日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2024年2月号   <<表紙イラスト>> 節分のイラストです。 女性が、色紙と輪ゴムで作った鬼のお面をつけています。もじゃもじゃのパーマヘアに一本のツノ、ギョロリとした目と大きく開いた口が印象的なお面で「悪い子はだれや〜?」と、眼鏡の男性をおどろかし、男性は慌てた様子。お面の女性は虎柄の服を持っていなかったのか普段着の上からヒョウ柄のタンクトップを着ています。    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●センターの頁(2〜3頁)   ●ボランティアの頁(4頁)   ●感謝報告(5〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆ボランティア交流会へご参加を!バザーもします  今年度のボランティア交流会は3月14日(木)、10時〜15時30分、玉水記念館で開催します。5年ぶりの1日開催のため内容は盛りだくさん。ぜひご参加ください。  主な内容 活動歴20年・30年の方への感謝状贈呈、記念講演「ボランティア活動90年の歩みとこれから」(竹下亘館長)、ボランティア友の会総会、昼食と懇談、受賞者のひと言、ビンゴゲーム、「みんなで合唱」、バザー。  参加申込は各係か総務係(電話06-6441-0015)まで。バザーの物品の提供もお願いします。  ◆音訳ボランティア養成講習会(3)を開講  当館の音訳講習会(2)の修了者、または既に音訳活動をしている方などを対象にした音訳講習会(3)を4月開講します。  講習内容 読み方の基本、記号・漢字・図・表などの音声変換処理、調査・録音の順序、録音ソフトRecdiaを使用した録音技術など。  日時 前期(講義)は4月3日〜7月17日(全15回)。中間試験を経て、後期(実習)は8月28日〜12月18日(全10回)の水曜日10時〜12時。  受講ご希望の方は、録音製作係(電話06-6441-1017、E-mail rec@iccb.jp)へ実施要項を請求の上、2月13日(火)までに申込みをお願いします。  ◆視覚障害の情報の窓口「シカクの窓」開設  全視情協は1月、「シカクの窓」(https://www.naiiv.net/)をインターネット上に開設しました。視覚障害の方だけでなく、家族や福祉関係者、支援者等、あらゆる人を対象に視覚障害に関する有益な情報と相談先などを網羅するポータルサイトで、メニューは支援・相談窓口、便利な道具・アプリ、生活の知恵、余暇・趣味、目の病気・医療、読書・サピエ、応援・寄付。災害時等の情報提供も主目的で、能登半島地震発生後は、被災者と支援者に役立つ情報を随時掲載しています。ぜひご利用、ご紹介下さい。  ◆2月の休館・休室について 2月8日(第2木曜)=エンジョイ!グッズサロンと図書貸出は書庫・在庫整理日で休室 2月10日(土)=製作部休室(12日月曜指定祝日の振替) 2月13日(火)=エンジョイ!グッズサロンと図書貸出は休室(12日月曜指定祝日の振替) 2月23日(金)=全館休館(祝日)    <<センターの頁>>(2〜3頁)   ●日本の児童・生徒の点字習得の現状と課題を発表   米国で開催の「Getting in Touch with Literacy」に参加して(1)  2023年11月29日〜12月2日、米国フロリダ州で行われたカンファレンス「Getting in Touch with Literacy 2023」に出張し、「全国視覚障害児童・生徒用教科書点訳連絡会」(以下、教点連)の事務局長として、日本の状況と課題について報告させていただきました(全視情協・サピエ事務局長の西村浩生(ひろお)氏と兵庫県立視覚特別支援学校教諭の馬場洋子氏も同行)。主に点字と触知の可能性を追究するこの大会は1995年から始まり、今回で15回目。欧米を中心に世界15ヶ国から視覚障害教育に関わる教員、コーディネイター、支援者、研究者等約300人が集い、11のセッションや展示会が行われました。その内容を2回に分けてご報告します。(点字製作係主任 奥野 真里)  今回は、12月1日のセッションVでおこなった私の発表をご報告します。演題は「日本における学齢期の子どもたちの点字習得の現状と課題(Current Status and Issues of Braille Acquisition for School-age Visual Impaired Childrenand Students in Japan)」。