日本ライトハウス情報文化センター        「ワンブックワンライフ」2014年2月号  <表紙イラスト:(武部はつ子画)>こたつに潜り込んで寝息を立てるお父さん、心地よさそうな猫と犬。お母さんはこたつ机に顔を乗せて寝息を立てている。女の子がミカンを投げ上げながら「あ〜あ、みんな寝ちゃった・・・」「平和だね〜」   (目次) ◇掲示板 ◇センターのページ ・“今、目の前にある物を知りたい”という願いに応えるために 〜 「SVP簡易実証実験」を利用者とボランティアの協力で実施   ・ 「さわる」ワークショップから「まんが」の音訳まで 〜近畿視情協2013年度ボランティア・職員研修会が開催 ◇報告のページ             《掲示板》 ○3月7日はボランティア交流会にご参加を  ボランティア友の会交流会は年に一度、ボランティアの皆さんと職員が一同に会する貴重な機会。今回は前川裕美(ゆみ)さんのトーク&ピアノコンサートをはじめ、活動歴20年、30年以上のボランティアの方々へ感謝状贈呈などを行います。  日時 3月7日(金)10時〜15時  会場 玉水記念館(肥後橋駅8番出口すぐ)  会費 1,000円(昼食代の一部)  10:00 感謝式典  10:30 記念講演 前川裕美さん  11:45 ボランティア友の会総会  12:00 昼食・歓談・受賞者インタビュー  13:15 センターの話題・報告  13:45 バザー(商品のご提供をお願いします)  参加申込は3階総務係(電話06-6441-0015)で受付中です。当日は全館休館となります。 ○チャリティコンサートを4月20日に開催  日本ライトハウスでは、恒例の第32回チャリティコンサートを4月20日(日)午後1時30分、大阪市北区のザ・シンフォニーホールで開催し ます。今回はソリストに和波孝よしさんと英国のソプラノ歌手シャーロット・ド・ロスチャイルドさんを迎え、澤和樹指揮、千里フィルハーモニア・大阪の出演で、ドヴォルザークの交響曲第8番やブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番、日本の歌曲などを演奏します。チケットは3階総務で2月12日から販売。ぜひご来場ください。 ○専門音訳・音声表現技術コースを開講 1日集中受講の専門音訳講習会を開講します。  @音声表現技術コース・基礎編 日時 3月5日(水)か13日(木) 各日10〜17時 内容 括弧・ルビ・記号の読み方、漢字の補足などの処理方法の講習・実践 定員 各日 40人  受講料 1,000円  A音声表現技術コース・会話文の読み方編 日時 3月18日(火)、19日(水)、20日(木) 各日10〜15時  内容 小説などの会話文について内容がわかりやすい読み方の実技講習 定員 各日 10人  受講料 1,000円 申込 先着順。要項を請求の上、@は2月12日から、Aは2月25日から当館録音製作係まで。 《センターのページ》   “今、目の前にある物を知りたい”という願いに応えるために 「SVP簡易実証実験」を利用者とボランティアの協力で実施  当館では昨年12月、利用者とボランティアのご協力により、「SVP(Shared Vision Project シェアード・ビジョン・プロジェクト)簡易実証実験」を行いました。これは、視覚障害者の方が目の前にあって「見たい」「知りたい」と思う物を、スマートフォンとcrowdsourcing(クラウドソーシング)(インターネットで不特定多数の人を結び、作業を分担する方法)を活用して即答するシステムの実験です。実現には予算や仕組み作りなどの課題がありますが、参加者からは「1日も早い実現」を望む声が挙がっています。(館長 竹下 亘)   日常生活での視覚的情報の共有を目指して  今日、視覚障害者の情報アクセシビリティは、本や雑誌など印刷物についてはかなり改善されてきました。しかし、日常生活で随時必要な視覚的情報、例えば衣服のコーディネイト、加工食品の識別や調理法の確認、衛生・医薬品の使用法、家電製品の操作法、パソコン画面や印刷結果の確認、街路や案内表示や施設設備、風景の確認等々、その場ですぐに知りたくても、近くに聞ける人がいないために、我慢と不自由を強いられる場面は数えきれません。  SVPは、そうした日常生活で必要な視覚的情報を随時提供することを目指すもので、当館のアイデアを、ICTの活用による社会貢献に取り組んでいる淵高晴氏と加藤エルテス聡志氏が体系化。目の見えない人・見えにくい人と見える人が視覚的情報(Vision)を共有(Share)することと、誰もが同じ生活を送れる世界を作ることを共有(Shared)の目標(Vision)にしようという理想を掛けて命名されました。  システムは単純に言うと、@視覚障害者が対象物をスマホなどの静止画か動画で撮影し、専用サイトに送信、A専用サイトで個人情報を保護した上で全国のサポーターに配信、Bサポーターの回答を個人情報を保護して@の依頼者に返信する、というもの。