★ろくおん通信187号テキスト版 発行日 2011年7月1日 発行:550-0002 日本ライトハウス情報文化センター録音製作係 〒 大阪市西区江戸堀 1−13−2 電話 06−6441−1017(録音製作係直通) http://www.iccb.jp/ ★快適に読める録音図書を目指して  久保 洋子 録音図書製作の現場では、音声訳者も校正者も、正確な読みを目指して、下調べし、下読みをしています。但し、正確に読むことが、即、利用者が理解できる読みにつながるわけではありません。上手に読むことも、それだけで墨字の内容を正しく伝えることにつながるわけではありません。 墨字の本を聴覚で快適に読めるように作ることが、私たちの仕事です。必要な漢字の補足をしたり、記号を言いかえたり、図表の説明を必要十分に適確な所で入れたり、そうしたさまざまな処理をして、墨字の本を読むのと同じように、中味が正しく伝わり、快適に読める録音図書を作らなければなりません。 私たちが本を読む時、解りにくい所があれば何回も読み返したり辞書をひいたりします。録音図書も内容が難しくて、何回も読み返すことは仕方のないことですが、音声訳者の配慮が足りなくて何回も読み返すのでは快適な読書とは言えません。録音図書では「あれ?」と思っても音は止まらずどんどん先へ行ってしまいます。その度にもどしてきき直す、これも快適な読書とは言えません。 快適に読める録音図書の一つの条件は初めから順にきいていけば理解できる図書だと思います。 聴覚で読書するとはどういうことか。私たちも校正の機会などに是非一度体験してみましょう。CD校正などはいい機会です。一寸時間をとって原本を見る前にきいてみてください。快適に読めるでしょうか? 利用者の快適な読書を目指して力を合わせていきたいと願っています。                        ★調査について  大林 緑 録音図書の製作はまず原本の下読みと調査から始まります。全体に関わる大事な作業です。しかしながら原本はさまざまで皆様には日頃その下調べにさぞご苦労されている事と思います。調査が大好きな方、ちょっと苦手な方と色々いらっしゃるでしょうが、調査を入念に行なう、手を抜かないことは録音図書製作のボランティアとして欠かせない必須の条件です。ぜひご協力をお願いいたします。 ◎調査の目的 調査の目的は、利用者に書かれている内容を正しく伝えることにあります。普段本を読んでいて誤植を見つけうんざりしたことはありませんか?同じことは録音図書にも起こります。利用者は間違いに気づいてもすぐに調べることは多くの場合できません。がっかりされることがないよう十分に調査をして発行しなければなりません。 ◎音声訳者は調査表を作成する 出典を記入し、調べのつかないときは「推測読み」などと記入し、調査表は校正者にも渡すこと。 校正者は推測読みの箇所や、調査済みでも不審な箇所は調べてみること。 読み方は正しくてもその本のその箇所にふさわしい読み方かを考慮する。 調べのつく固有名詞の間違いは許されません。 人名・地名・著書名・出版社名・大学(学部)名・受賞した賞の名前・団体名 などなど ・出来事(日頃の社会での出来事に関心を持ち、ラジオやテレビに耳を傾け、メモなどをとる) ◎周りの人や専門チームの人にたずねる 自分ひとり、またはモニター者とふたりで悩まないでまわりのみんなに相談してみる。 職員・各グループのリーダー・専門チーム(英語チーム・古典チーム・東洋医学チーム・パソコンチーム・理数チーム)の人などにたずねる。 ◎辞書を引く 辞書でないと分からないことは沢山あります。辞書は1つのことを調べると、同時にその他の色んなことも教えてくれるすぐれものです。面倒がらず気軽に辞書を引く癖をつけましょう。 館の録音図書製作では辞書にある読みを優先し、どれかの辞書にあればよし、を原則としています。出来れば複数の辞書に当たりましょう。 知らないことは意外と多いものです。自分を過信せずまた当たり前と思っている読みも念の為辞書に当たりましょう。館には沢山の辞書が用意されています。どんな辞書があるか時々眺めてください。 ここでは国語辞典と漢和辞典について少し触れておきます。 国語辞典→『日本国語大辞典』20巻(小学館)・『広辞苑』(岩波書店)・『大辞林』(三省堂) 国語辞典は沢山ありますが、この3冊はもっともよく使われている辞書です。引き比べると各社の違いも分かります。手軽に利用しましょう。 漢和辞典→ 諸橋轍次編『大漢和辞典』13巻(大修館書店) 漢和辞典にも色々ありますが最も大部なものとして『大漢和辞典』があります。これは通称“大漢和”とか“諸橋(もろはし)”と呼ばれ、難しい漢字、今まで見たことがないような漢字も網羅されています。