ろくおん 通信 No.203号 発行日:2014年4月1日 発行:日本ライトハウス情報文化センター 録音製作係 発行責任者:竹下 亘  〒550-0002 大阪市西区江戸堀1-13-2  電話 06-6441-1017(録音製作係直通)  http://www.iccb.jp/ 主な見出し ★聴いてわかる録音図書をつくるために(第16回) ★きれいに録音する技術(13) ★音訳されたものから「処理」を考える(6) ★チーム紹介 『英語チーム』 ★編集のひろば ★デイジー編集Q&A ★館からのお知らせ ★カリムのたれ耳噺 主な見出し、終わり。 ★聴いてわかる録音図書をつくるために(第16回) 『引用文の読みかた』 久保洋子  墨字の本の中で、引用文はさまざまな形で構成されています。例えば、以下7種類、 1.「次のように述べている。」などの文言の後に書かれているもの。 2. 行頭を下げているもの。 3. はじめと終わりに行間を取っているもの。 4. カギカッコ・トジで表しているもの。 5. 引用文のはじめや終わりに出典が書かれているもの。 6. 活字の種類・ポイントを変えているもの。 7. その他。  以上のどの形でも、墨字の原本において著者の文章と引用文の区別は見えている者には容易です。音声では、たとえば、間(ま)を取る、声の調子を変えるなどしても、誰もが明確に区別できるとは限りません。文体が違う場合でも、しばらく聞いてから引用らしいとわかるようでは、快適な読書とは言えません。引用文の区別が明確にできる処理を考えなければなりません。 引用文の読みかたの例(4つ) 1. 以下引用・・・ 引用終わり 2. 引用・・・ 引用終わり 3. カギカッコ・・・ カギカッコトジ(カギカッコ・・・トジ) 4. 間(ま)で処理 例、終わり。  3.の場合は、他にカギカッコが使われていないか、使われていても前後の文章で引用であることがはっきりわかるかを確認してください。  4.の場合も同じように、今から引用がはじまることがわかるか、終わったことがわかるか確認することが大切です。 ★きれいに録音する技術(13) 『元の音源が適切な録音ボリュームであることが重要』 録音製作係 清水賢造  下の図は、スタジオで録音したばかりの、ノーマライズなどの音量調整を行う前の音源の波形です。  録音ボリュームを固定した状態で、「Recdia」の音声補正機能(『設定』メニュー→『フィルタ設定』→『ダイナミクス』・『リミッター』)の数値、マイクから口元までの距離と角度を変えて録音しました。 図:説明 A、Bの2つのペアの波形が、①、②、③、[1]、[2]、[3]の6種類、表示されています。 Aは、マイクを顔の正面に置いた場合の波形。 Bは、マイクを顔の横45度から口元に向けておいた場合の波形です。 以下、①から③までは、「Recdia」のフィルタ設定の『ダイナミクス』・『リミッター』を0にし、顔からマイクまでの距離を変えて録音した時の、A、Bの波形です。 ①顔からマイクまでの距離が45cmの波形。 波形の大きさはAもBもほぼ同じですが、どちらも-6.0dbに届いていない小さな波形です。 ②顔からマイクまでの距離が25cmの波形。 Aは-6.0dbくらいの大きさの波形ですが、-6.0dbに届いていない小さな波形です。 ③顔からマイクまでの距離が15cmの波形。 Aは-6.0dbを大きくはみ出たかなり大きな波形です。ピークがメーターを振り切っている箇所があります。 Bは-6.0dbを少しはみ出た大きさの波形です。 [1]から[3]までは、①から③と同じ条件で、「Recdia」のフィルタ設定の『ダイナミクス』・『リミッター』を100に設定した時の波形です。 どの波形も、-6.0dbの前後の大きさで、A、Bの違いも見られません。 図、終わり。  この図の①から③を見て分かるように、マイクとの距離が45 センチだと元の音源はかなり小さく録音されます。25 センチあたりで少し小さいくらいです。ところが、距離が15 センチになると音量は急激に大きくなります。このように、増幅されない元の音源のボリュームはマイクの角度や距離によって大きく変動します。  一方、[1]から[3]までの音源は、マイクの距離を①~③と同じにしたにも関わらず、あまり大きな変化は見られません。