日本ライトハウス情報文化センター        「ワンブックワンライフ」2013年12月号  <表紙イラスト:(武部はつ子画)> 「火の用心さっしゃりましょ〜」と拍子木を打ちながら、ほっかむりをした町人風姿で夜回りをする男の子。火の用心の文字が入った提灯をマフラーに差して震えながら後をついて行く犬。「時代劇好きが高じまして・・・、さぶ〜!」   (目次) ◇掲示板 ◇センターのページ   「電子書籍」で変わる視覚障害者の読書環境 “情報共有社会”の実現を目指して ◇報告のページ             《掲示板》 ○ボランティア交流会を来年3月7日開催  毎年恒例の「ボランティア友の会交流会・総会」を来年3月7日(金)、玉水記念館で開催することが決まりました。今回はゲストに、作曲・演奏家としてご活躍をされている視覚障害の前川裕美さんをお迎えします。視力を失っていく中で見つけた出会いや夢など、演奏を交えて語っていただきます。ぜひご予定に入れてください。また、当日はバザーを行います。売り上げはボランティア友の会の貴重な活動資金となります。ご提供いただけるもの(生モノを除く)がありましたら、3階総務係までお寄せください。 ○盲導犬キーホルダー新製品入荷  日本ライトハウス盲導犬訓練所オリジナルキーホルダーができました。素材はレザー、色はイエロー・ブラックの2種類。1個500円。3階総務係で販売中。 ○NHKラジオ「聞いて聞かせて」のご紹介  見えない人・見えにくい人のための情報番組「聞いて聞かせて〜ブラインド・ロービジョンネット」をご存じですか。放送はNHKラジオ第2放送、毎週日曜日19:30〜20:00、再放送は翌週日曜日の7:30〜8:00。第1・2週はその時々の話題を、第3週は可能性に挑戦している視覚障害者の生き方を、第4週および第5週はその月のニュースや話題、コメンテーター宇野和博さんのコラムを放送しています。  過去の放送は、番組ホームページで配信中(検索 「聞いて聞かせて」)。10月27日の放送では、「日本ライトハウス展」が特集され、ビブリオバトルでチャンプ本に輝いた岡田太丞(たいすけ)さんの熱演も収録されています。ぜひお聴きください。 ○年末年始のボランティア活動について  12月27日(金)=仕事納め。ボランティア活動の最終日は各係でご確認ください。  1月7日(火)=ボランティア活動と利用者サービス再開。業務は6日(月)から再開します。 《センターのページ》                      「電子書籍」で変わる視覚障害者の読書環境 “情報共有社会”の実現を目指して  今、「電子書籍」が次々と発売され、出回っています。その評価は一長一短で、今後、どこまで普及し、どのように使われるかは未知数ですが、実は電子書籍は、視覚障害者をはじめとする読書困難者にとってこそ非常に有用で、ぜひとも普及・拡大が望まれるメディアです。視覚障害者の電子書籍の利用の現状と課題をわかりやすくお伝えします。(製作部長 久保田 文) 「電子書籍」ですべての人が読書を楽しめる?  今日、「電子書籍」と言われるのは、紙媒体の書籍をデジタル化した本のことで、以下の3種類に分けられます。 @パソコンに専用ソフトを入れる、 A携帯端末のスマートフォン(iPhone(アイフォーン)、Android(アンドロイド)など)や、タブレット型端末(iPad(アイパツド)など)に専用ソフト(アプリ)を入れる、 B電子書籍専用再生機(Amazon(アマゾン)のKindle(キンドル)、楽天のKobo(コボ)、ソニーのReader(リーダー)など)で読む。いずれも画面に表示された文字を目で読みます。  紙媒体の本を視覚障害者が読むには、発売されてから「サピエ図書館」に点字やデイジー図書としてアップされるまで早くても2〜3ヶ月は待たなければなりません。しかし、電子書籍なら、パソコンやiPhone、iPadを使える視覚障害者であれば、晴眼者と同様、発売と同時に購入し、読書を楽しむことができる可能性があります。つまり電子書籍は、私たちの究極の目標である「障害の有無にかかわらず、本の発売と同時に、すべての人が自分の読める形式で読書を楽しむことができる日」を実現するのに欠かせない媒体と言えるのです。  ただし、現在、販売されているすべての電子書籍を視覚障害者が読めるかというと、残念ながらそうではありません。      視覚障害者が電子書籍を読む方法  視覚障害者がパソコンやスマートフォンで電子書籍を読むには、次の3つの方法が考えられます。  @画面の文字を拡大したり、色を変えるなど見えやすくして、目で読む(電子書籍専用のタブレット型再生機でも、ある程度は可能)  A画面の文字を合成音声(スクリーンリーダー)で読み上げて、耳で読む  B画面の文字拡大と合成音声を合わせて使い、目と耳の両方で読む  @のように文字を拡大して見るだけであれば、ほとんどの電子書籍を読むことが可能ですが、A、Bのように合成音声で電子書籍の文字情報を読み上げるには、電子書籍自体と、再生機やソフト(アプリ)の両方が「読み上げ」に対応することが必要です。  まず、電子書籍は、表示される文字が画像データとしてではなく、文字情報のデータとして埋め込まれていなければなりません。しかし、このように作られている電子書籍は限られており、合成音声で読み上げられるかどうかは試してみないとわかりません。  また、電子書籍の再生機側では、スクリーンリーダーが組み込まれている必要があります。しかも、そのスクリーンリーダーとソフト(アプリ)が電子書籍の文字情報の読み上げに対応していなければなりません。私たちにとっては当たり前の条件なのですが、この条件を満たしているものはまだまだ少なく、今のところ、一部が対応しているにとどまっています。  