日本ライトハウス情報文化センター        「ワンブックワンライフ」2014年5月号  <表紙イラスト:(武部はつ子画)>女の子と兜の折り紙を頭に乗せた男の子がお皿の上に一つ残った柏餅をこんな会話。「ジャンケンで勝負・・・!」と男の子。「あたし、強いよ〜♪」と女の子。傍らで猫が「どうしたの?」と見ている。空に泳ぐこいのぼりの親子が「平和だね・・・」「うん・・・」と言葉を交わしている。   (目次) ◇掲示板 ◇センターのページ ・1千点以上の図書等を製作し、全国数千人の利用者に提供 情報文化センター2013年度の事業実績から ・指点字と出会い、おしゃべりの喜びを取り戻すまでの日々 東京盲ろう者友の会理事長、藤鹿一之さんの講演から ◇報告のページ             《掲示板》 ○専門点訳・音訳講習会を続々開講  毎日新聞大阪社会事業団との共催で、今年度も多様な専門点訳・音訳講習会を開講します。専門技術を身につけて、地域や所属団体での点訳・音訳活動にお役立てください。お申し込みは担当係へ要項を請求ください。 ◆専門点訳講習会「エーデルコース」  点図作成ソフト「エーデル」の初歩を学びます。  日時 1期=6月12日(木)・26日(木)、2期=7月4日(金)・18日(金)。1日目は13時〜15時。2日目は13時〜16時。各期とも同一内容で2回連続。どちらかをお選びください。  定員 10人    申込締切 5月30日(金)  申込 当館点字製作係(電話06-6441-1028) ◆専門音訳講習会「東洋医学コース」 東洋医学関係図書の音訳に必要な基礎知識と専門用語を含む文章の読み方を学びます。  日時 6月13日〜7月18日(6月20日を除く)毎週金曜日 14時〜16時 全5回  定員 15人   申込締切 5月24日(土)  申込 当館録音製作係(電話06-6441-1017) ○ぜひ一度!「ガイド体験会」にご参加を  館内はもちろん、外出時に視覚障害者の方に出会った時、気軽に声をかけたり、手引きすることができますか? ボランティア友の会では、今年度も「ガイド体験会」を開催します。当館のボランティアの方は、ぜひ一度ご参加ください。  日時 5月28日(水)13時〜16時  場所 当館4階会議室(および館周辺)  講師 海老澤弥生さん(当館の利用者、ロービジョン)、当館職員  申込 3階総務係(電話06-6441-0015)  定員に達するまで、直前まで受け付けます。 ○「笑福亭伯鶴の会」久しぶりに当館で開催  鉄道事故から復帰した笑福亭伯鶴さんの久しぶりの高座が当館で開かれます。出演は、伯鶴さんのほかに笑福亭生寿(せいじゅ)さん。伯鶴さんと落語作家さとう裕(ゆう)さんの「近況対談」もあります。  日時 5月24日(土)18時30分開演  会場 当館4階会議室  木戸銭 1,500円(前売1,000円)  問合せ さとうさん(電話078-742-7519) 《センターのページ》 1千点以上の図書等を製作し、全国数千人の利用者に提供 情報文化センター2013年度の事業実績から  当館の2013年度の事業実績がまとまりました。前年度(2013年4月〜2014年3月)も、650人に及ぶボランティアの皆さまのご協力により、点字・録音をはじめ多媒体、多用途の図書や教材、雑誌を1,000点以上製作し、大阪市・府を中心に全国の視覚障害者の方々など数千人に貸出・提供したほか、対面リーディングや用具・機器、インターネットの利用支援など、多様な情報提供サービスを展開することができました。今年度も皆さまのお力を借りて、視覚障害などの原因で情報利用が困難な方々を対象に、“学び、働き、暮らし、楽しむ”ことに役立つ情報をさらにきめ細かく届けていきたいと思いますので、ご協力をよろしくお願いいたします。(館長 竹下 亘)  (以下、当館の数字は2013年度。全国・他館の数字は「日本の点字図書館28」(2011年度)を元にしているが、サピエの数字は2013年度の集計。