日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2020年3月号   <<表紙イラスト>> ひな祭りのイラスト お内裏様とお雛様が並んで屏風とぼんぼりの前に座っています。 「メタボになるからお酒はダメよ!」と、お雛様が白酒の入った酒瓶をお内裏様から取り上げています。 お内裏さまは「白酒も・・・?」とタジタジの様子。 酒柄杓をくわえて準備万端だった犬もお内裏様と一緒に困っています。    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●センターの頁(2頁)   ●特別寄稿(3頁)   ●感謝報告(4〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆館内でのボランティア活動休止のお願い  新型コロナウィルスの感染拡大を予防するため、当館内でのボランティア活動と会場利用を一定期間休止させていただきます。ボランティアや利用者の皆様の感染の機会を出来るだけ減らし、社会の感染防止の取り組みに協力するためですので、ご理解ください。  期間 2月27日(木)〜3月10日(火) ※その後の対応は3月10日(火)午後に決定  問合せ 当館総務係(電話06-6441-0015)  中止 3月6日・7日に開催予定の点訳・音訳体験オープンデー、11日の対面基礎講習会は中止します。3月27日のボランティア交流会の実施は3月10日(火)に決定します。  ◆3月の休館について  12日(第2木曜) 5階サービスフロアと別館・図書貸出は休室(在庫・書庫整理日)  20日(金・祝日) 全館休館  27日(金) 5階サービスフロア以外すべて休室(ボランティア交流会のため)  31日(火) 5階サービスフロア休室(年度末棚卸)  ◆2020年度の点訳・音訳講習会のご案内  当館では、新年度の点訳・音訳講習会と専門講習会(4頁掲載)を以下の通り予定しています。要項を請求・確認の上、お申し込みください。  ◆点訳ボランティア養成講習会  日程 初級:5月14日〜8月6日、中級:8月20日〜11月5日、毎週木曜10時〜12時、全24回。受講無料。要点訳テキスト代(1,540円)。  説明会 4月23日(木)10時〜12時30分。筆記試験を行います。  定員10人。対象は点字の学習が初めての方。申込締切は4月10日(金)。  問合せは点字製作係(電話06-6441-1028)まで。  ◆音訳ボランティア養成講習会(1)  日時 4月7日〜7月21日、毎週火曜日13時〜14時50分。受講料7,000円。申込締切は3月11日(水)ですが、先着15人で締切。対象は初心者で、発声、発音、アクセントなどの基礎練習を行います。修了後は10月開講予定の(2)、来春開講予定の(3)に進んでいただけます。また、今回と同内容の(1)は10月に開講予定です。  問合せは録音製作係(電話06-6441-1017)まで。   ●拡大掲示板  ◆第33回専門点訳・音訳講習会の開催予定  @専門点訳「エーデル点訳コース」 8月・9月頃、全3回×2コース  A専門点訳「古文点訳コース」 9月頃〜、全6回  B専門音訳「音声解説 基礎・応用コース」 5月15日〜6月12日毎週金曜日午後・全8回  C専門音訳「英語コース」 6月5日〜7月10日毎週金曜日午後・全6回  D専門音訳「小説の読み方コース」 7月7日(火)・17日(金)、1回4時間×2回  ◆サモアのアリさんとの交流会を開催  当館ではダスキン愛の輪基金に協力し、毎年、アジア・太平洋諸国から来日する視覚障害青年の研修を受け入れています。21回目の今回はサモアのアリ・トミー・ヘーゼルマンさん(全盲、男性、31歳)が3月17日から28日まで来館し、研修を行います。それに先だって、3月14日(土)14時から16時30分、当館4階会議室で、アリさんとの交流会を予定しています(NPO法人ゆに共催)。参加無料。ただし、3月10日(火)の状況次第で中止することもあります。参加申込みは、当館総務係(電話06-6441-0015)までどうぞ。    <<センターの頁>>(2頁)    ●アクセシブルな電子書籍と音声解説の普及を目指して   一ツ橋綜合財団のご支援で大きな成果  公益財団法人一ツ橋綜合財団では毎年、当館に多額の助成金を賜っています。今年度も、この助成金を基に、ボランティアの皆さんのお力を借りて、マルチメディアデイジー図書・教科書や音声解説作品の製作・提供など、最先端の情報提供事業を行い、大きな成果を上げることができました。特に今年度は、音訳者と当館をインターネットで結ぶ録音図書製作システム「ウェブスタジオなにわ」の改修を行うことで、より効率的な製作環境も整備することができました。一ツ橋綜合財団の助成金による今年度の主な事業実績をご報告いたします。(館長 竹下 亘)  ◆マルチメディアデイジー図書・教科書  @音声教科書 11タイトル  アクセシブルな電子書籍と図・表・写真等の視覚的資料の音訳技術を統合したHyMe(ハイミー)研究事業により開発した「音訳教材データベースシステム」を活用し、音訳教材を製作・提供しました。