日本ライトハウス情報文化センター        「ワンブックワンライフ」2015年12月号  <表紙イラスト:(武部はつ子画)> 家族4人と猫1匹が揃ってクリスマス。テーブルにはケーキ、その脇には大小のプレゼントが2つ置いてある。男の子と女の子が「どっちにする?」と言われて「う〜ん・・・」と決めかねている。   (目次) ◇掲示板 ◇センターのページ ・ 「初めての方」3割を含め、過去最多の1,386人が来場       読売光と愛の事業団の共催で「日本ライトハウス展2015」    ・50年ぶりの再会〜バリアフリー点字図書の先駆け「エジソン伝」 ◇報告のページ  ≪掲示板≫ ○英語点訳者の強い味方『英語点字スーパー 縮約辞典〜UEB & EBAE対応版』発行  英語点字の新表記法「統一英語点字(UEB)」が日本でも英語の教科書等に徐々に使われるようになります。点字情報技術センターでは、このUEBについての解説書を7月に発行したのに続き、単語ごとの縮約(略字)の用法が即座に調べられる辞典を発行しました(墨字版334ページ、4,000円)。約15,000語収録。UEBで書き方が変わる単語にはこれまでの書き方も併記し、従来の表記で点訳している方にもご活用頂けます。お問い合わせは当館サービス部(電話06-6441-0039)へ。なお、ご寄附に基づく「点字たねまき事業」で本書点字版のプレゼントも実施します。 ○自動車、自転車の安全運転に努めましょう  10月、運転者の過失による自動車事故のため徳島と新潟で2人の視覚障害者の方が亡くなりました。その後の警察庁の発表では、視覚障害者が歩行中などに巻き込まれた交通事故は、今年9月末までに21都府県で32件、死亡1人、大けが11人だったとのことです。これは氷山の一角に過ぎないと思われますが、最近、身近でよく聞くのは、歩道で自転車にぶつけられたり、白杖を折られる事故が多発していることです。  道路交通法では、 @自転車は原則、車道の左側を通行、 A自転車が歩道を通行できるのは、「自転車通行可」の標識がある時や13歳未満の子どもか70歳以上の高齢者、身障者など、B歩道を通行する場合も、歩道の中央から車道寄りの部分を「徐行」しなければならず、歩行者の通行を妨げる時は、一時停止しなければならない、と定められています(「徐行」とは、大人が早足で歩くような速度で、すぐに止まれる速度です)。この他、携帯電話やイヤホーンをしたり、傘をさしながらの運転や2台以上の並走、一時停止の不履行などもすべて禁止されています。  自動車や自転車に乗る人は歩行者の安全を最優先し、視覚障害者の方が安心して外出できる交通環境の実現に努めたいと思います。 ○年末年始のボランティア活動について  12月26日(土)=仕事納め。ボランティア活動の最終日は各係でご確認ください。  1月6日(水)=ボランティア活動と利用者サービス再開。業務は5日(火)から再開します。 ≪センターのページ≫ 「初めての方」3割を含め、過去最多の1,386人が来場 読売光と愛の事業団の共催で「日本ライトハウス展2015」  当館では、今年も「日本ライトハウス展〜全国ロービジョンフェア2015」を10月17・18日(土・日)の両日、難波御堂筋ビル7階ホールと8階大会議室で開催しました。本展は1998年に開始、2002年からは社会福祉法人読売光と愛の事業団のご助成を得て、毎年開催しており、視覚障害者用具・機器を中心に多様な情報を提供する西日本最大の展示会です。今回は37ブース・数百点に及ぶ用具・機器の他注目の外出支援機器やiPhoneの最新アプリの体験、最新の医療情報に関するミニステージなどを企画したところ、近畿を中心に東海、四国、東京などから合計1,386人、本会場での開催5年目で最多のお客様にご来場いただきました。また「初めて来た」方が3割を超え、目下増えつつある中途視覚障害の方々が有用な情報を切実に求めておられる実状が再確認できました。(館長 竹下 亘) ウェアラブルカメラとiPhone体験が大盛況 今回の特別企画は、8階大会議室を使っての@ウェアラブルカメラと外出支援機器体験と、AiPhone最新アプリ体験コーナーでした。  @は頭にウェアラブルカメラ(小型カメラ)を装着し、離れた場所にあるサポートセンターとネット回線で対話しながら、歩行のガイドや目の前にある視覚的情報の説明を受けることのできる“遠隔援護サービス”(パナソニック提供)。会場には模擬の街路や居室を設けて、当事者にカメラとマイク、イヤホンを付けて歩いていただき、自販機を触って飲みたい飲料のボタンを選んだり、居室で書類の内容を確認したり、衣服を選ぶ体験を40人の方にしていただきました。 合わせて、超音波で眼前の障害物を感知する装置や足裏の感触で順路を確認できる誘導路、施設の入口や交差点を示す音声案内装置、LED付き音響信号などの展示・体験も行いました。  