ろくおん通信第179号テキスト版ろくおん通信第179号 2010年3月発行 製作 日本ライトハウス情報文化センター 録音製作係 ☆“ 聞いてわかる図書を作るために ”(第38回) 久保 洋子 校正について考える 今回は、校正について考えてみたいと思います。 墨字の図書の校正では原稿と活字の文字一文字一文字と照らし合わせて違っていないかをチェックします。これに対して録音図書では、原本の文字を正しく読んでいるかどうかのチェックの他に、読まれたものが原本の文意を正しく伝えているかどうかをチェックすることが大切です。 例えば、文字を見ればわかるけれど読むと同音異義語があってどれかわからない場合、文章の切り方、立て方を間違って文意が伝わらない、または誤って伝わる場合など、文意が伝わらない読みにはいろいろなケースがあります。また、図や表で内容についてはたしかに本文にあって「説明は以下の本文にあります」と断った場合でも文中に図や表の形(表ではタテ横の項目)について記述があって、わかりにくいような時には、どんな図か、どんな表かの説明だけして数値については「以下の本文にあります」などとする方法もあります。 録音図書では、図・表・写真なども含めて原本にあるすべてのものを録音するのが大原則です。しかし大きな表をすべて読む、図を細部まで詳しく説明するなど、本文の間に膨大な量の図や表の説明が入ることによって、本文がわかりにくくなってしまったりすることがあります。表の全部を読むのなら、どこに入れればいいか、ポイントだけ読むならどこで入れるのがいいか、ケースバイケースで、一つひとつ考えなければなりません。目標は、原本の伝えていることをすべて正しく伝えることのできる録音図書です。 音訳者は、常にこの目標に向かって努力しています。そうして読まれたものを利用者と同じ立場ではじめて聴くことができるのが第二校正者です。 第二校正者は、是非とも利用者の立場で校正してください。原本を見ればわかるけど、音だけではわからない所は原本を見ながら校正するのではなかなか発見できません。音だけを聴くことを繰り返すことによって、どういう時わからないかを発見する力を養うことができます。 音訳者も校正者も編集者も録音図書作成に関わる一人ひとりが目標に向かって力を合わせていきたいと思います。 ☆4月録音製作予定 <自宅録音チーム> 『マトリョーシカ』4月13日(火)10時〜12時 『はなみずき』4月21日(水)1時半〜3時半 『二十四の瞳』4月22日(木)10時〜12時 『金糸雀(カナリア)』4月〜8月まで第2・第4(金)10時〜12時 <スタジオ曜日別チーム> 12時45分より 『火曜チーム』4月20日(火) 『水曜チーム』4月14日(水) 『木曜チーム』4月22日(木) 『金曜チーム』4月16日(金) 『土曜チーム』4月20日(土) 『プライベートチーム』4月7日(水)1時〜3時 < 専門図書音訳チーム>『音声解説チーム 』4月2日(金)1時半〜3時半 『古典チーム』4月10日(土)1時〜3時 『東洋医学チーム』4月15日(金)2時半〜4時半 『英語チーム』4月23日(金)10時半〜3時 『パソコンチーム 』4月24日(土)1時半〜4時 『理数チーム』5月12日(水)10時半〜12時 ☆画面校正結果 その4 大林 緑 グループで区切る 「グループ」で区切ることが一番よく使われているのは図や表や写真の始めと終わり、注の始めと終りです。 デイジー図書凡例では「図や表や写真の始めと終わりをグループで区切っています」 「注の始めと終わりをグループで区切っています」 などと入れ、始めから終わりまでを1グループと考え、編集で始めと終わりにGマークを付けます。これによってプレクストークでは図などの始まりから一気に終わりへ飛ぶことも出来、文の流れを中断せずに先を聞きたい場合などに利用します。 文中には階層化した項目のほかに小さな見出しが立っていることがよくあります。階層を増やしてレベルにしようかそれともグループにしようかと迷うところです。ここで付けるグループは各見出しの始めにだけ付けます。それによって階層化した項目と共にタイトルごとに移動することが出来ます。 グループ付けをした場合はどこに付けたかを必ず入れなければなりません。ことわりがなくグループがついている場合がみられます。