日本ライトハウス情報文化センター        「ワンブックワンライフ」2014年11月号  <表紙イラスト:(武部はつ子画)>庭ぼうきを持って掃除をしている二人の上を枯れ葉が舞っている。 寄り添いながら音楽にのるように舞う葉っぱ。男の子は「いいなあ〜」、女の子は「おませだね・・・」。   (目次) ◇掲示板 ◇センターのページ ・多種多様な機器とiPhone講習、“触る”体験に1,210人 読売光と愛の事業団共催で「日本ライトハウス展2014」を開催 ・視覚的資料を点訳・音訳の技術で的確に伝えるために 文科省委託「音声教材」調査研究事業の目指すもの ◇報告のページ  ≪掲示板≫ ○バリアフリー映画会「天地明察」を開催  当館では、公益財団法人一ツ橋綜合財団の全面的なご支援により音声解説事業を展開し、毎年秋には話題の映画を 上映する「バリアフリー映画会」を行っています。今年は、NHK大河ドラマ「黒田官兵衛」役の岡田准一が主人公を演じ、 話題を呼んだ映画「天地明察」の音声解説・日本語字幕付き映画会を行います。映画は、江戸時代に実在した数学オタクが 日本独自の暦作りに挑戦し、歴史をひっくり返した感動の物語です。上映後は、視覚障害者に宇宙の魅力を伝えている 天文学者、嶺重(みねしげ)慎(しん)先生を講師に、宇宙の不思議や最先端の話題について、点図や立体の月球儀などを 触りながらお話いただきます。  日時 11月29日(土)12時30分〜16時20分  場所 玉水記念館大ホール  参加費 無料(要電話予約)  定員 先着200人  お申込みは電話で、11月5日(水)9時15分から11月12日(水)17時の間に、当館総務係(電話06-6441-0015)まで。氏名、電話番号、視覚障害の方の場合はガイドの有無をお知らせ下さい。 ○サポートと点字の基礎をインターネットで 前号で、視覚障害者の安全、安心な外出へのご理解とご協力をお願いしましたが、ちょうどインターネット上に、 街で視覚障害者の方に出会った時にどのように声をかけ、手を貸したら良いかが分かる動画(12分間)が公開されました。 題名は「目の不自由な方を素敵にサポートできる動画セミナー」。セカンドアカデミー(株)がネット上で募金を募り、 東京ヘレン・ケラー協会の協力で作ったものです。URLは「http://www.second-academy.com/movie/」。ぜひご覧下さい。 また11月1日は日本の「点字制定記念日」。この機会に点字のイロハを学んでみませんか。検索 「日本点字委員会  点字を読んでみよう」で簡潔明解なパンフレット(A4判4頁分)が画面とPDFファイルで公開されています。 ○11月の休館について  11月22日(土)は、23日の祝日が日曜と重なるため振替休館日になりますが、5階サービス部、4階会議室、 3階総務係に加え、特別に8階点字製作係も開室します。 ≪センターのページ≫ 多種多様な機器とiPhone講習、“触る”体験に1,210人 読売光と愛の事業団共催で「日本ライトハウス展2014」を開催  当法人では、今年も社会福祉法人読売光と愛の事業団の共催により、9月27日(土)・28日(日)の両日、難波御堂筋ビル7階ホールと8階会議室で、西日本最大級の視覚障害者用具・機器展「日本ライトハウス展〜全国ロービジョンフェア2014」を開催しました。今回は34社・団体が多種多様な機器・用具を出展・紹介したほか、iPhoneの個人講習や“触知”で文化にふれるワークショップと展示会も賑わい、来場者は合計1,210人を記録。アンケートでは「良かった」という 評価が76%に達し、特に「会場内外の案内が親切丁寧」というお声を多くの方からいただきました。(館長 竹下 亘) 多様な障害・ニーズに応じた多機種が出展  メインの機器・用具展示では、見やすい表示で使える機器、触覚で確認したり操作できる機器、合成音声の読み上げや肉声の録音等により耳で確認できる機器など、障害の特性や程度、ニーズに応じた多種の機器。また歩行、読み書き、 通信、日常生活、娯楽など目的に応じた多様な機器が多数出展され、お客様からは、見たい物、探していた物、役に立つ 物が見られたという声が 地球儀を触りタッチする多く聴かれました。 と音声情報が流れる機器 また、特別企画1 「さわって知ろう!iPhone、iPad」では、6ブースで60数人がスマホの個人講習を受講。特別企画2「さわって開く“知”の バリアフリー」では二枚貝の模型の触察や天文学のワークショップ、江戸時代の疱瘡絵(ほうそうえ)の展示会を行い、 多くの参加者が文化に触れる体験を満喫しました。 「初めて」の来場が38%、「良かった」が76%  今回の展示会で嬉しかったのが、来場者のアンケート結果でした。