日本ライトハウス情報文化センター        「ワンブックワンライフ」2012年8・9月号  <表紙イラスト:(武部はつ子画)>海辺の砂浜。ゴーグルをつけ、魚とりの道具を持った水着姿の男の子、麦わら帽子に水玉のワンピースを着た女の子。貝とカニに出会って、女の子が「ジャンケンしよ・・・!!」「?」と目を丸くする貝。はさみを振り上げて「そら、あきまへん・・・」とカニ。 (目次) ◇掲示板 ◇センターのページ ・高齢化社会における視覚障害者情報提供施設の役割 ◇報告のページ  ≪掲示板≫ ○「点訳技術講習会」を10月から開講  当館のボランティアとして、点訳に携わっていただく方を養成するための「点訳技術講習会」を下記の通り開講します。ぜひご応募、またはお知り合いの方への宣伝にご協力ください。  日時 10月5日〜来年3月15日まで 毎週金曜日10時〜12時、全20回の予定  場所 当館4階会議室  内容 前期は点字の読み書き、点字のルールなどの基礎講習。後期はパソコンを使っての実習。前期終了後に試験をし、合格者のみ後期を受講可。後期はパソコンが必要になります。  定員 10人程度  適性試験 9月21日(金)13時30分〜15時30分  お問い合わせ、お申し込みは、点字製作係(電話06-6441-1028)までどうぞ。 ○9月22・23日は「日本ライトハウス展」へ  「日本ライトハウス展〜全国ロービジョンフェア2012」(読売光と愛の事業団共催)を9月22日(土・祝日)・23日(日)、難波御堂筋ビル7階ホールで開催。同封のチラシをご覧ください。 ○「点字毎日」へボランティア施設見学会 ボランティア友の会では、今年度の施設見学会として、毎日新聞の「点字毎日」を訪ねることになりました。「点字毎日」は日本ライトハウスの創業と同じ1922年(大正11年)、同じく大阪の地で創刊され、今年で90周年。世界に類を見ない点字の週刊新聞として、一度の休刊もなく、発行され続けてきました。めったにない機会ですので、ぜひご参加ください。  日時 10月16日(火)午後2時〜3時30分  場所 毎日新聞大阪本社(地下鉄四つ橋線西梅田駅から地下道を通って西へ10分)  定員 23人(点字毎日のご都合により厳守)  申込 3階総務係(電話06-6441-0015)で8月7日(火)から受付開始。先着順で、定員になり次第締め切らせていただきます。 ○8〜9月の休館について 8月12日(日)〜20日(月):夏期休館・ボランティア活動休止(3階総務係、4階会議室のみ17日(金)・18日(土)開館) 9月15日(土):振替休館(17日月曜指定祝日分)      ≪センターのページ≫     高齢化社会における視覚障害者情報提供施設の役割     第21回視覚障害リハビリテーション研究発表大会に参加して  6月16日・17日、視覚障害リハビリテーション研究発表大会が埼玉県所沢市の国立障害者リハビリテーションセンターで開催されました。リハビリの現場に携わる職員から眼科医師、教育者、研究者など200人を超える参加者が集まり、点字、歩行、弱視、教育、機器やPC、盲ろうなど多岐にわたる発表と議論が行われました。今回の大会テーマである「高齢化社会と視覚リハビリテーション」についても、さまざまな視点から報告・議論が行われ、非常に興味深く、私たちのサービスの課題を考えさせられましたので、これを中心にご報告します。 (総務係主任 林田 茂) ◇高齢者のリハビリテーション  基調講演で紹介されたEU統計局(ユーロスタット)の2001年のデータによると、「生後から4歳までに障害をもつ人はその年齢人口の約4%で、 50〜54歳の年齢層では20%が障害をもち、75〜79歳の年齢層では50%が障害をもつ。」とあるように、高齢者と障害の関係は非常に深く、高齢者のリハビリテーションとは障害をもつ高齢者のリハビリテーションであろうという提言がありました。また、高齢になって受障する障害は@視覚、A認知症、B聴覚、C骨関節、と視覚障害が1位に挙げられ、私たちの役割の大きさを感じました。 ◇視覚リハビリテーションの“空白地帯”  「視覚リハビリテーションの空白地帯」をテーマにシンポジウムが行われ、5人の方が、高齢期、地域、乳幼児、受障直後、制度という5つの視点から、それぞれが感じる“空白地帯”について発表しました。その中で、特に高齢期と地域についてご報告します。 高齢期の空白  視覚障害総合支援センターちばの稲垣直子さんからは、近年増加してきた視覚障害高齢者のニーズと課題、支援の現状などを整理していきたいとして、以下のような発表がありました。 