ろくおん 通信 No.197号 発行日 2013年4月1日発行 発行: 日本ライトハウス情報文化センター録音製作係 発行責任者  岡本 昇 〒550-0002 大阪市西区江戸堀1−13−2 電話 06-6441-1017(録音製作係直通)  http://www.iccb.jp/ ★聴いてわかる録音図書をつくるために(第11回) 一般図書の原本に見られる英語、カタカナ語の読み方 A *明らかに地名、人名とわかる固有名詞については、大文字で始まっていることをことわらなくてもよいと思います。ホームページアドレスについては、大文字、小文字、数字などの区別をはっきり言います。また、単語として読めるものは、読んでから綴りを言います。これは、ある程度聞き手に予備知識があった方が、綴りを聞き取りやすいと考えるからです。  ホームページアドレス、メールアドレスなどに用いられる記号の読み方  『@』 アットマーク  『 ~ 』 チルダ   『 - 』 ハイフン 『 _ 』 アンダーバー又はアンダースコア  (例)h t t p : / / w w w . w 3 . o r g / W a i / g r o u p /  w w w . 以下の読み方   ダブリュ 数字さん ドット オーアールジー スラッシュ 大文字ダブリュ小文字エイアイ スラッシュ グループ ジーアールオーユーピー スラッシュ *英語以外の外国語についてスペリングを言う場合、英語のアルファベット読みに一番馴染みがあると思われるので、英語読みを採用します。ただし、その言語独自の文字やアクセント記号は、それを言い添えます。この時、音声訳者注で「綴りを読む場合、英語のアルファベット読みをしています」のようなコメントを入れたほうがよい場合もあります。 *日本語につけられたルビで、外国語をカタカナ表記したものには、拗音、促音などが、印刷上の活字の問題で小さく表示されないために起こる読み間違いがあります。  (例)疾病 デイジーズ → ディジーズ  金鉱掘り デイツガー → ディッガー  ルビのつけられた日本語から、和英辞典を使って英語を割り出し、それを英和辞典で引き発音を確かめるという作業が必要なときもあります。 *最近の出版物にはカタカナで表記された外国語が増えています。日本語の中で長く使われ定着している語については、日本語のアクセント体系に組み込まれ、元の外国語のアクセントとは違ったものになっている語も多くあります。一方、外来語として歴史の浅い語については、出来るだけ元の言語のアクセントを生かしたほうが、それを知っている人には理解しやすいと思われます。アクセント辞典、大辞林、英和辞典などを参考にするほか、テレビ、ラジオではどのように言っているか興味を持ったり、周囲の人の意見を聞くなどして、アクセントのチェックをしてみて下さい。また、カタカナ表記の外国人人名は、ひとまとまりのアクセントで読むのが自然です。  (例)ジョン・エフ・ケネディ   ジョージ・ブッシュ  主に人名など固有名詞の発音、アクセントを調べたいときは、下記の辞書を参考に。   三省堂「英語固有名詞発音辞典」 日外アソシエーツ「カタカナから引く外国人名綴り方字典」 *本来日本語にない音をカタカナで表記しようとすることから、同じ言葉でも著者によって表記が多少異なる場合があります。詩など特別に著者のこだわりをもって表現される場合は例外として、たいていの場合は視覚的な表記上の問題であることが多く、音声として読む場合はニュースや、一般に使われている自然な発音で問題はないと思います。以下にあげる例では、日本語の文の中で自然に読めば、どちらの表記にも聞こえるのが普通ではないでしょうか。 「ケア」と書いてあるのを「ケアー」と読んでもよいということではなく、結果として「ケ アー」に聞こえることがあっても問題ではないということです。  (例) パーティ、パーティー  ファクス、ファックス  コンピュータ、コンピューター  ファストフード、ファーストフード ★音声訳されたものから「処理」を考える 録音製作係  実際に利用者が聞いている録音図書の音源から、処理について考えてみたいと思います。  今回の音源は、『週刊新潮』に掲載された、尾崎将司が語ったことをデューク石川氏が自分のコメントを織り込んで書いた記事です。週刊誌などにはよくあるケースです。