ろくおん 通信 NO.194号 発行日 2012年10月1日発行 発行: 日本ライトハウス情報文化センター録音製作係 発行責任者  岡本 昇 〒550-0002 大阪市西区江戸堀1−13−2 電話 06-6441-1017(録音製作係直通)  http://www.iccb.jp/ ★聴いてわかる録音図書をつくる為に(第7回)  写真の説明を考える  久保洋子  録音図書は、“墨字原本の内容すべて”を“晴眼者が読んでわかる”のと同じように伝えられるものでなければなりません。その意味で、図も表も写真もすべて読み込むことが、録音図書製作の大原則です。  文章は、項目の大小・同音異義語・各種の記号・ルビなど、様々な問題はありますが、何とか読むことができます。それに反して、図や表・写真・挿絵など、文章以外のものを伝えることは、大変難しいことで、音声訳者がもっとも苦労することです。  今回は写真について考えてみたいと思います。写真には、例えば登場人物の顔写真・風景写真・様々な建造物・石碑・人物の様子・動物・植物などいろいろなものがあります。また同じ一枚の写真でも、本文との兼ね合いで、どこをどのように説明するか、一通りではありません。説明文を作ったら、必ず、前後の文章を続けて読んでみてください。できれば録音して一度聞いてみるのがよいと思います。前後に矛盾がなく適確に伝わるか、確認してみてください。  写真に限らず、図や表などを説明する時に考えなければならないことを挙げてみます。  @ 図や表・写真などがあることを伝える。  A 本文を理解する上で、必要十分な説明を加える。  B 説明することで、本文が理解しにくくなることがあってはならない。  C 見開きページにまたがるような見た目にインパクトのある写真は、そのインパクトも伝えられるような説明文を考える。  一枚一枚の写真をどのように説明するかは、ケース・バイ・ケースで考えなくてはなりませんが、その手がかりになるよういくつかの凡例を列記してみます。  1. 対談集などで ・・・ 「各章の扉に、その章に登場する人物の顔写真がありますが、この録音図書では省略しています。」  2. 全部の写真に情景がわかるキャプションがついているとき ・・・「写真は添えられた説明文を読み、説明は省略します。」  ※ キャプションだけではどんな写真かわからない時は、必ず説明してください。  一般的には、キャプションを読んだ後で説明しますが、説明した後でキャプションをむ時は、「添えられた説明文を読みます。」と、ことわって読みます。  3. 巻頭写真について ・・・ 「巻頭に○○枚の写真があります。この録音図書では、本文中の関係のあるところで説明しています。」  すべての本がこれらに当てはまるわけではありません。一冊一冊、最後まで読んでみて方針を決めてください。最終的には音声訳開始前の打合せで、納得のいくまで相談してください。 ★「音声訳開始前に行う処理票」の記入説明 (つづき) 録音製作係  3.図、表、などの処理 □・図省略 □・図読む □・表省略 □・表読む  図や表は読むのが原則です。  図を省略する場合は、なぜ省略するのか、デイジー図書凡例や本文中でどのようにコメントするかを、職員と事前に行う打ち合わせ(以下、「打ち合わせ」)の時に確認します。  特に図は、説明しないとわからないもの、本文中に詳しい説明があるもの、図についている説明文だけで足りるものや、逆に説明文だけでは図の内容がわからず説明を加える必要があるものもあります。全体に目を通してから処理の相談をしてください。  表を省略するようなケースはあまりありませんが、どうしても省略する場合は図と同様「打ち合わせ」で確認します。読む場合は、どんな表か、どの順序で読むかなどを考えます。処理が難しいものであれば、積極的に理数チームのメンバーにも相談しましょう。    4.写真の処理   □・ことわって読まない □・キャプションのみ読む   □・説明をする □・その他  図や表と同様に写真も原則説明します。写真を省略する場合は、なぜ省略するのか、デイジー図書凡例や本文でどのようにことわるかなどを「打ち合わせ」の時に確認します。  5.注の処理   □・文の区切りで入れる   □・原本に合わせて巻末 □・各章にまとめて   □・注の内容で変える □・その他  注の種類(語句説明・参考文献など)や注の内容などを検討して扱いを決めます。 注を入れる場所を事前に検討し「打ち合わせ」で確認します。