ろくおん 通信 No.214号 発行日:2016年2月1日 発行:日本ライトハウス情報文化センター 録音製作係 発行責任者:竹下 亘  〒550-0002 大阪市西区江戸堀1−13−2  電話 06-6441-1017(録音製作係直通)  http://www.iccb.jp/ 主な見出し 1.聴いてわかる録音図書をつくるために(第27回) 2.「ろくおん通信」213号掲載の、引用の処理に関するデイジー図書凡例について 3.アクセント辞典の使い方 4.もっと知ろう!「ウェブスタジオ・なにわ」(第5回) 5.新コーナー わかる使える広がる!デイジー図書徹底解説(第1回) 6.館からのお知らせ 主な見出し、終わり。 1. 聴いてわかる録音図書をつくるために(第27回) アクセントについて 久保洋子 今回はアクセント。音訳者と校正者の両方にとってのアクセントを考えてみたいと思います。 まず、音訳者にとってのアクセント。 私たちの作る録音図書は、全国で利用されることを考えると、正しい共通語のアクセントで読むことが必要な条件です。一冊一冊、コツコツと辞書をひいて努力してください。少しぐらい間違っていても良いと考えたら、そこで進歩は止まります。完璧を目指してがんばってください。 次に校正者です。 音訳者は一生懸命努力するわけですが、それでもなかなか完璧とはいきません。校正作業では、間違いは気がついたらすべて上げる、これが基本です。 そして、もう一度音訳者。校正表に、アクセントがたくさん上がってきたらどうしますか? 恐らく、校正に上がったアクセントをすべて訂正したら、読みの流れが失われガタガタの読みになってしまいます。また、該当の一語だけを訂正するわけにはいきませんので、前後の文章で、訂正前は正しく読んでいた語のアクセントがおかしくなったり、誤読したりする可能性も考えられます。 正しいアクセントで読むことは大原則ですが、耳で聞いてわかりやすい録音図書であることが何よりも一番重要です。音訳者も校正者も、利用者にとって聞きやすい、わかりやすい図書を作るためにどうしたら良いか考えてください。迷ったら職員や周りの仲間に相談してください。 最後に、アクセントがたくさん上がってしまった音訳者の方に。 校正表に上がったアクセントについては、訂正しなかったものも含めて、よく検討することが大切です。名詞の思い込みが多いのか、動詞、形容詞の変化の間違いが多いのか……自分の弱点を把握すれば、必ず次回に活かせます。そして、次回は完璧なアクセントを目指してがんばりましょう。きっと近い将来、アクセントがたくさん上がった校正表から解放される日が来ると思います。 2. 「ろくおん通信」213号掲載の、引用の処理に関するデイジー図書凡例について 録音製作係 前号で掲載した、引用の処理に関するデイジー図書凡例でのアナウンスについて、補足いたします。 今後も、明らかに引用文とわかるものを「引用〜引用終わり」と読むことについては、デイジー図書凡例でお断りを入れる必要はありません。 ただ、最近は、表紙や本文のレイアウトに遊び要素を取り入れた、視覚的技巧を凝らした表現の原本が増えており、実際に録音図書を利用される方の中には、特別なレイアウトの表紙や本文であることを知りたいと希望する方もいます。単純な字下げや前後の空行ではない変わったレイアウトで引用文が書かれている場合は、その情報を伝えた方が良いかどうか、まず考えてみてください。その結果、デイジー図書凡例で引用文にあたる箇所のレイアウトをお知らせすることになった場合は、レイアウトの説明に続けて「このデイジー図書では『引用』、『引用終わり』で括って読んでいます。」とアナウンスしてください。 3. アクセント辞典の使い方 西田芳美 以下は、NHK日本語発音アクセント辞典新版(1998年6月20日第2刷発行、日本放送出版協会刊)をもとにしています。 (1)言葉それ自体のアクセントを調べるには、アクセント辞典本体部分。 NHKと三省堂(新明解日本語アクセント辞典CD付き)のアクセント辞典の他にも、大辞林(三省堂)、日本国語大辞典(小学館)などにアクセントが表記されているものもあります。1つの言葉に複数のアクセントが示されている場合、掲載順には関係なくどれを採用してもかまいません。