ろくおん 通信 NO.191号 発行日 2012年4月1日発行 発行: 日本ライトハウス情報文化センター録音製作係 発行責任者  岡本 昇 〒550-0002 大阪市西区江戸堀1−13−2 電話 06-6441-1017(録音製作係直通) http://www.iccb.jp/ ★聴いてわかる録音図書をつくる為に(第4回) 一人ひとりが自分の立場で責任をもって  久保 洋子  一冊の録音図書が出来上がるには、家庭録音では4人、スタジオ録音では5人以上の人が関わります。 音声訳、校正、編集それぞれの立場で、原本の内容を正確に、理解しやすく伝えることができるように考えて作業を進めていきます。  作業の間には、自分で判断できないこともたくさんあります。音声訳をする時には小さな疑問でも、職員やお世話役、それぞれの専門チームの方々などに相談してみてください。納得のできるまで話し合って、あとは音声訳者本人の責任で方針を決めてください。「納得できないけど職員に言われたから」などと中途半端な気持ちで作業を進めてしまっても責任は音声訳者にあります。何と言ってもその一冊の本を隅からすみまで読んでいるのは音声訳者だけなのですから。  一方、編集者も含めて校正する立場ではどうでしょうか。『校正のポイント』(ろくおん通信No.186)でも書きましたように校正というのは音声訳者の誤読、文意が正しく伝わらない読みなどを指摘する作業です。疑問に思ったことは、調査表があれば見る、辞書を引くなどして自分の考えの根拠をみつけて校正表に書きます。もし、職員など他の人の判断を仰ぎたい時には音声訳者と一緒に相談していただくのがいいと思います。時間的に無理であれば、自分の考えを校正表に書いて、音声訳者が納得できない時には職員に相談する。これがみんなが納得して作業をすすめるために、大切なことの一つだと思います。  音声訳者も校正者も時々間違えます。万能でない一人ひとりが力を合わせることで、より正確で利用しやすい本を作っていきたいと思います。その為には、一人ひとりが自分の立場で責任をもって仕事をすることが大切だと考えます。   ★編集のひろば ◎デイジー編集ソフト『PRS Pro』のバージョンアップ、お急ぎください! 6階のパソコンは、バージョンアップが完了しました。 2月以降、新しく編集を開始する図書については、新しいバージョン『2.05』で編集することになっています。ご自宅のパソコンのバージョンアップがまだの方は、今すぐお問い合わせを。 色々な不具合も修正され、使いやすくなったようですが、「あ!変わった!!」と一番に目につくのは、≪書誌情報≫です。項目が増え、名称もいろいろと変更されています。入力については、『デイジー図書編集のルール』をご参照ください。 ◎『デイジー図書編集のルール』 やっとできました! ルールづくりはとても難しい作業でした。まさに「産みの苦しみ」を味わいました。 「どんな図書にも共通するルール」だけでは、種々多様な図書に対応できず、「あれもこれも」と具体例を盛り込もうとすると、焦点がぼやけて、何が基本で何が大事なのか分からなくなってしまいます。そこを何とか割り切って、あともう一息というところに「バージョンアップされます」の情報が入り、またまた中断。その手直しをしてやっと完成しました。 ◎『デイジー図書録音の順序』『デイジー編集の手引き』もできました! 『デイジー図書編集のルール』を何とか形にすることができましたので、弾みがつき、『録音の順序』と、『デイジー編集の手引き』 も内容を一新しました。『図・表・写真の読み方の順序』のおまけも付いています。ただ、文書だけですべてを伝える、すべてを網羅する・・・には限界があります。曜日別の勉強会、グループの例会などで経験談を話し合い、具体的に検討し、智恵を出し合う必要がありそうです。 ◎フォルダとファイルの整理整頓、お得意ですか? 編集講習会参加申し込みに際し、パソコンのスキルテストが行われました。 内容は、300字余りの文字を入力して文書を作り、ファイル名を付け保存。マイドキュメントにフォルダを作って、そこにそのファイルを入れるというもので、制限時間は25分。何でもないことのようですが、「わぁ!難しい」とちょっと焦りました。デイジー編集の際のキーボード入力は、矢のようにバシャバシャ打てなくても何とかやっていけますが、フォルダ、ファイルの整理はちゃんとやっておかないといけないなぁと改めて思いました。