回答335人(全盲34.9%、弱視31.3%)中、「とても 良かった」が26.3%、「良かった」が50.4%を占め、「(あまり)良くなかった」は3人に留まりました。また「初めて」の 来場者が37.9%を占め、ライトハウスを「ほとんど利用したことがない」が23.9%、「どんな施設か知らない」が7.1%も ありました。これは、特に中途視覚障害や視力低下でお困りの方に、役立つ視覚障害者用機器・用具やサービスがあることを 知っていただき、利用するきっかけにしていただきたい、という展示会の目的がかなりの達成されているものと言えます。  具体的な感想や希望では、iPhoneを筆頭に、個々に関心のある機器や用具が見られて良かったという声が多かったほか、会場内外の案内が親切丁寧で良かった、というお褒めの言葉が目立ちました。一方、会場内が混雑して、うるさく、 説明が聞き取りにくい、待ち時間が長いなどの苦情もあったのは申し訳ないことでした。 新たな企画でさらに多くの“初”来場者を  難波御堂筋ビルでの日本ライトハウス展は今回4年目。5年目の来年は視覚障害の方々にとって魅力的な企画を練り、より多くの、特に初めての来場者を迎えられるよう努力したいと思います。ぜひご支援とご来場をお願いします。 視覚的資料を点訳・音訳の技術で的確に伝えるために 文科省委託「音声教材」調査研究事業の目指すもの    当館では昨年度、文部科学省の委託を受けて、「障害のある児童生徒のための教材普及推進事業」を実施したのに続き、今年度、新たに「音声教材の効率的な提供方法等に関する調査研究事業」を受託し、取り組みを進めています。以下に、 今年度の事業の趣旨をご紹介しますので、ご覧ください。  両事業の要(かなめ)は、「教材」をはじめとする専門書籍、中でも図・表・グラフ・写真・絵等の視覚的資料を視覚 障害者に的確に伝えるには、点訳・音訳で行っている文書の「処理」を加えることが必要不可欠だということです。これは 教材にとどまらず、今日ますますビジュアル化する書籍や雑誌を音声化したり、さらにインターネットで配信される 「電子書籍」を合成音声で読ませる場合にも欠くことのできない要件です。当館では、この研究事業を通して、長年にわたり 培い、蓄積してきた点訳・音訳技術の継承・発展を目指したいと考えています。(製作部長 久保田 文、館長 竹下 亘) 文科省委託「音声教材の効率的な提供方法等 に関する調査研究事業」の目的と方法  視覚障害により文字や図形等を認識することが困難な児童生徒に対して、音声教材の製作・提供を進める場合、近年 増えつつある視覚障害と発達障害等とを合わせ持った児童生徒や、学習能力の不足や視力低下により点字の触読が困難な 視覚障害児童生徒の存在を忘れることはできません。  昨年度の文科省委託「障害のある児童生徒のための教材普及推進事業」では、視覚的資料を適切に解説した「音訳教材」が、こうした視覚障害児童生徒の学習において非常に有用であることが実証されました。  また、児童生徒にとどまらず、視覚障害教育の専門家を配置できず、点字教科書の学習サポートが十分に行えない 環境にある地域の学校や視覚以外の特別支援学校の教員にとっても「音訳教材」が学習指導に役立つツールであることが わかりました。  音声教材の種類としては、音声デイジーをはじめ、今後、マルチメディアデイジー、EPUB3、MP3データ、 TTS(合成音声)などによる製作・提供が検討されています。  しかし、重要なことは、どのような音声教材を製作・提供する場合にも、特に図・表・グラフ・写真・絵・系統樹等の視覚的資料が、一人ひとりの児童生徒にとって理解できるように適切に読まれているかどうか。読むスピード、説明に 使う用語や表現、間(ま)の取り方が学年、教科、ニーズに応じたものであるかどうか。さらに、国語、算数、理科、社会、英語、数学、古典、漢文、生物、物理等々、それぞれの科目に特化した墨字表記を正しく理解し、ふさわしい音訳表現(例えば漢字をどう説明するか、理数記号や数式をどう読むか、本文と訳文をどう読み分けるか等々)ができているかと いうことです。  こうした“合理的配慮”を加えた音声教材は、合成音声による読み上げだけで実現しないのはもちろん、肉声による 読み上げにおいても専門的な「音訳」技術を用いなければ製作が困難です。  本事業では、こうした音訳技術を培い、蓄積している全国の視覚障害者情報提供施設やNPO、地域のボランティア グループなどで活躍する音訳者の技術を結集して、「教材の視覚的資料の音訳データベース」を構築します。  このデータベースを、EPUB3(メディアオーバーレイ)フォーマット、マルチメディアデイジーフォーマット、合成音声による音声教材の製作団体が活用することで、完璧な音声教材を効率的に製作・提供できるようになります。 