AiPhone最新アプリ体験では、GPSを活用したルート検索、音声秘書アシスタント(Siri)やカメラを活用した紙幣識別、色柄認識など、視覚障害者に便利至極な最新アプリを3ブースに分けて紹介した他初心者の方向けの基本操作体験も行ったところ大盛況となり、合計160人の方が体験されました。 個人使用向け点字プリンターが登場  用具・機器展示では、30数社から数百点の視覚障害者用具・機器を出展。見やすい表示、触覚による確認・操作、合成音声による耳での確認など、障害や程度、ニーズに応じた多種多様な機器が並び、体験や質問は途切れることがありませんでした。新製品では、高価なため施設購入が一般的な点字プリンターに、個人使用を想定した30〜40万円台の点字プリンタが複数登場し、点字利用者の関心を集めていました。  この他、大小様々な拡大読書器類、ユニバーサルデザインで使いやすい家庭電化製品、日常生活のさまざまな場面・用途に役立つ便利グッズのブースが賑わっていた他、今回初参加の布やTシャツなどに点字できれいなデザインや地図を描いた商品も人気を集めていました。 超満員になった医療情報のミニステージ  2年ぶりに行ったミニステージでは、患者会と当事者団体、最先端の医療に取り組む眼科医などの講演会を企画したところ、ほどんどのステージで定員50席を上回りました。特に「人工網膜」に関する講演では100人を超えるお客様が集まり、関心の高さが伺われましたが、会場の構造上、展示会場とステージを分離できないため、非常に聞こえにくい中で耳を傾けていただいた皆様に大変申し訳ないことをしました。 【講演概要】 17日=「岡田弥(あまね)のITコラム」    「加齢黄斑変性の悩みや経験の分かち合い」(AMDアライアンス・インターナショナル)    「就労支援活動紹介」(認定NPO法人タートル)。 18日=「神戸アイセンター(仮称)について」(先端医療センター病院眼科医長平見(ひらみ)恭彦(やすひこ)氏)、    「人工網膜の現状と可能性」(大阪大学大学院教授・不二門(ふじかど)尚(たかし)氏、協力:日本網膜色素変性症協会) 「良かった」が7割、「初めて」が3割超  会場でお願いしたアンケートでは、280人(全盲92人、弱視93人、読書障害2人、晴眼93人)の回答中、「とても良かった」が21.4%、「良かった」が46.4%で、合計67.8%に達しました。一方、「普通」が17.5%、「あまり良くなかった」も2%(6人)でしたので、今後さらに高い満足度を目指して工夫し、努力したいと思います。  この他、注目されるのは、これまで日本ライトハウス展に「よく来ている」が32.5%、「時々来ている」が29.2%に対し、「初めて来た」という回答が36.8%もあったことです。  また、日本ライトハウスを「よく利用している」が20%、「時々利用している」が32.1%に対して、「ほとんど利用したことがない」が25.4%、「どんな施設か知らない」が11.1%もありました。  以上の結果から、日本ライトハウスの広報にもっと工夫・努力する必要性を感じるとともに、展示会に来てくださった方々に今後、ライトハウスのみならず、さまざまな視覚障害者サービスを利用していただく取り組みを強化しなければならないと感じました。 【その他のご意見】  +評価=「説明・対応が親切丁寧」「便利な品物を多数見られ、体験できて良かった」「立地・交通が良かった」      「同じ患者や仲間に会えて良かった」「講演会が良かった」「医療、ICTの発達に驚いた」  −評価=「説明員が少なかったり、混雑して説明が聞けないブースがあった」「ブースで並んでいたのに割り込まれた」      「会場がうるさい、狭い」「多目的トイレが欲しい」「7階と8階の移動がエレベータしかなく、遅くて大変だった」 【今回の出展者(全37ブース、50音順)】 アイネット、アイネットワーク、アイフレンズ、アステム、アメディア、インサイト、エクシオテック、エクストラ、エッシェンバッハ光学ジャパン、m・y、おおさかパルコープ&筑波大学、カトレア・サービス、京都ライトハウス情報製作センター、錦城護謨、ケージーエス、高知システム開発、KOSUGE、サイパック、シーフェス、ジェイ・ティー・アール、シナノケンシ、篠原電機、タイムズコーポレーション、東海光学、NTTドコモ、日本点字図書館、日本テレソフト、ナイツ、日本ライトハウス情報文化センターサービス部、日本ライトハウス盲導犬訓練所、パナソニック(2部門)、ほりき工房、毎日新聞点字毎日、三菱電機、安久工機、レハ・ヴィジョン (写真が9枚あります。賑わうブースの様子3枚、8階のアプリ体験・カメラによる歩行体験、拡大読書器、布製点字地図、講演会の様子、盲導犬のデモ犬) 50年ぶりの再会〜バリアフリー点字図書の先駆け「エジソン伝」 私が初めて“読んだ”点字図書は、小学3年の頃、わが家にたまたまあった「エジソン伝」でした。