現在、実際に視覚障害者がパソコン以外で電子書籍を読む方法としては、iPhoneまたはiPad+ボイスオーバー(iPhone、iPadに標準装備されているスクリーンリーダー)+Kindleアプリ(無料)を使い、AmazonのKindleストアで事前に試し読みして、合成音声で読めるかどうかを確認してから電子書籍を購入する、といったケースが多いのではないかと思います。       EPUB3(イーパブスリー)普及への期待  このように、電子書籍は、視覚障害者が自由に読書できる方式の一つとして非常に有効なもので、今後の普及が期待されます。  ただし、現在出回っている電子書籍は、上に述べたように合成音声で読み上げることができない図書が多いだけでなく、  *本文は読み上げられても図や表はまったく読み上げないか、一部しか読み上げないか、読み上げても順番が支離滅裂  *大手のインターネットサイトで購入できる電子書籍は、ほとんどが専用端末や専用アプリでなければ再生できない(Amazon=Kindle、アップル=iBooks(アイブツクス)、ソニー=Reader(リーダー)等)など、情報のアクセシビリティにはほど遠いものです。  このような問題を解決し、情報アクセシビリティを実現する電子書籍フォーマットとして開発・普及が進められているのが、EPUB3です。EPUB3は欧米を中心に普及している電子書籍の国際標準規格です。当館も参加しているデイジーコンソーシアム(デイジーの開発・普及に取り組む国際団体)が開発したDAISY4のアクセシブルな規格を採用しています。今後、特に各出版社がEPUB3で電子書籍を出版するようになれば、視覚障害のみならず、プリント・ディスアビリティ(※)を持つすべての人々の読書環境は大きく変わることになります。  (※プリント・ディスアビリティ(Print Dis-ability)=視覚障害、発達障害、ディスレクシア、知的障害、加齢による視力低下等、様々な理由により活字印刷物を読む事が困難な状態)  EPUB3の電子書籍であれば、視覚障害などによるプリント・ディスアビリティの人は、再生機を選ばずに合成音声で読むことができます。また、マルチメディアデイジー図書もEPUB3のデータをそのまま使い、音訳の音声を加えることで作れるので、製作作業が非常に効率的になり、製作時間も短縮することができます。さらに、点字図書もEPUB3のデータを自動点訳することで(校正作業は無くなりませんが)、効率化を図ることができます。突き詰めて言うと、出版社から発売前、より早い時点でEPUB3のデータが提供されれば、電子書籍の発売と同時に、点字図書、音声デイジー図書、マルチメディアデイジー図書が提供できるのです。  図書や雑誌が出版と同時に、活字・大活字・点字・音声デイジー・電子書籍・マルチメディアデイジー図書等、一人ひとりが読みやすいメディアで製作・提供され、各自が読みたいメディアを自由に選ぶことができる−−これこそが、私たちが目標とする情報共有社会の姿です。            《報告のページ》 ○対面Vの集いで有意義な意見交換  今年度の対面リーディングボランティアの集いが11月14日開かれ、23人が集まりました。今回はキネマ・アンサンブルの渡邊洋子さんによる「シネマ・デイジー」の紹介の他、利用者6人にもご参加いただき、利用者とボランティア双方から普段行えない有意義な意見交換を行うことができました。 ○ボランティアの山田英明さんがご逝去  10年余にわたり録音製作係の作業をお手伝いいただき、昨年からはボランティア友の会の世話人もお引き受けくださった山田英明さんが11月14日、病気のため亡くなられました。告別式のご挨拶で奥様がもらされた「本当に誠実で優しくて温かい人だった」と言われた通りの方で、65歳での早世が惜しまれてなりません。心からご冥福をお祈り致します。 === 肥後橋ちょっと“触れ歩き”B  十和田湖畔にある高村光太郎最後の作品「乙女の像」(1953年)はご存じかと思います。ところが、あの像は台座が高く、背を伸ばしても、足の先しか触れないのです。長年悔しく思っていたところ、何ということでしょう!光太郎の瓜二つの作品「みちのく」が御堂筋彫刻ストリートにあったのです。場所は淀屋橋交差点東南角から南へ300m。ぜひ一度触って観て下さい。 === あゆみ 【11月】 7日 ボランティア友の会世話人会、自衛消防訓練 8日 見学:猪名川町音訳「リヴィエール」 9日 オープンデー(館内見学日)、ライトハウス祭り(鶴見事業所) 14日 対面リーディングVの集い 20日 見学:Vグループ「ステッキ」 22日 法人理事会(鶴見事業所)、見学:四條畷市点訳V「あゆみ」 予定 【12月】 5日 近畿視情協V研修会(玉水記念館) 9日 V友の会施設見学会(奈良・慈母園) 14日 オープンデー(館内見学日、要予約) 19日 わろう座(映画体験会「のぼうの城」) 25日 サービス最終日 27日 仕事納め 【1月】 6日 仕事始め(法人新年互礼会) 7日 ボランティア活動・サービス再開 11日 振替休館(3、4、5、7階は開室) 編集後記 ちょっと肌寒かったけれど関西サイクルスポーツセンターに行ってきました。目標は5歳の娘が一人で自転車に乗れるようになること。はじめは「パパ、ちゃんと持って!」と危なっかしく乗っていましたが、帰るころには、スタートしてちゃんと止まることもできるようになりました。春から小学生、いつまで一緒に遊んでくれるかなぁ(茂) =ONE(ワン) BOOK(ブツク) ONE(ワン) LIFE(ライフ) 2013年12月号= 発 行 社会福祉法人日本ライトハウス      情報文化センター(館長 竹下 亘) 住 所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp 表紙絵 武部はつ子 発行日 2013年12月1日 定 価 1部100円 年間購読料1,000円