日本ライトハウス情報文化センター        「ワンブックワンライフ」2014年1月号  <表紙イラスト:(武部はつ子画)>お屠蘇を前にほろ酔いで寝そべっている馬。晴れ着で着飾った男の子と女の子が「きみの年だよ 走ってよ〜」と話しかけるが、馬は頭を前足で支えながら「今日は勘弁ね・・・」。   (目次) ◇掲示板 ◇センターのページ   新年のご挨拶〜2014年に“駆ける”夢と抱負 ◇ボランティアのページ 日本初の養護盲老人ホーム「慈母園」を訪問して ◇報告のページ             《掲示板》 ○ボランティア交流会を来年3月7日開催  毎年恒例の「ボランティア友の会交流会・総会」を下記の通り、開催いたします。ぜひ、ご参加ください。  日時 2014年3月7日(金)10時〜15時  場所 玉水記念館(肥後橋駅8番出口)  ゲスト 前川裕美さん  幼い頃から音楽に親しまれ、高校から音楽科へ。11歳で網膜色素変性症と診断され、徐々に視力を失う中、海外で語学や音楽を学び、2004年から全国的に音楽活動を展開。当日は素敵なピアノの弾き語りとトークをお届けします。おいしいお弁当を囲んだ後はお楽しみのバザーを行います。売り上げ金はボランティア友の会の貴重な活動資金となります。ご提供いただけるもの(生モノを除く)がありましたら、3階総務係までお寄せください。 ○日本ライトハウスバリアフリー映画会 「南極料理人」のご案内  極寒の南極基地にやってきた8人の観測隊員。約1年半、遠く離れた日本に家族を残し、隊員たちは悪戦苦闘しながら次第に絆を深めていく。  映画の主人公(堺雅人)のモデルとなった西村淳さんのトークショーもあります。  日時 2月22日(土) 12時30分〜16時30分  会場 玉水記念館大ホール  参加費 無料(要電話予約)  申込 先着200人。視覚障害者のお申し込みは1月22日(水)から、晴眼者のみのお申し込みは1月28日(火)から。当館総務係(電話06-6441-0015)にお申込みください。 ○新年のボランティア活動は1月7日(火)から  新年の仕事始めは1月6日(月)ですが、法人行事のため開館は午後2時まで。ボランティア活動とサービスは1月7日(火)から再開します。また、1月11日(土)はハッピーマンデーの振替のため、ボランティア活動はお休みしますが、7、5、4、3階は開館します。 《センターのページ》        新年のご挨拶〜2014年に“駆ける”夢と抱負  新年おめでとうございます。旧年中、皆様に頂いたご協力とご支援に心から感謝するとともに本年がより良い年となりますようお祈り申し上げます。午駆ける2014年。年頭のご挨拶に代えて当館の管理職4人から、今年の抱負とこれからの夢をお伝えします。      国連障害者権利条約の理想の実現に向けて                      館長 竹下 亘  新年最大の慶事は、「国連障害者権利条約」が新年早々わが国で批准されることです。権利条約では、障害のある人が点字、触覚、拡大文字、マルチメディア、音声等々、あらゆる形態のコミュニケーション手段を選び、「表現と意見の自由、及び情報の利用」の権利を持つことが宣言されています。また、国と社会には「一般の情報を、さまざまな障害に応じて利用可能な形態と技術で、タイムリーかつ追加費用なしで提供する」ことが求められています。当館では権利条約に謳われた“情報共有社会”の実現を目指して、さらに努力して参りますので、本年もいっそうのお力添えをお願い申し上げます。      広げよう、「触れるリアリティー」の世界                      副館長 福井哲也  インターネットの発達で、世の中には画像情報が溢れています。動画の流通量も飛躍的に増えました。見える人たちは、画像情報により世界の様々な事物を“手に取るように”知ることができます。これに対し視覚障害者は、対象物を本当に手に取らなければ、その姿を心に刻むことができません。これは大きな障壁といえます。同時に、書物や伝聞だけの知識に過ぎなかった物に初めて触れる瞬間、私たちはこの上ない感動を味わいます。近年、展示物に触れられる博物館や美術館が増えました。