また、カッコ内に表記されているアクセントも許容されているものです。 (2)名詞それ自体のアクセントはふつう変化しないものですが、何かの要素で変わることはあるのでしょうか。 例文:私が行く所は山の上にある花の寺です。 単語が持っている本来のアクセントを示すと、 「ワタシカ° イクトコロワ ヤマノ ウエニアル ハナノ テラデス」 ですが、アクセント辞典の法則に従うと 「ワタシカ° イクトコロワ ヤマノウエニ アル ハナノテラデス」 となります。本来平板の「所」や「上」が尾高になること。尾高の名詞「山」や「花」の後ろに助詞「の」がついた時には平板アクセントに変わること。また、必ずしもそうならない名詞があること。尾高ではないのに助詞「の」がつくと平板化する名詞があることなど。 「お寺」や「お山」のように「お」がつくと「オテラ」「オヤマ」と平板化し、「花のお寺です」ならば「ハナノオテラデス」となること。 また「・・・花の寺らしい」という文だと「ハナノテララシイ」と変化することなど、詳しい説明はNHKの辞典の付録「第2章 名詞のアクセント」(p175〜191)に出ています。(表3 名詞に助詞が付いたときのアクセント:p188、 表4 名詞に助動詞が付いたときのアクセント:p190) (3)地名「宇治」は、ウジ 。「宇治川」は、ウジカ°ワ 。 「宇治山田」は、ウジヤマダ 、又は、ウジヤマダ 。 「地名の発音とアクセント」については、付録p15〜29に説明されています。 (4)「都市」トシ と「計画」ケイカク が結びつくと、トシケイカク。 「都市計画」と「税」が結合すると、トシケイカクゼイ。 「複合名詞の発音とアクセント」についてはp30〜62、「複合名詞はどのような法則で作られるか」についてはp178〜183に説明されています。 (5)「私でさえ」、「大阪へと」「それだけの」などの様に助詞がふたつ付いた場合のアクセントはどうなるのでしょう。 ワタシデサエ、オーサカエト、ソレダケノ と、あとの助詞が下がって付くのが普通です。前にくる名詞が起伏の場合、(「彼でさえ」)は名詞のアクセントが生きて(「カレデサエ」)。助詞は2つとも下がって付きます。これに関連する記述はp210からの「第8節 助詞および助動詞」にあります。 (6)数詞・助数詞について。 例文:今年2016年は閏年なので2月は29日まであります。 コトシ ニセン・ジューロクネンワ ウルードシ ナノデ ニガツワ ニジュー クニチ マデ アリマス 「数詞+助数詞の発音とアクセント一覧表」はp63〜89に、「数詞・助数詞の発音とアクセント」はp223〜226に掲載されています。 また、2月 ニカ°ツ を副詞的に使うと、ニカ°ツ と平板になることについては、p209「第5章 その他の単語のアクセント 第4節 名詞類の副詞的用法」に詳しく出ています。 (7)動詞・形容詞の活用は? 動詞、形容詞の見出し語は終止形です。 (三省堂の辞典には、例えば動詞「話す」ハナス では、 ハナサナイ 、 ハナソー 、 ハナシマス 、 ハナシテ 、 ハナセバ 、 ハナセ 。 形容詞「冷たい」ツメタイ では、 ツメタカッタ 、 ツメタク 、 ツメタクテ 、 ツメタケレバ 、 ツメタシ などの形も示されています。) NHKの辞典ではp192〜202に「第3章 動詞のアクセント」があり、p192、193に「表5 動詞の活用形および助詞が付いたときのアクセント」、p200、201「表6 動詞に助動詞が付いたときのアクセント」としてまとめられています。 形容詞に関しては、p202〜207に「第4章 形容詞のアクセント」があり、p203に「表7 形容詞の活用形および助詞が付いたときのアクセント」、p206に「表8 形容詞に助動詞が付いたときのアクセント」としてまとめられています。 辞典の付録の部分には、日本語についての様々な事柄がアクセントを中心にコンパクトにまとめられています。辞典をひく時は、下調べなどで時間に余裕がなく、この部分をじっくり読むことがありません。しかし、そこにも書かれていることですが、アクセントにも基本となる法則性があります。それを理解するといろいろな言葉に応用できますし、例外の意味も納得でき、おもしろさも出てくることでしょう。 