ろくおん通信第168号テキスト版ろくおん通信第168号 2009年3月発行 発行:日本ライトハウス盲人情報文化センター録音製作係 ★ 聞いてわかる図書を作るために (第31回)久保 洋子 「一日でも早く」完成させるようにしましょう 今回は視覚障害者の読書環境について考えてみたいと思います。 私たちは出版された本が書店に並べばすぐに読むことができます。これに対して視覚障害者はそれから点訳または録音の作業にかかって何ヶ月か後にはじめて読むことができる−「話題になっているような本では、ブームが過ぎてからやっと録音図書ができる」−のが現状です。 このことを考えると、私たちの録音図書はできるだけ早く、一日も早く完成させることが望まれます。自宅で録音していると、何度もきき直しては読み直ししたくなることがあります。できるだけ完全なものを作りたいという気持ちは大切ですが、出来るだけ早くというのも大切です。誤読や意味の伝わりにくい読みは勿論訂正しなければなりませんが、原本の内容がきちんと伝わる読みであれば先へ進むことも大切です。 スタジオ録音の場合も、能率よく読むということは同じです。現在ペアで1日スタジオをとっていたら、各自が少なくとも45分以上は録音できるように準備(調査や下読みなど)して下さい。限られた設備をできるだけ有効に生かせるよう、皆で心がけて行きたいものです。 出版と同時に点字・録音図書が用意されている真のバリアフリーが実現するのはまだまだです。 次々に出版されるあらゆる本ができる丈早く視覚障害者にも利用できるよう皆で頑張りたいと願っています。 つづく ★4月 録音製作予定 『自宅録音チーム』 14日(火)『マトリョーシカ』10時〜12時 15日(水)『はなみずき』1時半〜3時半 23日(木)『二十四の瞳』 10〜12時 『スタジオ曜日別チーム』 24日(火)『火曜チーム』12時45分〜 8日(水)『水曜チーム』12時45分〜 16日(木)『木曜チーム』12時45分〜 17日(金)『金曜チーム』12時45分〜 18 日(土)『土曜チーム』12時45分〜 『プライベートチーム』 1日(水) 定例勉強会 1時半〜3時 ※ 講師 中井 はつみ 氏 『専門図書音訳チーム』 11日(土) 『古典チーム』1時〜3時 24日(金) 『東洋医学チーム』3時〜5時 『 理数チーム』お休み 24日(金) 『英語チーム』10時半〜3時 25日(土) 『パソコンチーム 』1時半〜4時 3日(金) 『音声解説チーム 』1時半〜3時半 『橋本勝利のフォローアップ講座』 8日(水) 1時〜3時 ※随時受け入れ中 10日(金)1時〜3時 月曜日出勤当番 4月20日 林田 4月6日・13日・27日 清水 ★校正について 第16回 大林 緑 校正表への記入・おわりに 校正者は校正表に指示された項目に沿ってなるべく表の枠内に簡潔に分かりやすく記入して下さい。ページ数や行数はよく確認して記入して下さい。 校正表の枠上の書名や音声訳者名・校正者名・編集者名などは必ず記入して下さい。 校正用紙は第2校正→白い用紙 パソコンでの校正者はレクディアの記入手順に沿って下さい。 第3校正(編集者)→ピンクの用紙 第4校正(デイジーマスター校正者)→黄色い用紙です。 校正表の上欄への記入→・誤読、意味の取りにくいアクセント、雑音など             ・録音して欲しい箇所             ・入れ替えて欲しい所など 校正表の下欄への記入→・音声訳者の癖になっているような読み方やアクセント            ・その他気になった事項など 校正者は指導をしているわけではありません。言葉には十分気をつけて、自分が受け取ったとして気持ちがいい校正表にしましょう。自分のこの書き方で分かってもらえるかどうか音声訳者に渡す前に見直してみましょう。 最近はパソコン録音となって訂正がかなり容易に出来るようになり、本によっては製作期間の短縮も望めるようになって来ました。しかし訂正して録音状態が元のものよりきれいになることはありません。なるべく音声訳の段階できちんと録音されることは何より望ましいことですし、そのあと第2校正でほぼ全体を整え、そして編集へ、が“きれい”で“早く提供できる”につながる一番の近道だと思います。そのためには音声訳者も校正者も編集者も、それぞれが録音したものがどういう図書になるか、プレクストークでの読書とはどういうものか、をよく理解して作っていくことが大切だと思います。 以上16回にわたって校正について書いてきました。 その中で、よく聞いてほしいということを何度か書きました。 校正をする時、目で字を追いながら聞く読書をする。そして誤読を見分ける、聞き分ける。またほんの少しの配慮、ほんの少しの間(マ)、ちょっとしたトーンで聞きやすくならないかを考える。簡単そうでなかなか厄介なことですが、これらは校正をする時に求められる重要なポイントであると思います。 私事ですが録音ボランティアぐらしも長くなりました。いつも、“誰のために何の仕事をしているの?”“自分が利用者ならこれでいいの?”“聞いてわかるの?”を自問しながら続けてきました。“校正”は地味ですが本当に大事な作業です。皆様と力を合わせて良いデイジー図書が出来れば嬉しく思います。(終わり) ★リスナ−の窓 (9) 福井哲也 耳学問のすすめ 私はたまにボランティアの方々に音訳について話をすることがあります。話題はもっぱら音訳処理やデイジー編集技法に関することです。話の中で、実際の録音図書から事例をお聞かせすることがありますが、そんなとき私は、あえて活字原本をお見せしないで耳だけで聞いていただくようにしています。音訳講習では、配られた原稿を見ながらの講義や実習が多いと思いますので、目の前に活字がないのは不安かもしれません。