日本ライトハウス情報文化センター        「ワンブックワンライフ」2015年8・9月号  <表紙イラスト:(武部はつ子画)>ブドウ畑にやってきた男の子の親子。男の子はお父さんに肩車をしてもらい、カゴを左腕にかけて葡萄狩り。ツルにぶら下がっているみの虫がブドウの房に近寄っていく。目があった男の子が「あの・・・好みのタイプじゃないんだけど・・・ごめんね」とブドウの房に手を伸ばす。お母さんは笑いをこらえている様子。   (目次) ◇掲示板 ◇センターのページ 多彩な参加者と発表に接し、今後の取り組みに大きな刺激 第24回視覚障害リハビリテーション研究発表大会に参加して ◇報告のページ  ≪掲示板≫ ○点訳・音訳を学んで、新しい世界へ!  詳しくは各係へ要項をご請求ください。 ◆点訳ボランティア養成講習会 対象 点訳初心者で当館ボランティアを志す方 日時 10月2日〜来年3月25日まで(毎週金曜日 10時〜12時、全25回の予定) 内容 前期は点字の規則などの基礎講習。後期は点訳図書製作の実践(パソコンが必要)。 申込締切 9月4日(金) 適性試験 9月11日(金)10:00〜12:00 申込 点字製作係(電話06-6441-1028)まで。 ◆音訳ボランティア養成講習会2 対象 既に音訳の基礎知識を学んだ方 申込締切 9月4日(金)  火曜コース(10月13日〜来年2月23日、全16回、15:00〜17:00)、適性試験 9月15日(火)  水曜コース(10月14日〜来年2月24日、全16回、15:00〜17:00)、適性試験 9月16日(水) 申込 録音製作係(電話06-6441-1017)まで。 ○「エッセンシャルガイド 統一英語点字UEBで何が変わるか」 (福井哲也著、墨字・B5判190頁、税込2,500円、点字・全2巻、7,200円)が出版されました。英米で移行が進み、日本でも来年度の中学の英語教科書から徐々に導入が予定される英語点字の新表記体系を、英語点訳の第1人者が基礎から分かりやすく解説。ご注文は当館サービス部(電話06-6441-0039)まで。   ○癒やしの装置や懐かしの遊び道具を募集  日本ライトハウスでは、今春から「鶴見区障がい者相談支援センター事業」を受託し、地域に暮らすさまざまな障害のある方々の生活を支え、笑顔あふれる居場所の創造を目指しています。そこで、この居場所を盛り上げるアイテムのご寄贈をお願いします。例えばコーヒーメーカーやオーディオ、アロマセットなど癒やしの装置、ビリヤードやダーツ、エアホッケーなど懐かしの遊び道具。鶴見区障がい者相談支援センター(電話06-6961-4631)までお願いします。 ○8月から9月の休館について 8月11日(火)〜15日(土)=夏期休館(3階総務、4階会議室のみ11日(火)・12日(水)開室) 9月19日(土)=21日月曜指定祝日の振替休館日。8階点字製作係と3階総務、4階会議室、5階サービスフロアは開室。 ≪センターのページ≫ 多彩な参加者と発表に接し、今後の取り組みに大きな刺激 第24回視覚障害リハビリテーション研究発表大会に参加して  第24回視覚障害リハビリテーション研究発表大会が6月27日〜28日、福島市で開かれました。 これは、全国の福祉施設職員や教育関係者、眼科医、当事者やボランティアで作る「視覚障害リハビリテーション協会」が毎年各地で開いているもので、今回は全国から約530人が集まり、さまざまな研究発表や議論が行われました。当館から参加した新人職員2人の報告をお読みください。(竹) 医療との連携や「チャレンジドヨガ」に触発 サービス部用具・機器担当 花田潤子  特に印象に残ったのは、シンポジウム「地方で異なる視覚リハの事情」で発表された「市立福知山市民病院における院内視覚相談会の取り組み」で、同病院職員の野口英樹さんが視能訓訓練士の立場から、医療から福祉への連携強化について実際の取り組みを紹介されました。  医療機関である福知山市民病院は、福祉施設である京都ライトハウスと京都視覚障害者支援センター、当事者団体である京都府視覚障害者協会と協力して“院内視覚相談会”を実施しています。対象者は主に障害者手帳取得から5年以内の方で、開催は年に2回。相談会には、眼科医、視能訓練士、看護師、医療ソーシャルワーカー、歩行訓練士、視覚障害専門の相談員が参加し、講演会や個別相談の他に当事者同士の交流会も行われているそうです。  