日本ライトハウスでも、面白い立体模型の紹介や触れて楽しむ企画、そして「ここに行けばこんな物に触れられる」という情報の発信などに、もっと力を注ぎたい、それが私の夢です。      時にはサラブレッド、時には農耕馬のように                      サービス部長 岡田 弥  昨年は利用者の依頼によるテキストデータ製作やシネマ・デイジー(音声解説付き映画のサウンドのみ)の貸し出しという先進的な取り組みを実現できました。今年は用具販売で懸案になっているマニュアルの整備や動画による使用法の紹介などに取り組めればと思っております。  人件費補助の削減、サピエの運営資金不足と何かとお金に悩まされる昨今ですが、できることを着実に実行して、前へ進みたいと思います。  今年は午年。ある時は颯爽と駆けるサラブレッドのように先頭を切り、またある時は地に足をつけて重い荷物を運ぶ農耕馬のように、視覚障害者の情報環境を支えていきたいものです。      想像と挑戦、そして双方向性を合言葉に                      製作部長 久保田文  今年は、国連障害者権利条約の批准により、いよいよ国や自治体による合理的配慮の提供のためのガイドラインが整備される重要な年。目の見えない、見えにくい方々の情報提供サービスの拡充に寄せる期待も大きくなっています。  点字、音声、対面リーディング、マルチメディアデイジーとテキストデイジー、音声解説……ボランティアの方々のご協力により、当館は多様な形態で情報を提供することができます。  この変革の年。製作部は、当館を支える土台として、想像(imagination)と挑戦(active)、そして双方向性(interactive)を合言葉に、力強く大地を蹴って駆けていきたいと思います。 《ボランティアのページ》        日本初の養護盲老人ホーム「慈母園」を訪問して                  録音製作係ボランティア 横山 時子     景色に溶け込む佇まい「慈母園」  今年度のボランティア友の会施設見学会は、12月9日(月)、西国霊場第六番・壷阪寺境内にある養護盲老人ホーム慈母園を訪問しました。総勢39人(ボランティア32人、職員7人)を乗せたバスは一路、初冬の壷阪寺へ。到着して驚いたのは山の斜面に建つ大観音石像。思わず合掌。慈母園は和風を基調にした3階建ての落ち着いた佇まいで、山の景観とマッチして絵になるようでした。     喜多施設長のお話  慈母園は「思いやりの心広く深く」の理念のもと、昭和36年、日本初の盲老人ホームとして開園しました。満65才以上で視覚障害があり、経済的に恵まれていない、身寄りのない方が対象で、定員50人に対して46人(平均年齢83才)の方が入園されています。現在、入園待機者が12人おられ、4室の空きがありながら入園できないのは、各市町村の考え方に温度差があり、その壁を越えることが難しく、当事者の希望になかなか添えないのだそうです。  地域の小中高の生徒さんが定期的に訪問し、私たちが今年58番目。そのせいか利用者の方は対応に慣れておられるとのこと。また、全国の行政や施設関係の方が研修に来られ、利用者に対するケアの方法や職員の考え方、傾聴の姿勢など、ノウハウを学んでいかれるそうです。  「本年(2013年)4月、近畿圏で唯一未設置だった滋賀県に盲老人ホームが開園したので、この輪を全国に広めていきたい。そして、慈母園として何を発信していかなければならないか、職員共々、具現化に向けて役割を果たしていきたい」と熱い思いを語ってくださいました。     利用者さんにお会いして  いよいよ4〜5人のグループに分かれて利用者さんと交流。私たち(ボランティア4人、職員1人)はMさんのお部屋を訪問。入園して13年目、白内障の手術後、徐々に見えにくくなり、失明する前に入園されたそうです。  日常生活は朝6時半の見回り後、7時半の朝食までラジオ体操をしたりと全く自由な生活。買い物や外食ができる日も設定されており、週1回の出張販売や歯科診察、病院の予約、整髪はもちろん、2ヶ月に1回移動美容院(バス)も。  クラブ活動(俳句、詩吟、裁縫、華道、音楽等)が盛んで、ボランティアの歌い手さんが来るカラオケは大人気。(道理でホールにはカラオケボックス、大きなスピーカー、ピアノがあったっけ)。