ろくおん通信第180号テキスト版(修正版)ろくおん通信第180号 2010年5月発行修正版 ※2010年度は奇数月のみの発行予定 編集 日本ライトハウス情報文化センター 録音製作係  林田 茂 〒550-0002 大阪市西区江戸堀 1−13−2 TEL 06−6441−0015(代表) TEL 06−6441−1017(直通) FAX 06−6441−1027 (直通) ホームページ:http://www.iccb.jp/ ☆主なトピックス 聴いてわかる図書(38) 画面構成(5) ネットワークサービス『サピエ』 図書製作支援 リスナーの窓(番外編) 職員紹介 製作の流れ Q&A イベント情報 ☆聴いてわかる図書 (38) 久保 洋子 音訳は、文字情報を音声情報に変換する作業です。目で読む文字情報は、当然のことながら、見てわかりやすいように作られています。 文字情報では、句点、読点、活字の大小、字体の変化(太字・イタリックなど)、記号(括弧、カギ括弧、棒長、棒線など)、段落など、いろいろな約束事があります。 一方、音声情報では、肯定文では高く始めて、文末は低くおさめる。疑問文では文末を上げるなど、万人共通の約束事があります。音声情報の基本は、日常会話と考えていいと思います。 異なる約束事で成り立っている情報を変換する時には、様々な問題点があります。 記号や漢字の問題については別に書きましたので、今回は文章の読み方について考えてみたいと思います。 例えば、大きい活字で書かれている見出しを大きい声で読むわけにはいきません。文章の立て方、間の取り方を工夫して、見出しらしく聞こえるように読みます。 小説の中の会話も、「 」を一々読むわけではないので、話し手が変わったことがわかるように、工夫して読まなければなりません。 読み手は、音訳講座などでこれらのことを勉強して音訳技術を駆使して読むことになります。 こうして読まれたものを校正する時には、文字と音を照合するだけでなく、文字が伝えている情報が、文字を読んでわかるのと同じように、正しく伝わるかどうかを校正する必要があります。 例えば、読点で切って読んだら文意が伝わらないことはよくあります。文章のどこを立てて、どこで切るか、これを間違えると、文意が誤って伝わることもあります。また、あまり細かく切って読むのも、文意が伝わりにくいものです。意味がつながっているものは、ひとかたまりとして読むことも大切です。 校正をする時には、ぜひ利用者と同じ立場で、耳で読んでみてください。文字と音を照らし合わせていたのでは気がつかない誤読が見つかるはずです。 ☆画面校正結果(5) 編集での修正 大林 緑 編集者から音声訳者に修正部分の録音をお願いする際2つの方法がとられています。 @元のデータで修正してもらうA修正部分だけをまとめて入れる、です。 @の場合は前後の音や間を合わせることが出来、比較的きれいに修正出来ます。 Aは修正部分が多い、追加の修正、急いでいるなどの時に用いますが、音が合いにくい場合もあり編集者は音合わせに苦労するところです。 音声訳者は修正録音の際、その語句の前後1行程度は入れて下さい。 編集者はその1行の中から、修正部分を含むレベルの合うフレーズを選んではめ込み、前後を合わせて下さい。1行そっくり入れ替えるとかえって目立つ場合があります。ボリューム調整が可能な場合は出来るだけ調整してください。 目次や文中の、タイトル部分を修正するとき、この部分は1フレーズにする必要があるため、音声訳者は修正部分だけでなく必ず“階層番号などからページまで”を続けて録音して下さい。パソコン録音になって音声訳でのはめ込みは比較的便利になりました。しかし編集後の修正結果はあまり変わりません。@であれAであれ修正データの中からそのフレーズを探し出し、編集している本データの中にはめ込んでいきます。どんなに気をつけても始めから録音されているもののようにはなりません。修正の数が多ければ多いほど傷口も多くなります。 音声訳者は読むときに、校正者はなるべく早い段階で、編集者は編集校正で、デイジーマスター校正者は全体に、皆で目を配って出来るだけはめ込みの少ない、出来ればはめ込みなどないきれいな図書を作りたいものです。 以下は画面校正であがった修正例です。 1、外国への旅行記の本です。毎ページに写真が複数枚ありました。著者の数行のキャプションがあり、尚且つ音声訳者の説明もありました。 「説明」→“セツメイ”という言葉が全体にわたり入っていませんでした。