「どこに相談したらいいか分からない」「各分野の専門家の話を聞きたいが、何度も外出するのが難しい」といった要望を持つ方には、一度に専門的な情報をさまざまな面から得ることができるので有益な場であると感じました。また、漠然とした不安を抱えている方には、ピアカウンセリング的な役割も果たしているようです。その他、関係者同士も連携を図ることにより、情報の収集や共有の場を持つことができるという利点もあります。ただし、ピアカウンセリングを支えるファシリテーターの育成が追いつかないことが今後の課題になっているそうです。  個人的に興味を引かれたのが、NPO法人日本カルチャーヨガ協会の高平千世さんによるポスター発表「チャレンジド・ヨガ〜視覚障がいの方のヨガクラス〜の活動と効果」でした。畳1畳分の空間で移動を伴わないヨガは視覚障害者定期ヨガクラスの様子(高平氏提供)に適していると考え、体を動かす機会の提供として埼玉県所沢市を中心に活動されています。  定期ヨガクラスの進め方は3ステップ。 @ヨガインストラクターの声で、参加者はポーズをイメージして行う。 A完成ヨガポーズに触れて、形、特徴を理解し ていく。複数でなく一つのポーズを反復する。 B参加者それぞれの完成ポーズ。  定期ヨガクラスでは、視覚障害を持つ参加者数名に1人のサポーターを配置し、安全に正しくポーズができるように、言葉や体を使って動作支援を行っています。また、基本的に音楽を使わず、言葉に集中できる環境を作っています。その他、ヨガマットは黒色を使用し、インストラクターやサポーターはハイコントラスト色のウェアを着用する等の工夫もしているそうです。  参加者からは「ポーズの形が分からないので、自分には無理だと思っていたが、サポーターの方が傍で丁寧に説明してくれたので安心して取り組めた」「自分の身体から余計な力を抜くのが思いのほか難しく、いかに体を緊張させた状態で普段生活しているか痛感した」といった感想がよせられているそうです。  今後の活動の場として、関西圏も検討して頂けると嬉しいなと思いました。 iPhoneの有用性、点図とリハの連携に注目 製作部電子書籍担当 瀧沢彰子  最も感銘を受けた発表は、東京大学先端科学技術研究センターの三宅琢さんによる「見えにくいからこそのiPad、iPhone」でした。  発表の内容は、@デジタル機器を用いたロービジョンケアの有用性 Aデジタルビジョンケアを行う上でもっとも重要なことは、視機能の把握ではなく、患者のニーズの把握 Bデバイスの具体的な活用事例(紙幣識別、色識別、物体認識、ボランティアが視覚障害者をビデオチャットでサポートできるアプリなど)でした。  三宅氏の話の中で特に印象に残ったのは、  「医療だけでは助けられなくても、デジタル機器を用いた新しい障害者ケアを加えることで、一人の患者に対して助けられることが増える。」  「患者は、会社や家庭など、社会の中で生きている。医療もリハビリも会社で働く環境もトータルにケアして初めて、その人を本当に救うことになる。」  「汎用性のあるiPhone、iPadは、ロービジョンになって間もない人にとっても、人前で使用するのに抵抗が少なく、また、利用している人も多いので、周囲のサポートも得やすい。」  三宅さんの「医学的視点」を補完する「生活機能」の視点からの発表は理解しやすく、特に冒頭に述べられていた「視力向上より意欲向上を」「失明ではなく、無関心を回避する」という言葉が非常に印象に残りました。  また、「京都ライトハウスにおける視覚リハ業務と点字図書館業務の連携から見えてくるもの」もたいへん参考になりました。  京都ライトハウスは、日本ライトハウスと同様に、「視覚リハ」と「点字図書館」の業務を並行して行っている全国でも数少ない視覚障害者総合福祉施設です。当法人と異なるのは、同じ敷地内で業務が行われている点で、身近な例として参考になると思いました。発表では、情報ステーション職員の野々村好三さんが両部門の連携のメリットを以下の通り挙げられていました。 ◆リハ部門から見たメリット ・訓練目標の設定の明確化 ・点字訓練等のボランティアの紹介 ・情報部門の貸出、読み書きサービス等の活用 ・地域支援の中で情報部門の協力 ◆点字図書館から見たメリット ・リハ部門経由の新規登録と来館者数が多い ・L点字(通常の1.2倍の点字)をはじめ、点字 図書の貸出などが多い ・窓口でのリハ部門等の紹介 ◆利用者にとっての最大のメリット ・訓練へのモチベーションが高まり、情報入手 手段(点字、デイジー操作等)の獲得や行動範囲の拡大など生活の質の向上につながること。  