日本ライトハウス情報文化センター        「ワンブックワンライフ」2014年3月号  <表紙イラスト:(武部はつ子画)>卒業式の日、髪の毛を三つ編みした制服姿、卒業証書の筒を右手に持った女の子、制服姿の男の子から目も合わせずに、心の中で「ん・・・」とつぶやきながら一輪の花を差し出され、驚いたよう。   (目次) ◇掲示板 ◇センターのページ ・きらぼしのような先人達に学びつつ、将来の展望を 「10年ビジョン会議」〜本間昭雄氏の講演から ・原作者をゲストに、バリアフリー映画会「南極料理人」を開催 200人のお客様で、会場は南極の氷を溶かすような熱気 ◇報告のページ             《掲示板》 ○対面リーディング基礎講習会開講  対面リーディング基礎講習会を、以下の通り開催します。これから対面ボランティアを始めたいと思っている方はもちろん、すでに活動中の方も、ぜひ一度ご受講ください。  日時 3月20日(木)13時〜17時(全1回)  対象 既に活動中の方、これから対面ボランティア活動をご希望の方  定員 10人  受講料 無料  講師 当館職員ほか  内容 視覚障害者の理解、対面のサービス内容とルール、利用者との対応の仕方などをロールプレイやQ&Aでわかりやすく学びます。(「読み方」など技術的な講習ではありません)  申込 3月13日(木)までにサービス部対面担当(谷口・木田・木村、電話06-6441-0039)まで。 ○東南アジアの研修生と交流しませんか!  ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業で来日中の視覚障害者2人が3月、当センターで研修を行います。普通校教師を目指すフィリピンのアイリッシュさんと、カウンセラーを目指すインドネシアのティカさんで、共に20代の明るく、元気な女性です。今年度最後の「わろう座」(当館利用者対象の交流イベント)として、この二人を囲み、国際交流を深める懇談会「広げよう!アジアの話と輪」を開催します。  二人の自己紹介や母国の視覚障害者の状況、日本での経験や感想を聴き、自由な意見交換を行います。会話は基本的に日本語。参加無料。申込み不要。ぜひお気軽にご参加ください。  日時 3月29日(土)13時30分〜15時  会場 当館4階会議室1  問い合わせ 当館総務係(電話06-6441-0015) ○3月7日(金)はV交流会のため全館休館  3月7日(金)はボランティア交流会と職員会議のため全館休館させていただきます。  ボランティア交流会は玉水記念館で開催。午前10時からの感謝式典に続き、10時30分から前川裕美さんのトーク&ピアノコンサートです。申込みは3月5日(水)までOK!午前中だけの参加も歓迎します。ぜひご参加ください。 《センターのページ》     きらぼしのような先人達に学びつつ、将来の展望を       「10年ビジョン会議」〜本間昭雄氏の講演から  全視情協(全国視覚障害者情報提供施設協会、98施設・団体)では、情報提供サービスの長期的展望を立てるとともに、将来を背負って立つ職員を育てるため、「10年ビジョン会議」を立ち上げました。この会議には当館職員の林田茂、奥野真里を含め、北海道から九州までの若手及び中堅職員9人が参加し、来年3月まで2ヶ月に1回の割合で学習と検討を行います。プログラムの柱の一つは、この世界の大先輩の話を聴く「温故知新」。第1回のゲストは、社会福祉法人聖明福祉協会理事長の本間昭雄氏。非常に深い感銘を受けた奥野真里の報告を掲載します。(竹下 亘)     先人達との出会いに導かれて  「心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな」。百人一首で有名なこの歌は、三条院が眼病のため美しい月を見ることができなくなる恐れの中で詠んだもの。本間氏も医療事故で失明した二十歳の時、同じ思いを味わい、一時は生きる気力さえ失ったが、自分と同じように若くして失明し、苦悩する仲間のためにも立ち上がらなければいけない、と社会福祉の道を目指す決意をする。  戦後の劣悪な社会環境の中、本間氏が立ち上がれたのは、多くの恩師や同志との出会いのお陰であり、中でも聖ルカ失明者更生協会の創設者永井実太郎氏や『点字毎日』初代編集長中村京太郎氏との出会いに光を見出したという。  永井氏、中村氏は共に社会事業に力を注ぐだけでなく、視覚障害者への教育にも熱心に取り組んでいた。