必要があればデイジー図書凡例でもコメントします。  6.デイジー図書凡例を記入  目次の階層は何階層まであるのか、目次にない小項目があるかないか、などをチェックし、デイジー図書の階層を決めます。階層にあわせて数字(1、1−1、1−1−1など)をつけるか、つけないかなどを「打ち合わせ」で確認します。  目次には「○○章」とついていなくても、本文では「○○章」といった言葉を使っている場合もあります。全体に目を通してから検討しましょう。目次だけで判断するとデイジー編集が終わった段階で読み直しといったことも起こりますので注意しましょう。  目次にない見出しを、どこまで階層化するかで時々混乱がみられます。本文で@ A・・・や、(イ)(ロ)・・・などと箇条書きになっているものは階層化しません。これらはグループを使用するケースです。目次にない見出しをどこまで階層化するかはデイジー編集者も判断しますが、音声訳者が「打ち合わせ」の段階で十分検討して決めていくことが大切です。 *聴くだけではわからない処理は凡例に入れる   例えば、引用文を「以下引用・・・引用終わり」と言い添えるのは、ことわりがなくてもわかりますが、「以下引用・・・」の代わりに「カギカッコ・・・カギカッコトジ」と言う場合は、ことわらないと引用文であることがわかりません。  7.その他  索引などがある場合、デイジー図書凡例や本文で、どのようにコメントするか等を検討 します。 〈例〉索引はア行、カ行単位にグループで移動できます。  索引がある場合、索引の語句が本文のどこにあるかをチェックします。音声訳者が読むページと索引のページが違う場合は、読んでいるページを言い、原本ページを言い添えます。  ※ 係より  □ 音訳を開始して下さい / □( )の処理要検討  必ず、職員との「打ち合わせ」が終了し、「音訳を開始して下さい」にチェックが入ってから録音を開始してください。 ★Q&Aコーナー Q Recdiaで録音していますが、外付けのオーディオインターフェイスは使用していません。録音ボリュームをほとんど上げずに録音していますが、録音した音があまりよくありません。どうしたらいいですか? A 今回はオーディオインターフェイスを使用せずに録音しているケースです。 Recdiaの録音ボリュームをほとんど上げなくても録音できているのは、パソコン側で音量を増幅しているからです。  元の音源は小さいのに無理に増幅するため、音質も悪くなります。これを解決するにはパソコン側で行っている増幅をストップさせます。  その手順は、 @ Recdiaの画面から「設定」を開き →「録音ボリュームコントロール(V)」を開く → 「トーン(A)」をクリック → 「□ マイクブースト」の□にチェックが入っていたらこれを外す。 → 「閉じる」(図1参照) A「トーン(A)」が画面にない場合は、「オプション」を開いて「トーン調整(A)」に「チェック」をつけて下さい(図2参照) B この設定で再度「マイク音量設定」を行います。今までのように音が大きくならない  ので、マイクボリュームをあげてください。適当なレベルになったら、「騒音測定」→「テスト録音」を実施して録音を開始してください。これで音質もよくなります。 ★ヴィオラのひとりごと 〜 私もクールビズ 〜  今年の夏は、“戦後3番目に暑い夏”になったとか。 本当に暑かったですね! 私も黒い毛皮を着てますので、大変でしたわ。 私の暑さ対策は、“Tシャツ”と“スニーカー”です。 昼間の暑いときだけ、これを使うんです。シャツは薄いピンク色でメッシュだから、熱を反射して風通し良好! スニーカーもアスファルトの熱を通さない ようになっています。 足の甲もメッシュで涼しいんですよ!  しかし、靴はあまり履かないので、歩きにくい! でも、靴を履いて歩くと、いろんな人から声をかけられるんです。  「それは犬用の靴なんですか? かわいいですね!」  「暑いのにご苦労さんやね! がんばってや!」  注目されてけっこういい気分です!  「それ、どこで売ってんの?」  お父ちゃん答えてあげて!  「それ、なんぼしたん?」  えっ? さすが大阪! お父ちゃん答えてあげて!  しかし、落ち着いて歩けまへんな!  お父ちゃん、夏のお出かけは朝か晩にしてちょうだい! ★きれいに録音する技術(8)  録音した音が波打つ録音製作係 清水賢造  カセットデッキなどで録音している時はテープの走行が不安定になって音が波打つといったこともままありましたが、デジタル録音ではそうした原因による現象はなくなりました。