ろくおん 通信 No.212号 発行日:2015年10月1日 発行:日本ライトハウス情報文化センター 録音製作係 発行責任者:竹下 亘  〒550-0002 大阪市西区江戸堀1−13−2  電話 06-6441-1017(録音製作係直通)  http://www.iccb.jp/ 主な見出し 1.聴いてわかる録音図書をつくるために(第25回) 2.録音の音量にご注意ください 3.編集のひろば 4.これだけは知っておきたい!デイジー図書のしくみQ&A 5.もっと知ろう!「ウェブスタジオ・なにわ」(第3回) 6.館からのお知らせ 主な見出し、終わり。 1. 聴いてわかる録音図書をつくるために(第25回) 「小説の読みについて」 久保洋子  今回は、小説です。最初に、利用者にとっての小説ということを考えてみたいと思います。  世の中には色々な本があふれています。読者の側から見ると、現代社会を知りたい、日本の政情を知りたいというようなものから、家庭の医学、料理の本など知識を得たいというもの、芸能関係のニュース、それに小説、ジャンルは本当に様々です。小説を読むということは、私たちにとっても利用者にとっても娯楽です。ということは、楽しめるものでなければなりません。私たちが読んでいる小説が本当に楽しめるものになっているのか、一度考えてみることが必要かもしれません。  楽しめる小説を読むために気をつけなければならないことを思いつくままに書いてみます。 台詞を誰が喋っているのかわからないのでは困ります。でも、声や言い回しを口先で作ったのではダメです。ではどうするか、これから先は講座で学んだことの受け売りです。  第一に、原本をよく読み込むこと。録音する時には、字面を読むのではなく、自分が中身を伝える気持ちで読むことが大切です。  第二に、長続きする安定した声が大切です。不安定な声、不自然な発声は利用者がそのことに気を取られて十分楽しむことができない原因になります。  その上で、台詞は自分の姿勢、目線の変化などで読み分けます。  例えば、威張っている人の台詞の場合。背中をまるめて威張る人はいないと思います。その人の気持ちになってその時の自然な動作を思い描き、その動作で台詞を言ってみてください。  二人の人物の掛け合いの場合は、例えその二人が同じ士でも、お互いの相互関係を考えて場の情景を思い描き、それぞれの姿勢、目線を自分でやってみて台詞を喋ります。  重要なのは、声は決して作らない、自分の声で読むということです。意識的に声を変えたり頭で考えて演じたりしなくても、人間関係がよくわかる会話になると思います。  最後に、小説を校正する時、音訳者の読み方についてどこまで書いていいか迷っていらっしゃる方が多いようです。読み方が不自然だとか、台詞の変わり目がよくわからないなど、利用者が楽しめるものになっていないのではないかと思ったら、職員に聞いてみてもらってください。  利用者に本当に喜んでもらえる小説を、力を合わせて作っていきたいものです。 2.録音の音量にご注意ください  最近、校正者から「音量が大きい」と指摘され、音量を下げて録音する音訳者がいらっしゃいます。その結果ノイズが発生して音質が悪くなり、読み直していただくケースも発生しています。  録音製作係では、これまで音量のピークが「−12dB(デシベル)」くらいでもOKとしていましたが、これはサピエ図書館で提供されているデイジー図書の平均値よりかなり小さい音量です(全視情協が定める「サピエ図書館登録音声デイジー文書製作基準」では録音のピークは−6〜−8dBくらいと定められています)。全国的なバランスを考慮し、今後は当センターでも音量のピークを−6dB から−10dBにしたいと思います。音量のピークが上記の値に達していない方は、新しい本を読む時から音量を変更してください。また、校正者から音量に関する指摘があった時は、必ず職員にご相談くださいますようお願いいたします。 3.編集のひろば  今日、ひょっとしたら、ウェブスタジオ・なにわのトップページにずらりと校正票が並んでいるかもしれません。デイジー編集者からのウェブ校正票は、「あぁ〜1冊読み終わった!」 とちょっと一息ついた後、次の図書に取り掛かり、その録音も佳境に差し掛かった頃にひょっこり届きます。そして、一度に全wavファイル分の校正票が届くので、デイジー編集者からの校正票を送り始めた当初は、「ギョッとしました!」「何?これ!と思いました」など、びっくりされた音訳者も多かったようです。校正票を送信する側の編集者も、最初の内は慣れない作業に四苦八苦。やっと最近、混乱なく送信できるようになってきました。  