( )内の数字は対象となる施設・団体数。「日ラ情文」は当館、「tl」はタイトル。) 1.点字・録音図書等の製作・所蔵 @年間製作数・蔵書     点字図書 録音図書 日ラ情文 263tl    202tl 全国合計 7,968tl(78館) 14,859tl(80館) 1施設平均 102tl 185tl 当館の割合 3.30% 1.36%  点字図書の製作数は全国でも上位ですが、録音図書が最近伸び悩んでいます。専門書や大部の図書が多く、下調べや校正・編集のご苦労も大変だと思いますが、録音図書の製作期間の短縮にご協力ください。 A所蔵タイトル数 点字図書 録音図書 日ラ情文 9,585tl 14,643tl 全国合計 492,080tl(80) 391,997tl(80) 1施設平均 6,151tl 4,899tl 当館の割合 1.95% 3.74% Bサピエ図書館登録データ数 点字図書 録音図書 日ラ情文 8,615tl 4,733tl 全国合計 155,616tl(134) 50,591tl(84) 1施設平均 1,161tl 602tl 当館の割合 5.54% 9.36% 合計24,000タイトルを超える当館の蔵書数は全国トップクラスですが、当館の書庫は道頓堀から肥後橋別館に移った際に半減し、既に満杯状態です。そこで、サピエ図書館に登録済みで、必要に応じて印刷・コピーできる図書を中心に整理し、回転率の高い書庫を目指しています。また、全国共有の書庫と言えるサピエ図書館に占める当館製作の点字・録音図書のデータ数は全国2位。全国の施設・団体と個人利用者に直接利用されています C年間製作数・プライベートサービス 点字 デイジー 日ラ情文 72tl 111tl 全国合計 2,861(74) 2,047(73) 1施設平均 38tl 28tl 当館の割合 2.52% 5.42% 蔵書製作と並行して、個人の方からの依頼に応えるプライベート製作の推進を目指したところ、ボランティアの皆さまのご協力のお陰で製作数が延びました。殊にテキストデータのプライベート製作は全国に先駆けてのサービス開始で、今後の拡大が見込まれます。 DMMD、音声解説、点字教材の年間製作数 マルチメディアデイジー 教科書17tl、絵本・一般書10tl、テキストデイジー専門書17tl、テキストデータ44tl 音声解説 DVD用CD10tl、シネマデイジー34tl、映画会用音声解説7tl 教材点訳 小学校9校37点、中学校5校30点、大学5校70点  特にマルチメディアデイジーと、昨年誕生したシネマ・デイジーを含む音声解説は、他館ではまだほとんど行われていない取り組みで、当館のリードにより国内での普及拡大を目指していきます。 2.点字・録音図書の利用状況 @利用登録者数 利用登録者 サピエ登録者 日ラ情文 4,578人 834人 全国合計 78,061人(81) 12,476人(81) 1施設平均 963人 154人 当館の割合 5.86% 6.68%  利用登録者の内、実利用者は2,446人ですが、この他にサピエ図書館だけを利用している方や、他館の利用登録者でサピエから当館を利用している方も大勢います。 A年間貸出数 点字図書 録音図書 日ラ情文 2,402tl 64,776tl 全国合計 56,184tl(80) 879,348tl(80) 1施設平均 702tl 10,991tl 当館の割合 4.28% 7.37% Bサピエにおける当館製作のデータ利用数 点字図書 録音図書 日ラ情文 26,622tl 138,331tl 全国合計 710,713tl 2,102,975tl 当館の割合 3.75% 6.58%  表Aの録音図書の貸出はデイジーとテープの合計で、雑誌も含んでいますが、前年度比9p増でデイジーが年々増え続けています。 一方、点字の貸出が漸減していることは大きな課題ですが、表Bのとおり全国のサピエ利用登録者(12,476人)と施設・団体(271ヶ所)が当館のデータを1年間に利用したタイトル数を見ると、点字は直接貸出の11倍で全国1位、録音は直接貸出の2倍で全国2位です。 