日本ライトハウス情報文化センター        「ワンブックワンライフ」2015年7月号  <表紙イラスト:(武部はつ子画)>男の子と女の子がゆかたを着て花火をしている。男の子が退屈そうに「ねえ、ロケット花火・・・」と言うと、女の子が袖口に手を添えて「だめっ・・・!こっち(線香花火)の方がロマンチック・・・(ハートマーク)」とすまし顔。消火用のバケツの傍らで犬が二人の様子を見ている。   (目次) ◇掲示板 ◇センターのページ   新メディアの製作とサピエ利用、ICT利用支援の伸びが明らかに 2014年度の主な事業実績と、過去3年間の推移 ◇ボランティアのページ ボランティア友の会主催「ガイド体験会」で新たな気づき 〜ワークショップ「視覚障害体験で見えること」を実施〜 ◇報告のページ  ≪掲示板≫ ○日本ライトハウス展〜全国ロービジョンフェア2015を10月17日、18日に開催  西日本最大級の視覚障害者用具・機器展示会「日本ライトハウス展〜全国ロービジョンフェア2015」(読売光と愛の事業団共催)を、今年は10月17日(土)・18日(日)10時から16時、難波御堂筋ビル7階ホールで開催します。  今年は“体験しよう!最先端のICT”をテーマに、外出支援、視覚補助、文字認識、音声・画像処理などに威力を発揮する注目のシステムを紹介。パナソニックのウェアラブルカメラを活用した遠隔援護サービスや、スマートフォンを使って文字・色柄・紙幣を識別したり、自分のいる場所や目的地のルートを検索できる体験コーナーなどを設けます。  また毎年、人気の用具・機器の展示では、全国から30数社が集まり、目の見えない方・見えにくい方の生活を楽しく、豊かにする便利グッズ、視覚補助具、点字・音声機器など合計200点余りを出展し、一部販売します。  さらに、今年は2年ぶりにミニステージを復活し、最新の話題や注目の情報をお届けします。  当館のボランティアをはじめ関係者の皆様には、ぜひお知り合いの視覚障害の方々やご家族にお知らせいただくとともに、当日のガイドボランティアとしてもご協力をお願いいたします。 ○桃山学院大が「ヘレンケラーの手紙」を開催 ヘレン・ケラーが岩橋武夫の招請に応えて、初めて来日したのは1937年(昭和12年)。その時、彼女が書いた自筆サイン入りの手紙が78年ぶりに発見・展示されることになったことを記念した講演会が7月6日(月)13:00〜14:50、大阪府和泉市の桃山学院大学和泉キャンパス2号館2−301教室で開かれます。ヘレン・ケラーの戦後来日時の貴重な記録映画「青い鳥のおとずれ」の上映と、毎日新聞大阪社会事業団佐和宏士事務局長と当法人關宏之常務理事の講演が行われます。特にお近くの方はぜひご来場ください。 ○7月18日(土)は「海の日」の振替休館  当館のボランティア活動とアルテ分館の図書貸出は休館しますが、8階点字製作係は開室します。また5階サービスフロアと4階会議室、3階総務係は開館します。 ≪センターのページ≫ 新メディアの製作とサピエ利用、ICT利用支援の伸びが明らかに 2014年度の主な事業実績と、過去3年間の推移  当館では毎年5月の法人理事会で、前年度の事業報告を行っています。ここに2014年度の主な事業実績を、過去3年間の推移とともにご紹介しますのでご確認ください。詳しくは当法人のホームページ(www.lighthouse.or.jp)に順次掲載している「事業報告書」をご覧ください。(館長 竹下 亘) 利用登録者は4,653人、新規登録者は89人  2014年度の利用登録者は4,653人(大阪市・府3,404人、その他1,249人)で、新規登録は89人でした。しかし、市・府の障害者手帳を持つ視覚障害者が約26,000人を数え、毎年900人前後の方が新たに手帳を取得される中、情報サービスを必要とする方はもっと多いと考えています。 点字・録音図書と新メディアの製作数 === 年度        2012 2013 2014 点字図書   261 258 248 録音図書 324 353 324 マルチメディアデイジー等 79 88 112 音声解説 5 31 34 ===  当館のボランティアが作る点字・録音図書の製作数は全国でもトップクラスです。しかも専門書の占める割合が高いため、タイトル数の増減・比較では表わせない付加価値があります。さらに音声解説や電子書籍の製作が年々着実に増えていることも、当館ならではの特長です。 