Mさんは裁縫クラブで手縫いした色合いのおしゃれなベストやブラウスを披露してくださいました。  12人で運営する自治会も活発で、月1回の役員会・献立会で要望を伝えると、職員の方が可能な範囲で改善してくださるそうで、コミュニケーションを密にすることで、利用者同士や職員との信頼関係がより強くなっているように感じられました。Mさんは何の心配もなく現在の生活に満足されているご様子でした。     壷阪寺境内を散策  つぼさか茶屋で精進料理風弁当や胡麻豆腐に舌鼓を打ったあと、まだ紅葉の残る山内を三々五々散策に。西国観音霊場・壺阪寺はお里・沢一の浄瑠璃「壷阪観音霊験記」で有名な、眼病に霊験あらたか、目の観音様として広く信仰を集めています。境内には交流のあるインドから招来した石彫仏やレリーフが数多く見られます。山内は静かで、落葉を踏みしめて歩くのもまた風情がありました。ほっこりとした優しい気持ちになれた1日でした。              ≪報告のページ≫ ○木塚泰弘前理事長が随筆集を出版  昨春、当法人理事長を退任した木塚泰弘氏が随筆集「目が見えなくなって見えてきたこと」を出版されました。17歳で失明後、60年間に書きためた数多くの随筆や対談、取材記事を3章に分けて編纂。盲教育や視覚障害者福祉、ユニバーサルデザインなどマルチな研究・実践成果が網羅され、常に「楽しむもん」を信条にしてきた前向きな生き方に貫かれた本です。小学館スクウェア発行、373頁、1,575円。購入は書店で。 ○「さわれる冨獄三十六景」を製作・寄贈  水戸市の常磐大学コミュニティ振興学部の学生で作るTEAM MASA(中村正之教授)は、原画をデジタル処理で4画面に分解し、立体コピーで触って観られるようにした「さわれる冨嶽三十六景」(46作品)を製作し、ご寄贈くださいました。小原二三夫職員が助言したのが縁で監修を担当。2月から当館で鑑賞会を開く予定です。写真は「神奈川沖浪裏」の立体コピーで、左上:富士山、左下:舟、右上:浪と舟、右下:完成の順に触り、イメージしていくことができます。 ○ボランティアの吉田弘子さんがご逝去 録音製作係のボランティア吉田弘子さんが昨年11月、ご病気のため急逝されました。31年前、録音作業から活動を始められ、オープンテープの編集を経て、最近はデイジー編集・校正作業にご尽力。昨年3月に30年表彰、9月に鉄道弘済会の朗読録音表彰を受賞され、亡くなる直前まで毎週のように来館され、活動されていました。長年に亘るご協力に感謝し、心からご冥福をお祈り申し上げます。 ○近畿視情協職員ボランティア研修会開催 今年度の標記研修会が12月5日、玉水記念館で開かれ、130人が参加。音訳の校正やまんが音訳、「さわる発見」と題したワークショップなど充実した研修となりました。詳しくは次号でご紹介します。      あゆみ 【12月】 9日 V友の会施設見学会(奈良・慈母園) 14日 オープンデー(館内見学日) 25日 サービス最終日 27日 仕事納め      予定 【1月】 6日 仕事始め(法人新年互礼会) 7日 ボランティア活動・サービス再開 9日 ボランティア友の会世話人会 11日 振替休館(3、4、5、7階は開室) 18日 オープンデー(館内見学日、要予約)      編集後記 シネマ・デイジーがサピエでもダウンロードができる運びとなりました。利用者の方が本と同じように映像を手軽に楽しめ、今後全国の施設にも浸透し展開されます。さらなる期待が広がると思うと涙が出るほどうれしいです。新しいモノを造るのは大変ですが、関係した職員にはワガママを聞いてもらい、職員一致団結して形にしていくことができました。共同事業として進めてきた日本点字図書館と全視情協のご理解、相談にのっていただいた専門家の方、そして製作を支えてくださっているボランティアの皆さまに最大級の感謝!!(茂) =ONE(ワン) BOOK(ブツク) ONE(ワン) LIFE(ライフ) 2014年1月号= 発 行 社会福祉法人日本ライトハウス      情報文化センター(館長 竹下 亘) 住 所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp 表紙絵 武部はつ子 発行日 2014年1月1日 定 価 1部100円 年間購読料1,000円