3.対面リーディングサービス件数 日ラ情文 1,083件(1件2時間) 全国合計 3,957件(40) 1館平均 73件(当館を除く) 4.用具・機器、インターネット利用支援 サービスフロア来室者     4,971人 パソコンQ&A 2,520件 個人指導 493件 ボイスネット訪問サポート 10件 ICTサロン     10回・181人  用具・機器の展示・紹介、PCやインターネットのサポートや指導は、全国でも例のない当館独自のサービスで、利用は増える一方です。 指点字と出会い、おしゃべりの喜びを取り戻すまでの日々 東京盲ろう者友の会理事長、藤鹿一之さんの講演から  今春、NPO法人視聴覚二重障害者福祉センターすまいるの指点字講習会が行われ、そのプログラムの一環として、公開講演会がありました。講師はNPO法人東京盲ろう者友の会理事長の藤(ふじ)鹿(しか)一之さんで、大阪市立福祉センターに超満員の120人余りが集まりました。壇上の藤鹿さんは、両脇に座る弱視と全盲の通訳者から指点字で会場の様子や反応を聴きながら、指点字を習得、本来の自分を取り戻すまでの歩みと心の変化をお話しされました。(総務係 加治川千賀子) 指点字との出会いから、使えるようになるまで  藤鹿さんが初めて指点字を知ったのは、27年前、弱視・難聴だった20歳の頃でした。当時通っていた盲学校に全盲ろうの学生がいて、大学生だった福島智さん(現東大教授、盲ろう)が論文を書くため会いに来ていました。その時、通訳を介して福島さんと話をしたのですが、初めて見た指点字は、「福島さんと通訳者の手の動きがごちゃごちゃして、鍵盤を叩いているみたいだったが、自分にはさっぱりわからない。この人たち、どこの国からやってきたのかと思うほど不思議なコミュニケーション手段に見えた」。この印象に会場から笑いがこぼれました。  その後、目と耳の機能が低下。もともとおしゃべり好きでしたが、会話は指に手を添えてテーブルにかなを書いてもらい、読み取る方法しか知らず、会話が弾むスピードではありません。  26歳頃、ついに視力と聴力のすべてを失い、全盲ろうに。その様子を誰にも知られたくないと6年間の引きこもり生活に入りました。  転機は知人を通して「盲ろう者友の会」の交流会に誘われたこと。答えは「NO!」。「見えない、聞こえない自分が交流会に参加してどんな意味があるのか。虚しい気持ちになるだけ」。会の職員から「交流会に来たら、決してあなたを一人にしません。通訳介助者がそばにいて、あなたの目と耳の代わりになります」と言われます。  藤鹿さんはそれまで手話や手話通訳のことは知っていましたが、通訳しながら移動介助を受けられる制度は知らなかったのです。心が動き、サークルに足を運びました。そこは自分に適したコミュニケーション手段を学び、通訳・介助者派遣制度を利用して社会参加できる場でした。  藤鹿さんは既に点字をマスターしていたので、ブリスタ(ドイツ製の点字速記タイプライター)を使い、紙テープに打ち出される点字を読んで通訳を受けました。「人とのおしゃべりは久しぶりでとても楽しかった、人の話も聴くことができるんだ、と感動した」。また、「指点字を読み取る訓練で打たれた言葉が伝わったとき、このうえなくうれしかった。人と歩きながらおしゃべりしたのは7、8年ぶりだった」と。   今度は指点字を使う人たちが集まるサークルに入りました。たくさんの情報交換ができる近況報告の時間はとても大切でした。自宅から遠く、夜のサークルだったため、度々、代表者の家に泊めてもらいましたが、全盲ろうの二人は夜が更けるまで指点字で語り合い、いつまでもおしゃべりできる喜びを改めて味わいました。  こうして藤鹿さんは本来の自分を取り戻し、社会参加への意欲も湧き上がっていきました。 一緒に遊ぶことから始めよう  ある時、仲間と富士急ハイランドへ出かけました。ところが、お目当ての絶叫マシーンは数時間待ち。