参加者は約30人。英文の画像資料を西村さんに操作していただき、発表しました。  ◆点字を衰退させてしまって良いのか!?  冒頭では、まず以下のような問題提起を行い、発表の趣旨を説明しました。  日本では医療の進歩や福祉機器類の発展、少子化等により、幼少期に視覚障害を負う児童・生徒が大幅に減少している一方、平均寿命の伸びに伴って、中途視覚障害者の割合が急増している。そういった中で、点字を学び、使用文字として読み書きする人は確実に減少している。  その主な要因は、この20年ほどの間にITによる音声メディアの日本語処理技術の目覚ましい進歩と、パソコンやスマホの急速な普及が上げられる。確かに新たな音声メディアやツールによって、視覚障害者の生活が豊かになったことは誰もが認めるところだろう。しかし、このまま点字使用者が減少していくことを放置しておいて良いのだろうか。とりわけ、学齢期における子どもたちにとって唯一の文字である点字を衰退させてしまって良いのだろうか。  この発表では、日本の視覚障害教育の現状に着目するとともに、学齢期の子どもたちの点字習得の現状を紹介し、点字の重要性と今後の課題についてふれてみたい。 (写真=発表の様子。奧野が立っている講演台の後方のスクリーンに演題の英文が表示されている。)  ◆日本の視覚障害教育の現状と教点連の活動  続いて本論に入り、まず視覚障害教育において世界にも誇れる日本の盲学校教育の歴史と、後に取り組まれてきたインクルーシブ教育の現状を紹介しました。特に、盲学校教育では視覚障害に特化した専門スキルや指導を積み重ねてきたこと、一方、地域の学校で目の見える児童・生徒とともに学ぶインクルーシブ教育の現場では、一人一人に点字習得の環境が十分行き届いているとは言えないということを説明しました。  そして、インクルーシブ教育を受ける子どもたちへの点字の教材を整えるために、2005年に発足した「教点連」の活動を紹介しました。  教点連の大きな役割は、数多くの教科書を全国の どのボランティアグループに製作してもらうか調整し、限りある人的資源の中で重複製作が生じないようにすること。また、専門点訳のスキルや、教育現場の最新の状況などを広く周知するために、セミナーの開催などをしています。  ◆日本の点字教科書における触図の活用  日本の教科書には、児童・生徒の学習意欲を引き出すために、ビジュアル化された表現が多く掲載されている。そのような内容を点訳することに点訳者はたいへん苦労している。日本では触図を簡単に描けるフリーアプリが公開されており、教科書点訳ではこのアプリが活用されている。触図を作成する際、墨字データをそのまま点図に置き換えるだけでは児童・生徒が触って理解することはできない。図そのものの大きさを拡大・縮小したり、線の違いを触覚で判別できるよう調整する必要がある。これらは一つずつ点訳者が考えながら判断しており、専門的スキルが求められる。  触図については、日本のエーデルという点図作成ソフトで作り、点字プリンターで打ち出したミニオンズやピカチュウ、アメリカの地図を会場で配布したところ、たいへん好評でした。  ◆筑波大学附属視覚特別支援学校の取り組み  日本の盲学校教育における点字習得の現状については、筑波大学附属視覚特別支援学校における小学部から高等部普通科までの点字習得の事例や取り組みを取材し、紹介しました。  中でも、目の病気が進行することを受け止め、弱視の段階から点字習得に励む生徒の紹介や、将来的に使用すると便利な機器・点字ディスプレイを導入した学習報告は、特筆すべき点だと感じています。しかし、高校を卒業する際は端末を返却し、自費で購入しなくてはなりません。その高額な機器の購入補助が得られるかどうかは自治体によってばらつきがあるため、手軽に入手できないのが大きな課題です。  ◆児童・生徒の点字習得の課題と改善策  最後に、今後の日本における点字習得の課題と改善策を3点にまとめました。  @日本ではこれまでボランティアの力を借りて視覚障害者の読書環境と学習環境が支えられてきた。しかし、このままの状況を維持していくことは難しくなってきている。特に、児童・生徒の教育に関わる部分については改善を図ることが急務である。AI技術を駆使して教材資料の点訳に活用できないかという議論もされているが、日本語特有の言語性質により誤変換や誤読が生じてしまい、AIの力だけに頼ることは難しい。また図や写真など視覚的資料をどのように表現するかの判断は点訳者が行わなくてはならず、容易なことではない。