でも、これには訳があるのです。 ある音訳方法がわかりやすいか、わかりにくいかを皆さん自身に考えていただくとき、活字はかえって邪魔なのです。声より先に目で活字を追い、内容が「わかって」しまったのでは、もはや「わかりやすいか」の判断が十分にはできなくなってしまうからです。何も予備知識のない、頭が真っ白な状態で、まず耳から文章を入れてみてほしいのです。私たちリスナーがいつもしているようにです。そうすることで、「わかりやすい」「わかりにくい」の判断がリアルにできるはずです。 皆さんは普段の活動の中で、「これはどう読んだらいいのだろう」「この読み方で大丈夫だろうか」と迷うことがあると思います。そんなとき、音訳仲間の集まりに原本を持参し、それを見せながら相談することもあるでしょう。でも、場合によっては、問題の箇所をあらかじめ録音し、原本を見せずに仲間に聞いてもらった方が、良いアドバイスが得られるのではないでしょうか。あるいは、新聞記事や短いエッセイなどを、他の音訳者の録音で聞く体験を意識的にすることで、声による伝え方のセンスが磨かれるのではないでしょうか。 音訳をする方は、是非ともご自身の“耳”を大いに活用し、声による表現方法をさらに研究していただければと思います。 Q&Aコーナー 質問 本のタイトルついているルビはいつでもルビ優先でいいいのですか? 答え 書名についているルビは原則、ルビ優先で読むのが普通です。例えば遠藤周作の『深い河』は、書名のタイトルは「ディープリバー」とよみます。しかし、本によってはルビ優先で読むとおかしいモノもあります。 『ハラボジの留学』という本をルビ優先で読むと『オジイサン、ハラボジの留学』となってしまいます。ルビを優先して読むか、ルビを後で読むかの判断は、本文中のルビの処理とも共通する問題ですが、あくまでも著者がそう読ませるために振ったルビなのか、それとも、その語句の補足的ないみでのルビなのかによって判断します。カタカナ英語に付けられた日本の意味のルビは、補足的なものといえますので、ルビを後に読むのが普通です。日本語の書名に付けられたカタカナ英語は、原則ルビ優先で処理して良いでしょう。例→『田原総一郎への退場勧告』 尚、盲人情報文化センターではタイトルの読み方は図書館のカードに合わせて読むようにしていますので、まぎらわしいタイトルの場合は係に確かめてから読むようにしましょう。 ★講座ご案内 2009年度『音声訳初心者講習会』(全8回)ただいま受付中 講習会実施時期 第1期生 '09年4月13日(月)〜6月15日(月) 第2期生 '09年9月7日(月)〜11月9日(月) 第3期生 '09年12月7日(月)〜'10年2月22日 いずれも 13:00〜15:00 講習内容 1.発声の基礎        2.読みの基本        3.その他 講 師 安田 知博 氏 (盲人情報文化センター嘱託講師) 定 員 15名 試験はありません。先着順です。 費 用 3000円(全8回分) 受講費用は初回に納めていただきます。 受講費用は途中で辞められても返金できません。 ★ 2009年度 橋本勝利先生の「フォローアップ講座」のご案内 盲人情報文化センターでは、橋本勝利先生による、現在活動中の音声訳者を対象にした、「フォローアップ講座」(前期・後期 各6回)を実施します。 この講座は、音声訳活動中の方の技術アップを図る講座として実施します。今回は前期と後期と分けて実施しますが、通しの申し込みも受け付けます。 日程は、2コース(第2水曜と第2金曜の午後)実施します。 受付は申し込み順で行い、試験はありません。定員になり次第しめきらせていただきます。   *申込は盲人情報文化センター 録音製作係へ 実施要項 時 期:前期講座(水曜コース・金曜コース 各6回)     2009年4月8日(水)・10日(金)〜9月9日(水)・11(金)     後期講座(水曜コース・金曜コース 各6回)     2009年10月14日(水)・9日(金)〜2010年3月11日(水)・13(金) ※ いずれも 13:00〜15:00 内 容:テキストを使用しての読みの研修 講 師:橋本 勝利 氏 定 員:10〜12人程度 費 用:前期5000円(全6回)/後期5000円(全6回) 前期・後期通し 8000円(12回) ※途中で講習を辞められても返金できません。 ★音声訳者へのお願い 音声訳者は編集依頼を忘れずに 最近、音声訳が終わっているのになかなか編集にまわらず、そのままになっている作品があります。 音声訳は校正の訂正が完了したら、編集者を決めますので、「編集待ちの棚」へ「作品ボックス」を移動して下さい。 自宅録音チームの方も、音声訳が終了し、校正からの訂正が終了した場合は、編集者を決めるために係に必ず連絡して下さい。 ※「ウエブスタジオなにわ」で予め編集者を決めている場合は修正データをアップした段階で編集者に自動的に連絡がいきます。今後は「ウエブスタジオなにわ」上で編集も進めていく予定です。 ★週刊音訳の正誤表 原文       誤読           正しい読み 辛酸       しんざん         しんさん 大野裕     おおのひろし      おおのゆたか 塗れた     ぬられた         まみれた 以後       いこう           いご 積丹半島   しやくたんはんとう    しゃこたんはんとう 邦訳      ほんやく          ほうやく 浜口雄幸   はまぐちゆうこう     はまぐちおさち 近藤勇     こんどういさむ     こんどういさみ 遊興費     ゆうこうひ        ゆうきょうひ 世故      せち            せこ ★以上で、『ろくおん通信』168号おわり 戻る