日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2024年3月号   <<表紙イラスト>> 花粉症のイラストです。 町中を花粉が飛び回っており、マスクを着けた人々が息苦しそうに歩いています。スーツを着た男性はマスクが顔から離れるほどの勢いのくしゃみをしています。 イラスト中央の女性は勇ましい表情で、右手を握りこぶしにして大きく突き上げ、花粉を追い払っています。女性の隣にいる眼鏡の男性は困った表情で花粉を払っています。 振り払われた花粉達は目を渦巻き模様のようにぐるぐるにして宙を漂っています。    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●センターの頁(2〜4頁)   ●感謝報告(5〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆点訳ボランティア養成講習会にご参加を!  2024年度の「点訳ボランティア養成講習会」を5月から開講します。“視覚障害者の唯一の文字”である点字を習得して、さまざまなジャンルの書籍の点訳に挑戦してみませんか。  日時 5月14日〜7月23日の毎週火曜日、13時〜15時。初級修了後、試験を経て中級を9月3日〜12月10日に開催。  受講料 無料(テキスト代のみ自己負担)  申込締切 4月25日(木)  定員 10人。  説明会と事前試験 4月30日(火)13時〜  お申込みは、実施要項をご請求の上、点字製作係(電話06-6441-1028)までどうぞ。  ◆第37回専門点訳・音訳講習会を開講  毎日新聞大阪社会事業団と当館の共催で、来年度も多彩なテーマの専門講習会を開講します。今後、本誌等に募集記事を掲載しますので、実施要項をご請求の上、お申し込みください。 ◆専門点訳講習会  (1)はじめての教材コース=問題集や副読本に必要な理科・数学の点訳の概要、教材の製作のポイントなどを講義。日時は8月24日・31日・9月14日(土)の10時〜15時。定員15人。最終回は「点字教科書・教材」をテーマとしたシンポジウム(定員40人)とし、教員、視覚障害児童・生徒の支援員、施設職員などのご参加を募ります。  (2)英語コース=教材等で多く使用される英語のしゅくやくや、日本語の一般書の中での英語の点訳方法について講義。日程は5〜7月の木曜日の内7日間(調整中)、10時〜12時。定員20人。 ◆専門音訳講習会  (1)図表コース=原本に即した写真・図・表等、視覚的資料の音訳方法を講習。7〜9月の水曜日の内6日間(調整中)、10時〜12時。定員15人。  (2)小説の読み方コース=小説の読み方の基本を講習。@6月21日(金)、A6月26日(水)の2回開講。定員は各回12人。 ◆電子書籍講習会  テキストデータ作成コース=OCRソフトウェア「読取革命」とテキストエディタ「Mery」を使用して書籍のテキストデータ化について講習。@9月18日・25日(水)、A10月18日・25日(金)の2回開講。定員は各回10人。  ◆まだ間に合います!ボランティア交流会 今年度のボランティア交流会が3月14日(木)に近づいて来ました。プログラムは、長年活動されている方々への感謝式典、竹下館長の退任記念講演、お弁当(1,000円)を食べながらの懇談、ビンゴゲームやバザーなど盛り沢山。まだ間に合いますので、ぜひお申し込みください。  ◆「近畿視情協」51年の歩みが1冊に  昨年3月解散した近畿視情協(近畿視覚障害者情報サービス研究協議会)の歩みをまとめた「本と視覚障害者をつないだ半世紀」が出版されました。近畿視情協は1972年、当館をはじめ4館でスタート。最盛期には近畿の点字・公共図書館とボランティア50施設・団体が加盟し、読書バリアフリーの実現を目標に、製作技術やサービスの向上に取り組んできました。当館のボランティアの方々も、毎年12月の「ボランティア・職員研修会」や録音雑誌の共同製作などに参加された方が少なくないと思います。本書では、運営や活動に携わった16人の手記と、2007年に発行され、今も有用な「視覚障害者サービスマニュアル〜Q&A集」の抜粋、51年間の活動年表を収めています。読書工房発行。293頁、税込3,850円。ご購入はインターネットで。  ◆菊棚月清(きくたな げっせい)氏を偲ぶ演奏会にご招待  月清 古曲保存会主催の「第48回地歌と語り〜来し方を想う そして出発」が3月31日(日)13時30分から国立文楽劇場で開催。