6回)/後期5000円 (全6回)/前期・後期通し 8,000円(12回) ※途中で講習を辞められても返金できません。 ●音訳初心者講座のご案内 今年、音訳初心者講座は1期から3期あります。時期は月曜日の1時〜3時です。受講希望者は録音製作係までお申し込み下さい。(先着順) 講 師:安田 知博 氏 第 1期:4月5・12・19・26/5月10・17・24・31 第 2期:9月27/10月4・18・25/11月1・8・15・22 第 3期:1月17・24・31/2月7・14・21・28/3月7 費 用:3000円(初回に納めて頂きます) ●雑誌の音訳講座のご案内 「週刊新潮」を読む為の講座です。現在、読んでいる方も、これから読みたいと思っている方も受けられます。希望者は録音製作係までお申し込みください。 日 程:6月7日(月)・14日(月)・28日(月)/ 7月5日(月)・12日(月) ※午後1時から3時まで 費 用:無料 ※「週刊新潮」の読み手も募集しています! ●安田知博の読み方勉強会 講 師:安田 知博 日 程:毎月第1・3月曜日 午後3時から4時半まで 参加費:前期(4月〜9月)後期(10月〜3月)各5,000円 ※ 何度でも更新可 対 象:講習会受講者(初心者講習会含む)および現在音訳をされている方 内 容:読みの実践練習です。個人レッスンと意見交換を組み合わせて進行します。 プロフィール:先天性の視覚障害。盲学校在学中の1998年に、選抜高校野球の開会式で式典アナウンスを担当。現在、NHK教育テレビの「きらっといきる」で解説放送のナレーターを務める一方、音訳ボランティアの養成や、高校放送部の指導などに当たっている。 ★【講習会関係情報】 詳しくは、日本ライトハウス情報文化センター「耳より情報」 URL http://www.iccb.jp/info/mimiyori.html をご覧下さい。 以上で、ろくおん通信178号終わり 戻る