日本ライトハウス情報文化センター        「ワンブックワンライフ」2016年1月号  <表紙イラスト:(武部はつ子画)> 猿が裃、袴、烏帽子に身を包み、扇子と鈴を持って神楽を舞っている。男の人がは拍子木を「ちょん・・・」と打つ。晴れ着の女の子が手を叩いて「あら、めでたやな〜!」   (目次) ◇掲示板 ◇センターのページ ・新年のご挨拶 ボランティア、支援者と力を合わせて、情報環境の改善を    ・盲導犬について学び、ふれあえた有意義な一日 日本ライトハウス盲導犬訓練所へ施設見学会    ・ バリアフリー映画会『マエストロ!』&ミニ音楽会を開催       大阪府立視覚支援学校とコラボした音楽に200人が魅了されました ◇報告のページ  ≪掲示板≫ ○ボランティア交流会を3月8日(火)に開催  毎年恒例の当館ボランティア友の会交流会を来年3月8日(火)、玉水記念館で開催します。 今年は2部構成で、第1部は当館の利用者サービスや視覚障害者用具・機器、点字・録音図書等の製作の様子についてご紹介します。第2部はゲストをお招きして落語とハーモニカ演奏を披露していただきます。ぜひご参加ください。また当日はバザーを行います。売上は友の会の貴重な活動資金になります。ご提供いただける品物(生もの、景品等を除く)がありましたら、3階総務係までどしどしお寄せください。 ○専門音訳講習会デイジー編集コースを開講  毎日新聞大阪社会事業団との共催で標記講習会・応用編を開講します。専門書を含め、聴いてわかる図書を作るための編集を学びます(PC編集の実習ではありません)。  日時 2月12日(金)か17日(水)のいずれか1日、10時〜16時  対象 既にデイジー編集作業を10タイトル以上行っている方  参加費 1,000円  申込は録音製作係(電話06-6441-1017)へ要項請求の上、1月29日(金)までにどうぞ。 ○マラケシュ条約と著作権法に関する講演会  近畿視情協の2015年度職員研修会が1月27日(水)13時30分〜16時30分、当館4階会議室で開催。「マラケシュ条約と著作権法改正によって変わるもの〜読書のバリアフリー化に関する現状と今後の課題」(仮題)と題して、宇野和博氏(筑波大学附属視覚特別支援学校教諭)の講演が行われます。席があれば一般聴講も可。参加申込は1月20日(水)までに、電話06-6441-0015の当館内近畿視情協事務局までどうぞ。 ○新年のボランティア活動は6日(水)から  新年の仕事始めは1月5日(火)ですが、法人行事のため午後2時で閉館します。ボランティア活動と利用者サービスは1月6日(水)から再開します。1月9日(土)はハッピーマンデーの振替休館ですが、サービス部門(5階サービスフロア、4階会議室、3階総務係)は開館します。 ≪センターのページ≫ 新年のご挨拶 ボランティア、支援者と力を合わせて、情報環境の改善を 館長 竹下 亘  新年おめでとうございます。旧年中、皆さまからいただいたご支援とご協力に心から感謝申し上げるとともに、今年が皆さまにとってより良き年となりますようにお祈り申し上げます。  昨年は貴重なご寄附をもとに、新たに点字図書の利用拡大(点字たねまき事業)と、専門音訳技術の普及(全国4ヶ所での視覚的資料等の音訳技術研修事業)に着手することができました。「障害者権利条約」の上に立って、いささかなりとも“情報共有社会”の実現に寄与することができたと自負していますが、その中で、身にしみて感じていることがあります。  一つは、大変残念なことに、日本社会の現実が情報共有の理想から、まだほど遠いことです。その代表的な実例は、昨年暮れ、国が全住民に付与したマイナンバーです。制度の是非はともあれ、最大の個人情報と言えるマイナンバーが視覚障害者に点字、音声等では提供されなかったのです。これでは、障害者権利条約に定められた「一般公衆向けの情報を障害者に対して、 障害に相応した利用しやすい様式により、適時 に提供する」という国の義務はないがしろにされたと言わざるを得ません。    もう一つは、このような情報環境を改善するには、やはり社会福祉施設とボランティアの働きが不可欠だということです。昨年11月号の本誌にも書きましたが、全国に先駆けて、当法人で組織的な点訳奉仕活動が始まったのは昭和8年(1933年)のこと。以来83年目の今も、視覚障害者の情報利用を支えているのは視覚障害者情報提供施設であり、施設や地域で活躍するボランティアの方々です。  当館では、本年も“情報共有社会”の理想を掲げ、利用者、ボランティア、支援者の皆様と力を合わせて、視覚障害者をはじめ、情報利用が困難な方々の情報環境の改善に努力して参ります。