日本ライトハウス情報文化センター        「ワンブックワンライフ」2013年11月号  <表紙イラスト:(武部はつ子画)>女の子が落ち葉を掃き集めている。竹馬に乗った男の子がその上を「上陸作戦開始・・・!」と歩いて行く。「あ〜、せっかく集めたのに・・・」と女の子。傍らで男の子が脱いでいた片方の靴紐をくわえて様子を見守る犬。 (目次) ◇掲示板 ◇センターのページ   機器展に加えて iPad 体験会とミニステージが大盛況!「日本ライトハウス展2013」に1,269人が来場  【あの人に会いたい】 福地 健太郎さん スーダンの視覚障害者の教育環境向上をめざして ◇報告のページ             《掲示板》 ○奈良の壺阪寺と「慈母園」へバスツアー  先月号でもご案内しましたが、今年度のボランティア友の会の施設見学会は、わが国初の「盲老人ホーム」として、奈良県の西国観音霊場壺阪寺境内に開設された「慈母園」をバスツアーを兼ねて見学します。つぼさか茶屋でお食事の後は、初冬の壺阪寺を散策します。まだまだ座席に余裕がありますので、ぜひご参加下さい。  日時 12月9日(月)9時〜16時  集合・解散 JR大阪駅前(事前に地図を配布)  定員 45人  費用 3,000円(旅費の一部を友の会が負担) *申込時にお支払いください。  申込 3階総務係まで。 ○“触る文化と点字”をテーマに講演会  東京の視覚障害者支援総合センターが主催する「点字の普及啓発と資質向上のための講演会」(当センター後援)が大阪市西区で開かれます。講演は、宮城教育大学教授 長尾博氏の「触る文化としての点訳に気づいてください」、日本点字図書館職員 松谷詩子(うたこ)氏の「視覚障害者と点字〜文字を持つことの意義を問い直す」です。  日時 12月21日(土)13時から  場所 玉水記念館3階会議室  参加費 1,000円(資料代)  事前申込不要。場所などのお問い合せは、当館総務係(電話06-6441-0015)まで。 ○11月7日(木)、避難訓練にご参加ください  13時から当館で火災を想定した自衛消防訓練を行います。当日在館の皆さんは、いざという時の安全のために、ぜひ訓練にご参加ください。 ○11月23日(土)は全館休館  11月23日(土)は祝日のため、全館休館します。  なお、11月2日(土)は3日の日曜日が祝日と重なるため、製作・貸出部門を振替休館するのが通例ですが、利用者とボランティアの皆さまのご迷惑を軽減するため臨時開館します。 ○本誌の編集・印刷が変わりました  今月号から本誌の編集・印刷を自前で行うことにしたため、体裁が変わりました。読みにくい点は改善に努めますので、ご了承ください。 《センターのページ》      機器展に加えて iPad 体験会とミニステージが大盛況!      「日本ライトハウス展2013」に1,269人が来場    当法人では、社会福祉法人読売光と愛の事業団との共催で、10月5日(土)・6日(日)、難波御堂筋ビル7階ホールで、西日本最大級の視覚障害者用具・機器展「日本ライトハウス展〜全国ロービジョンフェア2013」を開催しました。通算16回目となる今回は全国から35社・団体が出展。会場は2日間とも賑わい、入場者は1,269人に達しました。中でも、今人気のiPad体験会はほぼ満員。多彩なテーマのミニステージも盛り上がり、新しい発見と出会いの場となりました。(総務係 林田 茂)      電子白杖など多種多彩な機器が出展  メインとなる用具・機器の展示では、新製品を含め、目の見えない方・見えにくい方などが音声・音響や点字・触覚、見やすい表示などで使いこなすことのできる多種多彩な製品が多数出展。便利グッズ、デジタル録音再生機、拡大読書器、活字文書読み上げ装置、遮光眼鏡、白杖、歩行補助用電子機器、街中や施設内の音声案内装置、ユニバーサルデザイン家電、音声読み上げ機能付きテレビ、地デジ放送を聴けるラジオ、パソコンソフト、点字器具、点字プリンター、点字ディスプレイ、点字・録音・墨字図書、盲導犬ブースなど、35社・団体のブースが終日人だかりとなりました。  今回、特に話題になった商品には、以下のようなものがありました。  *国内で初めて製品化された障害物センサー内蔵の電子白杖。重さは世界最軽量270g。  *FM・AMラジオと地上波デジタルテレビの音声を受信できる音声ガイド付き録音機。  *新聞、雑誌、本や手書き文字も音声で読み上げる活字文書読上げ装置。      iPad体験会〜遠くは東京や福岡から参加  1回50分・定員10人のiPad体験会には、2日間で95人の方が参加されました。体験会では、iPadのアクセシビリティー機能「画面の拡大」と音声で読み上げる「ボイスオーバー」を用いた使い方を紹介した上で、ホームページの閲覧、音楽再生、画面を拡大しての読書、また声で操作するSiriを使っての天気予報の検索やタイマーのセットなども体験。