日本ライトハウス情報文化センター        「ワンブックワンライフ」2013年5月号  <表紙イラスト:(武部はつ子画)>テーブルの上に大皿に盛られた料理。エプロン姿で、お玉やフライ返しを手にした男の子と女の子が満面の笑みで、「母の日に作ったよ、似てる・・・!?」。ライスに、レタスで髪の毛、ミニトマトで鼻など顔のパーツが置かれている。お母さんは、微妙な表情で「う、う〜ん・・・、ありがとね・・・」 (目次) ◇掲示板 ◇センターのページ   ・ 木塚泰弘理事長が退任し、新理事長に橋本照夫が就任   ・テキストデータ化、「シネマ・デイジー」の製作・貸出などに着手 ◇ボランティアのページ   ・【見学日和〜知れば、知るほどおもしろい】 〜NPO法人ロバの会を訪ねて ◇報告のページ ○友の会主催「ガイド体験会」にぜひご参加を  当館への行き帰りや館内で視覚障害者の方を見かけたとき、気軽に声をかけ、目に見える情報を伝えたり、ちょっと手を貸したりできることは、ボランティア活動の基本として、ぜひ身につけていただきたいセンスと技術です。ボランティア友の会では今年も恒例の「ガイド体験会〜楽しく歩こう、安全に」を開催し、ガイドの基本的なポイントを学びます。ガイドの体験後は、ロービジョンの竹田幸代職員を講師に「見えにくさとは?」、「見えにくい人の日常生活の工夫」などを聴き、盲導犬利用者からお話しをうかがいます。これまでに参加経験のない方は、ぜひこの機会にご参加ください。  日時 5月28日(火)13時〜16時  場所 当館4階会議室(館周辺も歩きます)  講師 当館職員 原田美貴、竹田幸代ほか  当日は歩きやすい靴で、両手が空くようにポシェットやウエストポーチをご用意ください。帽子、タオル、飲み物は各自ご持参ください。  申込 3階総務係(電話06-6441-0015)まで。 定員に余裕があれば直前まで受付けます。 ○専門音訳講習会「図表コース」を開講  毎日新聞大阪社会事業団と共催で第26回専門音訳講習会「図表コース」を開催。写真・図・表の説明と、読み方などの技術講習を行います。  日時 6月5日〜7月10日・毎週水曜日 10時〜12時。全6回。  講師 近畿視情協理数チームボランティア  資格 音訳活動中で、図表の音訳を始める方  定員 15人    受講料 1,000円  申込受付 5月14日(火)〜24日(金)  申込は録音製作係(電話06-6441-1017)へ要項を請求の上、お申込みください。 ○今年度ボランティア活動休止日のお知らせ  当館では月曜指定祝日と、日曜に祝日が重なる時、その直前の土曜日に製作部門と図書貸出を休館させていただきます。今年度は7月13日、9月14日、10月12日、11月2日、来年1月11日(予定)の土曜日が休館になります。サービス部門(5階サービスフロア、4階会議室、3階総務係)は開館します。また10月5日(土)は日本ライトハウス展のため全館休館いたします。             《センターのページ》         木塚泰弘理事長が退任し、新理事長に橋本照夫が就任     新旧理事長からご挨拶申し上げます  当法人では3月末、木塚泰弘理事長が退任し、4月1日付けで橋本照夫(前専務理事)が理事長に就任しました。また前館長の橋口勇男が専務理事(財務担当)に、關宏之理事が常務理事(事業担当)に就任しました。橋本新理事長と木塚前理事長から皆さまへのご挨拶をお届けします。             「これまでも。これからも。」                          理事長 橋本 照夫  岩橋武夫はエディンバラから帰国した直後、「私の指は何を見たか」という書籍で、「指頭の王國―これは私の精神界、思想界、その他一切の内的生活を開く秘密の鍵である。」また情報の入手は「生きんためなり、学ばんと欲するにあらず」と述べています。