対談の場合であれば、冒頭に対談者の名前がつきますので、それを読み落とすことはありませんが、この記事ではデューク石川氏のコメントは一字下がっているだけでした。  最初、音声訳者は、処理なしでそのまま読みました。確かに、晴眼者は何も考えなくても読み進められる記事ですが、録音図書としてはどうでしょうか。以下、処理のない状態で読んでみてください。みなさんは、わかりますか。  ** 音源データより ** (注:本文中の@〜Cの番号は係で付けたものです) じゃんぼおざきがかたったいしかわりょうアメリカちょうせんとおれのひきぎわ でゅーくいしかわ べいこくゴルフきしゃきょうかいかいいん 10分、133ページ わかてはかいがいにめをむけ、ベテランはげんきがない ――。にほんゴルフかいのじばんちんかがしんこくさをますなか、ジャンボことおざきまさし(66)は、いしかわりょう(21)のアメリカちょうせんとじしんのひきぎわをどうかんがえているのか。べいこくゴルフきしゃきょうかいかいいんのデュークいしかわしにかたった、ジャンボのほんね。 @ りゆうがなんであれ、りょうがぬけることでこくないトーナメントがいたでをこうむるのはまちがいない。せめて、べいこくツアーでもこうせいせきをのこし、うみのむこうから、「ねっきょう」をにほんにおくりとどけつづけるのが、りょうにかせられたしめいだとおもう。 A こんき、しゅせんじょうをべいこくにうつしたいしかわ。だが、1がつから3しあいにしゅつじょうし、いずれもよせんおちをきっしている。きびしいげんじつとむきあうこうはいのかだいを、おざきはしてきする。 B もちろん、べいこくでかつのはかんたんなことではない。まず、いかんともしがたいのが、たちはだかるたいかくのかべ。〜〜 中略 〜〜 だから、いっぱんてきな「3きん1きゅう」のペースをたんじゅんにこなすのではなく、ときにはすうしあいとばしてでも、きょりのみじかいコースにしょうじゅんをあわせて、じぶんのひきょりでもごかくにたたかえ、ゆうしょうあらそいにくわわれるかのうせいのあるしあいにしゅうちゅうするといったはっそうがひつようになってくるだろうね。 C いしかわをしったげきれいするおざきだが、どうじにこんきはじしんの「しんたい」がとわれるとしとなる。しょうきんおう12かい、プロつうさん113しょうのあっとうてきなきろくをほこるかれだが、いかなるスターもよるとしなみにはかてない。 ************  いかがでしたか? やはり、この記事には処理 = 録音図書としての配慮が必要ですね。音声訳者は、以下のような処理で修正録音を行いました。    それぞれの記事の変わり目の頭に、「尾崎」「デューク石川」を入れました。  (@ 尾崎 A デューク石川 B 尾崎 C デューク石川)  ★Q&Aコーナー [Q]人名などで分からない箇所があった時、出版社や著者に問い合わせることは駄目なのでしょうか? 「A]「音声訳者は、読みのわからない人名の問い合わせなどを、直接、著者や出版社にしないようにしましょう。必要な時は図書館を通しましょう」というのが全国視覚障害者情報提供施設協議会(略称:全視情協)で取り決められたルールです。これは、過去に音声訳者が著者や出版者にいろいろ問い合わせていた時期があり、著者からクレームが多く寄せられたことからルール化したものです。音声訳者はできるだけ正確に読もうとして、著者や出版社に問い合わせをするのですが、「教えてくれるのが当然と受け取られるような問い合わせもあり、トラブルになったこともあるようです。著者といえども読み方まですべてわかっているとは限りません。読みに関しては音声訳者の責任で調べ、どうしても著者、出版社への問い合わせが必要な時は職員と相談してください。当センターを通して調査をするのがルールですのでよろしくお願いします。 ★校正表から ◇語句 誤読 正しい読み   金の草鞋  きんのわらじ  かねのわらじ 知己  ちこ  ちき   火垂  ひたる  ほたる 進捗  しんぽ  しんちょく   遵守  そんしゅ  じゅんしゅ 壊死  かいし  えし   婉曲  わんきょく  えんきょく   兵糧  ひょうりょう  ひょうろう   所以である  しょい  ゆえん   紋様  もよう  もんよう 軽んじて  かるんじて  かろんじて   罹患  らかん  りかん   相好を崩す  そうこうを…  そうごうを… 路肩  ろけん  ろかた   敷設  しせつ  ふせつ   解毒  かいどく  げどく   素地  そち  そじ   熾烈  しきれつ  しれつ   念力  ねんりょく  ねんりき   堅固  けんこ  けんご ★編集のひろば  校正表の足跡をたどると、次へのヒントがいっぱい  「校正表がうまく書けていたかどうか心配なのですが・・・」「こんなこと、校正表に書いてもいいのでしょうか?」