ろくおん通信第185号テキスト版ろくおん通信第185号テキスト版 2011年3月1日 発行 ※2010年度は奇数月のみの発行予定 日本ライトハウス情報文化センター 録音製作係 〒550-0002 大阪市西区江戸堀 1−13−2 TEL 06−6441−0015(代表) TEL 06−6441−1017(直通) FAX 06−6441−1027 (直通) ホームページ:http://www.iccb.jp/ 編集人 林田 茂 ◆◇ 主なトピックス ◇◆ ● 聴いてわかる図書(42) ● リスナーの窓(25) ● 「著作権法」改正について ● 訂正データのアップについて ● 「見出し抽出アドイン」のご紹介 ● 各種講習会のお知らせ  ☆ 聴いて分かる図書(42) いろいろな本に挑戦しませんか? 久保 洋子 今回はどんな本を読むかを考えてみたいと思います。書店の店頭には様々な本が並んでいます。小説・医学・政治・経済・理数関係・外国語の本・漢文・古典など・専門書・参考書・問題集・料理や家事育児などのいわゆるハウツーもの等々、色んな本があります。録音 図書は本来これらのあらゆる分野の本を満遍なく揃えていくべきです。しかし分野によっては素人の私たちボランティアにはとても難しいものがたくさんあります。また、本によっては録音図書として利用可能なものを 作ることが困難だと思われるものもあります。これらのことは選書の段階で考慮され、同じ分野の録音図書として利用できるがものが選ばれている筈です。 小説は、調査などの準備はそれほど大変でなくても、特に台詞の多いものは読む技術が必要です。 図や表のあるものは説明の文章を作って、本文中に挿入して読んでみてわかるように出来ているか判断するなど下準備が大変です。 医学書や料理の本などはデイジーで検索するのに便利な作り方を考えて準備することが欠かせません。 このようにいろいろな分野の本にはそれぞれ異なる難しさがあります。 私たちボランティアは様々な分野の本に挑戦して色んな作り方を学んでいくべきだと思います。図や表のあるものはどうしても敬遠されてしまいますが、皆が一年一冊でもこういう本を読むことにしてはどうでしょう か? いろいろな本を苦労して読むことで一人ひとりの力は確実にアップします。その力は校正する時に生きてきます。 録音図書の製作は共同作業です。一人ひとりがいろいろな本を作る力をアップすることで情文で作られる録音図書のレベルアップに繋がります。そのためにも音訳者にはいろいろな本に挑戦していただきたいと思いま す。 情文には、英語チーム・古典チーム・東洋医学チーム・パソコンチーム・理数チームと様々な専門チームがあります。わからない所はそれぞれ相談することもできます。各チームの所属メンバーは職員にお聞き下さい 。 誰がいつ来館されているか教えてもらえます。 皆の力を合わせて、利用者の希望に応えられる録音図書を一冊でも多く作っていきたいものです。 ☆リスナーの窓(25) 合成音声の発達と音訳の未来(連載最終回) 福井 哲也 テキストDAISYの実用化に向けた研究が進んでいます。現在最も普及している音声DAISYが、肉声の録音と図書の構造に関する情報(見出し・ページなど)からなるのに対し、テキストDAISYは、図書の中身の文字データと構造に関する情報から成り立っています。テキストDAISYの再生にはパソコンソフトまたは単体のプレイヤーが用いられ、図書の内容は合成音声で聞きます。再生の操作は、音声DAISYとかなり似ています。 音声DAISYに比べてテキストDAISYが有利だといわれる点は、文字データが入手できれば短期間に製作できること、スタジオや録音機材が不要なこと、聞き手が必要に応じ漢字やスペリングを確認できること、本文中の単語を検索できることなどです。一方、最大のデメリットは、機械による誤読が避けられないことです。誤読には、漢字の読み誤り、不適切なアクセント、文意に反する区切り方やイントネーションなどが含まれます。 「最近の合成音声はずいぶん質が上がった」とよくいわれますが、本当でしょうか。私たち視覚障害者は、パソコン操作のため長年合成音声を利用してきました。確かに最近のソフトは、昔のような「ロボット声」ではなく、肉声に近い音質や表情が出せるようになっています。しかし、読みの正しさという面では、進歩はゆっくりです。少々の間違いなら、類推が可能なのは事実です。「カンゲイカイヲイッタ(イッタに下線)」 は「オコナッタ」、 「カイギノカラダヲナサナイ(カラダに下線)」は「タイ」ぐらいは容易に想像がつくでしょう。ならば、「トイアワセガトシマカズヒャッケンアッタ」「コレワセイナオスケカリマス」はどうですか。正解は「問合せが年間数百件あった」「これは正直助かります」ですが、私は漢字を1字ずつ確認し、ようやく謎を解きました。