当館のボランティア12人と、宮城から福岡まで全国にわたる視覚的資料専門の音訳ボランティア10人のご協力の下、小学校、高等学校の教科書の内、特に視覚的資料が必要とされる理科や社会分野の教科書を製作。墨字から点字への移行が困難な弱視生徒や、軽度の知的障害のある視覚障害生徒の学習を支援することができました。  A児童書・一般書 12タイトル  家族、友人、世界の人々と、オリンピック・パラリンピックの高揚を分かち合ってほしいと、昨年度から手掛けていた「心にのこるオリンピック・パラリンピックの読みもの」シリーズ全4巻、「少年探偵」シリーズ(全26巻)中の第18〜21巻を製作・提供しました。  B専門書籍(テキストデイジー) 26タイトル  Cプライベート製作(テキストデータ) 14タイトル  ◆製作関連事業  @ボランティア養成事業(主な講習会)  電子書籍ボランティア定例勉強会  テキストデイジー製作講習会、校正勉強会  A啓発・普及事業(主な講演会、研修会等)  第13回マルチメディアデイジー図書講演会(NPO法人NaD(ナディ)共催) 参加者72人  第2回「アミ・ドゥ・ブライユ」読者交流会(東京) 参加者子ども20人を含む55人  ◆音声解説  当館の21人の音声解説ボランティアのご協力で、シネマ・デイジーをはじめとする音声解説付き映画の製作、バリアフリー上映会の開催などを行うことができました。  また、全視情協(全国視覚障害者情報提供施設協会)の「シネマ・デイジー検討プロジェクト」では、当館職員(林田茂)がプロジェクトリーダーとして全国の製作施設・団体を牽引。製作館は全国15施設に増え、2014年1月〜2019年12月までに製作された作品数は合計487タイトル、サピエのダウンロード数は累計71万9,061件に達しています。加えて、製作施設に対する音声解説製作の相談や助言、利用者からの意見や要望を製作施設・団体に繋ぐ役割も果たしました。  @シネマ・デイジー  「海猿」「岳(ガク)」「警部補 古畑任三郎シリーズ」他15作品  A音声解説付き映画会の開催  「わろう座映画会」 当館製作の音声解説付き映画の上映体験会を年5回開催。参加者合計約175人。  「バリアフリー映画上映会」 当館の企画・製作・コーディネイトにより他団体と共催で2回開催。参加者合計約640人。  B音声解説付き映画の普及・啓発  NPO法人メディア・アクセス・サポートセンターの理事として、スマートフォン等で音声ガイドの再生ができるアプリ「UDCast(ユーディーキャスト)」の普及に務め、視覚障害者の方が晴眼者と一緒に映画館で映画を楽しめる社会環境づくりに努めました。    <<特別寄稿>>(3頁)    ●漢字社会と視覚障害者   点字情報技術センター所長 福井哲也  漢字は中国で生まれ、千数百年前に日本にもたらされました。漢字なしに日本語を扱うことなど考えられない、というのは墨字世界の話です。日本の視覚障害者は、漢字を使うこの社会から多くの不利益を受けてきた、と私は思います。日本で私たち全盲者がまともに墨字(漢字仮名交じり文)を書けるようになったのは、パソコンが普及した1980年代以降のこと。しかし、パソコンで私たちの墨字を書くことのハンディは本当に克服されたと言えるでしょうか。  漢字の文字数は英字などに比べ極端に多く、音と字の対応関係が極めて複雑です。「あう」という一つの言葉に「合」「会」「遭」「逢」といろいろな字があります。だから日本語の繊細な表現に漢字は不可欠と断言する人もいますが、逆もあります。「生む」「生きる」「生える」という別の言葉に同じ漢字が当てられます。魚は「生(なま)」で食し、焼酎は「生(き)」で味わう。これは、中国語の表意文字で和語まで表すことにした無理の結果です。漢語も大変で、「要項」と「要綱」、「観賞」と「鑑賞」などの使い分けはいつも混乱しますし、「栄養士」は「士」なのに「理容師」は「師」である理由も難解です。  仮名文字体系である点字の世界に住む我々が、漢字の用法を習得するのは容易ではありません。いくらパソコンが「高」という漢字を「最高のコウ、たかい」と説明しても、磨りガラス越しに影を追うようなもどかしさが常にあります。  一方、技術の進歩は、墨字を読む新たな手段も我々に与えてくれました。光学文字認識、音声合成、自動点訳……。しかし、日本語は漢字がネックで、昨今持て囃されているAI(人工知能)をもってしても、これらの変換精度がなかなか上がりません。  漢字は、晴眼者にとっても難物です。習得にも使用にも非効率的です。日本の小学生は、漢字の書取りに多くの時間を割かれますが、小学校卒業程度では日本語の基本的読み書きが身に付くとは言えず、アルファベットの国とは大きく異なります。パソコンへの漢字の入力は仮名漢字変換によりますが、この方法では原稿と画面を交互に見なければならないので、欧米の言語ほど速く打てません。このようなことが仕事の能率を落としていると指摘する人もいます。  しかし、大多数の人たちは、漢字が抱えるこのような問題をまったく意識していないように見えます。漢字のない生活など想像しようもないからでしょう。むしろ、日本人は漢字を使ってきたからこそ高度な文化を創造してこられたと、漢字の価値を説く知識人が多数です。