さらに雨足が強まり、結局乗れたアトラクションはたった一つ。それなのに帰りの車中では、誰も文句どころか、口々に「一緒に遊べて楽しかった」と言ったそうです。「自分もずっとおしゃべりができて楽しかったし、仲間のこの言葉をとてもうれしく感じましたよ。」  最後に、藤鹿さんは受講生にこんなメッセージを送りました。「初めから通訳しようと頑張らず、ぜひ一緒に遊んで下さい、指点字でいっぱいおしゃべりを楽しんでください。」  私も点訳者として頑張っていた頃、点字の利用者から同じようなことを言われました。当時は頭をガツンと殴られた気がしましたが、今では一緒に遊ぶことはとても楽しいです。障害の有無を意識せず、付き合っていける人が増えればなぁ……と感じました。       ≪報告のページ≫ ○バリアフリー展と当法人チャリティコンサートへのご協力に感謝  当館では4月17日〜19日、インテックス大阪で開かれたバリアフリー2014で「目の見えない方・見えにくい方のための展示コーナー」を主催。当館の企画コーナーとして「点字名刺体験」を行い、点字製作係のボランティア16人のご協力により、3日間で約700人のお客様に点字名刺を手ずから打つ体験をしていただくことができました。 また4月20日、ザ・シンフォニーホールで開催した日本ライトハウス・チャリティコンサートには1千人を超えるお客様がご来場くださいましたが、多くのボランティアの方々にもご来場いただきました。ご協力、ご参加くださった皆様に感謝申し上げます。 点字体験にご協力くださった方々(敬称略) 井上重子 川崎安恵 鴻上真理 清水浩子 高橋世貴子 田中伸子 田中陽子 中川春美 西岡貴美子 中野龍子 華崎律子 林さゆり 本条祐子 待田俊彦 山下慧子 雪岡加奈子 ○ボランティアの三角幸子さんが逝去  25年にわたり館内作業をお手伝いくださった三角幸子(みすみさちこ)さんが今年1月逝去されました。三角さんはお母様の故三浦久子さんのお誘いで、1989年から本誌の発送や読書の印刷作業に参加。お母様は2002年5月に引退後、亡くなられましたが、三角さんはその後もお手伝いくださり、ここ数年は闘病しながら、毎月本誌の発送作業に来てくださいました。親子2代にわたるご協力に心から感謝し、ご冥福をお祈り致します。 あゆみ 【4月】 5日 ダスキン・アジア障害者リーダー(アイリッシュ、ティカ)研修終了 12日 オープンデー(館内見学日) 17日 バリアフリー2014(〜19日、インテックス大阪) 20日 日本ライトハウス・チャリティコンサート(ザ・シンフォニーホール) 26日 手で見る冨嶽三十六景鑑賞会(12人) 予定 【5月】 1日 ボランティア友の会世話人会 10日 視覚障害者ICTサポート講習会開講 15日 専門音訳講習会「シネマ・デイジー編集コース」開講(〜16日) 17日 オープンデー(館内見学日、要予約) 24日 笑福亭伯鶴の会(18時30分〜) 28日 ボランティア友の会ガイド体験会 30日 わろう座映画体験会「わが母の記」 編集後記 サッカー教室の子供たちと一緒にヤンマースタジアム長居へサッカー観戦に行ってきました。セレッソ大阪VSガンバ大阪の好カード。大阪ダービーと言われるだけあって国際試合のような盛り上がりで、私自身もJリーグは初めてでしたが、生の迫力に圧倒され、めちゃめちゃ興奮しました。それにテレビのようにリプレーが無いので目も離せません。歓喜する息子達を見ながら、Jリーグで活躍する姿を浮かべてしまいました。目指せ!日本代表(茂) =ONE(ワン) BOOK(ブツク) ONE(ワン) LIFE(ライフ) 2014年5月号= 発 行 社会福祉法人日本ライトハウス      情報文化センター(館長 竹下 亘) 住 所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp 表紙絵 武部はつ子 発行日 2014年5月1日 定 価 1部100円 年間購読料1,000円