図式:「音訳教材データベース」構築・運用イメージ  A[音訳データ登録・実務担当施設・団体と音訳うボランティア]が作った視覚的資料(図・表・グラフ・写真・絵・ 系統樹等)の音訳データを、B[音訳教材データベース]に登録・蓄積します。Bについて音訳データ登録実務担当者会議や 調査研究委員会は検証・提言を行います。Bには、音声ファイル(WAV)とメタ情報があります。C[教材製作団体= (A)EPUB3、(B)マルチメディアデイジー、(C)TTS(合成音声)]は、Bから音訳データ(資料名・教科書番号・ ページ等)を検索して音訳データ・メタ情報をダウンロードし、効率的な製作に活用します。D[児童生徒]に合成音声と肉声の音訳によるハイブリッドな音声教材が提供されます。   メタ情報:視覚的資料に関する情報のこと。教科書名、出版社、ページ番号、資料名、資料の種類(写真、フロー図、 地図、グラフ等)、資料の内容などで、データベース化や検索に必要。 ≪報告のページ≫ ○朗読録音奉仕奨励賞を当館の6人が受賞  鉄道弘済会の今年度第44回朗読・録音奉仕者表彰で、朗読録音奉仕奨励賞が発表。当館の上月(こうづき)直子、嶋川 真理子、土井賀津子、西村郁子、二宮真理、水谷和子の皆さんが受賞され、館内で贈呈式が行われました。奨励賞は 活動歴5年未満で、積極的に取り組んでいる方が対象です。お祝いを申し上げるとともに、今後、当館の録音図書製作の 中核としてのご活躍をお願いします。 ○府・市視覚支援学校生の職場体験を実施  7月30・31日に大阪府立視覚特別支援学校から2人、10月21・22日に大阪市立視覚特別支援学校から1人の高校生の 職場体験実習を当館で行いました。点字図書館の役割について話を聞いた後、館内を見学。図書の返却作業や点字・録音 図書製作のボランティア活動を実際に体験。また、生活に便利なグッズに触れたり、最新機器について学びました。 今回の体験が3人の今後の進路決定に役立つことを願っています。 ○当館利用者からボランティアへのお礼状  当館の録音図書の愛読者から「一失明者の生き様をお知らせ」したい、とお礼状が届きましたので、原文のまま転載 します。「80歳の一人暮らしの完全盲老人です。…… 普通の学校で義務教育を受けましたが、図画、工作、理科の実験、 運動など眼を使う具体的な活動は出来ませんでした。それに人の顔が識別不能なので友達付き合いは苦手でした。中学校を 卒業するとき成績は後ろから2番目でした。中学生の頃は母親に少年少女小説を読んでもらいましたが母親も農業で夜は 疲れていて読みながら眠り込む始末でした。中卒後3年浪人して盲学校に入学それから大学と大学院で経済学と哲学を 勉強し盲学校の教師を17年して退職。60歳で○市に転入。8年間は自力生活。今は生協と福祉タクシーを利用して、あん摩も しながら読書(聴書?)に励んでいます。皆様の朗読エネが私を支えています。多謝」 あゆみ 【10月】 1日 音訳基礎講習会開講 10日 点訳技術講習会開講、見学:宇治市視覚障害者教室 17日 消防避難訓練 23日 全視情協大会(〜24日、徳島市:竹下、岡田、久保田、林田、奥野、福田、江島) 31日 わろう座映画体験会「奇跡のリンゴ」、見学:佐賀県立盲学校 予定 【11月】 8日 オープンデー(館内見学日、要予約)、ライトハウス祭り(鶴見事業所) 11日 見学:養成部歩行訓練課程 14日 ふれあい文庫30周年式典(竹下、奥野) 15日 見学:タイ児童良書提供事業一行 22日 振替休館(点字製作係と5階サービス部、4階会議室、3階総務係は開室) 29日 バリアフリー映画会&トークショー 「天地明察」(玉水記念館) 編集後記 生来早口な上、発声・滑舌も拙劣。にも関わらず、10月の全国大会で立場上、司会や挨拶をしたのですが、録音を 聴いて赤面の至り。再生速度を上げると、他の人の声は明瞭なのに、私の声は自分自身でも何を言っているかさっぱり 聴き取れないのです。これでは特に音訳講習会の開講式の挨拶は自粛すべきですが、そういう訳にもいかないので、 せいぜい「私のようなしゃべり方では音訳者になれません」という悪い見本にするしかないですね(竹) =ONE(ワン) BOOK(ブツク) ONE(ワン) LIFE(ライフ) 2014年11月号= 発 行 社会福祉法人日本ライトハウス      情報文化センター(館長 竹下 亘) 住 所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp 表紙絵 武部はつ子 発行日 2014年11月1日 定 価 1部100円 年間購読料1,000円