1929年には点訳奉仕会が組織されて点字図書の貸出を開始し、1959年には声の図書館から録音図書の貸出が始まり、今日では600人のボランティアの方々が、視覚障害のある方や読み書きに困難のある方の“学び・働き・暮らし・楽しむ”を支える主要な担い手として、点字・録音・電子書籍などの図書や雑誌を製作・提供して頂いています。  私の日本ライトハウスでの最初の勤務地は、和歌山県田辺市にあった行動訓練所で、盲導犬の訓練士として採用されました。企業からの転身で、幼い息子は真っ黒になって逞しく育ちました。そこで、生まれたばかりの仔犬を家庭で育てて頂くパピーウオーカーの方々、街頭募金やチャリティショーのご支援など、およそ企業勤務では決して出会うことのないボランティアの方々や市民の方々のご支援に感動しました。  私は、今年度から、理事長という重責を担うよう仰せつかりました。歴代理事長の足跡を辿りながら、視覚に障害のある方々から期待され、頼られ、利用して頂いて、社会参加に繋げて頂けるよう、新たに「使命(ミッション)・政策理念(ポリシー)」を策定して、100周年に向かう覚悟を示し、その第一歩にしたいと考えています。  情報環境の改善を目指す事業では、ボランティアの皆さまのご尽力が重要な柱となっています。今日までのご協力に心より感謝申し上げますとともに、今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。            「おもてなしの心」でのご活躍を               よろしくお願いいたします                              前理事長 木塚 泰弘  昨年、日本ライトハウスは創業90周年の節目の年でした。また、17歳で見えなくなってから60年と暦が戻り、喜寿を迎えた私にとっても節目の年でした。11月18日の創業90周年の記念式典が皆様のご協力で素晴らしいものとなり、後片付けを終えた職員に労いの言葉をかけた後、ホテルで赤ワインを飲みながら、理事長を退任することを決めました。  この60年間、家族や友人と支えあい、特に大勢のボランティアに育てていただきました。  日本ライトハウスのボランティアの方々は、職員と共に、利用者の心の奥のニーズをコミュニケーションを通して見い出し、「おもてなしの心」で接しておられます。さらに、ライトハウスからサピエ図書館にアップされた点字や録音図書は、正確でわかりやすいと評判です。特に学術専門書などでは他館に追随を許していません。  7期14年間おりましたのに、ボランティアの皆さんとは、友の会の交流会でオークションを共に楽しんだことが3回しかなかったことを残念に思っております。  今度は、利用者としてお付き合いしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。      テキストデータ化、「シネマ・デイジー」の製作・貸出などに着手      2013年度事業計画から新規事業のご紹介  新年度が始まり、早くも一月が過ぎましたが、3月末の理事会に提案し、承認された2013年度の事業計画の内、新規サービスをご紹介します。これらのサービスを実施するには、点字・録音製作、電子書籍、音声解説、対面リーディング、貸出をはじめとする館内作業、パソコンサポートなど、640人に及ぶボランティアの皆さまのご協力が必要です。目の見えない人・見えにくい人をはじめ、すべての人が情報を共有できる社会の実現に向けて、ぜひお力をお貸しください。(館長 竹下 亘)      基本方針   全国で推計164万人に達する視覚障害者(日本眼科医会2009年発表)をはじめ、読み書きに困難のあるすべての人が等しく情報を共有できる社会の実現を目指し、特に“学び、働き、暮らし、楽しむ”ことに役立つ情報を点字、録音、電子書籍、音声解説などの媒体で製作・提供する。さらに情報利用に欠くことのできないインターネットと情報通信機器、視覚補助具の普及を推進する。また当センターの地の利を活かして、文化とコミュニケーションの場を提供する。      