他にも全盲で初めて大学(関西学院)に入学・卒業した熊谷鉄太郎氏、京都ライトハウスの創設者鳥居篤治郎氏といった先達との出会いが、その後の本間氏の社会事業活動、さらには視覚に障害を持つ若者達の育成・支援事業を始めるきっかけとなったそうだ。     「資金がなくても、精神があれば、方法はある」 社会事業活動の先覚者たちの中では、石井十次と渋沢栄一の名前も忘れてはならないという。石井十次は孤児救済に生涯を捧げ、大原美術館で有名な大原孫三郎の支援を受けて岡山県に孤児院を創設した。1906年の東北大凶作で多くの子供たちが孤児になったことを知った時、「精神があれば他に方法はある」と宣言し、資金の目途が立たないまま、824人の孤児を岡山孤児院に迎え入れる。また渋沢栄一は教育者としても名が知られる一方、パリ万国博覧会に派遣員として訪れ、産業を起こすことが大事だとして、帰国後500以上の会社の創設に関わる。しかしこうした利益は自分のためではなく、多くの人に配分するためのものだと主張した。そして数々の非営利団体の立ち上げを支援するなど、社会事業の発展に大きく貢献した。本間氏は、さまざまな苦難にぶつかっても、自身の使命を果たすために立ち向かう精神を学ばなくてはならないと思った、という。     何よりも大切なのは「誠実さ」  時代とともに社会のニーズも変化する。福祉も同様で、本間氏が以前理事長を務めた日盲社協(日本盲人社会福祉施設協議会)の活動も、1953年の発足当時は点字図書館と点字出版の分野のみだったが、徐々に専門的になり、現在は細分化されている。しかし社会のニーズや環境がどれだけ変化しようとも、これまで先人達が培ってきた「精神」と共に、支援してくださる方への「誠実さ」を忘れないことが何よりも大切なことだと締めくくられた。常に温かく、穏やかに話をされる本間氏だが、特に「誠実さ」という言葉には重みがあり、身が引き締まる思いがした。そして進むべき道筋をしっかり見据え、地道に活動していくことが大切だと教えていただいた貴重な一時だった。(点字製作係主任奥野真里) === 本間昭雄氏は1929年生まれ。医療事故により1949年、20歳で失明。その後、社会福祉の道を目指し、独学で点字を学び勉学に励んだ。1955年、社会福祉法人聖明福祉協会を設立し、「視覚障害者の老後を明るく照らし 盲大学生に夢と希望の灯をともすために」という理念の下、1964年、わが国で2番目の盲老人ホーム聖明園を東京都青梅市に開設し、現在3施設・定員300人近い大施設に発展させたほか、視覚障害大学生の奨学金制度を創設した。現在は、同協会理事長の他、全盲老連(全国盲老人福祉施設連絡協議会、78施設)会長などを務める。      原作者をゲストに、バリアフリー映画会「南極料理人」を開催        200人のお客様で、会場は南極の氷を溶かすような熱気  久しぶりの日本ライトハウス バリアフリー映画会を2月22日、玉水記念館で開催しました。映画「南極料理人」の上映と合わせて、主人公のモデルとなった西村淳さんを北海道から招き、南極観測での経験談や映画の裏話をユーモアを交えて語っていただき、会場は笑いや感嘆の声で大いに盛り上がりました。(総務係 林田 茂)  「半沢直樹」が世間を騒がせた昨年の夏。ボイスぷらすのメンバーの皆さんと映画製作をスタートしました。日常生活ではあり得ない南極の世界と、映画に彩りを添えるさまざまな美味しそうな料理を説明することに悪戦苦闘しましたが、製作を担当されたボランティアの方々は、目の前のテーブルに並んだ食卓が浮かぶような素晴らしい作品に仕上げてくださいました。  今回は上映会のパンフレットにもこだわりました。映画館に行けば手に入るような、映画をより際立たせる物になるように、西村さんや監督、出演者の紹介、音声解説のモニターにご協力くださった当事者の率直な感想、観測所の見取図などを盛り込み、墨字版、触図入りの点字版、デイジー版で製作・事前配付しました。これもボイスぷらすの皆さんと一緒に作れたことは、今後の製作に向けて大きな成果となりました。    -40度が快適温度?知られざる南極の世界  映画の主人公(堺雅人)は無口で温厚な母親的存在でしたが、実際の西村さんはとても気さくで、話し上手な兄貴のような方でした。トークショー では、映画には登場しなかった140年に一度しか見られないという太陽と月が同時に写った神秘的なオーロラの写真や昭和基地付近で撮られたアザラシの赤ちゃんの声も紹介されました。映画の本編も盛り上がり、パンツ1枚の記念写真があったが本当にそんなことができるのか、雪原で野球をしたのか、現地でどんな料理を食べたかなど、実際の写真や映像を交えて紹介されました。