これは、『フィルタ設定』の『ダイナミクス』および『リミッター』に数値を入力したため、録音ボリュームが小さいときは増幅し、大きすぎるときは小さくする機能が働いているからです。  録音ボリュームを補正してくれる『フィルタ設定』は、便利な機能のように思えますが、小さい音を増幅するとノイズも一緒に大きくなりますし、大きすぎる音を小さくすると無声化音などが消えてしまうことがあります。また、同じ原本を収録している途中でフィルタ設定を変えるのもあまりお勧めできることではありません。家庭録音をしていて『フィルタ設定』を変更したい方は、まずは録音製作係の職員にご相談ください。  最近、大勢の音訳者で分担して読む週刊誌のデイジー版で、同じスタジオで収録したのに音訳者によって音質に大きな差が出てしまったケースがあり、音質が悪い音源はマイクを40 センチ以上離して録音したものであることがわかりました。つまり、元の音源が①のような状態になっていたのです。元のボリュームが小さい音源を無理に増幅すると、デイジー図書としてMP3に圧縮したときに安物のマイクで録音したような音質になるようです。  こうしたことを防ぐためには、収録前の音量設定で「Recdia」に表示されている白いラインに入るように録音ボリュームを調整してから、騒音測定をすることが大切です。  また、マイクとの距離は離しすぎると音質が悪くなりますが、逆にあまり近くすると、③のAとBのように顔が少し動くだけで(マイクとの角度が少し変わるだけで)、音量が大きく変化してしまいます。吹かれノイズや口を開くときの音、息を吸うときの音なども入りやすくなります。マイクから口元までの距離は20 センチを目途に調整し、読んでいるうちに背中が丸くなったり体が斜めになったりしてマイクから離れたり近づいたりすることのないよう、一定の距離を保って録音できるよう心がけてください。 ★音訳されたものから「処理」を考える(6) 録音製作係  同音異義語がある熟語、著者の造語、漢字を見なければ意味が理解できないような言葉など、前後の文章を聞いても正しい意味で伝わりにくい、または他の熟語と間違える可能性がある言葉が出てきたときは、音訳者が字の説明などを補足します。  熟語などの説明で重要なのは、熟語内の漢字がどのような意味を持っているかを的確に判断し、その意味からかけ離れない言葉で簡潔に説明するということです。意味の違う言葉を例として持ち出してはかえって聞き手を混乱させることになりますし、漢字が分かったとしてもその熟語が特定できなければ文意を理解することはできません。  意味がとらえにくくなってしまった補足説明の例をあげてみます。 例1 『「婚・産・職」女の決めどき』(女性のライフスタイルに関する本) 音訳:「結婚のコン、産業のサン、職業のショク」  この場合の引用例としては、産業ではなく「出産のサン」の方が適切と言えます。 例2 『ボーイング787型機は、主翼を三菱重工、前部胴体を川崎重工など、機体部品の35パーセントを日本メーカーが担い、準国産機とも呼ばれる。』 音訳:「準は標準のジュン」  ここでの「準」は標準や準備というような意味で使われているのではありませんので、「準は準ずるのジュン」と説明するのが適切です。 例3 『主夫』 音訳:「シュナルオット」  この説明では、聞き手に「主なる夫(夫が主である)」という意味にとられる可能性があります。主婦をもじった造語ですので、「主夫(しゅふ)、フはオット」という説明で良いでしょう。 例4 『個人個人の精神の諧和』 音訳:「諧和のカイはごんべんにミナという字、和は昭和のワ」  この熟語において「昭和のワ」という説明は意味からかけ離れていますし、漢字の形や一文字ずつ字の説明をするよりも、「カイワは、調和するという意味のカイワ」などのように意味から熟語を説明する方が理解しやすい場合もあります。  熟語であればどの意味の熟語かすぐにわかるように、既存の言葉をもじった造語などは意味が正しく伝わるように説明することが第一義であり、使われている漢字を知らせることにのみ意識が向かないよう注意が必要です。 ★チーム紹介 『英語チーム』  英語チームは、故・古谷穹子氏を中心とした英語講習会から生まれたチームで20年以上活動を続けています。ラジオ英会話テキストや英語の参考書などの音声訳を経て、現在「英語よもやま通信」を毎月発行しています。「英語を楽しむ」をモットーに、気軽に聞けて、ためになるデイジー図書をめざして製作しています。  