誤読の生じ方はソフトや前後の文字列により様々ですが、ごく平易な文でもこのような誤りは起こります。まして、固有名詞や専門用語では、誤読は避けられません。 テキストDAISYは、学習教材や仕事上必要な資料などをタイムリーに提供する手段として、特に期待されています。タイムリーに入手できるなら、少々の誤読は聞き手の頭でカバーしようというわけです。確かに、私が昨夏テキストDAISYの実験に参加したときの印象でも、自分にとってなじみのある分野の文章なら、誤読はさほど気にならず、スムーズに聞くことができました。ところが、予備知識の乏しい分野で、一文ずつ反芻しながら読み進めなければならないような資料では、読書効率が落ち、ストレスを感じてしまいました。テキストDAISYが有効かどうかは、資料の中身や文体と聞き手の予備知識により大きく左右されるようです。 もしかするとテキストDAISYは、学習教材などしっかり読み込む必要のあるものより、さらっと読み流す雑誌などに向いているのかもしれません(雑誌もまた即時提供のニーズの高い印刷物です)。 今後テキストDAISYの発達と普及により、障害者の読書の機会は確実に広がっていくでしょうし、合成音声の精度も少しずつ上がっていくでしょう。それでも、機械は所詮機械です。文意を正しく捉え、それを的確に伝える読みができるのは、数十年後においても人間だけだと私は思います。肉声の音訳が廃れることは絶対にないと思っています。 ☆ 著作権法改正について 録音製作係 林田 茂 昨年、2010年4月から視覚障害者情報総合ネットワーク「サピエ」が本格的にはじまりました。主に点字図書の検索やデータを配信していた「ないーぶネット」と録音図書を配信していた「びぶりおネット」が統合されたサービスで新たなサービスも加わっています。 そして、もう一つ重要なことは著作権法が改正され2010年1月1日から施行されたことです。ご存じの方も多くおられると思いますが今回改めて特集にしたいと思います。 著作権法の改正後、3つのことが大きく変わりました。  1.対象の範囲   視覚障害者から視覚障害者『等』に変わりました。   この『等』の中には、視覚による表現の認識に障害のある人という意味づけになっています。  2.主体施設及び団体   視覚障害者等に対して許諾を必要とせず図書を製作できる施設・団体が増えました。   大きなところでは、公共図書館が許諾無しで製作が可能になりました。今後より情報の共有や連携が必要になってくると思います 。  3.可能な行為   視覚障害者等のために必要と認められる方式での製作が可能になりました。   具体的には、録音図書(デイジー図書)だけではなく、マルチメディアデイジーやテキストデータでの提供が含まれています。  著作権法は、少し読みにくい部分もありますので、今回はどのあたりが変わったのか、わかりやすくまとめましたので、この機会に是非ご確認ください。   ☆著作権法の改正について 〜2010年1月1日 施行〜 改正前@ 対象の範囲 ・視覚障害者 改正後@ 対象の範囲 ・視覚障害者 等(活字が見ることが困難な人)  視覚による表現の認識に障害のある人  例:視覚障害、識字障害、LD    高齢者、肢体不自由 など 改正前A 主体施設及び団体 ・視覚障害者情報提供施設 (点字図書館・点字出版所) ・特別支援学校図書館(盲学校ほか) ・筑波技術大学視覚障害者系図書館 ・盲児施設、盲老人施設 改正後A 主体施設及び団体 ・視覚障害者情報提供施設  (点字図書館・点字出版所) ・特別支援学校図書館(盲学校ほか) ・公共図書館、国立国会図書館 ・学校図書館 ・障害児者施設の一部要件をみたしたところ ・文化庁長官に認められた団体 改正前B 可能な行為(複製の目的が制限されている) ・視覚障害者に貸し出したり自動公衆  送信するための録音図書の製作(複製) ・録音物の貸出 ・視覚障害者に対する録音図書の  自動公衆送信(インターネット配信) 改正後B 可能な行為 ・@の対象者のために必要と認められる限度 における下記の方式での製作(複製)  例:音声化、拡大、マルチメディア    テキストデータ、SPコードなど ・上記のものの@に対する譲渡および  自動公衆送信 ※貸出については、今回の改正の影響は  受けていません(そのまま)  その他 (改正後) ・『 著作物 』について(37条3項) これまで「公表された著作物」として、録音や放送されたものなど音声による著作物も含まれていましたが、今回「公表された著作物であって、視覚によりその表現が認識される方式により公衆に提供され、または提示 されているもの」と定義される「視覚著作物」に限定されました。 