今回は、そんなデイジー編集者のウェブ校正票事情を、編集作業にスポットを当てながらご紹介したいと思います。 《デイジー編集者の作業手順》 @校正をしながらデイジー編集をしていく。 Awavファイルごとにウェブ校正票に記入する(2校正者が作成したウェブ校正票に追記)。 Bウェブ校正票に書かれている2校正者の指摘事項を確認し、編集者の確認欄に「○」又は「×」を記入する。 C全wavファイルについて同じ作業を繰り返し、編集を一旦終了。 D全体をチェックし、全部まとめてウェブ校正票を送信する。 《修正データがアップされた後の編集作業》 @修正済み音訳データをダウンロードする。 A訂正された箇所を探し出し、訂正前のデータと入れ替える。 B全体を整えてデイジー図書完成。CDに焼き、デイジー校正を依頼。  この後、デイジー校正者からの黄色い紙の校正表に基づく訂正も同じ手順でデイジー編集し、デイジー図書の完成となります。編集者からのウェブ校正票が突然ひょっこり届く、また、ドドっと一度に届く理由は、編集者のこんな作業事情にあります。  最後に、「こうしてもらえたら作業がやりやすくなるのですが……」という編集者の声をまとめてみました。 ◆訂正箇所のおおよその時間(Recdiaで表示される時間)を記入していただくと、編集が大変楽になります。ウェブ校正票の備考欄、連絡票、メモで・・・など、どんな方法でもOKです。 ◆校正票に記入しにくい内容や編集上のご提案など、編集者が音訳者にお伝えしたいことがたくさんあります。ぜひ、連絡票のご確認(できれば返信も)をお願いします。 4.これだけは知っておきたい!デイジー図書のしくみQ&A 今回はレベル(階層)に関する疑問についてまとめてみました A1:デイジー図書凡例でレベル(階層)についてアナウンスしていますが、利用者の方はデイジーのレベルをどのように利用されるのですか? Q1:デイジーでは、1番大きい見出し(「章」にあたるもの)はレベル1、次に大きい見出し(「節」にあたるもの)はレベル2、その次に大きい見出し(「項」にあたるもの)はレベル3・・・となり、規格上はレベル6まで設定することができます(辞書や学術文献的な特殊な構造ではない一般書では、レベル3ぐらいまでのものがほとんどです)。  利用者の方は、デイジー図書凡例のレベルに関するアナウンスを聞き、図書全体の構成や見出しの大小関係を把握します。  例えば、デイジー図書凡例で「この図書の階層はレベル3まであります。(中略)…レベル3は目次にない小項目です」とアナウンスされていれば、目次を聞いただけではわからない小項目が本文中にあることが分かります。 図 レベルが3まであるデイジー図書のイメージ はじめに:レベル1 第1章:レベル1  1節:レベル2   1項:レベル3   2項:レベル3  2節:レベル2   1項:レベル3   2項:レベル3 第2章:レベル1  1節:レベル2   1項:レベル3 図、終わり。  また、利用者が使用しているデイジー再生機では、移動する見出しのレベル(階層)を設定することができます。  上記の図書の場合、  デイジー再生機の移動レベルをレベル1にして見出し移動すると、『はじめに』→『第1章…』→『第2章…』と、レベル1の項目だけ移動していきます。  移動レベルをレベル2にすると、設定したレベル+上位レベルの見出しに移動しますので、『はじめに』→『第1章…』→『1節…』→『2節…』→『第2章…』→『1節…』という具合です。  レベル3にすると、『はじめに』→『第1章…』→『1節…』→『1項…』→『2項…』→『2節…』→『1項…』→『2項…』→『第2章…』→『1節…』→『1項…』と、全ての見出し項目に移動することができます。  このように、デイジー図書に適切なレベル付けがされていることで、利用者の方は迅速に見出し(章・節・項などの項目)に移動したり、もう一度聞きたい箇所を容易に探したりと、自由自在にデイジー図書を楽しむことができます。  レベル(階層)移動はデイジーの最大の利点であり、その本をどのようにレベル付けするかが、使いやすいデイジー図書にするための重要なポイントと言えます。 A2:デイジー編集では、どのようにレベル(階層)分けをしているのですか? Q2:専用のデイジー編集ソフトウェア(PRS Pro等)を使い、レベル移動ができるように、レベル付けをする見出しごとに音声のまとまりを作っていきます。  このレベル付けをした見出しをPRS Proでは「セクション」と呼んでいます。  デイジー編集では、1見出し=1セクションとなります。  よく編集者が「ここでセクションを分ける」というような表現をしますが、セクション分けをするところが、デイジー図書でレベル付けされる見出し(つまりデイジー再生機で移動できるところ)になります。 