今後は専門点訳者を配置していく必要があると考える。  A残念ながら、点字使用の子どもが減少している状況に歯止めはかからない。盲学校においても該当者がいないケースもある。各学校だけで解決しようとするのではなく、地域あるいは全国的な課題として取り組み、指導員や教員が参加する研修会を継続的に開いて、地域の学校や盲学校で点字使用の児童・生徒を受け入れられるようにモチベーションを維持していくことが求められる。  B日々使用する点字を、より身近なものにしてもらうために、子どもたちのモチベーションを維持することが重要である。近年オンラインも広く普及していることから、そうしたツールを活かして、盲学校とインクルーシブ教育の別を超え、学校同士で交流し、同世代の子どもたちと情報や意見を共有することにより、点字への意欲や関心が維持されるのではないだろうか。  以上が発表の要旨です。与えられた1時間はあっという間に過ぎてしまい、参加者とディスカッションをする時間がなくなってしまったのが心残りですが、セッション終了後、点図や点字ディスプレイに関する質問をいただきました。今や、教育に用いられる資料の大部分を点図が占めているのは日本だけではないようです。また点字ディスプレイの開発も海外では活発に行われており、その様子は次号でご報告します。  海外でのプレゼンテーションを無事に終えることができたのは、発表内容へのアドバイスをはじめ、資料の準備、サポートをしてくださった皆様のお陰です。この場を借りて、感謝申し上げます。 (写真=会場のクリスマスツリーの前で。左から西村氏、馬場氏、奥野)    <<ボランティアの頁>>(4頁)   ●情報文化センターと共に歩んだ半生を振り返って   活動歴40年を超えるボランティアの方々のご紹介(7)  ボランティア活動歴40年を超えて、今も活躍しておられる方々にこれまでの歩みを振り返り、長年のご経験やご苦労、今思っておられることを聴かせていただくリレー企画も最終回を迎えました。7回目の今回は録音の伊志峰和代(いしみね かずよ)さんと前田綾子さんをご紹介します。この企画でご紹介したベテランの皆さんから、講習会を修了してこれから活動を始める皆さんまで、ぜひこれからもお元気で活動を続けられ、すべての人が“読書”の喜びを分かち合えるようにお力添えください。(副館長 久保田 文(あや))  ◆私の「ONE PLACE,ONE LIFE」  伊志峰 和代(録音ボランティア)  いま、竹下館長からいただいた1982年2月発行の『ONE BOOK ONE LIFE』に目を通しています。あれから40年経った現在の『ONE BOOK ONE LIFE』を見ますと、館の働きが多岐にわたり、その充実ぶりが伝わってきます。  親友・服部友子(ともこ)さんから、講習を受けてみない?と誘われ、「関西アクセントなので朗読はムリじゃないの?」「対面なら大丈夫よ」と、ライトハウスへの道を拓いていただいたのでした。“ひと言で進路が決まる”とはこのことなんですね。  緊張して館へ足を踏み入れ、最初の対面朗読のお相手は笑福亭伯鶴(はっかく)さん。伯鶴さんとの真剣対面の始まりでした。楽しかった、面白かった。  館の講習会も終わり、河合和美先生にちなんでの『かわいいかい?』発足。17名の方々、いまどうなさっているかな。  1982年、地元の上甲子園公民館で橋本勝利先生、前田綾子先生の朗読勉強会があり、その時が前田さんとのご縁の始まり。現在のペア録音へと繋がっていきました。  数々のご縁に囲まれた木曜日。親しくも愉快なお仲間は、私の“お宝”です。  敬愛する前田さんのご指導を得て続けて来られた40年。ここは大切なものをたくさんいただいた私の「ONE PLACE」。  すべてのことに心を込めてひと言、「ありがとうございます」。  ◆長年の相棒を頼りに“幸せ”を頂いています。  前田 綾子(録音ボランティア)  私がその頃昭和町にあったライトハウスに初めて伺ったのは、20代半ばのこと。橋本勝利さんから「ライトハウスで『声の図書館』を始めるので手伝って」とのお誘いを受けたためです。まだ録音スタジオは無く、テーブルに置いたオープンリールテープレコーダーで童話を録音しました。やがて放出(はなてん)の鶴見事業所にスタジオができ、書棚にあった児童向けの日本史シリーズ、講談本、童話など、片っ端から録音。当時はまだ校正もなく、大きくとちった時は読み返して、その箇所を後で橋本さんがテープを切り貼りして編集してくださいました。当時、雨の降った翌日は道路はひどいぬかるみで、上天気でも長靴を持って出向いたことを覚えています。  