日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2018年11月号   <<表紙イラスト>>  武部はつ子画:木枯らしが吹く中、落ち葉焚きをする女の子と男の子。女の子が湯気の上がる焼き芋を焚火から出して「やっけたあ!♪〜」と嬉しそう。男の子は女の子が持っている焼き芋を指さし、「あ、いつのまに…」。木の上から大きく目を見開いてその様子を見るカラス。   <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●センターの頁(2〜3頁)   ●感謝報告(4〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆広瀬浩二郎氏を講師にボランティア研修会  近畿視情協(近畿視覚障害者情報サービス研究協議会)の今年度ボランティア・職員研修会が12月13日(木)10時〜16時、玉水記念館で開かれます。午前中は、国立民族学博物館准教授・広瀬浩二郎氏の講演「指と耳で世界を見る」(仮題)、午後は点字と録音の2分科会に分かれ、点訳は元宮城教育大学教授・長尾博氏の講演、録音は講演とワークショップ「こんな時どうする!? 処理は判断力と柔軟性」を行います。参加申込は、所属する近畿視情協会員施設・団体まで(当館のボランティアは各係まで)。会員外も参加歓迎ですが、参加費500円をお願いします。  ◆ヘレン・ケラー女史没後50年行事の受付開始  当法人主催「ヘレン・ケラー女史没後50年を偲んで〜ヘレン・ケラー女史と岩橋武夫」(11月23日(金・祝)と24日(土)、大阪市中央公会堂)の参加申込受付が11月1日から始まります。記念式典(24日午後)と、朗読劇2回(23日午後と24日午前)それぞれについて定員400人で締め切りますので、参加ご希望の方はお早めに当館総務係(電話06-6441-0015)へお申込みください。  ◆「盲導犬カレンダー」ほかチャリティグッズ入荷  来年の盲導犬カレンダーをはじめ、盲導犬訓練所のチャリティグッズが多数入荷しました。ご来館の際は、当館3階でぜひご覧ください。 写真左からキャンバストートバッグ(1,000円)。カレンダー(1,000円)。クリアファイル(2枚300円)。フェイスタオル(800円。他にハンドタオル500円も)。通信販売をご希望の場合は、盲導犬訓練所(電話0721-72-0914)まで。  ◆11月の休館について  11月3日(土)と23日(金)は祝日のため全館休館。24日(土)は「ヘレン・ケラー女史没後50年を偲んで」のため全館休館させていただきます。     <<センターの頁>>(2頁)   ● 「マラケシュ条約」と「改正著作権法」が来年1月1日から実施 録音・電子図書等の「受益者」拡大と、国際交換に向けて 私たちにとって、今年は2重に記念すべき年です。というのは、世界に類を見ない視覚障害者等用のインターネット図書館「サピエ図書館」が、1988年に「てんやく広場」として誕生してから30周年を迎えたのに加えて、視覚障害者をはじめ「印刷物の判読に障害のある」人の読書環境の向上を目指す「マラケシュ条約」がこの10月1日批准され、条約に合わせて改正された著作権法とともに、来年1月1日から実施(条約発効と法律施行)されることになったからです。(館長 竹下 亘)  ◆マラケシュ条約で拡がる録音図書等の利用者  マラケシュ条約は、正式名称は「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」といいます。2013年6月、北アフリカにあるモロッコ王国の都市マラケシュで開かれた国際会議で採択され、世界各国で批准が進められて来ました。批准(加盟)には、自国の著作権法の整備・改正が必要で、特に録音・電子図書等の著作権者の権利を制限することが求められますが、2016年9月30日には世界20ヶ国が加入して、条約が発効。日本では5年近い審議の末、今年4月、国会で条約加盟が承認され、5月に改正著作権法が成立して、先月漸く批准となりました。  この条約で変わるのは、まず録音・電子図書等の利用が認められる「受益者」の範囲が広がることです。  これまで日本における受益者は、条約をそのまま引用すると、「(a)盲人」と「(b)視覚障害(筆者注:弱視)又は知覚若しくは読字に関する障害のある者であって、そのような障害のない者の視覚的な機能と実質的に同等の視覚的な機能を与えるように当該障害を改善することができないため、印刷された著作物を障害のない者と実質的に同程度に読むことができないもの」に加えて、「(c)身体的な障害により、書籍を持つこと若しくは取り扱うことができず、又は読むために通常受入れ可能な程度に目の焦点を合わせること若しくは目を動かすことができないもの」も対象になります。  著作権法もこれに従って改正され、第37条第3項において、録音図書等の提供対象が「視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者」と改められました。  ◆国際交換と、録音図書等のメール送信も開始  2つ目は、加盟国間で点字・録音・電子図書の国境を越えた交換が始められることです。