参加者は初めての方が多く、実際に画面を触るだけで操作できること、画面情報が理解できることを実感していただき、「とても参考になった」「時間の無駄なく分かりやすかった」などの評価をいただきました。      ミニステージに“熱中人”が続々登場  日ラ展恒例のミニステージでは、いま活躍中の“熱中人”に続々と登場してもらい、ホットな情報や話題を提供しました。   関西で活発な活動を行っている「きんきビジョンサポート」は「交通機関に潜む危険〜電車編」と題して、クイズ形式でわかりやすい発表を披露。また、大阪府立中央図書館の杉田正幸氏と当館久保田文は「電子書籍と視覚障害者のアクセス」をテーマに、最新情報てんこ盛りのトークショー。京都府立盲学校の岸博実先生は「盲教育史の玉手箱」と題して、歴史に埋もれた先人達のとっておきの事実を掘り起こし、語ってくださいました。スーダンの視覚障害者支援を行っている福地健太郎氏は実体験を映像や写真を交えて講演。さらに当館でお馴染みの邪乱亭地車、茶渋家呆っ人のお二人による落語で会場は両日ともどっと湧きました。  また今回は当館でも、特に今が旬の「シネマ・デイジー」の発表と、6月のわろう座でも好評だった書評合戦「ビブリオバトル」を行いました。ビブリオバトルは“本を通して人を知り、人を通して本を知る”をキャッチフレーズに、発表者から発表された図書の中で誰の本が読みたくなったかを会場の観覧者が投票してチャンプ本を決める企画です。両日3人の方が白熱の舌戦を行い、会場は大いに盛り上がりました。      アンケート中「初めて」の来場者が43.3%  今回は、初めての方や当館をあまり利用されていない方の来場が非常に目立ち、それはアンケート結果(回答455人)にも、以下のように如実に表れました。 ◆今回の展示会について  「とてもよかった」「よかった」合計321人(70.5%)  「ふつう」97人(21.3%)  「悪かった」11人(2.4%) ◆ライトハウス展の来場について  「初めて」197人(43.3%) 内訳 全盲33人、弱視59人、晴眼102人 ◆日本ライトハウスのご利用について  「ほとんど利用したことがない」109人(24%) 内訳 全盲20人。弱視36人、晴眼51人  「どんな施設か知らない」48人(10.5%)      次回もご来場・ご協力をお願いします  おかげさまで、当日は多くの皆さまに満足、安心してご来場いただくことができました。特にご協力くださったボランティアの皆さまに心からお礼申し上げます。      【あの人に会いたい】 福地 健太郎さん      スーダンの視覚障害者の教育環境向上をめざして 2歳で失明し、高校まで大阪の地域校で教育を受けた福地健太郎さんは、教育・視覚障害・国際協力の分野を学びたいと筑波大学へ進みました。大学で始めたブラインドサッカーを通して、スーダン出身のモハメド・オマル・アブディンさんに出会い、支援のきっかけが生まれます。その後、北アフリカのスーダン共和国の首都ハルツームへ渡り、盲学校に通えない子どもたちへ点字の講習、盲学校での英語指導等のプロジェクトに関わってきました。英国の大学院を修了し、9月に帰国したばかりの福地さんに、日本ライトハウス展の打ち合わせ前にお話を伺いました。(加治川千賀子)      「スーダン障害者教育支援の会」を設立  アブディンさんと知り合い、スーダンでは点字が普及しておらず、自分で本すら読めない状況を聞かされ、資金集めに学園祭でジュースを売り、点字器を送るなど、二人で支援を始めました。しかし、もっと持続的な支援をしたいと、同じ志を持つアブディンさんら4人で「スーダン障害者教育支援の会」を立ち上げ、2008年NGOとして認可されました。そこで、高等教育機関であるハルツーム大学に「視覚障害者パソコン支援室」を作り、アラビア語の画面読み上げソフトが入ったパソコンを5台寄贈。学生や卒業生のパソコントレーニングを行いました。      アラビア語点字の普及活動に手応え  スーダンには盲学校が3校(国立1、州立2)しかなく、田舎では普通学校にもなかなか入れず、コーラン学校に入学する視覚障害者が多いそうです。イスラム教のコーランを勉強し、大学を出ると、イスラムの教師になって生活することができるからです。福地さんは「これまでコーランは聴いて覚えるしかなかったが、ここで点字の講習会を開き、文字を得たことは内容を理解する上でとても役に立ったようだ」と活動の手ごたえを感じています。講習会に使うアラビア語の点字教材は盲学校の先生が手作りし、盲学校の卒業生が写し書きしてくれたそうです。      