ことわりはデイジー図書凡例で入れる以外に、グループで区切る処理がある場合にはその項目の始めに入れます。 「区切っています」「区切りを付けています」「移動できます」などと言い方はいろいろあります。 なお各項目のところでグループ付けのことわりを入れる場合「音声訳者注」「注終わり」は不要です。 ※ 凡例以外でグループで区切る処理をした場合の例 目次→ 数が多い場合検索しやすいように目次の中の部・章などにグループ付けすることがある。グループ付けのことわりを入れる。 「目次」「第一部・第二部などにグループの区切りをつけています」など 年表・など→ グループ付けする場合はその項目の始めに入れる。 「関連年表○ページ」「○年から○年までの年表です。各年度にはグループで移動出来ます」など ※ 写真が複数枚の場合に間違いが見られます。グループの付け方をもう一度確認しましょう。 (例) 写真が 1枚の場合→「○○ページ写真」「写真終わり」の2箇所 写真が3枚の場合→「○○ページ(○○ページから○○ページ)写真3枚」 「写真1」「写真2」「写真3」「写真終わり」の5箇所 ※ 注の場合 (例)注が1つの場合→「注」「注終わり」または「注1」「注終わり」 注1・注2・注3の3つを文の切りのいいところでまとめて入れる場合 →「注1」「注2」「注3」「注終わり」の4箇所 始めに「注3つ」はいらない。続けて入れる場合は「注終わり」は最後のみ。 ※ 図・表・写真などにグループを付ける場合の先頭フレーズ グループ付けの頭のフレーズが「○○ページ」「図」「1」「タイトル」のように分かれている場合には、少なくとも「○○ページ・図・1」は1フレーズとしたほうが編集後の校正の際分かりやすくスムーズに出来ます。なお「○○ページ図1 タイトル 説明〜」と続いている場合はフレーズを切る必要はありません。校正で“タイトルまで1フレーズにして下さい”とあげている例がありますがその限りではありません。 ※ 画面校正の結果に、デイジー図書凡例で「〜〜グループで区切っています」として、簡単なイラスト1枚だけの図や、短いキャプション付きの2・3枚の写真、また、グラフ1枚のみタイトルのみで説明は省略している、などにグループが付いている例がありました。いずれもグループは不要だと思われました。 どの程度の図や写真なのか、説明をどの程度しているかによっても違ってきますが、デイジー図書凡例でことわってグループを付けるか、上の例のような場合にはグループは付けず文の流れで聞いて頂くかの判断が求められます。グループが便利か凡例がわずらわしいか難しいところです。 ※ 編集者はCD作成前にグループ付けした箇所が抜けていないか必ず確認して下さい。 ☆サピエって? ワンブック 3月号でも紹介されましたが、4月より視覚障害者図書館システム「サピエ」のサービスがスタートします。 “一 つの窓口 ”からのワンストップサービス 視覚障害者の総合ネットワークとして「サピエ図書館」「地域・生活情報」「図書製作支援」などインターネットを利用した幅広いネットワークサービスです。 ※「サピエ」の名称はサピエンティア(ラテン語で「知恵」を意味する言葉)の造語 サピエ図書館 図書検索や点字図書をダウンロードできる「ないーぶネット」と録音図書を扱っている「びぶりおネット」が一つになり、新しいメディア「テキストデイジー」と合わせてサービスがスタートします。 ※完全移行は 2010年10月予定 図書製作支援では・・・ 図書製作に必要な語句の読みなどの各種情報が収集され、インターネット上で検索が行えます。また、施設間の情報交換などのコミュニケーションが行える機能も組み込まれる予定です。 ☆リスナーの窓 (20) 福井 哲也 配慮、それともお節介? 音だけでは意味が伝わりにくい言葉は説明を添えて読む必要がある―これは音訳者ならだれでも知っていることですね。しかし、具体的にどの言葉に注を付ける必要があるかを判断するのは、大変難しいことです。聞き手の知識も読み手のセンスもいろいろです。「かゆい所に手が届き、しかも余計な説明は一切なかった」と聞き手全員が思ってくれるような音訳などありえないのかもしれません。とはいえ、注が必要か不要かについて、考え方の大まかな筋道は立てられると思います。 @同音異義語があって、文脈によっても判断が難しかったり、誤解のおそれが高いものには注を付けます。