引き方のコツを憶えて字を知る楽しみを堪能してください。 ◎インターネットで調べる 最近はかなりのことがネットでも調べられるようになってきました。 以前はどうしても分からなかったことがちょっとした打ち込みで検索できるようになり、本当に便利になりました。しかしそのほとんどが出所がはっきりせず、不確かな内容が多いのも事実です(よく見るウィキペディアもどこかで管理はされているようですが・・・)。 情報量の多さについ助けられてしまいがちですが、考え方としては「どこかの物知りの方が教えてくださっている」位に心得た上で、内容をよく考慮して利用することが望ましいと思います。はっきりした出所の責任で作られた“ホームページ”などを利用するのも一法です。 館の調査用パソコンには、画面に調査のためのアイコンが沢山出ていますから、それらを利用すればいいでしょう。もしご自宅でこれからパソコンで調査を始めたいと思われる方は、手始めに「音訳の部屋」(http://hiramatu-hifuka.com/onyak/onyindx.html)をお気に入りに登録して、そこから始められるといいと思います。 利用者に正しい情報が送れるようしっかり調査しましょう。 ★ ヴィオラのひとりごと みなさんこんにちは。ヴィオラです。暑くなってきましたね。夏になると、昼間の外出は暑くて大変です。地面のアスファルトはやけどしそうなほど熱くなるので、靴を履いて出かけるんですよ! 冬に比べて夏はみんな開放的になるのか、声をかけられることが多くなります。 「盲導犬ですか?道を覚えてるんですね。どこにでも連れて行ってくれるんでしょうね!」 私はカーナビではありませんよ!お父ちゃんの指示どおりに方向を変えて歩くんです。 「信号がわかるんですね。すごいなあ!」 犬は色盲なんです。信号の判断はお父ちゃんがします。周囲の人や車の動きで、青に変わったかどうかを感じているのです。先日、信号が青になって、お父ちゃんが「ストレート ゴー」と言ったので横断歩道を渡っていきました。前方からおっちゃんが渡ってきます。すれ違うときにおっちゃんが「にいちゃん!あぶないで!信号赤やで!」 おっちゃんも渡ってるでしょ! さすが大阪。恐れ入りました! ★自宅録音グループ紹介 今月号より、情報文化センターで活動されているグループの紹介をしていきます。 今回は、自宅録音チーム4チームについて、各グループのお世話役の方に書いていただきました。 自宅録音チームの製作力は、すでにスタジオ録音チームと同等のタイトル数を製作するまでになっています。今年度は国会図書館の図書を製作することになり、スタジオの蔵書製作量がダウンしますので、自宅録音チームの役割がおおきくなっています。 ◎マトリョーシカ 前からのメンバーに新しいメンバーが加わって現在17人で活動しています。 例会は毎月第2火曜の午前です。各自が読んでいる本の中で悩んでいる処理を皆で考えたり、パソコン操作についての情報交換で盛り上がることがしばしば。世話役が用意した資料で勉強もチョコッとやっています。蔵書やリクエストの家庭録音を順調に読み進めているのはもちろんのこと、それぞれいろいろな音訳活動に積極的に取り組んでいます。 「ウェブスタジオ・なにわ」でのやりとりもスムーズにできるようになり、現在勉強中の人も含めて多くのメンバーが編集作業ができたりと本当に頼もしい限りです。(K・S)  ◎はなみずき 「はなみずき」は平成18年、「はなみずき」「ポーコ・ア・ポーコ」「わかば」が合体してスタートした家庭録音チームで現在22名の方が活動中です。個人で蔵書を読む傍ら、チームで1冊の本を分担して音声訳する共同製作をしています。 今は4冊目の『音楽の366日話題事典』を製作中です。音声訳・校正・訂正・編集作業をすべて「ウェブスタジオ・なにわ」を通して行っています。皆さん、戸惑いつつも果敢に挑戦なさってメキメキ腕をあげておられます! (T・M) ◎二十四の瞳 1998年度音声訳基礎講習会受講者の家庭録音チーム「二十四の瞳」に、2008年度の受講者が合流して、新生「二十四の瞳」が2009年に誕生しました。活動歴に10年もの差がありましたが、共同製作「大阪の教科書」で、苦労をともにした後は、みなさん、和気アイアイと、楽しくなごやかなチームとなりました。『週刊新潮』、『消費と生活』、そして蔵書と、それぞれ個人での活動も増えてきましたが、今後は、「ウェブスタジオ・なにわ」でのやりとりができるように、みんなで挑戦していく予定です。現在活動しているのは15名。転居のため大阪を離れた方もいますが、「ウェブスタジオ・なにわ」の力を借りて「二十四の瞳」とつながって活躍しています。皆、向上心にあふれ、「よりわかりやすい音声訳を」と、日々がんばっています。