主な新規事業  @「サービス案内」を全面改訂して、点字・録音・大活字・テキストデータ版で作成し、利用者全員に配布する。  Aプライベート製作にテキストデータを加えるとともに、受付窓口と製作部門の連携を密にし、円滑・迅速なサービスに努める。(プライベート製作とは、大阪府・市の個人の依頼に応えて点訳・録音するサービスです。)  B音声解説CDと映画DVDのセット貸出に加え、音声解説付き映画CD「シネマ・デイジー」(音声のみ)の製作・貸出に着手する。  C視覚支援学校や地域の小・中・高校で学ぶ児童・生徒を対象に、魅力的な点字図書の製作と紹介・貸出サービスに着手する。 D話題のICT機器やソフトの紹介・体験・情報交換を行う「ICTサロン」を年10回開催する。(毎日新聞大阪社会事業団共催「ICTサポートボランティア講習会」と併催)  E「情報バリアフリー推進事業」として、行政・企業・団体に働きかけ、点字、録音、電子書籍、音声解説の公的保障の拡大に取り組む。特にマルチメディアデイジー教科書の公的保障の実現を目指す。 ===      肥後橋ちょっと“触れ歩き” @  当館南隣のホテル「リーガ中ノ島イン」の南側壁面に澤山保羅氏(1852〜1887年)の肖像のレリーフがあります。彼は梅花女学校(現梅花学園)をこの地に創設した日本初のキリスト教牧師でした。まなじりを決した表情から意志強固な人柄が偲ばれます。 ===          《ボランティアのページ》         【見学日和〜知れば、知るほどおもしろい】 〜NPO法人ロバの会を訪ねて 「こんなのがあったらいいね」と、常に利用者目線!  今回から始まる新コーナー「見学日和〜知れば、知るほどおもしろい」。視覚障害に関係する施設や団体を訪問して紹介する企画です。1回目は、デイジー図書を一早く取り入れられた「京都朗読奉仕会『ロバの会』」を訪ね、代表の山田新作さんに活動内容や、音訳に対する思いを伺いました。(総務係 林田 茂)      「スマートでなくても誠実に歩いて行こう」  阪急四条大宮駅からほど近く、道中には新選組隊士が眠る壬生寺があり、古い街並のマンションの一室に、「ロバの会」の活動場所はあります。  スマートではないが誠実に歩いて行こう、という意味で「ロバの会」と名付けられたそうです。  1978年4月から地道に活動を始められ、2010年には、念願であった“視覚障害者等のための複製又は自動公衆送信を行うことのできるもの”の指定を文化庁より受けられました。これにより、図書の製作・貸出が飛躍的に楽になった、と誇らしく語られました。活動日は毎週水曜日で、第2水曜日は、情報交換や勉強会を実施されています。現在の活動ボランティアは約40人、貸出の対象は全国で約3000世帯の方が利用されているということで、「全国貸出」には驚かされました。      テープ図書からデイジー図書へ  シナノケンシのデイジー編集ソフトに当初から関心を抱き、「視覚障害者の読書環境が変わる」と、全国で最も早い時期にカセットテープの製作・貸出を廃止し、デイジーへの移行に取り組まれました。利用者には、利便性を理解してもらうため、丁寧に説明することからスタートしたそうです。この取り組みがなければ、デイジーの普及はもっと遅く、違うものになっていたかもしれません。      毎朝、新聞記事をテレホンサービス  1988年から「ロバさんの朝日新聞天声人語」のテレホンサービスを始められています。タイムリーな情報を伝えるため、曜日ごとに担当を分け、山田さんを含む5〜6人のメンバーが毎朝音訳され、当日の記事を24時間いつでも聴くことができます。電話代のみで、利用料などは一切かかりません。「天声人語」以外の情報も同サービスで聴くことができて、利用者に人気のあるサービスです。 ※テレホンサービスの電話番号 075-821-3505       高島屋通販カタログ、国家試験問題集の製作  年4回発行の「高島屋通販カタログ」は、納期があり製作は大変ですが、利用者の「あったらいいね」という期待に応えたいという思いで、高島屋への説得が実り現在に至っているそうです。