携帯端末と不特定多数のサポーターの力を活用することが味噌です。   90件の実験成果をまとめて、SVPの実現へ  簡易実証実験には、当館の利用者11人とボイスネットのボランティアなど15人が参加(お名前は本誌7頁に掲載)。専用に立ち上げたメーリングリストに、1ヶ月間で合計90件の静止画が投稿され、合計131件の回答が寄せられました。投稿の内訳は、雑貨・箱・包み紙24件、食品の識別22件、郵便・宅配物15件、風景9件、書類9件、PC画面7件、その他4件。その中から、代表的な投稿をご紹介すると・・・。  @(ひじきのレトルトパックの写真)何の食品か?  A(食品の箱の裏側に書いてある作り方の写真)=作り方を教えてください。  B(タンスの中に十数着の衣服がたたまれ、並んでいる写真)=服の色を教えてください。  C(飲料水の自販機の写真)=どんな飲料水があるか、分量は、ホットかコールドか、いくらか。  D(手前に田舎の民家と林、遠くに山が写っている風景写真)=今、目の前にどんな風景が広がっているか。  実験結果は目下、分析中ですが、@見えない人が写真をいかに上手く撮れるか、Aどのような回答の仕方が適切か、B個人情報をどう守るか(サポーターが不特定多数で大丈夫か)、C動画が望ましいがリアルタイムに回答することができるか、などの課題が浮かび上がっています。 SVPが視覚障害の方にとってニーズもメリットも多大なことは明らかですが、実現に必要なのはシステムを作る費用です。ぜひ今回の実験の成果をまとめてPRに努め、スポンサーを得て、SVPを実現させたいと思います。 「さわる」ワークショップから「まんが」の音訳まで 近畿視情協2013年度ボランティア・職員研修会が開催  近畿視覚障害者情報サービス研究協議会の今年度ボランティア・職員研修会が12月5日、玉水記念館で130人が参加して開かれました。今回のテーマは、点字分科会が「さわる」、録音分科会が「まんが」。非常に興味深い2テーマのエッセンスを、参加した職員からご報告します。      触感がもたらす発見〜点字分科会から              点字製作係主任 奥野真里  点字分科会では「さわる発見、さわる喜び」をテーマに研修を行いました。  前半のワークショップでは、晴眼者はアイマスクをして箱の中の物を触り、形や大きさなどの情報を伝えます。次に、説明を聞いた視覚障害者が説明に一致すると思われる物をいくつかの模型から選びます。初めは言葉で説明することに参加者は緊張した面持ちでしたが、徐々に「手の中に納まる大きさ」、「プラスチックのように固い」、「台形の形をしている」、「素焼きのような質感」、「底に穴が空いている」、「木のように軽い」といったさまざまな表現があちこちから飛び交うようになりました。  参加者の多くは点訳に関わっていますが、日頃は図書に掲載されている写真や図の説明をすることはあっても、立体物を触って言葉で説明する機会はあまりありません。図や写真を説明する場合は色、背景、大きさなどを中心に伝えるのに対し、立体物の場合は重さ、質感といった触覚ならではの語彙も多く飛び出し、同じ「言葉で伝える」作業でも表現内容に違いがあるということも新たな発見でした。また、参加者からは「自分が感じたことをどのような言葉で説明すれば相手に伝わるのか頭をひねった」という感想が口々に聞かれました。  後半は、「さわる絵本の会つみき」の小西萬知子さんから、さわる絵本が幼児にもたらすさわることへの関心・意欲について、また矢部弘毅さんからはご自身のこれまでの「さわる」体験から感じていることをお聞きしました。  さわる絵本は、フェルトや綿、ボタン、サンドペーパーといった素材を使って、動物や食べ物などの形を切り貼りし、タックシールに点字 を書いて貼り付け、視覚障害幼児が絵本を感触で楽しめるように作られています。形はもちろん、さまざまな素材を工夫し、フワフワ、ザラ ザラ、ツルツル、ゴツゴツなどの触感を出すことにより、温かさ、冷たさというイメージを読者に与えることができます。「ビロードは温かい感じ、サンドペーパーは怖そうなイメージがする」と矢部さん。ある絵本では狼がサンドペーパーで表わされており、このようなイメージを持つようになったそうです。また、雪は綿のようにフワフワした手触りですが、ある絵本では銀紙を使って表現されており、見た目と手触りのギャップを感じたというお話も印象的でした。  今回の分科会では、触って感じたことを伝える難しさ、言葉による説明や手触りがもたらすイメージについて改めて考えさせられました。と同時に、点字がさわる文字であるという原点に戻り、今後も「さわる」ことを探求していきたいと思います。       まんがの音訳に向けて〜録音分科会から              録音製作係主任 岡本 昇  近畿視情協録音製作委員会では、昨年から各施設がまんがの音訳に取り組んでいけるよう、読み方の要点や製作作業の流れなどを整理してきました。今回の録音分科会では、この報告がなされた後、まんが表現の基本について学びました。 まんが音訳は、絵と文字で表現されたものを音声化します。