(Y・M) ◎金糸雀(カナリア) どこか懐かしくやさしい響き・金糸雀(漢字の補足説明の例文になるのではという声も)。このグループは2010年10月に誕生しました。現在12名。個性豊かなメンバーが活発に意見交換しながら共同製作図書作りに励んでいます。1回目は名言・格言・教訓などを集めた『座右の銘』、そして今回2回目は実用書・@『おいしい魚の目利きと食べ方』A『落語に題材を得た噺の処方箋』と趣を変え、今後のいろいろな要望に対応できるよう礎をつくっているところです。いずれ、メンバー一人ひとりが本を手にする事になるのですが、「ウェブスタジオ・なにわ」の覚えも速く、どのようなグループになっていくのかとても楽しみです。(H・H) ★きれいに録音する技術 (1)  録音製作係 清水 賢造 きれいに録音するにはどうすればいいのか、これからシリーズで取り上げていきます。 以前はカセットデッキでの録音が主流でしたが、今はほとんどの人がパソコンを使っての録音に切り替わってきています。 きれいに録音する為の技術は基本的にはカセットデッキの時と変わりませんが、パソコン特有の問題もでてきます。パソコンの雑音の問題はすぐに解決しない場合が多々あります。音訳者もこの問題で苦労するケースも増えています。 最近でも録音中に原因不明の雑音が入り、最終的には Recdiaのソフト会社にデータを送って、無線LANが原因で雑音が発生していることがわったケースもありました。 雑音と言っても、その原因がわかるまでかなりの期間がかかることもあります。これらの問題を少しでも改善できるように、このシリーズで取り上げていきたいと思います。 まず「きれいな録音図書」とは「雑音」がなく音声のみがクリアに録音されている図書ということになりますが、この「雑音」は以下の3種類に分類できます。 1.パソコンなどの録音機器が原因 2.環境音や生活音 3.音声訳者自身が原因 1の録音機器が原因の雑音は、 @ パソコンの内部で発生している雑音が原因 A マイクの電池切れ、マイクジャックやコードなどの断線、接触不良などが原因の雑音 2の環境・生活音としては、 @ 洋間などの反響音 A お椀型のライトなどによる共鳴音 B 外の騒音や部屋の騒音(クーラー、冷蔵庫) 3の音声訳者が起こす雑音には、 @ 吹かれノイズ A 口中音  B 音が波打つ(大きくなったり小さくなったり) C マイクや机、コード等に音声訳者が触れる音 などがあげられるでしょう。 音声訳者は自分の録音した音を聴いただけでは、反響音や共鳴音はわからないものです。これはもともと自分の部屋の反響した音や共鳴した音を聞いているので違和感を感じないからで、ちゃんとヘッドフォーンなどで聴かないと気づきません。 こうした雑音をどう減らすか、次回から考えていきます。 ★ なるほど納得! 『ウェブスタジオ・なにわ』使いこなし術 (第1回) 浜本 裕子 「しくみがいまひとつ分りにくい」「校正票送信したけれど届いているかなぁ?」「トップページに表示されていたのが消えてしまった!」などなど、「ウェブスタジオ・なにわ」に関するちょっとした不安、素朴な疑問、ありませんか? 「ウェブスタジオ・なにわ」は、少し欠点もありますが、それに勝る利便性があります。しかも、音訳データはいつも安全に保存されています。「ウェブスタジオ・なにわ」は、ちょっと面倒ですが、たくさんの人が使えば使うほど、アクセスすればするほど、ドンドン便利に快適になります。 ◆データのやりとりのしくみ、3つのポイント 1 ウェブで製作依頼(館から)⇒ 「依頼」受信 ⇒「承諾」送信でやっと始まる ・録音図書ごとに製作依頼される(音声訳・校正・編集) ・「承諾」を送信しないとデータを受け取れない(ダウンロードできない) 2「届いています」などのお知らせは、アクセス、ログインしないと分からない ・ここがパソコンメールやケータイメールと違う点 3 データはいつもサーバー内にある(サーバーは館内に設置されている) ・音声訳者⇔校正者、音声訳者⇔編集者、のデータのやりとりはない ・音声訳者も校正者も編集者も利用者さんも、サーバーからデータをダウンロード 音声訳者が音訳データを送信(アップ)することで、サーバーにデータが保存され、校正者、編集者、そして利用者さんが、データをダウンロードできます。ただ、パソコンは何も知らせてくれないし、何も取ってきてくれないし、着信音もありません。 進んでアクセス、ログインして、何か届いていないか確かめることが必要になります。少なくとも週1回・・・、できれば毎日アクセスするというのが理想的ですね。 ◆音声訳者、校正者、編集者、共通の疑問ベスト3 1データの行き先は? @ 新規音訳データ 校正者と利用者さんに通知が行き、ダウンロード可能となる ※利用者さんに通知が行くのは、配信すると決められた図書のみです A 修正済音訳データ 編集者に通知が行き、ダウンロード可能となる B 範囲外音訳データ 校正者と編集者に通知が行き、ダウンロード可能となる ※Bの場合、校正者にも届いてしまいますが、再度校正の必要はありません これは、≪範囲外音訳データ≫が『新規音訳データ』である為に起こります 2トップページから消えてしまったものはどこへ行った? トップページはお知らせ受信だけ。一度クリックすると消えてしまいます。 特に、グループ名で登録され、グループのメンバーが共通のログイン・パスワードで受送信する場合、ちょっと注意が必要です。トップページにお知らせ受信がなくても、画面の上に並んでいるボタンをクリックしてみましょう。 @「製作依頼受信」⇒ 利用者さんに配信されるのかどうかや担当者などが分かる A「進捗状況」⇒ 校正や編集する音訳データをダウンロードするとき B「校正票一覧」⇒ 自分が送った校正票、受け取った校正票などの一覧 C「連絡票」⇒ お互いの連絡、館からのお知らせ D「ヘルプ」⇒ 作業の手順やバージョンアップの方法など 3 『録音製作係』『システムアカウント』などからの連絡票はどうしたらいい? @「“ウェブスタジオ版 Recdia”のバージョンアップを・・・」など ⇒ 書かれている手順に従って、バージョンアップ作業を A「製作状況変更のお知らせ」 ⇒ 何もしなくて大丈夫 次回は『校正票の不思議』解消します。 ★2011年度 音声訳基礎講習会講習生募集 日本ライトハウス情報文化センターでは、当センターの蔵書となる「録音図書」や利用者から依頼のある図書を製作する為の「音声訳基礎講習会」を実施します。応募に必要条件は、 @ 発声などの基礎的な訓練を修了していること、 A 自宅での録音および来館してのスタジオ録音が可能なこと、 B 講習会修了後、情報文化センターの録音図書製作のボランティア活動に参加が可能なこと、 C録音に必要なノートパソコン、マイクロフォン(5,000円程度)、インターフェイス(10,000円程度)などの機材が用意できることです。 講習会では、「録音図書」を作成するのに必要な、「パソコン録音技術」、「調査」、「音声変換処理」などについて学びます。                〜〜 実施要項 〜 実施時期:★前期講習(講習会)      2011年10月7日(金)〜2012年3月30日(金) 10:00〜12:00      ※原則毎週金曜日。      但し、10月14日(金)・11月11日(金)以外の第2金曜日はお休みです       ★後期講習(実践・フォロー講習)       2012年4月6日(金)〜2012年8月17(金)の第1・3金曜日10:00〜12:00      ※ 第1金曜「実践製作講習」、第3金曜「読み方講習」 会  場:日本ライトハウス情報文化センター4階会議室    講習内容:1.読み方の基本         2.記号、漢字、図、表などの音声変換処理         3.Recdiaソフトを使用した録音技術など         4.調査・録音の順序など 講  師:久保洋子氏(他、情報文化センター講習会講師チーム) 資  格:@ 音声訳に必要な「発声」などの基礎的な訓練を修了した方       A 自宅での録音、及び来館してのスタジオ録音が可能な方       B 講習会修了後も、日本ライトハウス情報文化センターに月に2回以上の来館が可能な方       C 録音に必要なノートパソコン、マイクロフォン(5000円程度)、オーディオインターフェイス(10,000円程度)などの機材が用意できる方 費  用:3000円(資料代) 定  員:10人 申込方法:申込用紙に記入の上、郵送(FAXも可)またはご持参ください。メールでも受け付けます。      〒55−0002 大阪市西区江戸堀1−13−2      社会福祉法人日本ライトハウス情報文化センター録音製作係      Tel:06−6441−1017  FAX:06−6441−1027 E−Mail:rec@iccb.jp 〆切日:2011年9月15日(木) 試験日:2011年9月16日(金)10:00〜12:00      日本ライトハウス情報文化センター 4F会議室   試験内容:@ アナウンステスト A 漢字の読み B 音声変換処理センス C 面接      ※ 筆記用具持参のこと  鉛筆、消しゴム 発  表:2011年10月1日(土)までに連絡 講習開始:2011年10月7日(金)10:00〜12:00       ※試験日当日、来館できない方は、録音製作係までお申し出ください。   以上 ★以上で、ろくおん通信187号 2011年7月1発行を終わり