つまり、音楽など視覚以外で認識できる著作物は、視覚障害者等のための許諾無しでの複製の対象となりません。 ようするに著作権者(出版側)が視覚障害者等も利用できる方式で用意している場合は、点字図書館側では作ってはいけません。作る場合は許諾が必要です。 ☆訂正データのアップについて 訂正したデータを「ウェブスタジオ・なにわ」にアップする方法は、「ウェブスタジオ・なにわ」で校正表をダウロードして訂正した場合は、(A)⇒「修正済み音訳データ」で送信を行います。 「ウェブスタジオ・なにわ」で校正表をやり取りせず(校正用紙を使って)訂正した場合は、 (B)⇒「製作範囲外」でデータの送信を行います。 (A)⇒「修正済み音訳データの送信」で修正データを送信する場合 主な手順  @ 音訳者は、45分程度を目安に「音訳データ送信」で順次アップしてください。  A 校正者は、音源データをダウンロードして校正してください。  B レクディアから校正表を作成して「ウェブスタジオ・なにわ」へ送信します。  C 音訳者は校正表をダウンロードして訂正し、  D 「修正済み音訳データ」の送信を選んで、データをアップしてください。     同様に、編集者から「ウェブスタジオ・なにわ」を使って校正依頼が来た場合も同様に「修正済み音訳データ」の送信でデータをアップしてください。 (B)⇒「製作範囲外」でデータを送信する場合  @ 校正者が「ウェブスタジオ・なにわ」を通さないで、これまでの校正用紙で行う場合でも、音訳者は「ウェブスタジオ・なにわ」に音訳データをアップしてください。     校正者にはCDかカセットに変換して校正 を依頼してください。(職員へ依頼もOK)  A 校正者は校正表を作成したら音訳者に連絡してください。  B 音訳者は校正表を基に修正した場合、わかりやすいようにファイル名を変更して「訂正」と付け加えて「製作範囲外」でアップしてください。    複数回同ファイルを修正した場合も、そのことがわかるように「訂正2」「訂正3」とファイル名を変更して付け加えてください。    また、編集者やデイジー校正などの訂正も同様に製作範囲外でアップしてください。  ※「製作範囲外」の送信については、『ろくおん通信183号』でも紹介しています 注意 1.原則として「再送信」は使わないようにお願いします。再送信すると同じ内容の情報が利用者へ案内されることになるためです。 2.音訳が完成(修正)して最終データを送信するときも「最終データ送信」にはチェックを入れないでください。 ☆≪ お願い ≫ 「連絡表」を活用してください。 音訳者からの校正依頼や訂正の依頼などの場合には、右の「連絡表」で連絡をお願いしていますが、上記に関わらず、職員への連絡やボランティア同士の連絡にも備忘の意味も含めて活用していただきたいと思います。 例:○○さんへの郵送のお願い   ○○資料の作成およびコピー依頼   打ち合わせの時間の連絡 など ☆各種 講習会のお知らせ ◆専門音訳 東洋医学コース    内容 東洋医学関係の図書を音訳するための入門講座です。    日程 5月6日 5月20日 6月3日 6月17日 7月1日 ※金曜日        午後2時30分〜4時30分 全5回   講師 片山 一夫 氏 (元国立神戸視力障害センター教官)   費用 1000円   申込み締切 2011年4月20日(水) ◆専門音訳 英語コース 内容 英語関係の資料の処理と読みの実習です。   日程 5月13日 5月20日 6月3日 6月10日 6月17日 7月1日      ※金曜日 午前10時00分〜12時00分 全6回   講師 近畿視情協 英語チーム   費用 1000円   申込み締切 2011年4月20日(水) ◆初心者講習会 第一期   日程 3月28日 4月4日 4月25日 5月23日 5月30日        6月20日 7月4日 7月25日 ※月曜日       午後1時00分〜3時00分  全8回   講師 安田 知博 氏   費用 3000円   申込み受付 随時 ◆安田 知博の「読み方勉強会」   内容 実際の図書を用いた読みの実践講習です。   日程 前期(4月〜9月)・後期(10月〜2012年3月)      ※月曜日(月2回程度)午後3時00分〜4時30分   費用 5000円(現在、当センターで活動中の方は半額)   申込み受付 随時   お申込み・お問い合わせは、職員までご連絡をお願いします。 以下、ホームページよりご覧いただけます http://www.iccb.jp/ ◆ 講習会情報 ⇒ 『耳より情報(講習会のお知らせ)』 ◆ ろくおん通信 ダウンロード版(テキスト版あり) ⇒ 『録音製作係 ろくおん通信』 ろくおん通信 185号 終わり