しかし、音声訳者自身の読み方の不注意によって「音が波打つ」という現象は今も起きています。利用者は大きい方に音量を合わせると小さい方が聞き取りにくくなり、逆に、小さい方に合わせると大きくなった時に耳障りで、非常に聞きづらい録音図書になり、バックに入る雑音以上に、録音図書としては失敗作となります。  このような音源を『サウンドフォージ』(音声波形編集ソフトウェア)に取り込んで見てみると、図1のような波形になります。幅が大きくなっているところは音量が大きく、逆に小さくなっているところは音量が小さいところです。この音源は初心者が5段組の雑誌の記事(5分間程度)を読んだものです。記事の読み始めのところは、顔がマイクに向いていないので小さく、読んでいくにつれて顔がマイクの方に向いていくため、大きくなっていきます。中間あたりが一番大きいのは、記事が中央になって顔がマイクにもっとも近くなったからで、初心者がよく起こす失敗例です。この人の場合、マイクとの距離も極めて近かったため(10センチ前後)、息を吸い込む音も鮮明に入っていました。  指向性のマイクは、マイクに近づくほど音を拾う範囲が狭くなります(図2参照)。そのため、マイクとの距離が近いと顔が少し動いただけでも音量が大きく変化します。家庭録音の場合は、マイクを口から20センチ前後離して、顔を動かさないで読むように注意しましょう。  図3は、ベテランの音声訳者が45分程度読んだものです。ほとんど音量の変化はなく安定した読み方になっています。顔を動かさずに読んでいるからです。 ★校正表から   今回から“校正表”に挙げられた語句を掲載します。  今回は『週刊新潮』の編集者が挙げた誤読です。『週刊新潮』は2校まで行っていますが、利用者からの指摘も多々あります。指摘された誤読も必要なものは掲載していくようにします。また、漢字の補足説明についても利用者から指摘があります。漢字の補足説明が必要か否か迷った場合は職員に事前に相談してください。  漢字の補足説明をする時に、“人名”で説明する方がありますが、これはその人物の漢字を知っている人しかわかりませんので、“人名”を使っての漢字の説明はしないでください。 ◇訂正の基準 校正表に挙げられた語句を訂正するか否かの判断は以下を参考にしてください。  ・明らかな誤読は訂正する  ・辞書にあれば訂正は必要ないが、文意によって読みが異なる場合は誤読として訂正する  <例> 相撲の禁じ手は逆手(○ぎゃくて ×さかて) 逆手に短刀を握る(○さかて ×ぎゃくて)  ・音声訳者と校正者の意見が分かれる場合は職員に相談する  ・アクセントなどの指摘は、アクセントの違いで意味が変わるようなら誤読として訂正する 語句 誤読 正しい読みの順 詐取 さくしゅ さしゅ 撤廃 てきはつ てっぱい 傍若無人 ぼうじゃくむじん ぼうじゃくぶじん 2.26事件 にぃてんにぃろく にぃにぃろく 小気味よく こぎみよく こきみよく 舞踊家 ぶとうか ぶようか 減殺 げんさつ げんさい 面目躍如 めんもくやくじょ めんぼくやくじょ 全日制 ぜんじつせい ぜんにちせい 乱高下 らんこうか らんこうげ 利益が相反する りえきがそうはんする りえきがあいはんする 煌めいた かがやいた きらめいた 高脂血症 こうしけつしょう こうしけっしょう 般若心経 はんにゃしんきょう はんにゃしんぎょう 棋聖戦 きおうせん きせいせん 後日譚 ごじつだん ごじつたん 異名 いめい いみょう 換算 かんざん かんさん 大地震 だいじしん おおじしん 強面 きょうめん こわもて 異形の姿 いけいの・・ いぎょうの・・ 湯滝 ゆたき ゆだき 悦楽 かいらく えつらく 図版 ずばん ずはん 薄手の うすての うすでの 去就 きょじゅう きょしゅう 点滴の菅 てんてきのかん てんてきのくだ 因果応報 いんがおうぼう いんがおうほう 帰巣本能 きすうほんのう きそうほんのう 漸増 げきぞう ぜんぞう ★編集のひろば ◇「見る目次」と「聴く目次」  本を開くと目次があって、ざっと目を通し、「あぁ、こんなことが書かれているんだ」「この章面白そう!先に読もう」「通し番号になっていてわかりやすそう」などなど、本全体の雰囲気や内容を目次で自然に感じとることができます。当然「聴く図書」の場合も同じように利用されるのでは? と思いますね。