正しくは「○○ページ写真」「(キャプション)」「説明」「(音声訳者の説明)」「写真おわり」   2、引用文の「・・・・・」→“カッコ”と入っていました。 引用文にはよく使う例としては「引用」「以下引用」「カギカッコ」などを使います。 この本では引用文が多くある上(・・・・・)もあってそこでも“カッコ”が使われていました。従ってここでは原本記載どおり“カギカッコ”のほうが良いと思われた例でした。 以上の2点は編集で“セツメイ”と“カギカッコ”をはめ込み修正しました。数が非常に多く、修正の際の編集ミスがないか再度の確認が必要になりました。 校正の早い段階で、出来ればTAKE1で見つかればどんなによかったかと思われた例です。 3、本文の終わったあとやあとがきの次ページあたりに出典が書かれている本があります。 ほんの1行程度だったり字が小さかったり段下がりになっていたりして見落とすケースが見られます。 4、定価(本体750円+税) 最近はこのように書かれている本が多くあります。 なぜか“本体”の録音が抜けていることが時々あります。 些細な訂正で発行が遅れないよう書かれている通りに読みましょう。 なお修正は音声訳・編集共終わりの枠で録音した製作完了日を目安にお願い致します。 ☆著作権に関するアナウンスについて 今後、新しく製作する録音図書・雑誌については、視覚障害者等 利用者に向けて著作権に関するアナウンスを録音してください。 「この図書(雑誌)は、著作権法第37条 第3項に基づいて製作しています。又貸し、複製等による第三者への提供はできません。」 ※『終わりの枠』の前に『著作権に関するアナウンス』として 1セクションで編集してください。 ☆リスナーの窓 番外編 音訳の本道と脇道 福井 哲也   (本稿は、2009年9月10日発行の「公共図書館で働く視覚障害職員の会 会報」第30号に執筆した記事を一部修正したものです。) 本や雑誌の音訳に写真説明は付き物です。音訳においては、文字を読むだけでなく写真なども言葉で説明しなければならないという考え方が、今では広く普及しています。それは結構なことなのですが、肝心の説明が通り一遍で面白みに欠けると感じることが、実は少なくありません。 例えば、「背広にネクタイ姿で正面を向いた著者の上半身の写真があります」といった類の説明です。「背広にネクタイ」は男性としてはごく普通の服装で、それだけではほとんど何の情報も汲み取れません(日本で和服が一般的だった時代なら洋服自体珍しいということになるかもしれませんが)。見える人なら、顔の表情からその人の人柄や性格を想像したり、髪の毛や肌の様子からどれぐらいの年齢に見えるとか、服装のセンスはどうとか、いろいろな見方をすると思います。ところが音訳では、そこに著者の写真があるという以上のことは何も伝えられません。私は、このような「写真説明」は入れる意味があるのだろうかと、疑問を感じてしまうことすらあるのです。 以前ある図書館員の人から、こんなことを教わりました。音訳において、写真の説明は客観的でなければならない。例えば少女の写真が載っていたとして、その髪型や服装を説明するのはよいけれど、「かわいい女の子」というような表現はしてはいけないというのです。なるほど、「かわいい」かどうかは見る人の主観に大いに左右される事柄ですので、書かれている内容をそのまま伝えるという音訳の精神とは相容れないことは容易に理解できます。しかし、私はどうもあきらめきれないのです。先日、「週刊文春」2009年5月7日・14日号のグラビアのページに、「アイドルという生き方」と題する記事を見つけました。アグネス・チャン、麻丘めぐみ、岡崎友紀など、70〜80年代のアイドルたちの当時の写真と現在の写真が、短いインタビューとともに載っていました。私はこれをびぶりおネットで聞いたのですが、写真については(当然ながら)キャプションを読んでいるだけ。アグネス・チャンなら、「当時の写真:白いハイソックスとミニスカート姿にあこがれた娘も多かった。現在の写真:86年に結婚。現在は3人の息子の母でもある。」といった具合です。 キャプションが読まれていれば、音訳資料としては問題ないのでしょうが、これではなんともさびしいのです。彼女らが30年前と今とで「見た目」がどんなふうに変わったのか(あるいは変わらないか)、このグラビアページを開く大半の読者は、そういう関心で写真を眺めるでしょう。私たち耳の読者も、想いは同じなのです。 も、写真の見方や写真から感じ取るものは人により違うので、そんな「説明」はとても無理ではないか―という声が聞こえてきそうです。