締め括りでは、点訳ボランティアがリハのボランティアとして当事者支援に関わることにより、点訳活動のモチベーションが向上していることも紹介され、お互いの部門の特徴を活かし連携していくことで、視覚障害のある方々へのサービスが向上していくことは明確であり、有効であると発表されていました。 先輩を手本に専門職を目指して 花田潤子  今回の研究発表大会では、さまざまな出会いがありました。県内唯一の歩行訓練士として活動している女性は、関係者と連携しながら独自の方法で積極的に取り組まれています。また、「傾聴」の姿勢を大切にし、自主性や自律性を引き出すエンパワメントを重視して取り組んでいる専門職の方のお話も聞くことができました。印象的だったのは、前向きで気さくな方が多かったことです。私も、まずは基本的な知識と技能を身につけ、それを柔軟にアウトプットできる専門職になりたいと感じました。 全人的ケアの重要性を再認識  瀧沢彰子  今回の大会には、リハビリの現場に携わる職員から医療関係者、教育者、研究者など多くの専門職が集まり、多岐にわたる発表と議論が行われました。大会への参加を通じ、多くの専門職が連携したチームアプローチによる全人的なケアの重要性を再認識することができました。支援が必要な方が「地域の中で自分らしく生活を送るために、私たちにできることは何か」を念頭に置き、点から線へ、線から面へ、総合的な支援ができるよう、常に考え行動していきたいと思います。 ≪報告のページ≫ ○音声解説:映画館上映や野球中継を推進 当館では、映画やテレビへの音声解説や耳で観る映画「シネマ・デイジー」の普及に努めていますが、この一環として一般の映画館での音声解説付き映画の上映を広める活動も推進しています。この5月から7月にかけては、6回にわたり梅田や京都の映画館で、「海街diary」や「愛を積むひと」「奇跡のひと」といった話題作の上映に協力し、広報、予約受付、チケット引替、上映時のオペレーション、ラジオの貸出、誘導などのサポートを行いました。来場者は延べ116人に上り、「安心して映画が観賞できる」というお声をいただいています。また、音声解説はプロ野球中継にも広がりつつあり、朝日放送の6月と7月の2回、テレビ中継「虎バン主義」で林田主幹が監修し、音声解説放送を試験的に実施しました。 ○肥後橋ちょっと“触れ歩き”番外編 6月、岡山出張の際、「点字ブロック発祥の地」の碑を見ることができました。点字ブロックは1967年、世界で初めて国道250号の岡山盲学校近くの横断歩道に敷設されました。碑には当時の点字ブロック3枚が貼付されています。(竹) あゆみ 【7月】 2日 ボランティア友の会世話人会 11日 オープンデー(館内見学日) 22日 実習:府立視覚支援学校生(〜23日) 23日 研修:台湾・呉純慧博士(〜24日)、近畿視情協障害者サービス基礎研修会 28日 日本ライトハウス杯視覚障害者囲碁大会 30日 全視情協サピエ研修会(〜31日、玉水) 予定 【8月】 6日 日盲社協・情報機器講習会(〜8日) 13日 夏期全館休館(〜17日) 22日 オープンデー(館内見学日、要予約) 28日 わろう座映画体験会 【9月】 3日 ボランティア友の会世話人会 4日 灯友会バザール(〜5日、当館4階) 12日 オープンデー(館内見学日、要予約) 18日 鉄道弘済会朗読録音奉仕者表彰式 編集後記 三省堂出版の辞典に「シネマ・デイジー」が用語として掲載されました。『ICTことば辞典〜ネット時代のニュースがよくわかる250の重要キーワード』(7月10日発行)。クラウド、SNS、ウェアラブルデバイスなど、テクノロジーやコンピューターに関する“ことば”が豊富なイラストや写真とともに、やさしくわかりやすく解説されています。数多くの有名な辞書・辞典を出版する三省堂が取り扱ってくれたことが大きく、一つの用語として世の中に認知してもらい、市民権を得たように感じられて嬉しく思いました。(茂) =ONE BOOK ONE LIFE 2015年8・9月号= 発 行 社会福祉法人日本ライトハウス      情報文化センター(館長 竹下 亘) 住 所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp 表紙絵 武部はつ子 発行日 2015年8月1日