音訳の基本としてのアクセントや無性化、イントネーションなどを、さまざまなテキストで学ばれていることと思います。参考までに、発行年が1975年と古い本ですが『美しい日本語の発音、アクセントと表現』(田代晃二著 創元社刊)にも、アクセントの法則がわかりやすく書かれています。 4. もっと知ろう!「ウェブスタジオ・なにわ」(第5回) 〜ボランティアの皆さんから寄せられる質問などを、毎回少しずつ紹介しています〜 「ウェブスタジオ・なにわ」に関する疑問に少しずつお答えするこのコーナー。210号(2015年6月1日発行)から始まり、今号で5回目になります。第1回〜第3回は「製作範囲外」について、そして第4回は「ウェブ校正の手順」についてご紹介しました。ウェブ校正票に関する疑問はまだまだたくさん耳にします。そんな疑問の数々をQ&Aの形でお答えしていきたいと思います。今回は、音訳者に届くウェブ校正票についてのご紹介ですが、校正者、編集者のみなさんもぜひご一読ください。 Q1. 校正票一覧画面  で、時間表示のある項目とない項目があるのは何故ですか? A1.時間表示のある項目は校正者からの指摘事項、ない項目は編集者からの指摘事項です。編集者は、校正者からの指摘事項の後に行を追加する形で記入していくため、時間表示はありません。なお、校正者からの校正票が届くのは1回のみですが、編集者からは複数回来ることがあります(編集者は校正票を何回でも送信できます)。 Q2. 校正票一覧画面  にある「修正欄」、「確認欄」の見方を教えてください。 A2.「修正欄」は音訳者が訂正録音したかどうかが、「〇」または「−」で表示されます。「確認欄」は編集者が訂正録音の確認をして、OKなら「〇」、再検討をお願いする場合は「×」を入力します。「×」の付いた指摘事項があったら、再度その箇所を聞き直して、訂正録音を検討してください。 Q3.訂正録音をした後、  校正票一覧画面  で修正済みのチェックを入れ忘れ、修正済み音訳データを送信してしまいました。後から入れる方法はありますか? A3.修正済み音訳データを送信した後に校正票にチェックを入れることはできません。校正者、編集者には、「修正欄」が「−」のままの校正票が届いてしまいます。「訂正されなかったのかな?」と不安に思われますので、連絡票などで、「訂正しましたがチェックを入れ忘れました」などと連絡してください。 Q4. 校正票一覧画面  にある「校正状況欄」の“確認済”、“承認済”の違いは? A4.校正者、編集者から校正票が送信されると“確認済”の表示が出ます。編集者が編集を終え、校正票の「確認欄」にすべて「〇」を入れて送信すると“承認済”となります。 “承認済”が表示されると、編集がひとまず終了しデイジー校正が始まったということがわかります。このタイミングで  校正票一覧画面  を見ると、「校正可否欄」は “なし” となっています。 Q5. 校正票一覧画面  の校正欄に「仮校正票」とありました。どういうものですか? A5.紙の校正表で校正した場合でも、「ウェブスタジオ・なにわ」で音訳データのやり取りができるようにするため、「仮校正票」と入力した校正票を送信しています。音訳者の方の手順は次の通りです。 @「ウェブスタジオ・なにわ」で、「仮校正票」と書かれた校正票をダウンロードする。 ARecdiaで、紙の校正表に従って訂正録音をする。 B「ウェブスタジオ・なにわ」の「修正済音訳データを送信する」で送信する。 Q6.校正者が決まったかどうかをウェブで知ることができると聞きましたが……。 A6. 製作依頼画面 の「製作依頼全体を表示」をクリックすると、 製作依頼詳細画面 になります。この画面を下にスクロールすると「校正者」の欄があり、担当者が決まっていれば名前が記載されています。 Q7.編集からのウェブ校正票で訂正録音するとき、Recdiaに表示される「時間」の記入をしてほしいというお願いがありました。どのようにしたらいいですか? A7.このお願いに関しては、再検討することになりました。「時間」の記入は、今のところ不要です。 次回は、校正者、編集者にとってのウェブ校正票についてご紹介します。 5. わかる 使える 広がる!