点字・録音図書の所蔵数とサピエ登録数  書庫が満杯のため蔵書は常に除籍して押さえていますが、サピエに登録する点字・録音図書は年々増え続け、全国で共用されています。 === 年度  2012  2013  2014 所蔵 点字図書 9,066 9,585 9,474 録音図書 15,610 14,643 15,011 登録 点字データ 8,298 8,615 8,903 録音データ 4,319 4,733 5,113 === === 図書の借出数とサピエによるデータ利用数 年度   2012  2013  2014 借出 点字図書 2,609 2,541   3,111 録音図書 56,571 69,274  65,062 サピエ 点字データ 30,267 31,009  52,011 録音データ 110,625 166,777 192,917 === 郵送による借出数も漸増していますが、それ以上にサピエからのダウンロードやストリーミングによる利用が大幅な伸びを遂げています。 用具・機器相談、ICT講習、対面の利用者数 === 年度   2012 2013 2014 サービスフロア来室者 5,114 4,971 4,869 対面リーディング 1,149 1,083 999 パソコンQ&A 2,296 2,520 2,918 ICT機器講習 413 674 671 イベント来場者 1,588 1,714 1,994 ===  当館では5階のサービスフロアを中心に対面リーディング、用具・機器の利用相談、パソコンや電子機器の使い方講習、日本ライトハウス展や映画会などの開催を行っています。これらによる来館・電話等の利用者数は地の利も相まって延べ1万件を超え、最近は特にパソコン等ICT機器の利用相談者が増える一方です。 ≪ボランティアのページ≫ ボランティア友の会主催「ガイド体験会」で新たな気づき 〜ワークショップ「視覚障害体験で見えること」を実施〜  6月4日の午後、ガイド体験会を行い、14人が参加しました。今年は視覚障害の方の見え方や手引きの基本を学んだ後、アイマスクをして、視覚以外の感覚を使い、「コミュニケーション」「さわる」「食べる」のワークショップを行い、盲導犬の話も聞きました。(総務係 加治川 千賀子) 視覚障害の理解と安全な誘導について  視覚障害とは、全く見えないだけでなく、視力が弱い、視野が狭い、視界が歪むなど見えにくい状態も含まれ、様々な見えにくさがあることを理解したサポートが必要です。視覚障害の方と安全に歩くには、半歩前に立ったサポート側の腕を持ってもらい、サポート側は二人分の幅を意識しながら歩きます。お互いに安心できる方法を相談しながら歩くのもいいですし、余裕ができたら景色の説明やおしゃべりを加えると楽しく歩くことができます。 ワークショップ@ 見た状況を説明しよう  最近の図書は図や表を含むものが多く、当館のボランティアの方々も工夫し、苦労されているところです。そこで、視覚障害の方に絵・写真や地図などを説明する時、どこに注意したらよいか体験しました。「モナリザ」の絵を選び、安心した様子で説明される方。逆にフロア地図を選んだ人は一人もなく、言葉だけで伝えるのは難しい、と避けられたようでした。担当した原田職員からは、ビジュアルな資料でも地図でも「全体→部分→細部」の順に説明すると、イメージを描きやすいというアドバイスがあり、納得された方が多かったようです。 ワークショップA さわってみよう  指先からどれぐらいの情報を得られるのか、手触りの違う5枚のカードをさわってみました。唯一判別できたのはふだんよく使うラガールカードですが、カード残高はわかりません。「改札口でカード残高を聞かれた時は不思議に思い ましたが、その理由がわかりました」と視覚障害の方の不自由さに気づいた方もおられました。 ワークショップB 食べてみよう  私たちは食べ物を目と舌で味わいますが、目を使わないと味覚はどう変化するでしょう。  フルーツゼリーを食べました。普段より無口に周りの人も気にならず、集中して一気に食べている方が多かったです。「食べ物を口に運ぶのが難しい」「目で楽しむ味わいは減ったが、かえって味を強く感じた」という声がありました。 盲導犬について知ろう  盲導犬ユーザーの岡本職員から盲導犬について話があり、参加者が印象深かった点は「盲導犬と目を合わせることで起こる危険性について」でした。