盲学校での支援  スーダンでは親戚同士の結婚などで生まれてから視力が落ちてくる子どもも多く、途中で盲学校へ移ってくる子どもたちのために「準備クラス」が用意されています。ここで、まず点字などを学び、試験を経て、学力に見合う学年に振り分けていきます。これまで、教科書は10人のクラスにたった3冊しかなく、福地さんは先生から「全員の分を用意したい」と相談を受けます。そこで、日本のボランティアに英語点訳の協力を依頼、現地でプリントアウトし、全員が教科書を手に勉強できる環境を作り上げたそうです。盲学校は小中学校の8年制で、8年生が終わると1クラス10人ぐらいで高校受験の準備をします。福地さんは、ここでボランティアとして英語の指導も体験しました。      スーダンの人々や生活について  「人と人とのつながりは非常に強く、仕事が終わると自然と誰かの家に集まり、いろんな話をしました。また、チームに所属してサッカーも楽しみましたが、地道な基礎練習より、試合形式を好み、とてもパワフルでした。」  ストレスに感じたことは、「道路に歩道と車道の区別がない所や、未舗装の道路は大きな穴があったりして、外出には車やバスを使うか、誰かと出かけなければならず、日本のように一人で自由に移動する機会が奪われたことです。」  今後については、「日本で仕事をしながら、スーダンの支援も続けていきたい。」静かな語り口の中にも熱い思いが伝わってきました。ますますのご活躍を願っています。(福地さんは11月からJICA北海道に就職しました。)            《報告のページ》 ○朗読録音奉仕奨励賞を当館の6人が受賞  鉄道弘済会の今年度第43回朗読・録音奉仕者表彰で、朗読録音奉仕奨励賞が発表。当館では岡加代子さん、小倉玲子さん、阪本美紀さん、中山道子さん、松浦洋子さん、胸永幸子さんが受賞され、10月15日、館内で授与式を行ないました。「奨励賞」は活動歴5年未満で、積極的に取り組んでいる方が対象です。お祝い申し上げるとともに、今後のさらなる活躍をお願いいたします。 ○Web図書館管理システムを導入  当館では、利用者の氏名、住所、電話番号などを独自の「図書館管理システム」に登録して貸出サービスを行ってきましたが、本年11月から、全視情協が運営する「サピエ図書館」内の「Web図書館システム」を利用し、インターネット上で作業することになりました。これにより、当館所蔵や他施設から借りた図書の貸出作業が効率化され、サービスの向上が期待されます。 ○文科省委託・教材普及推進事業が大詰め  当館が今年度、文部科学省から受託した特別支援教育研究事業「障害のある児童生徒のための教材普及推進」のモニタリング作業が始まりました。視覚支援学校、養護学校、地域の学校等6校で学ぶ視覚障害児童生徒13人(小学生4人、中学生5人、高校生4人)を対象に「音訳」教材を製作し、点字・拡大文字教科書と併用して、理解が進むかどうかを評価してもらうというものです。音訳教材の製作には、当館の音訳ボランティアの方々にご協力いただき、点字・拡大文字教科書12タイトルの一部を「音訳」。グラフ、地図、イラストなどの「音訳」は、児童生徒だけでなく、担当の教員からも高い評価を受けています。     あゆみ 【10月】 1日 音訳基礎講習会開講 2日 見学:シロアム視覚障害者福祉館 5日 日本ライトハウス展2013(〜6日)  11日 点訳技術講習会開講 15日 見学:台湾視覚障害者施設訪問団 17日 全視情協大会(〜18日、横浜市)、見学:大阪府特別支援学校保護者会 19日 オープンデー(館内見学日) 23日 見学:近畿盲学校PTA連絡協議会     予定 【11月】 7日 ボランティア友の会世話人会、自衛消防訓練 8日 見学:猪名川町音訳「リヴィエール」 9日 オープンデー(館内見学日、要予約)、ライトハウス祭り(鶴見事業所) 14日 対面リーディングVの集い 20日 見学:Vグループ「ステッキ」 22日 見学:四條畷市点訳V「あゆみ」 編集後記  日ラ展で、高齢の女性から感謝の 言葉をいただきました。「目の病気で悩んでいたが、2008年、そごうの日ラ展に来て本当に救われました」と。ところが、喜んだのも束の間、「その後、いつどこであるのか分からず来られなかったが、今回、新聞で読んでまた来ることができました」と聞いて愕然。日ラ展に来ながら5年間も当館を知らずに過ごして来られた、とは。もっと出会いを大切にしなくては!(竹) =ONE(ワン) BOOK(ブツク) ONE(ワン) LIFE(ライフ) 2013年11月号= 発 行 社会福祉法人日本ライトハウス      情報文化センター(館長 竹下 亘) 住 所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp 表紙絵 武部はつ子 発行日 2013年11月1日 定 価 1部100円 年間購読料1,000円