1.高齢者にとってのニーズと課題  視覚障害の時期によってニーズは異なる。  (イ)自立を求めて訓練を受けたい   →中年期以前に障害になった高齢者に多い。パソコンを覚えたい、家事をしたいという具体的な目標をもっているためゴールが想定されている。  課題:覚える能力が衰えたり、集中力が続かず訓練期間が長期化する傾向がある。  (ロ)生きる希望として訓練を受けたい   →中年期以降に障害になった高齢者に多い。 訓練により生きる希望を見出す、または訓練を受けることを生きがいや楽しみにする。  課題:最終的な目標が定まっていないため、訓練を終えたあとの次につなげることが難しい。  (ハ)日常生活の充実のために訓練を受けたい   →高齢期以降に障害になった人に多い。 家族から「やることがないので何かをやらせたい」と相談が多い。専門家に入ってもらって訓練で何とかしてほしいという希望が強い。  課題:本人の希望ではないので本来の訓練の対象にならない。 2.支援の現状  訓練期間を延長して対応しているが、無期限には対応できないのでいつかは終了してしまう。ただ何年も継続しているケースもあるので、本当に必要なニーズの掘り起こしができていない。   また、高齢になると視覚障害の問題より記憶力や体力的な問題が多く、視覚リハのアプローチだけでは解決できないことがある。一方、介護事業者には視覚障害に対する知識、技術がないため適切な対応をしてもらえないことがある。 訓練終了後の“空白”を作らないためにも、介護や他の福祉サービスとの連携が必要だと思われるが、機能分担がしっかりできていない。 3.支援のあり方  高齢者に対するリハの役割を整理し、高齢者のニーズと介護の視点を理解した上で対応することが重要。多様な問題を抱える高齢者の支援には、棲み分け的な支援ではなく、医療、相談支援事業者、介護提供事業者等とのチームアプローチが必要である。 地域の空白  堺市健康福祉プラザの原田敦史さんから、震災支援を通して感じた地域の空白について発表があり、情報を届けることの難しさを改めて感じました。  東日本大震災の支援のなかで、多くの人が視覚障害の団体と接触したことがなく、音声時計や拡大読書器という道具を知らなかったということが明らかになり、宮城県では支援を希望した5割弱の人が視覚障害者用機器等について知らなかったと回答した。当然伝わっていると思われていた情報が伝わっていなかったことに驚いたが、宮城県にも相談の窓口として、行政、医療関係、点字図書館、盲学校、視覚障害者協会、ボランティア団体等があるにも関わらず情報が届けられていない状態を考えると、実は情報が届いていない“空白”地帯が全国にもっとたくさんあるのではないか、これからは発想の転換が求められている。 空白を埋めるには・・・  最後に座長の吉野由美子さん(視覚障害リハビリテーション協会会長)から、視覚リハを専門とする私たちは、目の前の利用者に対して一生懸命問題を解決しようと努力しているが、実は他の部分が見えなくなっているのではないか。努力していても届いていない部分があることを、もう一度明確に理解して物事を組み立て直そうというのが、この企画の趣旨であると話され、あらゆることを視野に入れた上で、私たちには「何ができるのか」、「何をすべきなのか」を考えていかなければならないと締めくくられました。  シンポジウムを通して感じたことは、年齢を重ねることと比例して視覚に障害を受けられる方が増えていて、その方たちが受障後の相談をする場所・情報を受け取れる体制がまだまだ未整備であること。支援に結び付いた方でも、その後のケアと受け皿がうまく繋がっていないために空白が生まれている現状を見過ごしてはならない、ということです。  今回、視覚リハ大会に参加して、多くの専門職の方の研究や医療体制の進歩と技術の躍進を目の当たりにしましたが、その研究成果や技術を、支援に結び付いた人に対してだけではなく、支援に結び付いていない人に活かしていくアプローチの在り方を考え、実践していきたいと思います。 ◇高齢者にも有効!? iPad の可能性  今回の発表の中で、関心の高かったものに iPadやiPhone(スマートフォン等)を用いた取り組みがありました。とても印象に残ったのは、タッチパネルの上で指を使って操作できるこれらのタブレットPCやスマートフォンは、視覚障害者が不自由を感じる“見る・読む・書く”というコミュニケーションを広げ、特にロービジョン(弱視)の方の情報入手の方法を大きく変える可能性を持っていることでした。今回私が体感できたiPad の魅力を紹介すると・・・。  @ 直観的な操作  高齢の視覚障害者や「パソコンはちょっと・・・」という方にも直観的に操作できるのが魅力。  A 拡大読書器になる  背面の内蔵カメラで、画面に表示させ“拡大文字”にできる。  B読み上げ機能(ボイスオーバー)が充実  アイコンやボタンを読み上げたり、OCR機能を追加して、その場で読み上げさせることもできる。  Cデイジーも聴ける  マルチメディアデイジーや音声デイジーも利用することができる。  D文字を書く  手書きで書いた文字をテキストデータに変換。音声入力機能も研究中。  Eナビゲーションへの期待  iPad を持ち歩きGPS機能と連動して位置情報を確認できる。 iPadやスマートフォンは、9月の日本ライトハウス展でもセミナーを開く予定ですので、関心のある方はぜひ見に来てください。      ≪報告のページ≫ ○「万が一の計画停電」への対応について  関西電力から「万が一の計画停電」(9月7日まで)が発表されました。停電になると、当館はエレベータや電灯、電話、空調、トイレも使えなくなります。「万が一」ではありますが、計画停電が実施された場合、当館では、すべての活動・業務を以下のように休止しますので、ご了承ください。  *午前に実施の場合=朝から休止し、復旧後再開  *午後に実施の場合=停電30分前から午後5時まで休止  なお、当センターの計画停電グループは「5−E」です。詳しくは、3階総務係(電話06-6441-0015)までどうぞ。 ○「警報」発令時のボランティア活動の休止について                    館長 竹下 亘  台風や異常気象による天災が相次いでいます。当館では警報が出た場合、以下のとおりボランティア活動を休止しますので、ご了承ください。(職員は可能な限り出勤し、業務を行います。)  @大阪府下に「大雨、洪水、暴風、暴風雨、大雪警報」のいずれかが発令された場合、来館サービスやボランティア活動は以下の通り休止する。 *午前7時現在、警報が出ている場合=午後1時まで休止  *午前10時現在、警報が出ている場合=午後1時以降休止 A開館後に台風等が接近した場合は、警報が出た時点で休止する。  Bその他、館長が危険と判断した場合、休館することがある。 ○「関西視覚障害者囲碁大会」に60人が参加  「第5回関西視覚障害者囲碁大会〜日本ライトハウス杯」が7月3日(火)、当館4階で開催され、関西各地から60人が参加。白と黒の碁石が手触りで識別できる専用の9路盤(縦横9本の線で構成)を使い、熱戦を展開。クラス別に5組15人の上位入賞者に表彰状、5人の方に敢闘賞を贈りました。来年も当館で開かれる予定です。 ○製作部の永井明美職員が退職  製作部マルチメディアデイジー(MMD)担当の永井明美職員がご都合により退職しました。永井職員は2005年秋から勤務し、事務や録音製作業務を経て、2010年からMMD担当に従事。MMDに熟達し、ボランティアの皆さんにも信頼されていたので残念ですが、今後のご活躍をお祈りします。      あゆみ 【7月】 3日 第5回関西視覚障害者囲碁大会 5日 ボランティア友の会世話人会 6日 専門点訳講習会・楽譜コース開講 7日 オープンデー(館内見学日) 10日 見学:福知山市視覚障害者協会 11日 見学:大垣市点訳グループ「愛盲会」 12日 見学:寝屋川市「うらしまさん」 29日 MMD教科書体験・活用セミナー      予定 【8月】 14日 夏期休館(〜18日)    ※3階、4階は17日、18日開館 25日 オープンデー(館内見学日、要予約) 【9月】 6日 ボランティア友の会世話人会 8日 オープンデー(館内見学日、要予約) 13日 見学:松山盲学校 14日 灯友会バザール(〜15日、当館) 15日 振替休館(3、4、5階のみ開館) 22日 日本ライトハウス展2012(〜23日、難波御堂筋ビル、全館休館) 編集後記 出張のついでの楽しみは、その土地 ならではの駅弁と野鳥との出会いです。今回出張した所沢市の国立施設はたくさんの木々に囲まれていて、そこで関西では見られない「オナガ」に出会えて感激しました。名前のとおり尾が長く、頭部は黒、胴体部分は白い、翼の青い鳥です。カラスの仲間なのにとても綺麗な鳥でした。(茂) =ONE BOOK ONE LIFE 2012年8・9月号= 発行  社会福祉法人日本ライトハウス情報文化センター 発行人 竹下 亘 住所  大阪市西区江戸堀1丁目13−2(〒550−0002)     TEL 06−6441−0015 FAX 06−6441−0095 発行日 2012年8月1日