「自分の校正はこれで良かったのか、何が不十分だったのか、知りたい」などなど、校正表に関する悩みは尽きないものです。また、校正に携わった図書がどのように訂正録音され、そのあとの校正表にはどんな項目が挙がっているのか? 校正表のその後を知ることは、音声訳にも、次回の校正にも役立つのでは・・・と思っておられる方も多いようです。前にも少し触れましたが、担当した図書の校正表の結果を確かめる方法を、あらためて紹介します。 @ ウェブ校正票の場合 … 『ウェブスタジオ・なにわ』にログイン → トップページの『校正票一覧』をクリック → 校正を担当した図書選択 → 校正票に挙げた項目が訂正録音されているかどうかがわかります。 A 紙の校正表(白・ピンク・黄色)の場合 … 最終チェック用の棚に並べられているBOXの中にはウェブ校正票以外の校正表が揃っています。校正を担当した図書を選び、クリアファイルからそっと抜き出してご覧ください。 ※ なお、校正表は最終チェックに使用しますので、必ずBOXに戻してくださるようお願いします ◇ 前号の話題から  前号(No.197)で、「訂正箇所のおよその録音経過時間」のご記入をお願いしましたところ、たくさんの方のご協力をいただきました。また、「打ち合わせされたのだから、今さら変えられないのでは … などと遠慮せずご指摘をお願いします」にも、利用者の立場に立ったご意見、ご提案が寄せられています。引き続きどうぞよろしくお願いします。  「編集のひろば」では、今後も、「聴きやすい、操作しやすいデイジー図書づくり」を共通の目標に、ストレスなく録音製作に携わることができるようなヒントを探っていきたいと思います。 ◇ デイジー編集者・デイジー校正者へのお知らせ *ニューフェース誕生!!  今年も、3月のデイジー編集講習会を経て、4人の方々がデイジー編集を始められました。「編集さんの大変さがわかったわ!」「気持ち引き締めて録音せなあかんね」「でも編集って面白い!」と意欲的に取り組んでおられます。先輩諸姉のサポート、よろしくお願いします。 *「DAISY発行年月日」が、終りの枠の録音の「製作完了日」と合っていないケースが増えています。完成品CD作成の前に、『書誌情報』をもう一度ご確認ください。 *パソコンの買い替えをご検討中の方へ 『PRS Pro』は、Windows8に対応しつつあり、不具合は出ていないとのことですが、『Recdia』については確かな情報がありません。日々状況は変化します。買い替え直前に職員にご相談ください。 *デイジー編集の校正表を『ウェブスタジオ・なにわ』でできるように準備を進めています  少し先になりますが、曜日別勉強会や例会でご案内します。ご協力よろしくお願いします。 (『ろくおん通信』編集係) ★館からのお知らせ  日頃より、当センターの録音図書の製作にご協力いただき、ありがとうございます。おかげさまで、年間製作タイトル数は蔵書・プライベートリクエスト・雑誌等を含め400タイトルを超え、視覚障害をはじめ読みに困難のある多くの方々に利用されています。  ボランティアの皆さまの意欲的な活動により、スタジオ録音・家庭録音をあわせて常に約300タイトルが同時進行で製作されており、現在は職員が進捗状況(音訳→校正→編集への流れがどうなっているのか。今、誰がどれだけの量の作業を受け持っているのか、等)をまとめているのですが、製作タイトル数が増えるにしたがって、職員だけで進捗管理を行うことが困難になってきました。そこで、録音図書製作を滞りなく進めるため、‘製作サポーター’の配置による新たな製作工程を実施させていただきたいと思います。  以下に概要を記し、詳しい内容や実施時期につきましては、各曜日の勉強会、家庭録音チームの定例会などで説明いたします。  今後とも、ボランティアの皆さまには、ご理解とご協力をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。 @‘製作サポーター’の配置  録音製作ボランティアの中から‘製作サポーター’を専任し、スタジオ録音・家庭録音の各チームを担当していただきます。