そのような側面を否定するつもりはありませんが、ここで私はやや別の視点から、漢字が人々の価値観に与えた影響について述べたいと思います。  漢字をよく知っていて、難しい漢字をすらすら読めるような人は、聡明な人、知性豊かな人として尊敬されます。逆に、漢字がよく読めない人、書き間違いの多い人は、物を知らない人、常識のない人と評価が下がってしまいます。このマイナス評価が、視覚障害者にはとても怖いのです。漢字のスキルでその人の価値が計られてしまう。あるいは、文章に漢字の間違いがあるだけで、内容まで程度の低いものに見られてしまう。そういう、ある意味で不条理な価値観に、この社会は、(全盲である自分も含めて)支配されていると強く感じます。  最後に私からボランティアの皆さんにお願いしたいことを書かせていただきます。  @漢字という複雑で規則の曖昧な文字があるお蔭で、視覚障害者が様々な苦労をしていることに想いを寄せてください。  Aこの社会では、漢字のスキルでその人の価値を計ろうとしてしまう傾向があることに気づいてください。  Bこれらを踏まえ、視覚障害者の情報摂取・情報発信と漢字学習を温かく力強く支援していただきたいと思います。   ●報告の頁(8頁)  ◆録音ボランティアの野村昭子(あきこ)さんがご逝去  当館録音ボランティアの野村昭子さんが1月29日逝去されました。当館最寄りの肥後橋駅でプラットホームから転落して亡くなられるという大変痛ましい事故によるものでした。  野村さんは毎週水曜日、明石市のご自宅から当館に通っておられ、当日も午後4時過ぎに録音作業を終えて家路に就かれました。肥後橋駅で西梅田行の電車に乗車しようとした所、電車から降りてきた乗客と接触し、ホーム下へ転落。救急搬送されましたが、打ち所が悪く、助かりませんでした。  野村さんは公務員をされながら4人のお子様を育てた後、当館の音訳講習会を受講され、2008年から活動を開始。「週刊新潮」をへて、最近は単行本を製作されていましたが、地元でも子ども園などで読み聞かせのボランティアに打ち込まれ、多くの方から慕われていました。2月1日の通夜と2日の告別式には、ご家族をはじめ野村さんを慕う方々が200人以上も参列され、突然の別れに涙を拭っていました。野村さんのこれまでのご奉仕に感謝を捧げるとともに、心からご冥福をお祈りしたいと思います。  当館では事故後、肥後橋駅に安全設備の整備を求めました。肥後橋駅のホームドアは2022年秋以降に設置されるとの説明でしたが、当館からはその前に、事故の場所のホーム端の鉄柵を延長するように要望し、大阪メトロの回答を待つことになりました。ボランティアの皆さんも当館の行き来の際はくれぐれも安全にご注意くださるようにお願いいたします。(竹下)  ◆ボランティア友の会文庫の新着関係図書  前号の本欄でご紹介したように当館3階のボランティア友の会文庫では、視覚障害関係の墨字資料を所蔵し、当館のボランティアにお貸ししています。最近収蔵した図書の一部をご紹介します。福本淳(きよし)「盲目魂!生きててみえたもの」(大阪で音楽家として活躍する著者の半生記)、竹内昌彦「その苦しみは続かない〜盲目の先生 命の授業」(モンゴルに盲学校を開校した元盲学校教師の自伝)、広瀬浩二郎「触常者(しょくじょうしゃ)として生きる〜琵琶を持たない琵琶法師の旅」(民族学博物館准教授の著者が「視覚優位社会にもの申す」)、岸博実「視覚障害教育の源流をたどる〜京都盲唖院モノがたり」(日本最初の盲学校の歴史的資料に秘められた物語)、上杉惇(あつし)「盲人ランナー〜情熱の街づくり」(事故で失明後、フルマラソンを233回完走した著者の自伝)。  あゆみ【1月】 28日 音訳ボランティア養成講習会1修了式  【2月】 4・5日 音訳ボランティア養成講習会2修了式 6日 近畿視情協職員研修会(読書バリアフリー法、大阪府立中央図書館) 8日 オープンデー(館内見学日、5人)  予定【3月】 9日 サピエ停止(〜12日・サーバ更新工事)・図書貸出サービス休止(10〜12日) 12日 サービス部休室(整理日)、職員会議 17日 ダスキン・アリーさん研修開始(〜28日) 25日 ボランティア世話人会 27日 ボランティア交流会(玉水記念館。ボランティア活動休止、5階サービス部開室) 31日 5階サービス部休室(年度末棚卸し) 編集後期 通勤電車が遅れ、帰宅に2時間以上かかった途上、暇つぶしに、これまでの通勤時間を計算してみました。1年間の合計は、1日3時間×年250日=750時間=31日。大阪に通った35年間の合計はなんと!3年になります。でも、その内3分の1は読書、3分の1は睡眠に使っていたので良しとして、残りの通勤時間を少しでも有意義に過ごそうと思います。(竹) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2020年3月号  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2020年3月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円