文章の読み上げと絵の説明の順序、絵の描写の説明の仕方(音訳者により個人差がある)、コマの変わり目やページの変わり目の案内方法など、さまざまな工夫が必要になります。説明が多すぎるとストーリーの流れが損なわれますし、少ないと内容が理解できにくくなるため、バランスが大切です。  報告では利用者の感想も発表され、まんがの音訳に対する期待感が伝わってきました。また、10年以上前からまんが音訳に取り組んでいるグループN−BUNの方々にもお話を伺いました。原本から文章を抜き出し、絵の説明などを加えた「シナリオ原稿」を作成してから録音することなど、実際の作業について説明されました。  後半の講義では、花園大学の畑先生による「まんがの読み方」の講義があり、まんが表現の基本について説明を受けました。まんがの紙面には「重要な情報」と「背景的な情報」があること。それらを判別するには、コマの位置や、コマ内部のレイアウトが関係していること。具体的には、ページがめくられる前後のコマが重要であることや、コマの内部では台詞と台詞の間(視線の通り道)に人物(表情)が描かれており、これらは重要な情報。それ以外の視線から外れやすいものなどは背景的な情報であることが多いなど、非常に興味深いお話でした。  まんが表現の基本を学ぶことで、音訳の際、優先して伝えるべき情報が把握しやすくなり、聴きやすい録音図書の製作につながります。今後も各施設・団体で協力し、まんが音訳の基本ルールを作っていければよいと思いました。       ≪報告のページ≫ ○シネマ・デイジーのサピエ利用が大好評  当館製作のシネマ・デイジーを昨年末からサピエにアップしたところ大好評。デイジー図書利用ランキング(〜1月22日)は以下の通りです。○付き数字がシネマ・デイジー。 @一枚のハガキ(日ラ、1806回) A釣りバカ日誌(日ラ、1436回) B蝉しぐれ(日点、1401回) C阪急電車 片道15分の奇跡(日ラ、1364回) 5.雑誌・官能小説集(延岡ラ、1351回) EAlways 3丁目の夕日(日点、1331回) 7.永遠の0(早川、1271回) 8.週刊朝日(千葉、1164回) 9.週刊文春(日点、1122回) 10.にってんデイジーマガジン(1105回)  なお11位には、当館の「週刊新潮」(1086回)、13位には当館の「60歳のラブレター」(シネマ・デイジー、1021回)がランクされています。 ○名札の着用にご協力をお願いします  1月のボランティア世話人会で「施設見学会の際、名札を付けていたので、違う所属のボランティアさんともお話がしやすかった」というご意見がありました。職員は名札の着用を励行し、ボランティアの皆様には各係でご用意しています。名札のない方は、ご遠慮なく職員にお申し出ください。職員とボランティア間のコミュニケーションを深めるため、ぜひご協力をお願いします。また視覚障害のある職員・ボランティア・利用者は名札の確認が困難ですので、お出会いの際はお名前を名乗って挨拶していただくよう、あわせてお願いいたします。 ○東南アジアの研修生が3月、研修に来館  ダスキン障害者リーダー第15期のティカさん(インドネシア)とアイリッシュさん(フィリピン)が研修のため、3月来館します。二人とも20代の明るい女性です。もし、日・月曜などに宿泊や交流を希望する方がおられたら、お申し出下さい。      あゆみ 【1月】 6日 仕事始め(法人新年互礼会) 7日 ボランティア活動・サービス再開 9日 ボランティア友の会世話人会 11日 振替休館(3、4、5、7階は開室) 18日 オープンデー(館内見学日) 22日 文科省・音声教材普及推進会議最終回 25日 新春琵琶ライブ(当館後援)      予定 【2月】 4日 見学:枚方市日本赤十字奉仕団家庭看護部会 8日 オープンデー(館内見学日、要予約) 22日 バリアフリー上映会「南極料理人」(玉水記念館) 【3月】 7日 ボランティア交流会(玉水記念館)     ※全館休館(終了後、職員会議)     編集後記 まもなくソチ五輪が開幕。僕が競技の中で興味をそそられるのは氷上のチェスと呼ばれるカーリングです。選手にはピンマイクが付いていて選手同士の作戦が聞けたり緊張感が伝わってきます。掛け声も変わっていて、ヤップ!(ブラシで擦れ)ウォー(擦るな)と指示を出し合いストーンを曲げたり距離を伸ばしたりコントロールします。聞こえてくる数字にも色々意味があって、コースを10分割して、7だと目標の中心で止まる力加減の意味にもなります。ストーンが止まる瞬間まで耳と目が離せません。(茂) =ONE(ワン) BOOK(ブツク) ONE(ワン) LIFE(ライフ) 2014年2月号= 発 行 社会福祉法人日本ライトハウス      情報文化センター(館長 竹下 亘) 住 所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp 表紙絵 武部はつ子 発行日 2014年2月1日 定 価 1部100円 年間購読料1,000円