録音通信第161号テキスト版ろくおん通信第161号 2008年7月発行 製作 日本ライトハウス盲人情報文化センター 録音製作係 ★ 聞いてわかる図書を作るために(第25回) 図・表・写真の読み方 久保 洋子 1.基本的な考え方 図、表、写真などは墨字の本の中では本文とは際立って異なる存在です。しかし、録音図書にすると本文と同じ“声”になってしまいます。 又、墨字の本の図・表・写真などは読者が必要に応じて見方を決められるのに対し、録音図書ではそれが困難です。 従って音声訳者が本文中に組み込んだ図・表・写真などは、墨字本のそれと同じ役割を果たすことはむずかしいと考えなければなりません。 図・表・写真などのある本を音声訳する時は、音声訳者の責任で何らかの処理をすることが必要ですが、その場合、上に上げた欠点を出来るだけ補うような方法を考えることが大切です。 ・図・表・写真などを説明するのかしないのか、 ・説明するとすれば本文中のどこでするのか、 ・どの程度の説明をするのか、 ・説明しない時には、どこでどのように断わるのか、 などを考える必要があります。 2.図・表・写真などの原本に占める役割 処理の方法を決めるには、図・表・写真などがその本の中でどういう役割を果しているかを判断しなければなりません。 一般に、本の中で図・表・写真などの占める役割は次のように分類できると思います。 1.図・表・写真などを主として本が構成されている。 2.図・表・写真などがなければ本文が理解できない。 3.図・表・写真などは本文を補強するものである。 4.(さし絵などのように)本文のイメージを膨らませるもの。 5.(項目の変わり目のイラスト・ページを飾る模様など)本文の内容と関係のないもの。 本文の中のすべての図・表・写真が上の項目中の一つに当てはまるわけではありません。一つひとつの図・表・写真などの処理を考えると同時に本全体の構成も探りながら読み進んで行くことが大切です。 つづく ★8月の録音製作予定 『自宅録音チーム』 8月20日(水)  はなみずき 13:30〜3時 『スタジオ曜日別チーム』 『プライベートチーム』 お休み 『専門図書音訳チーム』 9日(土) 『古典チーム』1時〜3時 8日(金) 『東洋医学チーム』3時〜5時 22日(金) 『英語チーム』10時半〜3時 『パソコンチーム』お休み 『理数チーム』お休み 橋本勝利のフォローアップ講座』 ※随時受け入れ中 8日(金) 1時〜3時 13日(水) 1時〜3時 8月の月曜日出勤当番 8/4(月)(林田) 8/18(月)(林田) 8 /25(月)(清水) ★日本ライトハウス展のボランティアを募集しています 録音製作係では、8月30日(土)31日(日)、そごう心斎橋本店で開催される日本ライトハウス展のボランティアを募集しています。会場では録音製作係としても常設コーナーを持ちます。府下各地からデジタル録音やデイジー編集に関心のある方が来場されることが予想されます。 デイジー編集作業や「Recdia」を使ってのデジタル録音の実演・操作などの要員として、ぜひご協力お願いいたします。当日は、手引きや案内要員など他にもボランティアを求めていますのでよろしくお願いいたします。 協力いただける方がありましたら職員の清水か林田までお願いいたします。 尚、30日と31日は、日本ライトハウス展の為休館となりますのでよろしくお願いいたします。 ★校正について 第8回  大林 緑 「録音の順序」 ○ 最終の終わりの枠アナ 「以上で、○○(書名)を終わります。 デイジー図書製作完了○年○月○日、音声訳○○、校正○○(モニター者名、第1校正者名)、○○(第2校正者名)、○○(デイジー校正者名) 編集○○(デイジー編集者名)でした。」   ※終わりの枠アナは「編集者から音声訳者への連絡表」に沿って読み直す。 「校正のポイント」 ◎終わりの枠では書名のみ入れ、副書名などは入れません。 ◎製作完了年は前枠で録音した年と照合し、違っている場合は校正表にあげて入れなおしを依頼します。 ◎終わりの枠は編集で入れなおすため第2校正までは未完成の部分があります。 書名など録音されているものを確認してください。 ○本文中の処理・配慮の校正ポイント 今回から本文中のさまざまな処理・配慮について校正していきましょう。 録音図書を製作するには前回までの「録音の順序」のように一定の基準に沿って形式を調えていくということのほかに、あらゆる書き方がされている原本を、内容が聞いて分かるように、必要最小限の処理・配慮をしながら原本に忠実に音に変えていくということをしなければなりません。 音声訳者はすでに色々工夫して録音しています。それらを校正者は今度は立場を変えて聞いてみて下さい。 適切な所に適切な処理・配慮がされていますか? ほかに処理・配慮の必要な箇所は? 不要な、不適切な処理・配慮はありませんか? 以下、「巻頭の写真・地図」から順に見ていきます。 巻頭写真・地図 巻頭に写真や地図が1枚から複数枚掲載されている本があります。 入れる場所は目次のあとですが、本によっては書名や目次項目を聞いただけでは写真や地図に添えられた キャプションが分かりにくい場合があります。 例:書名や目次では分からない、主人公を追った写真があり“二十歳のころのジョン”“夫人と共にリバプールで”などとしていたり、主人公が辿った航路の出発から到達までの地図、などがある。 例:全編にわたる料理の写真を始めにまとめたものがある、などなどです。 その他にも本文中の関連ある箇所で入れないと分からない写真や図が多々あります。 (校正のポイント) ◎巻頭で写真のキャプションや説明を聞いて分かる場合や、地図の説明を聞いて分かる場合は、目次の後に入れる。 ◎分かりにくい場合は凡例で断って本文中で入れることも考える。 