「盲導犬は遊びたい気持ちを抑え切れず、仕事を忘れて目を合わせた人の元へ駆け寄ってしまい、ユーザーが思いがけないけがをするこ とにつながります」との説明に、熱心に耳を傾けておられました。  参加者はこれらの体験を通して、視覚障害の方々への気づきがあったり、接するときのポイントを理解されたようです。今後、館内や行き帰りで生かしていただければと思います。 === 事業者向けワークショップも実施 今回のボランティア向けワークショップと並行して、5月29日、企業や団体の方を対象に、視覚障害のお客様へのサービスやサポートのポイントを理解していただくことを目的にしたワークショップを行いました。参加者は9人で、ご好評をいただきましたので、今後も同様の企画を検討していきたいと考えています。 === ≪報告のページ≫ ○米谷治子さんと荒木良子さんが表彰  公益財団法人鉄道弘済会の第45回朗読録音奉仕者・西日本地区表彰を当館ボランティアの米谷(こめたに)治子(はるこ)さん(朗読録音)と荒木良子(よしこ)さん(校正)が受賞されました。米谷さんは33年・1,067時間(専門書712時間)に及ぶ音訳活動が、荒木さんは28年・1,600時間(同384時間)に達する校正活動が高く評価されたものです。また奈良県視覚障害者福祉センターの所属で、当館の録音製作でもご協力いただいている川添美智子さんも朗読録音の地区表彰を受賞されました。 お三方の長年のご協力に感謝するとともに心からお祝い申し上げます。 ○研究者と視覚支援学校生が当館で研修  7月、当館でお二人が研修を受けられます。一人は台湾の呉純慧博士(Wu Chunhui、女性、晴眼)で、当館で3日間、視覚障害者の情報提供サービスを学ばれます。もう一人は大阪府立視覚支援学校高等部2年の生徒さん(点字使用)で、点字製作係を中心に2日間、職場体験実習に来られます。お出会いの際には、よろしくお願いいたします。 ○3人のベテラン職員が退職  6月末日付けで当館の職員3人が退職しました。清水職員は46年、船佐古職員と後藤職員は約10年、当館の事業を支えてくれました。お世話になった皆様に感謝します。  製作部録音製作係 清水賢造  同 後藤恵里奈  サービス部用具・機器担当 船佐古昇 ○対面ボランティアの岡本道子さんがご逝去  当館の対面リーディングサービスに長年ご協力下さった岡本道子さんが4月に亡くなられていたことが、ご子息のご連絡で分かりました。岡本さんは地元の朗読グループで活動するかたわら、1998年から15年間当館で活動され、2002年から2007年には友の会の世話人としてもお力添え下さいました。長年にわたるご協力に心から感謝するとともに、ご冥福をお祈り申し上げます。 【お詫び】 先月号の本欄でご助成のご報告をした公益財団法人一ツ橋綜合財団の代表理事、相賀昌宏様の肩書とお名前が誤っておりました。深くお詫び申し上げます。 あゆみ 【6月】 3日 近畿視情協総会 4日 ボランティア友の会ガイド体験会 5日 見学:点訳ボランティア「ルレット」 12日 見学:甲賀市視覚障害者福祉協会 18日 全視情協総会・新任施設長研修会(〜19日、東京、竹下) 25日 日本盲人社会福祉施設協議会・全国大会(〜26日、福島市、竹下、久保田) 27日 視覚障害リハビリテーション研究発表大会(〜28日、福島市、岡田、久保田、花田、瀧沢) 予定 【7月】 2日 ボランティア友の会世話人会 11日 オープンデー(館内見学日、要予約) 28日 日本ライトハウス杯視覚障害者囲碁大会 30日 全視情協サピエ研修会(〜31日、玉水) 編集後記  視覚障害者の食事のサポート実習 で、幼時から全盲の方が「晴眼者が料理を目で確かめ、楽しむのと同じように、私は一皿一皿鼻を近づけ、匂いで料理を識別し、楽しみを膨らませている」と言われて目から鱗。五感の内、視覚が使えなければ、聴覚、触覚、味覚だけでなく、嗅覚も駆使するのは当然ですね。視覚依存過多の私ももっと他の感覚も磨かなくては!(竹) =ONE BOOK ONE LIFE 2015年7月号= 発 行 社会福祉法人日本ライトハウス      情報文化センター(館長 竹下 亘) 住 所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp 表紙絵 武部はつ子 発行日 2015年7月1日 定 価 1部100円 年間購読料1,000円