確かに、だれにでもできることではないでしょう。いわゆる音訳の技術ではカバーしきれない部分がたくさんあると思います。豊かな感性と言葉による表現力、そして被写体に関する知識も必要です。特殊技能が求められる一分野と考えるべきです。 こういう写真の「説明」は、読み手により内容がずいぶん違ってくるでしょうが、それでよいのです。読み手の個性を前面に押し出した、その人ならではの「説明」の方が、ずっと面白いと思います。それはもはや音訳とはいえないとの批判は承知の上で、それでも私は、晴眼者が写真を見て楽しんだり、発見したり、あるいは心動かされたことの一部分でも、声を通じて感じ取ることができたらと思うのです。人物の写真だけでなく、風景にしろ建築物にしろ、見る人の心に訴えかけてくる何かがあるはずです。 読み手の個性溢れる「写真説明」は、聞き手によっては好ましく思わない人もいるでしょう。「○○さんの説明は好きだけれど、××さんのは苦手だ」という人もいるに違いありません。そこで、こういう「写真説明」は、聞きたい人だけがプレーヤーのスイッチの切り替えで聞けるような仕組みになるとよいと思います。DVD映画等のオーディオコメンタリーと少しだけ似た発想です。 この仕組みをいかに実現するかの技術面の議論は省きますが、私がここで強調したいのは、客観中立の音訳では楽しめない墨字資料もあるということです。ときには音訳の本道から脇道へ入り、読み手の主観を交えた自由奔放な「写真説明」などというのも、私は是非聞いてみたいのです。そんな、ちょっとあぶない試みに挑戦しようという音訳者の方はおられませんか! ※ここに書きましたことは、音訳資料の一利用者である福井のまったく個人的な想いであって、日本ライトハウスの録音製作の考え方とは違いますので、誤解のないようにお願いいたします。 ☆職員紹介 米村 孝子 ボランティアの皆さんと一緒に、和やかな雰囲気の中で楽しく仕事をさせてもらっています。 笑顔と元気な返事をモットーに、少しでも皆さんのお役に立てるよう務めさせていただきます。気力と体力には自信があります。雑用(しかできなくて、申し訳ないのですが…)は、何なりとお申しつけください。どうぞよろしくお願いいたします。 ☆おすすめ図書 「ティラノサウルス」シリーズ 宮西 達也 著 「片想い」 東野 圭吾 著 ☆録音図書 製作の流れ 選書委員会 利用者(ボランティア)リクエスト、 専門書等を含め選書基準に基づき選書 製作図書の申込み【音訳者】 事前に職員に申込みください 自宅録音の場合は校正者、2校者が必要な図書か決定します。  「音訳開始前に行う処理」提出【音訳者】 中身を確認した上で記入をお願いします 職員(またはボランティア世話人)と内容、処理を相談ください ※製作用のボックスを作成します 録音を開始【音訳者】 約45分を目安に録音してください 読み終えたデータは校正者へ スタジオ録音(即マスター)は 編集者へ ※校正者へ送るメディアを確認ください。 準備が可能な場合は、各自で変換をお願いします。(自宅録音物は職員が転送) 校正作業【校正者】 図、写真、表などが含まれてある場合は特に『耳だけで聴いて』みてください。(一部だけで結構です) ※校正結果の出典などは忘れずに記入 校正指摘を受けての訂正作業【音訳者】 校正指摘に疑問がある場合は、職員等 ボランティア世話人)へ相談ください 訂正作業後、職員へ製作用ボックスを提出 訂正完了をお知らせください 【音訳者】 編集図書の申込み【編集者】 事前に申込みください デイジー校正者を決定します 「デイジー編集上の処理」提出【編集者】 中身を確認した上で記入をお願いします 職員(またはボランティア世話人)と内容、処理を相談ください 音訳依頼【編集者】 終わりの枠、凡例の音訳依頼 誤読等がある場合は、あわせて訂正依頼 編集後、デイジー校正者へ(CD-RW) デイジー校正作業【デイジー校正者】 校正指摘がある場合は編集者へ訂正依頼 誤読等がある場合は、音訳者へ訂正依頼 完成図書の提出【編集者】 完成図書のブックトラックへ(CD-R) ・最終チェック作業  最終チェック担当者による最終確認 発表図書受入【職員、作業ボランティア】  受入処理、ラベル作成、コピー作業 ☆〜お願い〜 校正の処理なども含めて、製作図書の作業工程は各自でご確認ください。 処理、編集など製作の意識共有のため 製作の進み具合の確認のため 音訳者 発表された図書は、スタジオのデータから製作フォルダを削除してください 編集者 編集終了後、PCMのデータをCD(DVD)に分けて保存して職員へ提出してください。