その時に点字を見た記憶は鮮烈で、50年近く経った今も忘れることができません。なぜ点字図書を読めたかというと、その本には点字と並行して墨字が印刷されていたからで、当時としては画期的な取り組みだったと思われます。  最近、この本をもう一度見たいと思うようになりました。しかし、あちこち探しても見つかりません。行き詰まっていたところ、先日ふと父母の友人に、長年、印刷屋さんをされている高林藤樹(とうじゅ)さんという方がいたことを思い出し、お訪ねしました。高林さんは86歳でしたがお元気で、質問した途端、「ああ、それならありますよ」と、まさにその現物を見せて下さったのです。  それは100頁余の点字図書で、和文タイプで印刷された漢字かな交じり文の上に、点字が印刷されています。点字と墨字は一行ずつの対照になっていませんが、頁毎、行毎の文字は一致しています。奥付には、 「偉人の少年時代 トーマス・エジソン/1967年2月1日発行/著者 加藤輝男/発行者 高林藤樹/発行所 有限会社糺(ただす)書房(京都市左京区田中…)/版権提供 毎日新聞社学生新聞部/製作 日本ライトハウス点字出版部」とあります。なんと!日本ライトハウスが点字印刷を受託して出版されていたのです。 写真:高林さんご夫妻と点・墨並記の「エジソン伝」  聞けば高林さんは、京都ライトハウスの創設者鳥居篤次郎氏から点字図書、とりわけ児童書の少なさを知り、加えて墨字が並記されていれば晴眼の子どもも親も一緒に読めるということを聞き、出版人の責務と感じて、この本を作り、全国の盲学校への寄贈に取り組んだと言います。 50年前に、こんな貴重な点字図書を通して点字と出会え、今また再会できたことを感謝しつつ、これからも点字図書を大切に育て、広めていきたいと願っています。(館長 竹下 亘) ≪報告のページ≫ ○バリアフリー映画会に200人超のお客様  音声解説・日本語字幕付き映画『マエストロ!』&ミニ音楽会を11月21日(土)玉水記念館で開催。200人を超えるお客様が来場され、映画に花を添える大阪府立視覚支援学校の在校生・卒業生による音楽会と映画を楽しみました。(次号で報告します。) ○専門音訳「音声表現技術コース」が修了  11月6日、12日、18日、24日の4日間、1日集中講習として「音声表現技術コース・会話文の読み方編」(毎日新聞大阪社会事業団共催)を開講し、各10人の方々が受講・修了されました。地域で活動されている方々が児童書や小説の会話文を読む際の実技を習得されました。よりよい音訳図書の製作に活かしてくださるよう期待します。 ○対面リーディングボランティアの集い  当館のボランティアを対象に毎年行っている「対面リーディング・ボランティアの集い」が11月10日午後、当館で行われ、13人が参加しました。第1部は元職員で対面通信編集委員の木村?治さんが「対面通信」に連載中の「対面リーディングの実際」より「マンガの読み」や「系統図の読み」を中心に意見交換を行いました。第2部はボランティアの皆さんから日頃の活動についてご意見やご要望を伺いました。参加者は少なめでしたが、中身の濃い集りとなりました。 あゆみ 【11月】 5日 ボランティア友の会世話人会 6日 専門音訳講習会・音声表現技術コース開講(12日、18日、24日の全4日) 7日 ライトハウス祭り(鶴見事業所) 10日 対面リーディングボランティアの集い 14日 オープンデー(館内見学日、参加6人) 16日 V友の会施設見学会(盲導犬訓練所) 21日 日本ライトハウスバリアフリー映画会「マエストロ!」(玉水記念館) 予定 【12月】 2日 近畿視情協V研修会(玉水記念館) 10日 専門音訳技術研修会・大阪会場(〜11日) 12日 オープンデー(館内見学日、要予約) 15日 全館自衛消防訓練 24日 当館サービス最終日 26日 仕事納め 【1月】 5日 仕事始め(15時から法人行事で休館) 6日 ボランティア活動再開 7日 ボランティア友の会世話人会 編集後記 11月1日よりシネマ・デイジーの重複コンテンツ登録がサピエ図書館で試験的に実施されることになりました(原則2タイトルまで3年間)。シネマ・デイジーは、限られた時間(尺)の中で映像情報を取捨選択し伝える言葉を作ることが求められています。まだ黎明期でもあることから、製作館(製作者)の違い、作り方の違い、いろんな見方を通して、より利用者の意見に沿う形を考えていきたいです。 (茂) =ONE BOOK ONE LIFE 2015年12月号= 発 行 社会福祉法人日本ライトハウス      情報文化センター(館長 竹下 亘) 住 所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp 表紙絵 武部はつ子 発行日 2015年12月1日