きっと、まず目次を聴いて、デイジー図書だからそのページに飛んで、面白そうな項目から聴いてみよう・・・という風に利用されているのだろうと。ところが意外や意外!「目次はざっと聴きます」とか「目次は全然聴かないでいきなり本文へ」などという声をよく耳にするのです。「えぇ!どうして?」と、とても不思議な気持ちになります。そのなぞ解きは・・・  活字印刷された本は、パラパラマンガを見る如くページを素早く繰りながら、ななめ読み、飛ばし読みをして本文を追って行くということをよくしますが、瞬時に内容を把握することは難しいものです。  その点、デイジー図書はとても便利です。本文の項目ごとに、まるで目次を見るように サッサと飛んで聴いていくことができるからです。もちろん、目次の項目もサッサと飛んで聴いていくことができます。どうやら、「見る目次」と「聴く目次」は使われ方や目的・役割が違うようです。そういう状況がイメージできたら、もっと利用しやすい、そして聴いていて混乱の起こらない「目次」「見出し」の読み方を考えていけるのでは、と思います。 ◇「見出しを考える」 3つのポイント  @ 目次の見出しと本文の見出しが異なっていないかを照合・・・大切なポイントです!  丁寧に照合を。「本文に合わせる」「目次に加える」「そのまま何もしない」などいろんな方法があり、ケ ース・バイ・ケースです。職員にご相談を。目次が簡略化されている場合、ページが違っている場合は要注 意!  A 見出しの大小(階層)を考える・・・成り立ちを考えて読むと、読み方も違ってきます。  目次にない小項目がある場合、どのように扱うかも含めて。  B 見出しに番号をつけるかどうかを決める・・・「1−1」は本当に必要?  「原本通り」を念頭に、つけなければ区別がつかないかを考える。 ◇デイジー編集者・デイジー校正者へお知らせ  ・「青年の自立支援センターゆう」でデイジー編集やデイジー校正された図書の「編集者名」や「校正者名」 ⇒ 個人名ではなく、「青年の自立支援センターゆう」となります。  ・デイジー図書完成後(編集終了)のデータの保存方法 ⇒ 従来の「CD・DVDに保存して提出」ではなく、録音製作係専用の外付けハードディスクに保存。  ・「図・表・写真」の読み方が、新しく変更された読み方になっていないもの ⇒ できるだけ新しい読み方に読み替えてもらうよう、編集の校正表で挙げてください。  ・デイジー編集やデイジー校正が終わり、訂正依頼をする時 ⇒ 訂正箇所が多い場合は原本も一緒に(自宅編集の場合)。 ⇒ 連絡方法や訂正録音完了後のデータのやりとり方法など、音声訳者に詳しくお知らせを。 「棚に連絡表を入れてください」「訂正データをアップしてください」「○○にお電話ください」など。 (『ろくおん通信』編集委員会) ★ 館からのお知らせ  鉄道弘済会「第42回朗読・録音奉仕者表彰」で、次の方々が受賞されました。心からお喜びするとともに、今後ますますのご活躍をお願い申し上げます。 ・文部科学大臣賞  佐久間かず子さん  26年にわたり、398タイトル(3,282時間)、古典・漢文などの専門書を中心に音訳された実績が評価されました。  ※この賞は、過去3年間に全国表彰を受賞した方の中から、鉄道弘済会の審査により選ばれるものです。 ・全国表彰 田主子さん  32年にわたり、284タイトル(2,276時間)の音声訳実績が評価されました。 ・地区表彰・朗読の部  志水節子さん  活動歴30年、135タイトル、888時間 ・地区表彰・校正の部  西川淑子さん  活動歴31年、246タイトル、2,294時間 ・奨励賞  伊東晴子さん 植田美穂子さん 川端真知子さん 清水幸恵さん 西典子さん 前川祐子さん  ※奨励賞は、65歳以下で活動歴5年未満の方が対象です。 ◇東洋医学音訳講習会受講者募集 日時:10月19日から11月30日(11月23日を除く毎週金曜日)13時から15時 [全6回] 場所:当センター4階会議室 401 講習内容 :第1回 東洋医学について (10/19 講師 片山一夫 氏)  第2回 〜第6回 東洋医学用語の読み方(10/26〜11/30)  ・経絡流注名と経穴名   ・脈・生薬名 ・素問霊枢などの目次 ・実際に読む  ※第2回 〜第6回の講師は、東洋医学チーム 受講対象:当センターの音訳ボランティアで、東洋医学関係図書の音訳に興味がある方 受講申込:6階中央テーブルの“東洋医学音訳講習会受講者名簿”に署名してください 申込〆切:10月10日(水)