これは当初から、特に発展途上国の視覚障害者等が先進国の録音・電子図書等を利用できることが条約の成果として期待されてきましたが、日本でも今後、外国の図書の利用が拡がるかも知れません。国際交換の窓口となるのは、各国の「権限を与えられた機関(AE=Authorized Entity)」で、日本では全視情協と国立国会図書館が担当する予定です。  3つ目は、著作権法改正により、既にサピエ図書館において行われている録音図書等のインターネット配信に加えて、メールによる送信も認められることです。また、これまで著作権許諾が必要だったボランティアグループ等が、一定条件を備えた場合、許諾なしに録音・電子図書等を作成・提供できるようになることも検討されています。  ◆「読書バリアフリー法」と補助金増額の期待  こうした流れの中、今年4月、超党派の議員連盟が結成され、「読書バリアフリー法」の立法化も進められています。法案の中身はまだ検討中ですが、視覚障害者等の読書環境の向上が具体策とともに進められることが期待されます。さらに、厚生労働省の来年度予算の概算要求にも、これまで予算化されていなかったサピエ図書館の運営費や、全国の点字図書館に対する新しい内容の補助金が盛り込まれており、12月末の確定が待たれます。  当館では、全視情協をはじめ関係団体と連携し、国や自治体に対して、ボランティアの皆さんの活動環境の向上を含めて、視覚障害者等への情報提供事業が少しでも充実・発展するように働きかけていきますので、関心と理解をお寄せくださいますようにお願いいたします。    <<センターの頁>>(3頁)   ● 「日本ライトハウス展2018」に過去最高の1,910人が来場 過去最多46社・団体の出展と、「時の人」の出演で超満員に 当法人では、社会福祉法人読売光と愛の事業団との共催で「日本ライトハウス展〜全国ロービジョンフェア2018」を10月13日(土)・14日(日)、難波御堂筋ホール(7階・8階)で開催しました。今回は、過去最多46社・団体の出展と、R-1ぐらんぷり2018王者の濱田祐太郎さんなどによる特別ステージを行ったところ、近畿を中心に沖縄、四国、山陰、東海、東京などから、過去最高だった昨年の1,714人を上回る1,910人もの方々がご来場くださいました。お客様の評価は非常に好評でしたが、エレベータが混み合って入・退場に長時間お待たせしたり、会場が狭く、騒がしいなどのご迷惑もお掛けしましたので来年は少しでも改善に努めたいと思います。(館長 竹下 亘)  ◆メガネ型情報機器と触図用機器に注目  メインとなる機器・用具の展示では、今話題のメガネ型情報機器をはじめ、音声や触覚、見やすい表示などで使いやすい生活用品や家電品、本や書類を拡大したり音声で読み上げる読書器、白杖、点字機器など、初出展の8社を含め46社から数え切れない程の視覚障害者用具が集まりました。出展品の多さについてはお客様の評価が非常に高く、「新製品が多数あって良かった」「自分の知らない物が見られて良かった」「欲しかった物が買えた」などの声をいただきました。  中でも、今回注目と人気を集めたのは、メガネ型の電子情報機器(及びそれを活用したサービス)です。これは大きく2種類に分かれます。 一つは、小型カメラを装着したメガネをかけて、目の前の物を撮影し、@インターネットに繋いで文字を読み上げさせるもの、A本体内のAIで文字を読ませたり、物や人の名前を伝えるもの、Bインターネットでサポートセンターに繋いで説明してもらうサービス(写真下)です。もう一つは、弱視者がメガネ型の装置をかけて、目の前の物をメガネの中のスクリーンにはっきり映したり、網膜に直接映したりする機器です。  いずれも高額なのがネックですが、既にどんどん普及しているスマートフォンやタブレット型端末と相まって、今後、視覚障害者の情報機器の主流になることが予想されます。  一方、今回嬉しかったのは、浮き上がった文字や形や図を自分で書いたり、触察できる機器や触図印刷が出展されたことです。その中には、「みつろう」のペンで浮き上がった線を書いて、自分で触れたり、これまで手作業で作られてきた「立体コピー」(発泡用紙に熱を加えて、黒い線を浮き上がらせるもの)をパソコンから印刷できるプリンターもありました。当法人でも、3次元地形模型や触図の製作・普及に力を入れており、この分野の発展が期待されます。  ◆『点毎』の佐木記者やAIスピーカーの講演も満席  特別ステージでは、新人芸人の濱田祐太郎さんと熟練の落語家桂文太(かつら・ぶんた)さんの2人(共に全盲)が人気を呼び、特に濱田さんのライブは立ち見どころか会場に入れない人も出る超満員(320人)となりました。『点字毎日』の記者として活躍する佐木理人(あやと)さんの講演や、視覚を使わずに最新の情報機器を使いこなしている品川博之さんのAIスピーカーの実演も関心を集め、皆さん熱心に聴き入っていました。さらに、当館の企画した「シネマバトル」(音声解説付き映画「シネマ・デイジー」のプレゼン合戦)と、「アプリバトル」(スマホアプリのプレゼン合戦)も発表者の熱演で盛り上がり、「来年も楽しいステージを続けて欲しい」という声をいただきました。  ◆ガイドボランティアが「親切、丁寧」と高い評価  ライトハウス展の“自慢”は、ボランティアと職員による、きめ細かい会場内外のサポートです。今回も当館のボランティアに加えて、参天製薬株式会社の社員の皆様など60人余りが会場内のガイドの他、当館主催の「iPhone体験会」の補助、展示会前後の作業にご協力くださいました(お名前を下記に掲載)。  お客様からは「ガイドの方が親切で、説明が丁寧で、話しが聞きやすかった。」「ボランティアの方々が根気よく付き添ってくださったので、心ゆくまで展示会を回ることができた。」といった声をいただきました。この場を借りて、ボランティアの皆さんに心から感謝申し上げます。  ◆主なアンケートの集計結果  来場者111人から頂いたアンケート回答の内、視覚障害等の方79人(全盲36人、弱視41人、読書困難2人)に絞って、主な結果をお伝えします。 ◆日本ライトハウスの利用について 「よく利用している」32%、「時々利用することがある」42%、「ほとんど利用したことがない」22%、「どんな施設か知らない」4% ◆ライトハウス展の来場について 「よく来ている」48%、「時々来ている」25%、「初めて」23% ◆今回の展示会はいかがでしたか? 「とても良かった」30%、「良かった」53%、「普通」10%、「あまり良くなかった」5% 来年のライトハウス展は、以上の不評を少しでも減らせるように努力したいと思います。  ◆「日本ライトハウス展」開催協力者 ◆チラシ・ガイドブック発送、準備・片付け作業 井川倭文子 板谷照美 小椋美智子 板波キミ 塚本紀子 並木昌子 西垣泰子 逸見恵子 宮崎ナオヨ 宮野興子 森本益子 ◆iPhone 体験会    大前雅司 斧田綱子 川口千代 角本靖子 神谷孝子 田村文子 中谷惠子 名賀知子 向井民子   ◆会場ガイド     生島貞夫 池本滋子 上田敬子 海上映一 小倉玲子 片岡忠克 加藤珠子 川村慈子 木原富子 小泉憲一 阪口雅代 佐藤久子 清水浩子 田智子 高階秀男 中本由美 中嶋真弓 那須由美子 橋本万里 平林育子 福井真由美 藤井倫子 古澤満寿枝 待田敏彦 松原 博 三原佳子 望月 明 安井和久 山本普実雄 雪岡加奈子 和田眞由美 [参天製薬株式会社] 井上聖隆 木村恵利香 佐々木郷 西浦賢輔 西浦莉加 野秋貴史 濱田 保 濱田美和子 福井由美子 三原昴市 宮本悦代 魯 文心 渡辺彩乃   ●報告の頁(8頁)  ◆音訳ボランティア養成講習会後期が開講  今年度後期の音訳ボランティア養成講習会が10月初旬開講しました。本講習会は@、A、Bの3段階に分かれますが、今期は@が1クラス18人、Aが火曜1クラスと水曜2クラスの合計36人受講されました。一人でも多くの方が次の段階へ進まれ、音訳・録音活動に加わられることを願っています。  ◆韓国とエジプトから当館を見学  10月18日、韓国・仁川のクンソル自立生活支援センターの職員8人が来館。同センターは点字やパソコン訓練の他、小さな点字図書室も運営していますが、当館を見学して、自国との違いに驚いておられました。続いて10月23日にはエジプトのアレキサンドリア図書館から職員2人が来館。同図書館は博物館を含め職員は2,500人を数え、日本の支援でデイジー図書の製作も行っているそうですが、こちらも日本の点字図書館の独自性に驚いておられました。  あゆみ 【10月】 9日 音訳V講習会@、A火曜コース開講 10日 音訳V講習会A水曜2コース開講 13日・14日 日本ライトハウス展(全館休館)18日 見学:韓国クンソル自立生活センター 20日 オープンデー(3人) 23日 見学:アレキサンドリア図書館 25日 全視情協大会(〜26日、岐阜市 竹下、久保田、谷口、木田、花田) 29日 ボランティア友の会施設見学会(神戸アイセンター)  予定 【11月】 8日 対面リーディングボランティアの集い 10日 オープンデー(館内見学日、要予約) 13日 実習:視覚障害生活訓練等養成課程 23・24日 「ヘレン・ケラー女史没後50年を偲んで」(大阪市中央公会堂、全館休館) 30日 法人理事・評議員会(本部)  編集後記 和田伸也(しんや)さんが来館されました。和田さんは2010年からパラ陸上競技国際大会に出場、2012年ロンドンパラリンピック5000mで銅、2017年ワールドカップマラソンで金メダルを獲得。2年後の東京パラリンピックに専念するためパラアスリート本業へ転向されます。「でも東京パラ以降のことは何も決まっていないんですよ」とのことで「大きな決断をされたのですね」と申したら「人生一度きりだから今やりたい事をしようと思って」と。背中を押してくれる言葉でした。(М2) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2018年11月号  発行 社会福祉法人日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015     FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2018年11月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円