デイジー図書徹底解説(第1回) デイジー図書について解説する新コーナーです。デイジー図書のしくみを解説しながら、どのように利用されているかを紹介していきます。今回は、「グループ」についてです。 デイジー図書における「グループ」 デイジー図書では、編集時に音声の区切り(フレーズといいます)に印を付け、印のあるフレーズに戻ったり、次の印のフレーズに飛んだりして聴くことができるように作ります。この印が「グループ」です。グループというと集団とか一定のまとまりといった印象を受けますが、デイジー図書におけるグループは、必ずしもまとまりを指しているわけではなく、区切りを付けた場所を示す言葉として使っています。グループという印を付けた場所というイメージを描くと、わかりやすいと思います。 グループの利用のされ方 利用者は、デイジー図書凡例の「図の始めと終わりをグループで区切っています」、あるいは本文中の「参考文献の各タイトルにグループで移動できます」といった音訳者のアナウンスを聞き、どの場所にグループの印が付いているかを知ります。グループの印が付いていると、図の説明文を何度も先頭に戻って聞く、あるいは図の説明文を飛ばして本文だけを聞いていき、後から該当の図の説明文に移動して聞くということも可能になります。 具体的なグループの例 (1)始めと終わりにグループの印を付ける。 @音声:デイジー図書凡例で、「図の始めと終わりをグループで区切っています」 例1 グループを付けるフレーズ:「〇ページ図」「図 終わり」 例2 グループを付けるフレーズ:「〇ページ 図3枚」「図1」「図2」「図3」「図 終わり」 A音声:デイジー図書凡例で、「注の始めと終わりをグループで区切っています」 例1 グループを付けるフレーズ:「注」「注 終わり」 例2 グループを付けるフレーズ:「注」「注1」「注2」「注3」「注 終わり」 ※注の場合は、「注3つ」とは読みません。 ※短い注や、本文中に読みこんでいる注には、グループを付けないことが多いです。 (2)移動しやすいように、フレーズの最初にだけグループの印を付ける。 このケース場合、グループに関するアナウンスは、デイジー図書凡例ではなく、本文中の該当箇所に入れます。代表的なコメントの例を記載します。 @索引 音声:「あ行、か行にグループで移動できます」 グループを付けるフレーズ:「あ行」「か行」・・・「わ行」 A商品紹介 音声:「各商品にグループで移動できます」 グループを付けるフレーズ:「@炊飯器」「A冷蔵庫」・・・「E洗濯機」 B料理レシピ 音声:「材料、作り方にグループで移動できます」 グループを付けるフレーズ:「材料」「作り方」 C年表 音声:「各年代にグループで移動できます」 グループを付けるフレーズ:「1970年代」「1980年代」・・・「2010年代」 DQ&A 音声:「各質問にグループで移動できます」 グループを付けるフレーズ:「質問1」「質問2」・・・「質問16」 グループは簡単に移動して聞くことができるとても便利なものですが、付け過ぎるとかえって使いにくくなる場合もあります。どのように利用されるかを想像し、どこにどのように付けたら使いやすいかを考えなければなりません。 次回は、デイジー図書で使われる用語について解説します。 6. 館からのお知らせ ★2016年度 音訳ボランティア養成講習会(1)、(2)、(3)受講者募集中 当館で蔵書を音訳してくださる方を養成するための講習会です。発声・発音から学ぶ初心者から、すでに地域で音訳活動中の方まで、レベルに合わせて受講していただけます。(1)、(2)は4月から半年間、(3)は5月から1年間です。周りの方々に、ぜひご案内ください。詳細は録音製作係(電話:06-6441-1017、メール:rec@iccb.jp)まで。 ★活動3年未満の方対象「音訳ボランティアフォローアップ講習会(会話文の読み方)」開催 音訳基礎講習会および音訳ボランティア養成講習会(3)を修了し、当館での音訳ボランティア活動(蔵書、雑誌、プライベート製作)が3年未満の方が対象です。 日時:2016年5月27日(金)10時〜15時。 申込:録音製作係まで、メール(rec@iccb.jp)かファクス(06-6441-1027)でお申し込みください。 以上