録音データ、校正用データの保存も同じですね。「保存したはずのデータがなくなった!」とか、「作ったフォルダ、どこへ行った?」とか、家の中、バッグの中、冷蔵庫の中だけでなく、パソコンの中の探し物も結構あります。探し物をなくし、不要なデータは安心して削除できるよう、気持ちよく整然と並んだフォルダ、ファイルにしたい、と痛感しました。                                 (『ろくおん通信』編集委員会) ★青年の自立支援センターゆう  社会福祉法人つむぎ福祉会 青年の自立支援センターゆう 北井 亜矢  大阪市西区に「石井子どもと文化研究所」の事業として、ひきこもり状態の青年たちの居場所である「青年の自立支援センターゆう」を始めました。当時は公的援助が得られない中で財政難のため閉所の危機がありましたが、浪速区へ移転し家族とボランティアによる支援で事業を継続しました。その後、つむぎ福祉会に参入し、障害者手帳がなくても、精神科へ通院している居場所利用者を対象に就労移行支援事業所として再出発しました。 現在は、東大阪市にある大阪樟蔭女子大学の向かいに移転し、2年以内の就労を目指す就労移行支援と、期限を設けず就労を目指す就労継続B型の障がい福祉サービスを提供しています。当初、利用者の多くが20代であったことからその後も20代、30代の利用者が増えていき、現在も20〜30代の青年達が利用者で、男女の割合も半々です。  青年たちが働き始めるに当たっては、それぞれの状態にあった働く経験が必要です。そのために軽作業やパン販売、パソコンを使った作業、さらに外部に出向いての職業体験など、さまざまなプログラムがあります。 パソコンを使った作業として日本ライトハウス情報文化センター録音製作係より、遡及図書、新刊図書、プライベートサービスや週刊新潮などのデイジー編集の仕事をいただいています。 デイジー編集を通し、毎日継続して作業ができる体力をつけ、さらに職員への報告、連絡、相談などのコミュニケーション力を身につけていくなかで、就労を目指していきます。 主に読書が好きな方々が多いです。興味のない分野の本だったのに、おもしろく感じ、互いに編集している本の話題に花が咲きます。だんだん興味は深まり、空き時間にインターネットを使って検索し、世界を広げておられます。 『立川談志遺言大全集』シリーズの編集がきたときは大喜びでした。毎日本を見ながら、笑い声が絶えません。編集が終わると、そろそろ次はこないかと待っています。 また、あるときにはあまり競馬をご存じない方が読まれた本を、有馬記念を楽しみにしている利用者が編集することになりました。 偶然、訂正前の音源を編集してしまい、再度最初から編集することになりましたが、大好きな競馬を楽しむ時間が長くなっただけで、面倒と思わずに喜んで編集を続けておられました。 現在は障がいの種別を問わず、様々な方がデイジー編集に関わりながら、就労を目指しておられます。 健常者でも就職はたいへん厳しい時代ですから、障がい者にとってはいかに厳しいことでしょう。そのようなときに障がいがあることで自分を責めたくなることもあるでしょう。  就職した後に、自分なりの自立を模索しながら就労を目指しデイジー編集をしたことを懐かしく思い出す日がきっと訪れることを胸に止め、今日も編集を続けておられます。 ★きれいに録音する技術 (5)  パソコン特有の雑音について 〜バックに「ブーン」という雑音が全体に入る〜  録音製作係 清水 賢造 録音したバックに「ブーン」という雑音が出ているのは、外付けインターフェイスを使用せず、マイクを直接パソコンに接続しているケースが多いようです。これはパソコン内部で発生している雑音を録音してしまうことが原因の一つです。音量的には−40dB程度ですが、この雑音は結構耳障りなので、パソコン内部による場合は外付けインターフェイスを購入する必要があります。しかし、パソコン内部の雑音かそれ以外の雑音かの判断をする必要があります。パソコン内部で雑音が発生しているかどうかは、次のような方法でわかります。  録音ボリュームの設定を終了して実際に録音を開始する前に、ポーズ状態にします。その時、声を出していないのに、<図1>のように、音量表示が-40dB付近にある場合は、パソコン内に雑音が発生しているといえます。この場合、マイクのスイッチをOFFにしても変わりませんが、<図2>のように小さくなる場合は、雑音の原因がパソコンではなく、マイクにあります。  