録音通信第156号テキスト版ろくおん通信第156号 2008年2月発行 製作 日本ライトハウス盲人情報文化センター 録音製作係 ★聴いてわかる図書を作るために 第22回 久保洋子 漢字の変換処理について 漢字はかなやアルファベットと違って一字一字に 固有の意味があります。また、漢字は一つの文字に二通り以上の読みがあります。こうした漢字を使って書き表せる言葉、熟語には同音異義語がたくさんあります。広辞苑の「こうち」の項には17の熟語が並んでいます。「し」は76です! 晴眼者が新聞や本を読むとき、漢字の正しい読みがわからなくても、文字を見て意味をつかむことができます。しかし、音声訳をする時には熟語は文字を見ないで音だけで正しく伝わるかどうか注意しなければなりません。伝わらなければ伝わるように補足します。 補足の仕方として今一番普通に行われているのはその言葉を読んですぐ後に、漢字を特定できる情報、又は言葉の意味を言い添える仕方です。 長い文章中にたまに出来る補足なら、このやり方で理解してもらえますが、一文中に何カ所も補足が入っていると、元の文章の理解がむずかしくなります。 又、詩や短歌 或いは散文でも学生時代に暗唱したような名文では、補足を入れることで元の文章がくずれてしまいます。文学書では本来文章そのものをきちんと伝えるべきだと思います。でも、言葉がわからなくては意味は伝わらず、名文も無意味です。 具体的な補足の仕方にも色々の工夫が必要です。漢字を特定できる情報といっても本文からあまりはなれた言葉では聞いている人は思考があちこち飛んで本文に集中することができ難くなります。できるだけ本文の内容に近い言葉をえらぶべきです。 補足を入れた文章を少し時間を置いて自分できいてみる。校正をする時には原本を見る前にきいてみる。 こうした経験がより良い録音図書作りにきっと生きてくると思います。 以下、いくつかの工夫を列記してみます。 ○二つの同音異義語が入れかわり出て来るような時 ・語の頭に補足を入れる 例 (クチヘンニアタラシイノ)噺、(クチヘンニデルノ)咄 ○二つの同音異義語の一方がたくさん出て来てもう一方は時々しか出て来ない時 ・適当な所で断って時々出て来る方だけに云い添える 例 以下、秦(ハタのシン)と申(モウスのシン)が出てきます。区別する為に、ハタのシンはシンと読み、モウスのシンはモウスのシンと読みます。 ○詩や短歌 その他 韻文では韻をくずさないように工 夫する。 ・補足を入れた後、もう一度補足なしで読む ・区切りまで読んで字の説明を入れる ・その他 目標は私たちが読んで理解するのと同じように、きき手に理解してもらえる読みです。文学書、学術書、ハウツー物、様々な本の種類に応じて工夫してみてください。 つづく ★3月の予定 『自宅録音チーム』勉強会 11日(火)『マトリョーシカ』 10時〜12時 19日(水)『はなみずき』1時半〜3時半 27日(木)『二十四の瞳』10時〜12時 『プライベートチーム定例勉強会』 12日(水)1時半〜3時 26日(水)10時〜12時 修了生ケア 『スタジオ曜日別チーム』勉強会 24日(月)『月曜チーム』 25日(火)『火曜チーム』 19日(水)『水曜チーム』 27日(木)『木曜チーム』 21日(金)『金曜チーム』 29日(土)『土曜チーム』 『専門図書音訳チーム』勉強会 21日(金)『東洋医学チーム』 3時〜5時 9日(土)『古典チーム』1時〜3時(講習会) 28日(金)『英語チーム』10時半〜3時 29日(土)『パソコンチーム』1時半〜4時 『理数チーム』お休み 『橋本勝利のフォローアップ講座』12日(水)1時〜3時 14日(金)1時〜3時 『2008年 音訳基礎講習会(全20回)』 ※3月4日(火)スタート 午前10時〜12時 ★校正について 第4回 大林 緑 「録音の順序」 デイジー図書凡例 デイジー図書の場合、検索や移動が簡単にできる為に、デイジー図書の作り方をあらかじめコメントしておくことで、より便利に活用することが出来ます。その為に以下のようなコメントをします。コメントは全体の構成が利用者にはまだわからない段階でおこないますので、簡潔でわかりやすい言い方を工夫します。 デイジー図書凡例で断る事項 1)何階層まであるか 2)目次が原本にない場合 3)図、表、写真、目次にない小項目、注などにグループを使用した場合 4)検索しやすいように配慮した場合 5)その他必要なコメント 『デイジー図書凡例の例』 1)何階層まであるか ◎目次の階層とデイジーのレベルが同じ場合 例『この図書の階層はレベル○まであります』 *レベルが1の場合は、 例『この図書の階層はレベル1です』→「まであります」は言わない。 ◎目次の階層とデイジーのレベルが違う場合 例『この図書の階層はレベル2まであります。レベル2は目次にない小項目です。』 2)目次が原本にない場合 例『この図書には目次はありません。本文の項目をレベル1で区切っています』 *項目などが無くて、記号(※ ☆ ・・・)空白などで区切る時はそのコメントを入れます。 3)図、表、写真、目次にない小項目、注などにグループを使用した場合 例『(図、表、写真、)のはじめと終わりをグループで区切っています』 4)検索しやすいように配慮した場合 5)その他必要なコメント その他原本によって必要なコメントがあれば入れます。 (校正のポイント) デイジー図書凡例は編集の前では、まだ仮の形で入っています。 