私自身多忙だった時期は、毎月『声のジャーナル』の紀行文だけを読み、子育て中は課題図書を家庭録音で収録しました。こうして、止めないで、無理をしないで、細々とでも続けてきたことが今に繋がっているのだと思います。  現在の私は、ペア録音始まって以来の相棒、伊志峰和代さんに頼って、毎週幸せを頂いています。よくとちりますが、伊志峰さんが「出来上がりが良ければいいんじゃないの」とおっしゃってくださるので、遠慮なくのびのびと読むことができます。私は、モニター(第一校正者)は最初のリスナーだと思っていますから、いろいろ相談しながら楽しく共同製作をしています。  伊志峰さん、お仲間の皆さま、ありがとうございます。音訳をさせてくださる情文の皆さま、そして天国の橋本さん、ありがとうございます。 (写真=「私たちニコイチなの」が口癖の前田さん(左)と伊志峰さん(右))   ●報告の頁(8頁)  ◆肥後橋駅に「可動式ホーム柵」が設置  録音ボランティアの野村昭子さんが肥後橋駅のホームから転落し、亡くなられてちょうど4年が経ちました。この間、設置が待たれていた肥後橋駅の「可動式ホーム柵」が昨年末設置されました。大阪メトロでは2025年3月までに、四つ橋線の残り9駅と中央線の全14駅に設置が予定されています。各駅にホームドアの設置が広がり、視覚障害者の方に限らず、鉄道駅での転落事故がなくなることを願います。  ◆当館会議室の貸室料を4月から値上げ  当館の4階には大小4つの会議室があり、当館のボランティア活動や後援団体以外の方には有料でお貸ししています。貸室料は2009年の開館時から変えずに来ましたが、ビルの維持管理費を賄うため、今年4月から値上げさせていただくことにしました。新しい貸室料については利用申込時にご確認ください。  ◆「サピエ」が3月4日から27日まで全面停止  視覚障害者情報総合ネットワーク「サピエ」がシステムの全面更新のため、3月4日(月)から27日(水)までの約4週間、全面的に停止します。サピエ図書館の直接利用だけでなく、当館をはじめ全国の加盟館でも図書検索やデータのダウンロードやオンラインリクエストなどが一切行えなくなります。図書や雑誌の貸出サービスについては出来る限りの代替手段を取りますが、ボランティア・団体の方もご注意ください。  ◆踏切に"特別な点字ブロック"の設置が義務化  一昨年4月、奈良県内の踏切で、視覚障害者が列車と接触して死亡した事故をきっかけに、踏切内に“点字ブロック”の役割を果たす表示の敷設が検討されてきました。その結果に基づき、1月、国土交通省は「踏切内での安全対策に関するガイドライン」を改定。「踏切道内誘導表示」の設置を義務化し、その構造も規定しました。規定では「(踏切内の)歩道の中央に幅320mmの白い着色。そこに高さ5mmの丸い突起を横12列で敷き詰める。その両側に75mmの黄色い着色。中央に高さ5mm・幅27mmの直線状突起を進行方向へ敷く」とされています。さらに、「踏切内にカラー舗装と車道外側線」と「遮断棒の手前にゴムチップ舗装」も推奨されました。「誘導表示」の普及により、痛ましい事故の発生が防がれることを期待します。  ◆人事異動のお知らせ *退職(1月31日付) サービス部機器・用具係=加治川千賀子  加治川さんは2006年から総務係で広報や友の会の担当などをされた後、2016年度からエンジョイ!グッズサロンに異動して利用者サービスを支えてくださいました。 あゆみ 【1月】 5日 仕事始め、法人新年互礼会 6日 サービス再開 9日 ボランティア活動再開 11日 ボランティア世話人会 13日 オープンデー(館内見学日、4人) 予定 【2月】 8日 サービス部休室(在庫・書庫整理日)  見学:大阪医専 10日 見学:T眼科病院医療従事者  製作部休室(12日月曜指定祝日振替) 13日 サービス部休室(12日月曜指定祝日振替) 17日 オープンデー(館内見学日、要予約) 23日 全館休館(祝日) 編集後記 知人に「お変わりないですか?」と声をかけました。隣で食事をしていた少年がボソッと一言。「お代わりないの!?」(点) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2024年2月号  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 かたおか朋子  発行日 2024年2月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円