主催者のご厚意で、視覚障害者の方やボランティアが招待されます。この演奏会は、昨年3月に亡くなられた地歌箏曲演奏家の二世・菊棚月清氏と縁のある方々が月清氏の芸術と人柄を偲び企画したもので、半太夫(はんだゆう)の「花筏」や月清氏の「彩雨(さいう)」他を演奏。月清氏の在りし日の映像も紹介されます。招待希望者は、当日、窓口で「日本ライトハウスの案内で来ました」と言っていただければ、入場出来ます。お問合せは、月清 古曲保存会(電話06-6484-7118)まで。    <<センターの頁>>(2〜4頁)   ●館長退任のご挨拶〜お一人お一人との出会いと親交に感謝  館長 竹下 亘  いつも当館と共に、視覚障害の方々への情報提供を支えていただき、ありがとうございます。  さて、私は本年3月末で当館の館長を退任することになりました。振り返ると、私は学生時代に始めた点訳ボランティア活動が縁で1985年、毎日新聞点字毎日に入社し、8年勤めた後、1993年、当館に転職し、以来ほぼ31年間勤務させていただきました。  この間、本誌の編集も含め総務係の仕事をしながら、パソコンサポートボランティア講習会の開講、日本ライトハウス展の開催、エンジョイ!グッズサロンの開設、IT講習会の実施、アジアをはじめ世界各国の視覚障害者との交流、当館の建て替えなどに携わりました。そして、2012年に館長就任後は、全視情協(全国視覚障害者情報提供施設協会)の理事長 等も兼務し、読書バリアフリー法の推進やサピエ図書館の発展に関わることが出来たのは本当に幸いでした。  けれども、この31年間で一番幸せだったのは、数え切れない程の利用者やボランティアの方々との貴重な出会いを頂き、親交を深められたことでした。その中には、私の至らなさからご迷惑をかけた方々や出来事もあり、今でも思い出すと冷や汗が出ますが、それらも含めてお一人お一人との出会い、一つ一つの出来事が私の人生のかけがえのない一部となっています。これまでご指導やご支援を頂き、親しくお付き合いくださった皆様に心からお礼申し上げます。 (写真=両腕に、大きなくちばしを持つ鳥「オオハシ」を載せてはしゃぐ竹下館長。神戸花鳥園にて撮影。)  4月からは、主に鶴見区の法人本部で、常務理事として勤務する予定です。当館の館長は、現副館長兼製作部長の久保田 文(くぼた あや)が引き継ぐ予定ですので、安心していますが、私も当館をバックアップして参りますので、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。   ●「知る」から「伝える」へ〜視覚障害者と歩んだ日々(退職のご挨拶)  加治川 千賀子  「視覚障害」の言葉も知らない30代に点字と出会い、点訳に夢中だった私。点字を使わない中途視覚障害者が話された「視覚障害の生活を知ってください」が転機になりました。視覚障害者とIT講習会、視覚障害者主催の行事に参加するようになり、そこで岡田 弥(あまね)さんはじめ、晴眼の先輩方に出会い、関わる上で大切なことを教わりました。  ご縁があり、2008年に情文 入職、総務係の楽しい思い出は、広報として「晴眼者に視覚障害者の生活を伝える」を考えた日々。そして、2016年に異動したサービス部では、「相談者に視覚障害者の経験談を伝える」。来館者と距離が近くなり、たわいない会話からも「次に伝えるべきヒント」をたくさんいただきました。  一方で、先人たちが社会参加を目指し繋いできた点字の歴史を紐解く度に、点字離れを歯がゆく感じた私でしたが、2019年ようやく中途失明の方に「点字を楽しく伝える」夢も叶い、その人が目指すQOL向上や社会参加につながり、続けていきたい活動です。  これまで支えてくださった皆様に感謝しながら、これからも一緒に歩んでいきたいと思います。ありがとうございました。 (写真=加治川さんの近影。当館3階のルイ・ブライユの立体画の前にて撮影。)   ●一ツ橋綜合財団のご助成で、視覚障害児・者の学びと読書を支援   今年度もMMD、シネマ・デイジー、点字教科書等を製作・提供   当館では、毎年、公益財団法人一ツ橋綜合財団から多額のご助成を受け、視覚障害者等の方々の学びと暮らしを支える先駆的な情報提供に取り組んでいます。