デイジー図書凡例のコメントは最終的に編集者がまとめ、音声訳者に録音を依頼します。 デイジー図書凡例は編集した作り方のコメントと共に、そのあとに録音図書凡例にあたる、原本に必要なコメントも入れます。これは「録音の順序」5)その他必要なコメント、にあたります。このコメントは目次の前であり、内容に踏み込まない全体の構成などを考えて入れます。あらかじめ音声訳者が事前に検討して録音しています。デイジー図書の凡例、録音図書の凡例とも、校正の立場でも聞いてよく考えて下さい。 ◎階層は適切ですか? ◎デイジー図書凡例の読み方は上記の「録音の順序」の中の「デイジー図書凡例の例」と合っていますか? ◎録音図書の凡例は必要な凡例が簡潔な言葉で入っていますか? 目次の前に聞いても分かりますか? 次回は「目次」です。 ★Q&Aコーナー 質問:盲人情報文化センターの音訳講習会はいろいろあって、それぞれの講習会の関係を教 えてください。 答え:盲人情報文化センターでは、音声訳に関する講習会はいろいろありますが、以下のように整理しています。 @「音声訳初心者講習会」(全8回) この講習会はまったく初心者を対象にしています。試験はなく、申し込み順です。1回2時間。年4期実施しています。 第1期 4月〜6月 (毎週月曜、1時〜3時) 第2期 4月〜9月 (毎週月曜、1時〜3時) 第3期 10月〜12月 (毎週月曜、1時〜3時) 第4期 1月〜3月 (毎週月曜、1時〜3時) A「音声訳基礎講習会」(全20回年2回実施) この講習会は、実際に録音図書を製作する技術を習得する講座です。受講するには選考試験を受けていただきます。選考試験の内容は@漢字の読みAアナウンステストB処理センスC面接です。 第1期 2008年3月〜8月 第2期 2008年9月〜3月 ※「処理センス」テストとは、文章を読んでそのまま読んだだけでは聞き手に通じない箇所を指摘するテストです。実際にどうのように処理するかは講習で学びます。 B「音声訳中級講習会」(全5回) この講習会は盲人情報文化センターの「音声訳基礎講習会」を終了した方が受講します。一般の人は受講できません。講習会は、図、表、写真などを含む資料の音声訳を中心に実践を行いながら研修していきます。2008年度は、これまでに盲人情報文化センターの音声訳講習会を受講された方が対象になります。第1期 2008年9月〜12月(水曜日) C「音声訳上級講習会」 この講習会は盲人情報文化センターの「中級講習会」を終了した方が対象の講習会です。 D各種専門分野の講習会 ・理数コース/古典コース/パソコンコース/ 英語コース/東洋医学コース この講習会は毎日新聞社の主催、盲人情報文化センター後援で行われる「専門図書音訳講習会」です。 今年度は「理数コース」「英語コース」の講座が予定されています。 E各種読み方講座 各講師による読み方の講座です。 「橋本勝利の読み方講座」毎月第2水曜、第2金曜の午後。 「安田知博の読み方講座」毎月第2水の午後 「北川富美代の読み講座」毎月、火曜の午前予定(※2008年9月より実施) ★係からのおしらせ 音声訳者/校正者の皆様へ ○3月より「ウエブスタジオ・なにわ」へ製作体制が移行します スタジオで録音している方は「ウエブスタジオ・なにわ」を使っての製作体制に3月から本格的に移行していきます。現在、音訳途中の人、または新しい本に入る人から順に移行していきますのでよろしくお願いいたします。 自宅録音の方はインターネットを利用している方で可能な方から順に移行していきますのでよろしくお願いします。 「ウエブスタジオ・なにわ」に移行した人は、今後は「録音製作係」の進捗状況をパソコンに入力していただく必要はありません。 ○音声訳者・校正者は「Recdia」ソフトを入れていただきます 「ウエブスタジオ・なにわ」は「ウェブスタジオ版・Recdia」ソフトが入っていることが前提になります。まだ自宅のパソコンに「Recdia」が入っていない方は係までご連絡ください。ソフトをお渡しします。 校正者も「Redia」を使います。「Recdia」で再生しながら、誤読に気がついたら、直接、その場で校正表を作成することができます。 ※ウエブスタジオ・なにわ版のソフトは、「Recdia」のインストールが必要です。 ○音声訳者は編集用にMOに再度コピー依頼する必要はありません 音声訳者で、校正から上がった訂正作業がおわったら、再度、MOにコピー依頼をする方があります。MOへのコピー依頼は、カセットで校正する人の為にするだけです。 編集用に、訂正後のデータを再度MOにコピー依頼する必要はありません。編集者には、職員がパソコンから直接ハードディスクにコピーして渡します。作品ボックスには校正用にコピーしたMOは入れないようにしてください。(編集者が間違って編集用に使うことがあります) 今後は、校正依頼は、@「ウエブスタジオ・なにわ」に移行した人は校正依頼はデータ送信の作業になります。A校正をCDでする方もありますので、当面、3種類の校正体制になります。混乱しないようにしましょう。 編集者のみなさんへ ○編集用のデータは職員からハードディスクでもらってください デイジー編集するデータは基本的にMOではなく「ハードディスク」にコピーして渡します。うっかり作品ボックスに入っているMOのデータで編集すると「訂正前のデータ」で編集することになります。職員に直接「ハードディスク」にコピーしたデータ(訂正完了のデータ)をもらってから編集にかかってください。 戻る