「凡例の例」→「巻頭に写真が5枚あります。本文中の関連のあるところで〜」など。 この例では“関連のあるところで”としていますが、言い方は決まっていません。ただ、“ふさわしいところ”“適当と思われるところ”などの言い方は音声訳者の考えが入った言い方になりますので適当とは言 えません。なお本文中で入れるときは、“巻頭写真〜〜”として入れます。 次回は「図・表・写真」です。 ★リスナーの窓 (2) カッコの読み方のバリエーション  福井哲也 今回はカッコ( )の読み方に関して、2・3の例を取り上げます。 例文1:彼は自信満々で(先週は3度も失敗していたのに)任せておけよとばかり胸をたたいた。 この文なら、「カッコ……閉じ」とは読まず,カッコ部分の声をやや低くするなどの方法で読めば、意味が伝わりそうです。ただここでお気をつけいただきたいのは、声を低くしようとして音量まで小さくなり、発音が不明瞭になってしまっている例がときどきあることです。低い声と小さい声とは、まったく意味が違います。 例文2:侍は農民から年貢(米などの作物を納めさせることで今の税金に当たる)を厳しく取り立てました。この文でも、カッコ部分をやや低い声にするとよいのですが、「税金に当たる」までを低くして直後の「を厳しく」から元の高さに戻すと、助詞の「を」がどうしても強く聞こえ、文全体のリズムが取りにくくなってしまいます。そこで一工夫。「侍は農民から年貢 米などの……税金に当たる 年貢を厳しく取り立てました」のように、カッコ部分が終わった後、カッコの前の言葉に戻って読み続ける方法があります。 しかし、この方法がいつも有効とは限りません。 例文3:いわゆる金縛りは、医学的には入眠時(出眠時)幻覚として説明されます。 これを「……医学的には入眠時 出眠時 入眠時幻覚として……」と読んだらおかしいですね。なぜなら、「出眠時」が「入眠時」を補則説明しているのではなく、寝入り端に起こるのが「入眠時幻覚」、起きがけに起こるのが「出眠時幻覚」で、この二つを併記しているからです。この場合は、「入眠時カッコ出眠時閉じ幻覚」と素直に読むか、「入眠時幻覚カッコ出眠時幻覚閉じ」と読むのがよいと思います。カッコの意味合いをよく調べる必要があるということです。 ★各種講習会のおしらせ 1.2008年度の第U期の「音声訳基礎講習会」を下記の通り実施します。 この講座は盲人情報文化センターの音声訳ボランティアの養成講座です。 自宅でパソコンを使って録音し、インターネットを利用して録音図書作りをしていただきます。パソコン録音に必要なソフトは盲人情報文化センターで用意しますが、録音に必要な機材(パソコン・マイク・雑音を除去するオーディオキャプチャーなど)は用意していただきます。 実施時期:2008年9月18日(木)〜2009年2月12日(木) ※毎週木曜日  10:00〜12:00 会 場:盲人情報文化センター 講習内容:1.読み方の基本        2.記号、漢字、図、表などの音声変換処理        3.Recdiaソフトを使用した録音技術など        4.調査・録音の順序など 講 師:盲人情報文化センター 音声訳講習会講師チーム 資 格:@音声訳に必要な「発声」などの基礎的な訓練を終了した方      A自宅でパソコン 録音ができる方      B講習会終了後も、盲人情報文化センターに月に2回程度の来館が可能な方 費 用:3000円(資料代) 定 員:15人 申込方法:申込用紙に記入の上、郵送・Fax、またはご持参ください。メールでも受け付けます。 〒542−0077 大阪市中央区道頓堀1丁目東3−23         社会福祉法人日本ライトハウス         盲人情報文化センター録音製作係         Tel 06−6211−0910 Fax 06−6211−1590         E−Mail rec@iccb.jp 〆切日:2008年8月30日(土) 試験日:2008年9月4日(木)盲人情報文化センター 6階 第1会議室10時〜12時 試験内容:@アナウンステスト        A漢字の読み        B音声変換処理センス        C面接      ※筆記用具持参のこと鉛筆、消しゴム 2. 音声訳上級講習会のお知らせ 音声訳上級講習会は、本来なら、「音声訳基礎講習会」、「音声訳中級講習会」を終了した人を対象に実施しますが、今回は、盲人情報文化センターの音声訳の活動を10年以上されている方、これまで盲人情報文化センター講習会を受けたことがない方、などを対象に実施します。受講希望者は係までお申し込み下さい。 尚、本講座は内部向けですので、外部の音声訳ボランティアは受講できません。 日時:2008年11月12日(水)、19日(水)、26日(水)    全3回 10時〜12時 会場:盲人情報文化センター6階 講師:久保 洋子氏 定員:10〜15人程度 3.北川先生の読み講座のご案内 9月から「北川先生による読みの講座」を実施します。この講座の対象者は2008年度の第T期音声訳基礎講習会を終了された方です。 基礎講座修了生以外の方でこの講座を希望される方は係までお申し込みください。 日時:原則、毎月 第4火曜日 午前10時〜12時 但し、9月12月は祝日の為、第3火曜に変更 講師:北川 富美代氏 会場:盲人情報文化センター 6階会議室 4.2008年度 専門音訳講座、「図表コース」のご案内 専門音訳講座の「図表コース」を9月からと前回ご案内していましたが、下記の通り日程が決まりました。この講座の受講を希望されます方は係までお申し込み下さい。 日時:2008年11月4日(火)〜12月2日(火)    毎週火曜日午前10時〜12時・全5回 講師:久保 洋子氏 以上 161号おわり 戻る