5.もっと知ろう!「ウェブスタジオ・なにわ」(第3回)  ボランティアの皆さんから寄せられる質問などを、毎回少しずつご紹介しています。  今回は、「製作範囲外送信についてもっと詳しく知りたいのですが……」にお答えします。  音訳者が、「製作範囲外」で音訳データを送信するのは、主に以下の3つのケースです。 1.デイジー校正が終了し、黄色の校正表が届いて訂正した音訳データ。 2.枠アナウンス。 3.最終チェック(ブックトラック)が終了し、白色の校正表が届いて訂正した音訳データ。  この他、編集者から「ピンクの校正表」が届いて訂正した音訳データや、編集者から追加の訂正依頼があり訂正した音訳データなど、ウェブ校正票をダウンロードしないで訂正した音訳データは、すべて「製作範囲外」で送信します。 【注意】製作範囲外で送信しない音訳データもあります。  2校正者からの校正で訂正した音訳データと、デイジー編集者からの校正で訂正した音訳データは、どちらも「ウェブスタジオ・なにわ」から校正票をダウンロードし、訂正した音訳データの名前を変えずに「音訳データ送信」の[修正済み音訳データを送信する]で送信してください。 《「製作範囲外」で送信する手順》 @訂正した音訳データがあるフォルダを開く。 ※フォルダ内のファイル名がすべて表示されていない場合は、フォルダの「名前」という項目名の端をマウスでつかんで項目の表示幅を広げ、ファイル名をすべて表示してください。 A訂正した音訳データのファイル名を変更する(枠アナウンス以外はファイル名を変更して送信します)。 ◆名前を変更するファイルを右クリックし、開いたメニューから「名前の変更」を選択。  ※フォルダ内には同じ名前のファイルが複数あります。名前を変更する音訳データは、ファイル名の後ろに「.wav」という拡張子が付いているか、音符のマークが付いているファイルです。 ◆訂正した音源であること、また、何回目の訂正かがわかる名前に変更する。 (例)訂正1回目の場合:訂正△△△01.wav  訂正2回目の場合:訂正2△△△01.wav B「ウェブスタジオ・なにわ」トップメニュー欄の、「音訳データ送信」をクリックする。 C「書名」の で図書名を選択する。 D「音訳データ」の参照ボタンをクリックし、ファイル名を変更した訂正音訳データを選択する(ページ欄の入力は不要です)。 E「製作範囲外」の□にチェックを入れる。 F「次へ」をクリック。画面で内容を確認し送信。  なお、最終データアップの際は必ず「製作範囲完了」の□にチェックを入れていただくようお願いします。  このチェックを入れ忘れると、「製作範囲外」で送信した音訳データが編集者に届きません。  チェックを入れ忘れた場合の対処法は、前回のろくおん通信(No.211)で紹介しています。 6.館からのお知らせ (1)10月の土曜日の休館日、および録音製作係の開室について ■10月17日は、日本ライトハウス展開催のため全館休館いたします。  日本ライトハウス展は10月17日(土)・18日(日)に地下鉄なんば駅から徒歩1分の難波御堂筋ビルで開催いたします。ぜひご来場ください。 ■10月10日は開室いたします。  ハッピーマンデー(体育の日)の振替休館日ですが、録音製作係は開室いたします。 (2)第28回 専門音訳講習会「音声表現技術コース・会話文の読み方編」開催  毎日新聞大阪社会事業団と当センターが主催する専門音訳講習会です。  近畿在住の音訳ボランティアを対象に、様々な音訳の依頼に応えられるよう、小説や児童書などにある会話文の読み方について、実技の講習を行います。 内容:児童書・時代小説・現代小説などの会話文について、内容が伝わりやすい読み方の実技を1日で講習します。 会場:日本ライトハウス情報文化センター4階 会議室 日程:いずれも全1日、10時〜15時の講習です。4回開催しますが各日同じ内容です。参加可能な日に1日のみ受講していただきます。  2015年11月6日(金)/11月12日(木)/11月18日(水)/11月24日(火) 定員:各日10人 受講資格:現在、施設・団体(グループ)で音訳活動中の、経験3年以上のボランティア 受講料:1,000円 申込方法:申込用紙にご記入の上、録音製作係に郵送またはご持参ください(要項・申込用紙は録音製作係にあります。お問い合わせください)。 申込締切:2015年10月20日(火)必着 申込・お問い合わせ先:〒550-0002 大阪市西区江戸堀1-13-2 日本ライトハウス情報文化センター 録音製作係 TEL:06-6441-1017 / FAX:06-6441-1027 以上