原因は、 @ マイクの電池が消耗している A マイクジャックとコード部分の接続不良 などが考えられます。 ※ 接続不良を調べるには、ポーズ状態にし て コードやマイクジャック付近を触ってみ ます。雑音が大きくなればそこが原因です。 ◎ 市販されている外付けインターフェイスは、 ローランド社の「DUO-CAPTURE UA-11」があ り、価格は8000円前後です。  (<図3> 参照)            ★Q&Aコーナー Q デイジー編集を自宅と情報文化センターと両方で行っていますが、時々、音声が出ないなどのトラブルが発生するのはどうしてですか? A 情文で使用している編集用パソコンはWindows2000/WindowsXP/WindowsVista と3種類あります。自宅のパソコンと情文で使用するパソコンのWindowsのバージョンが異なると、編集した部分の音声が出なくなるトラブルが起きます。この原因は、フレーズの移動、削除などの編集作業をしたデータを、ビルドブックをせずに異なるWindowsで引き続き編集作業をするためです。これを回避するには、パソコンのWindowsが変わる時は、一旦、ビルドブックして終了してください。 ★ヴィオラのひとりごと   いつも私に声をかけて、撫でてくれるみなさん!ありがとうございます! 私、撫でられるのが大好きなんです。特に胸、耳の後ろも最高です!ハーネスを外しているときは‘お仕事モード’ではないので、どんどん撫でてくださいね!  ところで、私はいつもお父ちゃんの席の横で、ベッドに入っていますが、時々ベッドを出て、みなさんの近くに行くことがあります。そして、遊んでくれそうな人の前に座るのです! 「胸撫でてぇ!」 そして、少しずつ体の向きを変えて背中を向けて座ります。「耳の後ろもお願いしまーす!」 背中を押し当てながら、「腰が凝ってますねん!」 最後は仰向けに寝て、「お腹摩ってぇ!」 いわゆる‘フルコース’でございます。  私が背中を向けて座ると、「なんで背中向けるの?こっち向いてよ!」と言われるのですが、首や腰が凝っているサインですので、軽ーくマッサージお願いしまーす! ★ 著作権法の改正で広がる情報提供サービス ― 第三の選択肢 “テキストデータ”の製作について ― 製作部 久保田 文   平成21年1月1日に施行された改正著作権法では、情報提供施設、図書館、および文化庁長官が指定した団体は、「視覚障害者その他視覚による表現の認識に障害のある者」に対し、活字著作物を「利用するために必要な方式」で提供できるようになりました(「 」内は著作権法より引用)。平たく言えば、当センターは、利用者に対し図書などの墨字資料をテキストデータや画像で提供できるようになったということです。  テキストデータにはいくつかの形式がありますが、ここではtxt形式のプレーンなデータのこととして話をします。パソコンの『メモ帳』などで文章を書き保存するとできる『○○.txt』形式のデータのことです。このテキストデータは、 (1)拡大文字(ワープロソフトなどでレイアウトを整える) (2)点字データ(自動変換後、修正) (3)テキストデイジー、マルチメディアデイジー(htmlファイルにし、専用ソフトウェアで編集) (4)合成音声での読み上げ(txtファイルのまま) などに利用できます。  著作権法改正後は、特に(4)の方法を希望する利用者が増えました。テキストデータには ・ 合成音声で詳細読みをすることで、どのような漢字が使われているかがわかる(特に専門用語や固有名詞など)。 ・ 文字検索ができる。 ・ データ容量が小さいので、持ち運びに便利。 といった利点があります。参考書、専門書、辞書などに良いかもしれませんね。  また、製作時間の面でも、テキストデータは点訳・音訳と比べて早く仕上げることができます。合成音声での読み上げには必ず誤読がありますが、早く読みたいという資料や書籍(新聞、雑誌、話題の本など)は、「多少の誤読は気にしないから、とにかく健常者と同じタイミングで読みたい」と希望する利用者もいるでしょう。  テキストデータは、資料の種類や、利用者の立場・希望によって、TPOに応じて使うことのできる便利なデータといえます。利用者にとっては、点字、録音に続く第三の選択肢です。  さて、当センターには、研究期間も含めると今年で5年目となる“電子書籍関連事業”の部署があります。