同音異義語は、辞書を引けばいくらでも出てきますが、それらを全て考慮せよという意味ではありません。文脈によってもなおAかBか判断がつかなかったり、あるいはAと解釈されそうだが実はBであるという場合に、注が必要ということです。 A希有な言葉または造語と思われるもののうち、文脈を考慮しても音だけでは理解困難、あるいは誤解のおそれが高いものには注を付けます。どれぐらい「希有」なら注が必要かについて、基準を設けることはきっと不可能でしょう。最後はフィーリングに頼らざるを得ないかもしれません。しかし、普段見ることはあまりなくても、その分野では意外によく使われるという言葉もたくさんあります。音訳者がたまたま知らなかっただけで「希有」と決めない方がよいと思います。 注が必要と判断したら、できるだけわかりやすく、しかも短くスマートに入れるよう工夫してください。例えば、「日本の油の歴史を、絞油業が発達した大阪を中心に見ていく」という文で、「絞油業」に注を付けるのに、「コウはシボル、ユはアブラ、ギョウはサンギョウのギョウ」と3字とも説明すると長くなってしまいます。直前に「油の歴史」とありますから、ユが油であることは容易に想像できますし、直後は「発達した」ですから、ギョウが業であることも明白です。よって、余計な説明を省き、「絞油業 コウはシボル(コウはシボルにアンダーライン) 絞油業が発達した……」とすればよいわけです。 ☆Q&A 質問 オーディオキャプチャー(インターフェイス)を使用して録音しているのに「シャー」という雑音が入ります。どうしてですか? 答え 「Recdia」で録音する場合、「フィルター設定」は右図の様になっています。ダイナミクスの「100」は、元の音源をターゲットの「−6db」に近づくように増幅します。この為、実際の録音レベルがかなり低くても、増幅しているので適切な録音レベルと勘違いされます。リミッターの「100」は「−6db」より大きい音源は、「−6db」に押さえます。その為、音訳者の音量が大きすぎても、「−6db」までに押さえるために気づかないといったことケースもあります。 「シャー」という雑音の原因は録音音量が低すぎる時にもおきます。 スタジオ録音のフィルタ設定は、 @ターゲットは「−6」 Aノイズゲート「0」 Bダイナミクスは「35」 Cリミッターは「0」で設定しています。自宅録音の場合もスタジオ録音の設定に合わせて録音をしてください。ポーズ状態で録音して「−6」のところに常時届いている程度にボリュームレベルを心がけてください。 ☆ウェブスタジオ・なにわ」Q&A 質問 「ウエブスタジオなにわ」で校正をしていていますが、突然、「校正表 を取得出来ませんでした」とコメントが出るようになりました。 答え 今までダウンロードが出来ていて突然できなくなる場合は、「ウェブスタジオ・なにわ」のヘルプ画面から、「7」と「8」の作業を再度行って下さい。これは自宅のパソコンが自動アップグレードなどで初期設定に戻ることがあるからです。この作業をすればほとんど解決します。ただ、今回の質問者は、「ウェブスタジオ版Recdia」ではなく「Recdia」のソフトを開いていた為に「校正表が取得出来ませんでした」と出ていました。「ウェブスタジオ・なにわ」での作業は「Recdia」ではなくウェブスタジオ版Recdia」で作業をしてください。 ☆2010年度 専門音訳講座「パソコンコース」 「サピエ」のサービスがはじまり、これまで以上にパソコン(インターネット)への関心は高まる一方です。講習ではパソコンの雑誌を作成することを通じて関係する事柄の処理について講習します。 日程:毎週月曜日(全5回)  6月14日、21日、28日 7月5日、12日 午後1時30分〜3時30分まで 講師:近畿視情協パソコンチーム 中本 和代氏 ※近日中に講座の要綱をHPへアップいたします。 ☆【講習会関係情報】 詳しくは、日本ライトハウス情報文化センターHP「耳より情報」にてご確認ください。 URL http://www.iccb.jp/info/mimiyori.html ☆『 橋本勝利のフォローアップ講座』※随時受け入れ中 4月9日(金)/14日(水) 5月12日(水)/14日(金)1時〜3時 以上で、ろくおん通信179号終わり