どうか、いっそうのお力添えを賜りますようにお願い申し上げます。 盲導犬について学び、ふれあえた有意義な一日 日本ライトハウス盲導犬訓練所へ施設見学会  今年度のボランティア友の会施設見学会は、日本ライトハウス4施設の内、千早赤阪村にある盲導犬訓練所を見学しました。活躍している盲導犬の話や、誘導・服従訓練の様子を映像を交えながら説明を受け、1頭の犬が誕生から天寿を全うするまで数多くのボランティアさんに支えていただいていることを実感しました。(録音製作係ボランティア 伊東 晴子)  今年度のボランティア友の会施設見学会は、5年ぶりに千早赤阪村の盲導犬訓練所への訪問となりました。11月16日(月)、参加者39人(ボランティア36人、職員3人)が肥後橋から貸切バスで、お昼前に山の上にある訓練所に到着し、訓練士で広報担当の纐リ(くわき)さんに迎えられました。  まず子犬のお墓と成犬のお墓へ。「わが友ここに」の刻印にしんみり。次に向かったのは、犬を貸与される方が1ヶ月共同訓練する中で盲導犬と排泄訓練をするための施設と犬舎。ちょうど、訓練を受け始めたばかりの溌剌とした訓練犬が、富田林市街での朝の歩行訓練から戻ってきて、みんなと笑顔の対面をしました。  屋外施設を見学後、会議室で纐リさんから盲導犬の現状等について説明を受けました。この訓練所出身の145頭を含め、現在国内には984頭(2015年11月現在)が活躍しているものの、希望者は3,000人以上(2010年日盲社協調べ)と推定されており、希望者のニーズにはまだまだ追いつけていないとのことでした。  繁殖犬から生まれた子犬は、生後2ヶ月から1歳までパピーウォーカーのもとで過ごし、適性評価と訓練を経て、2歳頃から10歳頃まで盲導犬として活動します。実際に盲導犬になれるのは生まれた子犬のごく一部ですから、1頭が育つ背景には繁殖犬や多くの子犬、訓練犬が約100頭、他に「キャリアチェンジ犬」(盲導犬にならなかった犬)、引退犬などがいるそうです。  1頭の育成に500〜600万円もかかるというのも、そう考えると納得です。育成費用は国や自治体からの補助金が2割、寄付金が8割と聞いて驚くとともに、あらゆる場面で活躍しているボランティアの存在にも感心し、盲導犬の育成には本当に多大な時間、労力、そして資金が必要なのだと実感しました。  ところで興味深かったのがキャリアチェンジ犬の話。盲導犬は聴導犬、介助犬とともに「補助犬」と呼ばれ、それぞれ訓練方法が異なりますが、まれに文字通り「キャリアチェンジ」して介助犬になった犬もいるとか。  それはさておき、訓練を受けるのはもともと優秀な盲導犬の血統の犬たち。まち歩き訓練では頭上や左右の障害物を避けたり、然るべき場合にはユーザーの命令にも従わないなど、高度な技術を教え込まれます。視覚障害を持つ人の良きパートナーとなれるよう、犬の習性をうまく活かした訓練方法が編み出されていることに、人間と犬のつきあいの歴史の長さを感じました。  今回の訪問では、訓練犬と現在は引退しているデモ犬(盲導犬の仕事を実演してくれる犬)フローレンと触れ合う機会もありました。賢い盲導犬らしく、でもやはり犬らしさも失っていない2頭に、皆さん顔をほころばせていました。ちなみに幼い時から人間の食べ物は犬の食べ物ではないと教え込めば、犬に余計なストレスを与えずにすむそうな。  帰路の車中では、クイズで盲導犬豆知識も学びながら、3時半頃に肥後橋到着。有意義な一日となりました。訓練所の皆様、ありがとうございました。 バリアフリー映画会『マエストロ!』&ミニ音楽会を開催 大阪府立視覚支援学校とコラボした音楽に200人が魅了されました  11月21日(土)、日本ライトハウスバリアフリー映画会を玉水記念館で開催しました。映画「マエストロ!」と大阪府立視覚支援学校の在校生、卒業生による音楽会をコラボ企画として行い、映画と合わせた歌、ピアノ演奏を交え、素敵な音楽三昧の一日を過ごしました。 (音声解説担当 林田 茂) 音声解説をオリジナルで製作  全盲のピアニスト辻井伸行さんがエンディング曲を手掛けたことでも話題となった「マエストロ!」の音声解説を製作。見えにくい方々が一緒に笑い、一緒に涙を流せるように心がけ、クライマックスの7分間流れる「運命」を活かせるように、オーケストラの演奏を邪魔せず、舞台をイメージできるように作りました。今後はシネマ・デイジーでの製作・発表も行っていきます。 府立視覚支援学校のコラボ企画「ミニ音楽会」  映画会に華を添えたのがミニ音楽会です。