その後、データを削除してください。 質問 図書の白紙ページの処理について 答え 本文に白紙ページがある場合、 @「手動によるページ付け」 A「無音フレーズ・直近のフレーズにページ付け」の二つの処理がありますが、今後原則的に A の処理で統一をお願いします。 図や表などの処理で説明を別のページで読んだ場合も、白紙ページは作らず、ページチェックを入れるようにしてください。 ページチェックの入れ方は、無音フレーズを切り出して付ける方法もありますが、基本的にはページの変わり目の直近フレーズにページチェックを入れてください。 これは、途中の手動ページを無くすことで、ページ付けの間違いを確認しやすい利点があります。もちろん最初のページは、これまでどおり手動で入力して下さい。 (注)無音フレーズがあまりにも短いと再生エラーが発生する場合があります。 ☆ウェブスタジオ・なにわ気になる項目をチェック! 音訳者 音訳データ送信(45分単位) 校正者からの校正票確認(修正) 〜送信について〜 修正済みデータ送信」 校正票による修正データ送信 「送信済み音訳データを再送信」 校正票がなくても音訳データを送ることができる。 ただし、校正票は削除される 「製作範囲外」送信 何度でも送信可 ただし、ファイル名に注意 以前送ったファイル名は不可 校正者からの全ての修正が終了 した場合は、「製作範囲完了」 にチェックを入れる 以後、編集者とのやりとりになる 「製作範囲完了」チェック以降の編集者への音訳データは「製作範囲外」で送信する (終わり枠、凡例)の音訳データは別ファイルを作成して送信する ☆〜校正票について〜 校正者からの校正票の修正記入は、修正には ○ パスの場合は、そのまま。コメントは一覧表の通信欄に入力する 校正者 音訳データ ダウンロード 校正票作成 入力項目「時間・頁・原本語句」 校正票送信 一度送信した校正表は再送できません。 ☆編集者 音訳者からの『修正済みデータ』をダウンロード 校正票も一緒に送られる 校正票送信 編集者からの校正票は、校正者の校正票の下欄に記される(時間表示なし) 音訳者との校正票⇔音訳データのやりとりは、校正者とは違い、何度でも可能 音訳者が「製作範囲完了」にチェックを入れた後は、「製作範囲外」で音訳データは受け取る ☆イベント情報 録音製作係 ボランティア交流会 藤野高明先生(元大阪市立盲学校教員)をお呼びして、お話を交えたボランティア交流会を企画しています。「ご自身について」「図書への思い」をテーマにお話しいただきます。 日時:6月2日(水)13:00〜15:00 場所:会議室 1・2 定員:80人(先着順) 申込先:職員まで 〜 藤野高明先生 〜 小学2年生のとき、不発弾で両手両目を失う 大阪市立盲学校の教師として勤務 2002年3月  同学校退職 2002年12月 第37回NHK障害福祉賞受賞 他 中央区 バリアフリー上映会 『博士の愛した数式』 日時:6月20日(日)午後12時開場 1時30分上映開始 12時から会場のロビーを利用して地域の施設・団体のパネル展示や作業所の作品販売、 物品紹介ブースを設置しています。(盲導犬も来るよ) 参加費:無料 場所:大阪市立中央会館 電話:06-6211-0630 最寄駅 地下鉄堺筋線 長堀橋駅 日本橋駅     地下鉄長堀鶴見緑地線 長堀橋駅     (いずれも徒歩7分) ☆映画紹介 何よりも素数と子供を愛した博士を主人公にした、芥川賞作家・小川洋子の大ベストセラー小説を映画化。 交通事故の後遺症により以後の記憶が80分しかもたない博士のもとに派遣された家政婦と、その10歳になる息子との交流が温かな視線で描かれていく。 出演:寺尾 聰 深津絵里 ☆アンケートのご協力をお願いします 回収箱を6階録音製作係に置いていますので、6月30日までに提出をお願いします。 ※ 郵送でも受け付けています。 ご不明な点がありましたら職員までご連絡ください。 ☆各種講習会のご案内 専門音訳講習会パソコンコース 『179号参照』 雑誌の音訳講習会 『178号参照』 安田知博の読み方講習会 『178号参照』 ほか ※ホームページより要項をご覧いただけます http://www.iccb.jp/ 講習会情報 ⇒『耳より情報(講習会のお知らせ)』 ☆ろくおん通信 ダウンロード版(テキスト版あり) ⇒『録音製作係 ろくおん通信』 以上で、ろくおん通信180号終わり