扱っているのは、テキストデータを使った ・ マルチメディアデイジー(教科書・児童書): 発達障害児、知的障害児、弱視児への提供 ・ テキストデイジー(専門書・ガイドブック等):「サピエ図書館」への提供 ・ テキストデータ:プライベート製作(使いやすいよう凡例を作ってレイアウトを整えます)   の3種類です。図書の製作と並行し、電子書籍に重要な役割を果たす合成音声の研究も行っています。 この部署でのボランティアさんの養成は、3年前から始めました。すべてパソコンを使っての作業ですから人によって向き不向きがありますし、講習会後に活動を始めてからも厳しいフォローアップが続きます。手前味噌ですが、全国的に見ても電子書籍関連にこれだけの力を入れている情報提供施設は他にありません。どのように作れば使いやすいものができるのか、校正はどのように行えば良いのか、など、一から模索してきました。職員の無理な要求に黙々と応えてくださるボランティアの皆さんのおかげで、ようやく体制が整ってきたところです。従来の図書の製作に加え、日本ライトハウスだからこそできる支援の大きな柱として、これからもスキルアップを図っていきたいと思います。  最後に、当センターでのテキストデータの製作手順をご紹介します。 【用意するもの】 ・ 裁断機 ・ パソコン ・ スキャナ(文字列の取り込み用の両面高速スキャナと画像用のフラットベッドスキャナ) ・ OCRソフトウェア ・ 校正用の合成音声ソフト ・ 作業中に絶対に寝ない精神力 @ テキスト化する原本を裁断機で裁断します。 A スキャナとパソコンを接続し、スキャンしたデータをパソコンに保存します。 B OCRソフトウェアにAのデータを読み込み、テキスト部分を抽出します。段組みや縦書き・横書きが混在しているページは、スキャンの順番や方向を指定し、文字のバックに色やイラストがついている箇所は、抽出範囲から外します(修正者が手入力します)。ここでの作業をできるだけ丁寧に行うのが綺麗なテキストデータ抽出のポイントです。 C 抽出したテキストデータの修正(誤字・脱字の訂正)、文字列の追加・削除・移動、必要に応じて図表の説明などを追記します。 D 修正したテキストデータを、合成音声で読み上げさせて校正します。  以上の作業を、いかに早く正確に、最後まで気を確かにもって 作業できるかが重要です。  ボランティアの皆さま、いつも、ありがとうございます ★ 館からのお知らせ1.『デイジー図書録音の順序』、『デイジー図書編集のルール』の改訂版について  当センターが作成した上記資料を、内容を改訂し、4月より配布します。各チームの定例会時にお渡ししますが、それまでに必要な方は職員へお申し出ください。  「編集のルール」については、定例会時に変更箇所を説明します。「録音の順序」については、下記のように変更します。「著作権に関するアナウンス」が、「デイジー図書凡例」の前になりますのでご注意ください。 1)「○○○(書名)○○○(副書名)○○○著(編、訳)   日本(にっぽん)ライトハウス情報文化センター   20○○年製作」 2) 著作権に関するアナウンス 3) デイジー図書凡例 …… デイジー図書凡例おわり 4) 目次 …… 目次おわり  5) 前書き・序文・献辞 6) 原本凡例 …… 原本凡例おわり   注意: 原本凡例の内容によっては、デイジー図書凡例の前に入れることもある 7) 本文  8) 解説・参考資料・年表・索引 など 9) 著者の既刊作品の紹介 10)著者紹介 …… 著者紹介おわり 11)原本奥付 …… 原本奥付おわり  12)終わりの枠アナ 2.専門音訳講習会(古典コース)の開催について    日 時 :6月2日・16日・23日・30日・7月7日(各土曜日)       13時〜15時(初日と最終日は13時〜16時まで) 締め切り日:5月8日(火)必着     選考試験日:5月12日(土)午前10時〜 3.6階職員の勤務時間変更について    4月3日より、下記のように変更いたします。    ・清水:火〜金曜日 終日    ・米村:火〜金曜日 終日(木曜日は15時半まで)    ・井下:水〜土曜日 終日 4.会議室の予約について 定例会・勉強会で会議室を使用する場合、使用日の前々月1日から予約可能です。   3階総務係へ申込書を提出の上、予約してください。(申込書も3階総務係にあります)   以上 ★以上で『ろくおん通信』No.191号(2012年4月1日発行)を終わり