その内容の一部を紹介します。日本に住む様々な国の人が日本の印象を綴った英語のエッセイ、「ストーリーで学ぶ24 時間まるごと英会話」、世界で活躍する人物を紹介する「People Today」、英語に関する質問コーナー、英詩、英訳された日本の詩を紹介する「Poems for You」、世界そして日本の今を伝える「ドキュメント・アメリカ」、「クローズアップ・ジャパン」、「ニュースの英語」、英語の歌の歌詞を知り音楽と共に楽しめる「今月の歌」、「日本人のための教養ある英会話」、世界95,000km 自転車一人旅の記録「行かずに死ねるか」、出版物の紹介などです。各種英語雑誌、新聞、単行本、ウェブサイトなどから、伝えたい記事を皆で見つけて録音します。大変ですが楽しい作業でもあります。  「いわゆる英語がペラペラ」というのはチームにとって必要なことではありません。「英語」に対する関心、英語でつながる広い世界への関心を持っていること、そして何よりもその根底にある日本語の力がチームメンバーを結びつけています。  「英語よもやま通信」だけでなく、英語に関係する本の音声訳も、もちろんチームの大切な仕事です。講談社バイリンガルブックシリーズ、DKBiography シリーズ、I can read bookシリーズ、その他にも、日本語を学ぶ外国人のためのテキストなど、聞きやすく、わかりやすいデイジー図書を作ろうと皆で励んでいます。  毎月第4金曜日に開かれるミーティングでは、「よもやま通信」前月号の合評を行います。誤読はなかったか、アクセントの誤りは、聞いてわかる適切な処理がなされていたか。また、記事に関連したさまざまな体験談や旅行の話、本や映画や音楽の話題などで盛り上がることもよくあります。  ただ今、チームメンバーを募集中です。ぜひ一度ミーティングをのぞいてみてください。 写真:『英語チーム2月ミーティングより』 説明:メンバー14人がにこやかな表情で写っている集合写真です。説明、終わり。 ★編集のひろば 『パソコンの前に座ったら、まずウェブスタジオ・なにわにログイン ― デイジー編集者からもウェブ校正票が届くようになります ―』  音訳者・編集者間のすれ違い解消アイデア第1弾として、編集者のウェブ校正票利用を推進していきます。従来、編集者は紙の校正表(ピンク)で音訳者に修正依頼をし、それを受けて音訳者はウェブスタジオ・なにわの「製作範囲外」で修正データをアップしていました。編集者からの修正依頼がウェブ校正票になると、音訳者は「修正済音訳データ送信」でアップできるようになります。  「何だかややこしそう・・」「面倒だな!」と言う声も聴こえてきそうですが、パソコンの前に座ったらまずウェブスタジオ・なにわにログインし校正票や連絡票をチェックするなど、ウェブスタジオ・なにわをもっともっと活用し、身近なものにしませんか?  「ウェブスタジオ・なにわ」のウェブ校正票を使った音訳者と編集者の作業手順を以下にまとめました。音訳者、編集者の皆さま、ぜひチャレンジしてください。 ■ウェブ校正票利用の手順(デイジー編集からの校正票の場合) <音訳者> 全部読み終わったら・・・  ①最終データアップの際、「製作範囲完了」の□にチェックを入れて音訳データ送信  ②チェックを入れ忘れた場合は、以下の方法で後から必ず入れます。 【方法】 「音訳データ送信」 →「音訳データ一覧を参照する」をクリック → 一覧が表示されたら「最終データ」の「詳細」ボタンをクリック(右端にあります) → 「製作範囲完了」の□にチェック(一番下にあります) → 変更するをクリック  編集者からウェブ校正票が届いたら・・・  ①「校正あり」の校正票をダウンロード  ②Recdia で「校正票一覧」を表示させ、赤くなっている項目をクリックして内容を確認  ③Recdia 画面に戻り、ハメコミ訂正録音(このときは「時間送信」はできません)  ④「修正完了」または「修正パス」欄の□にチェック  ⑤ウェブスタジオ・なにわ上で、「修正済音訳データ送信」 【参考1】手順は、校正者からのウェブ校正票の場合と同じです。 【参考2】「校正なし」の校正票が届いたら、何もしないでそのまま閉じます。 <編集者>  ①Recdia を立ち上げ、編集用にダウンロードした音訳データのフォルダを選択  ②音訳ファイル(例:△△△01.wav)を「決定」  ③右上の校正票画面をクリックし「校正票一覧」を表示  ④「校正票一覧」を1行ずつクリックし「編集者確認」の○を選択(▼をクリックして○を選択) ※再度同じ内容の修正を依頼する場合は×を選択  ⑤「校正票一覧」にある「校正行追加」をクリック  ⑥校正内容を入力し、OKをクリック  ⑦一覧表に追加されている項目を確認(時間は表示されません)  ⑧校正内容を全部入力し終わったら、「校正票一覧」画面で校正票送信 【参考1】校正項目の有無に関わらず、すべてのwav ファイルについて校正票を送信します。校正項目がないファイルは、上記④のあと校正票を送信します。 【参考2】2校でウェブ校正票が送信されていないと、編集でのウェブ校正票は利用できません。 ★デイジー編集Q&A Q1:「Wavosaur」(音声編集ソフト)を、家のパソコンで使いたいのですが・・・。 A1:「Wavosaur」をパソコンにインストールすると、お使いいただけます。インストール用のCD を録音製作係で用意しています。お問い合わせください。 Q2:デイジー編集では「間(ま)」を調整してはいけないのですか? A2:基本は「音訳者の読みの流れを大切にする」ですが、どうしても修正録音などで不自然な「間」できてしまったり、読み終わりの「間」が長すぎたり短すぎたりすることがあります。その様な場合は、聴きやすいように編集で調節します。 Q3:デイジー図書のページを付ける場所は、どこがいいのですか? A3:「ページ境目の前後1行以内で、境目に最も近いフレーズに付ける」を最良としていますが、うまくその条件に合わない場合もありますので、迷ったら職員にご相談ください。 Q4:グループチェック(Gを入力するところ)はどこに入れるのがいいですか? A4:「○ページ図」または「○ページ原本△ページ図」と「図終り」のフレーズを推奨しています。(わざわざ「○ページ図タイトル」のようにフレーズを結合する必要はありません) Q5:複数枚の図(表・写真など)が続くときのグループチェックはどこに? A5:「○ページ図□枚」「図1」「図2」・・・と「図終り」または「○ページ、原本△ページ、図□枚」「図1」「図2」・・・と「図終り」です。 Q6:見出し入力で①②・・・の数字表記が⑳までしか入力できません。21 以上はどうすればいいでしょうか? A6:例外扱いとして、(21)(22)・・・と入力します。 ★館からのお知らせ 1.専門音訳講習会「東洋医学コース」を開催  視覚障害者が多く従事する職業の「あんま・マッサージ・指圧、鍼、灸」。免許取得のための学習や、治療に役立つ知識の習得など、東洋医学関係の録音図書は多く利用されています。しかし、専門用語が多く誰でもすぐに読むことができないため、音訳タイトル数は、文芸書などに比べ少ないのが現状です。この講習会は、東洋医学関係の資料を音訳するために必要な基礎知識を中心に、東洋医学の基本的な考え方と、音訳のポイントを学習します。 日時:6月13日・27日、7月4日・11日・18日(各金曜日・全5回)、14時から16時 場所:当センター4階会議室 受講希望の方は、録音製作係職員までお知らせください。 2.専門音訳チームについて  当センターを基点に活動してきた近畿視情協録音製作委員会「英語チーム」「古典チーム」「理数チーム」「東洋医学チーム」は、近畿視情協の意向を受け、本年4月から当センターの専門音訳チームとして活動することになりました。  他施設から参加していただいている方も、引き続き、専門音訳チームのメンバーとして一緒に活動していただきます。今後は、録音雑誌の製作と定例勉強会の開催をメインの活動とし、全国の利用者の方々に使っていただくための専門誌を音訳していきます。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。 3.ゴールデンウイークの休館について 4月29日(火)と、5月3日(土)から6日(火)まで、全館休館いたします。 ★カリムのたれ耳噺  毎日お父ちゃんと歩いていると、周りからいろんな声が聞こえてきます。「あっ、わんちゃんや!かわいいなぁ!」「あれは介助犬?聴導犬?」  最近気がついたのですが、盲導犬に遭遇したとき、お母さんが子どもに、ほぼ100%の確立で言うのです。お父ちゃんによると、関東では「盲導犬だよ!お利口さんだね!」と言うらしいです。でも関西は違います。「見て!盲導犬!あんたより賢いで!」 以上