8人〜10人が製作を担当し、主婦の感覚で商品を選択。ロバの会らしいのは、ウィンドウショッピング感覚で、書かれていないことも多少の主観を交えて説明していることでした。  そして、ロバの会で忘れていけないのは、国家試験問題集の製作を続けて来られたことで、「おかげで試験に合格した」など、もっとも利用者に喜ばれ、反響の大きいものだそうです。山田さんは当初から医療関係には力を入れておられ、盲学校の先生や利用者の声を聴きながら、さらに使いやすい形に修正しながら利用者に届けています。      常にハングリー精神を忘れずに  今後のロバの会についてお聴きすると、「これからの人へ託したいこと」として、「今後も視覚障害者の読書環境はどんどん変わっていく。CDもなくなるかもしれない。サピエ図書館のさらなる発展もある。携帯型再生機を使っている人も増えている。時代が変わっていった時に対応できるように備えなければいけない。」「視覚障害者の読書は、“これでいいよね”となってはいけない。一方忘れてはならないのは、取り残される視覚障害者もいること。それがこれからの課題だと思う。」  「福祉に携わるものはハングリー精神を忘れてはいけない」と笑顔で語る山田さんはじめロバの会の皆さんに、私たちがやらなければいけないことを改めて教えていただきました。 ≪感謝報告≫  2013年3月分を別のファイルでお送りしております。 《報告のページ》 ○シナさんとユーイーさんの研修が終了  ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業14期のカンボジアのニヨン・シナさんとマレーシアのリム・ユーイーさんの当館での研修が終わりました。シナさんは2月27日から3月16日、ユーイーさんは3月25日から4月6日まで、それぞれリハセンをはじめ、情文での見学・実習や近隣施設の見学、歩行訓練などを行いました。二人とも大変明るい性格で、シナさんは英語教員を、ユーイーさんは視覚障害者の施設設立を目指しています。日本研修はあと3ヶ月ですが、実のある研修をして帰国後、活躍されることをお祈りします。 ◆研修にご協力くださった皆さま(敬称略) 佐々木敏子 高橋世貴子 西垣 泰子 森 和子 山本 香 ○製作部に児玉智子(ともこ)を採用 4月から製作部電子書籍担当に児玉智子を採用しました。8階でボランティアの方を補助しますので、よろしくお願いします。 あゆみ 【4月】 13日 オープンデー(館内見学日) 14日 日本ライトハウス・チャリティコンサート(ザ・シンフォニーホール) 18日 バリアフリー2013「目のコーナー」(〜20日、インテックス大阪) 19日 ライトハウス新任職員研修(情文) 26日 わろう座映画体験会 予定 【5月】 7日 音訳初心者・読み方講習会開講 9日 ボランティア友の会世話人会 11日 視覚障害者ICTサポート講習会開講、オープンデー(館内見学日、要予約) 28日 ボランティア友の会ガイド体験会       編集後記  ロバの会の訪問後、道中にあった 新選組ゆかりの地、壬生寺(壬生狂言でも有名)にも立ち寄ってきました。境内には局長 近藤勇の銅像や、新選組隊士が眠る壬生塚があったので、しっかり拝んできました。「燃えよ剣」や大河ドラマを観て、幕末の新選組には魅力を感じています。武士ではないがゆえに武士らしくと、己の信念を貫く真っ直ぐな生き方がカッコいい。隊士の中で、総長 山南敬助が私の中ではbP隊士です。乱暴な新選組の中でも、ニコニコ穏やかで和を重んじたそうです。でも三番隊組長 斉藤一も捨てがたい(茂) =ONE BOOK ONE LIFE 2013年5月号= 発行  社会福祉法人日本ライトハウス情報文化センター 発行人 竹下 亘 住所  大阪市西区江戸堀1丁目13−2(〒550−0002)     TEL 06−6441−0015 FAX 06−6441−0095 発行日 2013年5月1日