想像を絶する厳しい南極の世界が工夫一つで楽しく過ごせることをユーモアたっぷりに教えていただき、映画観賞に負けないぐらい楽しい一時となりました。    篤志のご寄附と、参天製薬の協賛に感謝  今回の映画会は、篤志の方から今年度当館に頂戴した高額のご寄附と、参天製薬株式会社様のご助成によって実現できました。またボイスぷらすの皆さんには製作だけでなく、当日の運営についても全面的なご協力をいただきました。 皆さまに心から感謝申し上げます。 *****  肥後橋ちょっと“触れ歩き”C   当館東向の大同生命本社旧ビルは明治から昭和にかけて近江八幡を拠点に西洋建築とキリスト教とメンソレータムを広めたW.M.ヴォーリスが設計し、1925年(大正14年)に落成した名建築。旧ビルを飾ったテラコッタ(装飾タイル)が現ビルの各所を飾っています。 *****       ≪報告のページ≫ ○視覚障害関係資料のご紹介  当館5階には、墨字の視覚障害関係資料(ボランティア友の会文庫)を揃え、関係者には貸出もします(受付は3階総務係)。最近加わった注目の書籍をご紹介します。  「感じて歩く」(三宮麻由子著)=名著「鳥が教えてくれた空」の作者の最新エッセイ。 「最後の琵琶盲僧 永田法順」(川野楠己著)=筑前琵琶の名手の録音CD付。 「さわって楽しむ博物館〜ユニバーサル・ミュージアムの可能性」(広瀬浩二郎著)=みんぱく広瀬准教授の最新作。「さわっておどろく!〜点字・点図がひらく世界」も。 「世界の盲偉人〜その知られざる生涯と業績」(指田忠司著)=74人の人生を発掘。 「全盲の僕が弁護士になった理由」(大胡田誠著)=常に前向きな生き方に感動。 「ルイ・ブライユの生涯〜天才の手法」(C.M.メラー著)=ブライユ伝の決定版。 ○「ボランティア友の会」のご紹介  当館のボランティアとして活動を開始された方は、「ボランティア友の会」(1979年結成)の会員に登録させていただきます。入会金や会費は不要で、友の会主催の行事、施設見学会やボランティア交流会などに参加できます。運営は各係から選出された世話人約10人が担当し、資金は交流会でのバザー売上やご寄付でまかなっています。また友の会会員は、館からボランティア保険に加入します。ボランティア保険(掛金年間300円は当館で負担、毎月更新)は館内での活動中はもちろん、ご自宅から一歩出て、当館に向かう往復途上の事故やけがも保障の対象になります。万一、けがをされた場合は、3階総務係までご一報ください。手続きをいたします。さらに会員には本誌を無料送付(配布)しますが、会員以外でご希望の方には、メール版は無料、墨字版は年間1,000円でお送りしますので、お申し出ください。ぜひ友の会に関心を持ち、運営にご協力ください。     あゆみ 【2月】 4日 見学:枚方市日赤奉仕団家庭看護部会 8日 オープンデー(館内見学日) 22日 バリアフリー映画会&トークショー「南極料理人」(玉水記念館)     予定 【3月】 5日 専門音訳講習会音声表現技術コース基礎編(13日) 7日 ボランティア交流会(玉水記念館)  ※全館休館(終了後、職員会議) 13日 見学:点訳グループ「どんぐり」  15日 オープンデー(館内見学日、要予約) 18日 見学:録音グループ「鈴の音」、専門音訳講習会音声表現技術コース会話文の読み方編(19・20日) 20日 対面リーディング基礎講習会 29日 わろう座:広げよう!アジアの話と輪 【4月】 20日 日本ライトハウス・チャリティコンサート(ザ・シンフォニーホール)    編集後記 1月末、当館の琵琶演奏会の翌日、琵琶法師の祖とされる人康親王の旧跡を京都山科に訪ねました。親王の山荘の庭にあったと言われる珍石、親王と蝉丸の供養塔、民家の路地の奥に祀られた親王の祠とゆかりの泉、前掛けをめくると一体のみ琵琶を奏でている六地蔵も一興。京阪四宮駅で案内地図をもらい、数ヶ所を小一時間で回れます。琵琶湖疎水の遊歩道沿いなので、花見がてらにお出かけを。(竹) =ONE(ワン) BOOK(ブツク) ONE(ワン) LIFE(ライフ) 2014年3月号= 発 行 社会福祉法人日本ライトハウス      情報文化センター(館長 竹下 亘) 住 所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp 表紙絵 武部はつ子 発行日 2014年3月1日 定 価 1部100円 年間購読料1,000円