(1チーム2〜3人)  ‘製作サポーター’の方々には、チームのメンバーが製作しているタイトルの進捗状況を把握し、音訳・校正・編集…へとスムーズに進むよう職員と相談しながら、調整していただきます。 A 製作の流れ 音訳者は  ・現在録音中の図書を読み終える1ヶ月前に、職員に次の図書の予約をしていただきます。   ※「音訳原本予約表」に記入してください。  ・音訳図書が決まったら、職員と音訳開始前の打合せを行います。   ※ 打合せ日程を、下読み開始前に必ず事前予約してください。   ※ 打合せには、‘製作サポーター’もできる限り同席していただきます。  ・録音し終わったデータは貯めずに『ウェブスタジオ・なにわ』へアップします。  ・製作範囲の最終データをアップする時は、[製作範囲完了] 欄にチェックを入れて送信してください。 校正者は  ・原則として『ウェブスタジオ・なにわ』上で校正票を作成し、順次音訳者に送信します。   ※ 紙の校正表の場合の手順は、別途説明いたします。 音訳者は  ・校正票が届いたらダウンロードしてそれをチェックし、音訳データを修正して『ウェブスタジオ・なにわ』へ修正済音訳データとして送信します。  ・すべての訂正録音が終わったらその旨を職員に伝えボックスを編集待ちの棚に置いてください。 校正者は  ・校正が終わったら、原本(コピーの場合あり)を編集待ちの棚に置いてください。   ※ この時、校正が終了した日付を紙に書いて、本にはさんでおいてください。 編集者は  ・『ウェブスタジオ・なにわ』からデータを順次ダウンロードし、編集作業を行います。音訳データの修正が必要な場合、原則として『ウェブスタジオ・なにわ』上で校正票を作成し、音訳者に送信します。 音訳者は  ・編集者から校正票が届いたらダウンロードしてそれをチェックし、音訳データを修正して『ウェブスタジオ・なにわ』へ修正済音訳データとして送信します。 編集者は  ・修正済音訳データをダウンロードして編集し、完了したら職員・‘製作サポーター’に連絡します。 デイジー校正者は  ・校正が終了したら、編集者に校正表(黄色)と原本を届けます。 編集者は  ・デイジー校正表(黄色)を確認し、音訳者に、校正表を届け、修正録音・枠アナの録音を依頼します。 音訳者は  ・編集者から校正表(黄色)が届いたらそれをチェックし、音訳データを修正して『ウェブスタジオ・なにわ』へ範囲外データとして送信します。また、枠アナを範囲外データとして送信します。 編集者は  ・デイジー校正者からの校正表(黄色)をチェックし、読みの訂正がある場合は範囲外データを用いて、訂正箇所を編集します。同時に、枠アナを加えて、編集を完了します。  ・原本(コピーの場合あり)・校正表・書誌カード・音訳開始前に行う処理票(青い紙)と、CD(音声エキスポートした完成データ)をボックスに入れ、最終チェック用のブックトラックに置きます。 最終チェック担当者は  ・チェック表にしたがって内容を調べ、同時に枠アナの内容を確認します。訂正箇所がある場合は、音訳者・編集者に連絡します。完成したら、ボックスごと職員に提出してください。 ◇主な変更点 ≪音訳者に関すること≫  ・音訳開始前の打合せの際‘製作サポーター’も加わり、その時点でできるだけ校正者、編集者を決めていきます。  ・修正録音したデータは、原則、修正済音訳データとして送信する。   ※ なお、デイジー校正表(黄色)で修正録音したものと枠アナを録音したものは、範囲外データとして送信します。  ・製作範囲の最終データをアップする時は、[製作範囲完了]欄にチェックを入れて送信してください ≪校正者に関すること≫  ・原則、『ウェブスタジオ・なにわ』上で校正票を作成します。   ※ 紙の校正表の場合の手順については、別途説明します。 ≪編集者に関すること≫  ・校正票は、原則として『ウェブスタジオ・なにわ』上で作成し送信します。   ※ 現在は紙の校正表(ピンク)で作成しています。  ・デイジー校正は、枠アナが未完成の状態で依頼します。   ※ 現在は、枠アナも入れた状態で完成させ、デイジー校正の依頼をしています。  ・デイジー校正表(黄色)が届いた時点で、修正録音と共に枠アナの録音を依頼し、再編集してデイジー図書を完成させます。 ≪最終チェック担当者に関すること≫  ・枠アナのチェックは、最終チェック担当者が行います。