今年度も、多くのボランティアの皆様のご協力により、マルチメディアデイジー(以下、MMD)図書・教科書、耳で聴く映画「シネマ・デイジー」、地域の学校で学ぶ視覚障害児童・生徒のための点字教科書・教材等を製作・提供することができました。2023年度の主な事業実績をご報告します。(製作部長 久保田 文)  ◆アクセシブルな電子書籍の製作・提供  *MMD図書(児童書・一般書) 11タイトル  *EPUB Media Overlays(MMDとほぼ同じ仕様)教科書 1タイトル  *テキストデイジー図書 34タイトル  *プライベート製作(テキストデータ) 18タイトル  小学生から大学生までの、墨字の図書を読むことが困難な子どもたちの就学・就労支援をテーマに製作しています。図・表・イラストには当館の視覚的資料の音訳技術を活かし、一部の本では本文の読み上げに合成音声も活用しながら、品質と製作効率を両立させています。ボランティアの皆様もご覧いただけますので、ご来館の際に8階・電子書籍ユニットにお越しください。 (写真=端末に表示されたMMD図書と原本「10代からのワークルール4」と「アルマの名前がながいわけ」)  ◆音声解説事業  *シネマ・デイジー 10タイトル  20人の音声解説ボランティアの皆様の協力により、耳で聴く映画「シネマ・デイジー」の製作・提供と、音声解説付き上映体験会「わろう座」を4回開催しました。  シネマ・デイジーのCD版の貸出とサピエ図書館からのダウンロードは大人気です。また、「わろう座」上映体験会も毎回、受付開始から1、2日で定員に達してしまう盛況ぶりです。  この他、大阪市中央区のバリアフリー上映会や、4年ぶりに開催された中山UD映画祭の企画・運営に関わり、多くの視覚障害者や市民の方々に喜んでいただきました。 (写真=当館4階で開催された「わろう座」の様子。室内前方の壁にプロジェクターで映像が映されている)  ◆地域で学ぶ児童・生徒の教科書・教材の製作  地域の小・中・高等学校に通う視覚障害児童・生徒のための点字教科書、副読本、定期考査等の製作・提供は、インクルーシブ教育を支える上で欠くことの出来ない事業です。しかし、安定的な製作・提供のための十分な予算化がなされておらず、未だにボランティアへの全面依存が続いています。  当館では、関係団体と連携して国・自治体に適正な予算化を求める一方、専任職員を配置して、文部科学省・自治体との連絡調整やボランティアのコーディネートを行い、約70人の点訳ボランティアの皆様のご協力により、年々増え続ける依頼にできる限り応えています。  今年度は、22人分の点字教科書・教材を製作しました。また、児童に豊かな情報を届ける点字児童雑誌『アミ・ドゥ・ブライユ』も創刊50号を迎え、全国45校の視覚支援学校と71人の愛読者にお送りしています。   ●点字の習得と普及に向けた積極的な取り組みに感銘   米国で開催の「Getting in Touch with Literacy」に参加して(2)   前号に続いて、2023年11月29日〜12月2日、米国フロリダ州で行われた「Getting in Touch withLiteracy 2023」に参加して印象深かった展示や発表をご報告します。(点字製作係主任 奥野 真里)  ◆地図拡大機能のある点図ディスプレイ  前回、「ミニオンズ」、「ピカチュウ」など日本から持参した点図に、参加者から高い関心が寄せられたとお伝えしました。それが頷けることとして、同時に開催された機器展示会場で点図ディスプレイが出展されていました。Monarchという端末で、大きさはB5サイズほど。実際に端末を使って地図を触ってみました。驚いたのは、詳しく知りたい地域を拡大して見ることができる機能があることでした。まず地図の概略を理解して、詳しく知りたい箇所をズームすれば詳細な情報が理解できるというもので、画期的と言えます。他にグラフも見せてもらいましたが、学習教材として有効だと思いました。ただし、点の大きさは1種類。日本のように3種類の点の大きさや点と点の間隔を工夫して細かな部分まで盛り込んでいる点図と比べると、大まかな図を表わすのに適しているようです。  ◆様々な点字ディスプレイや触覚教材の開発  点字習得に力点を置いた興味深い製品も多くありました。Taptiloという端末は、アルファベット文字を入力するとディスプレイに点字が表示され音声でも確認できるほか、ジャンボサイズの点字のブロックで形を確認することもでき、点字初心者がさまざまな形で点字にアプローチし、着実にアルファベットを学習できると思いました。 (写真=Taptiloの端末。9文字分の大きい点字のブロックがディスプレイの上部に並んでいる。)  点字楽譜を学習するためのアプリを開発している方の発表もありました。点字ディスプレイに表示される点字楽譜の中で知りたい音符のところをタッチすると、その音符の音が流れるというもので、これなら楽しく楽譜が学べるかもしれません。  他に、数学記号が墨字と点字で併記され、視覚障害者と晴眼者が共に学べる教本がありました。また、触覚学習教材として立体模型と平面図形をセットで触れるようになっていて、2次元・3次元のイメージをつかめる教材もありました。出典されていたのは魚やカエルで、理科が楽しく学べるかもしれないと思いました。全体的に、幼児・低学年の子どもたちをはじめ、点字に初めて触れる人たちに配慮された製品が多く見受けられ、点字を学ぶ人たちに楽しく第一歩を踏み出してほしいという熱意が感じられました。 (写真=丸太に乗っている斑点模様のカエルの模型。状況説明の点字の文章と一緒に展示されている。)  ◆点字への熱い思いを持ち続けて  視覚障害児が点字を習得する上でどのような学習が必要なのか、実際の取り組みを紹介する事例発表もありました。点字を読み取る時の手の動かし方や姿勢に着目した報告や、本人だけでなく家族や周囲の理解も重要だとする発表など、日本だけでなく他の国・地域でも共通のテーマが着目されていることに刺激を受け、共鳴しました。  ただ、英語と日本語とでは、どうしても言語の違いによる壁は越えられないのかもしれません。例えば、晴眼者がフルスペルの英語点字を学ぶ際、30分程度で覚えられるという発言がありました。  漢字という文字文化を持つ日本語には、同じ文字でも読み方が異なったり、意味のあるところで区切る分かち書きがあったりするなど覚えることも多く、英語と比較すると手軽さには欠けてしまうかもしれません。しかし、その日本語という言語の特性を加味して作られている日本語の点字の奥深さに改めて尊敬の念を深めました。  4日間という短い期間でしたが、今回の経験を今後の活動に生かすとともに、活用の形は代わっても、「点字」という文字を次世代に受け継いでいきたいという気持ちを強くしました。 【お詫び】前回のご報告の中で馬場洋子先生の所属が間違っていました。正しくは、神戸市立盲学校教諭です。お詫びいたします。   ●報告の頁(8頁)  ◆当館への経路に音響信号機とエスコートゾーン  淀屋橋交差点南西角のビル建設工事のため、淀屋橋駅から当館への最短経路だった4号出口が昨年12月から閉鎖され、6号出口が代替の出入口となりました。これにより、単独歩行の視覚障害の方の来館が心配されましたが、2月、以下の整備が行われました。@6号出口横から土佐堀通りを南へ渡る横断歩道に音響信号機が設置、A(土佐堀通り北側の歩道を歩いて来た場合に渡る必要のある)肥後橋交差点東詰の横断歩道上にエスコートゾーン(横断歩道上の点状ブロック)が設置。これらが迅速に整備されたのは、当館を利用されている視覚障害の方の働きかけと大阪市・府会議員のお力添えによるもので、感謝のほかありません。 あゆみ 【2月】 8日 見学:大阪医専 10日 見学:T眼科病院看護師 15日 見学:視覚障害生活訓練等指導者養成課程 17日 オープンデー(館内見学日、7人) 27日 見学:リハビリテーションセンター実習生 予定 【3月】 9日 オープンデー(館内見学日、要予約) 12日 ボランティア世話人会 14日 ボランティア交流会(玉水記念館、全館休館) 20日 全館休館(祝日) 27・28日 法人理事会・評議員会(当館) 30日 エンジョイ!グッズサロン休室(棚卸し) 編集後記 本誌の編集も今号で最後となりました。記事が足りなかったり、溢れたりしてウンウン唸ったり、ボランティアのお名前や日時を間違えて身の縮む思いをしたり、と思い出は尽きません。今後は読者として、館の活動と皆さんの活躍を見まもりたいと思います。(竹) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2024年3月号  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 かたおか朋子  発行日 2024年3月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円