盛岡陸(りく)さん(ピアノ)、上村龍夏(りょうか)さん(バリトン)、辻本実里(みさと)さん(ソプラノ)3人の聴く人の心に響く音楽は感動を呼び、会場を音楽一色に包んでくれました。感謝を申し上げるとともに、今後、様々な所で活躍されることを期待しています。 アンケートより  初めての方やバリアフリー上映を心待ちにされている方々のお声を聞くことができました。  アンケートより:「映画をあきらめていたが、説明していただいてよく分かり、楽しみを取り戻しました。」「今日は映画鑑賞の前にミニ音楽会が企画され、ただ映画を見るだけでなく、演奏も聞くことができ、本当に楽しく過ごすことができました。」 ご協力に感謝  この度は、参天製薬、錦城護謨、シナノケンシ、パナソニック、三菱電機の協賛によって実現できました。また「ボイスぷらす」の皆さんには当日の運営についても全面的なご協力をいただきました。皆さまに心から感謝申し上げます。  ※なお、当館では一ツ橋財団の助成を受けて音声解説事業(シネマデイジー化等)を行っています。 ≪報告のページ≫ ○大阪フレンドロータリークラブ文庫創設  大阪フレンドロータリークラブ(林尚美会長)では、当館の視覚障害者情報提供事業に深いご理解を賜り、この度、録音図書製作費に多額のご寄附を賜りました。国際ロータリー財団の地区補助金を元にご寄附くださったもので、当館では今年度「大阪フレンドロータリークラブ文庫」として、録音図書15タイトルを製作・所蔵し、全国の視覚障害者の方々に貸し出します。同クラブのご厚志に心から感謝申し上げます。 ○視覚的資料の音訳技術研修会スタート  当館主催の「視覚障害者向け録音図書製作のための視覚的資料および専門書の音訳技術研修会」が12月10・11日の大阪会場からスタートしました。当館の録音製作で培われた音訳技術を各地の音訳ボランティアと共有し、音訳者の技術向上と専門音訳資料の製作拡大を目指すものです。大阪会場には関西を中心に島根県、愛知県を含め34人が受講。高度な音訳処理が必要な資料をもとに実習形式で研修を行い、終了後のアンケートでは非常に高い評価をいただきました。この後、1月宮城、2月福岡、3月東京で開催しますが、既に申込は合計100人を超えており、今後の成果が期待されます。 ○板谷照美さん、渡辺典子さんが相次ぎ表彰  当館をはじめ各所でボランティア活動を続けておられる板谷照美さんと渡辺典子さんが昨年暮れ、国と大阪市から相次いで表彰を受けられました。板谷さんは厚生労働大臣ボランティア功労者表彰。1968年から44年間にわたり当館のさまざまな作業をお手伝いくださったほか、手芸で地域の高齢者や東日本大震災の被災者も応援されています。渡辺さんは地域福祉推進功労者表彰。1979年から当館の音訳・録音活動に参加し、ボランティア友の会代表も務めてくださったほか、JBS日本福祉放送の音訳ボランティアとしても活躍されています。心から御礼とお祝いを申し上げます。 あゆみ 【12月】 2日 近畿視情協V研修会(玉水記念館) 4日 点訳V養成講習会オリエンテーション、見学:大阪医専・視能訓練士科学生 10日 「音訳技術研修会・大阪会場」(〜11日) 12日 オープンデー(館内見学日) 15日 全館自衛消防訓練 24日 利用者サービス最終日 26日 仕事納め 予定 【1月】 5日 仕事始め(15時から法人行事で休館) 6日 ボランティア活動再開 7日 ボランティア友の会世話人会 8日 点訳ボランティア養成講習会開講 9日 振替休館(用具、会議室、総務は営業) 16日 オープンデー(館内見学日、要予約) 27日 近畿視情協職員研修会 編集後記 新年を寿ぐ、おめでたいニュースを一つ。昨年末、インターネットの子ども向け検索サイト「Yahoo!キッズ」の年間検索数ランキング・人物部門で、点字の考案者ルイ・ブライユが第1位に輝きました。ちなみに2位はAKB48、3位は織田信長でした。また総合部門でも1位:米、2位:ゲーム、3位:月に続いて、4位に点字がランクイン。小学校の教科書の一部に点字が出てくることが一因のようですが、この小さな関心の芽が大きく育ち、視覚障害者への理解が深まり、広がっていくように工夫・努力したいと思います。 (竹) =ONE BOOK ONE LIFE 2016年1月号= 発 行 社会福祉法人日本ライトハウス      情報文化センター(館長 竹下 亘) 住 所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp 表紙絵 武部はつ子 発行日 2016年1月1日