日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2022年11月号   <<表紙イラスト>> 食欲の秋のイラストです。 枯れ葉が舞う中、焼き芋がぱんぱんに詰められた袋を両手に持った女の子が喜んでいます。 犬のポチは、慌てた顔で「ダイエットはどうしたの…!?」と女の子を追いかけています。 女の子は「誘惑には勝てませ〜ん…」と困りながらも嬉しそうに笑っています。 石焼き芋の屋台車を引いたおじさんがその様子を見て微笑んでいます。    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●ボランティアの頁(2〜3頁)   ●利用者の頁(4頁)   ●センターの頁(5頁)   ●感謝報告(5〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆視覚障害文化のイベントが12月、東西で開催  「第2回点字考案200年記念講演会&シンポジウム」が12月10日(土)10時〜15時、東京の会場とオンラインで開かれます。午前中は講演「米国における点字製作の新たな潮流〜デジタル時代の点字」。午後はシンポジウム「日本が創り出した点字メディア〜さらなる発展をめざして」で、当館点字製作係の奥野真里主任が児童向け点字雑誌『アミ・ドゥ・ブライユ』編集責任者として出演します。オンラインでの参加は、Eメールtenjikouan200@jfb.jpへ、件名に「点字考案200年記念講演会オンライン参加申込」と明記し、11月30日までにお申込みください。  視覚障害者文化を育てる会(4しょく会)の設立20周年記念イベント「令和版『風土記』を作ろう!大阪から世界へ広がる『発想・発信・発見』のネットワーク」が12月18日(日)13時45分〜17時30分、玉水記念館で開催。3部構成で、第2部では当館の竹下亘館長が日本ライトハウスの100周年について語ります。定員120人(要予約、先着順)、参加費1,000円。申込みは、12月2日(金)までに電話080-2527-9383の佐木(さき)さん(平日の21時〜23時か日曜の10時〜23時)まで。  ◆「盲導犬カレンダー」2023年版発売!  日本ライトハウスの愛らしい盲導犬の写真を満載したカレンダーを今年も3階総務係で販売します。壁掛け型(見開きA3判)、卓上型(B6判)の2種類。税込1,000円。見本は、ホームページ(https://sodaterukai.net/)でご覧ください。通販ご希望の方は、直接、盲導犬訓練所(電話0721-72-0914)へお願いします。  ◆「灯友会(とうゆうかい)」のバザーが3年ぶりに館内で開催  日本ライトハウス後援会による盲導犬チャリティバザーです。雑貨や乾物、特産品の他、掘り出し物も多数。毎回好評のホテルのパンや専門学校生による手作りクッキーも販売されます。ご来館のついでにぜひお立ち寄りください。  日時=11月4日(金)12時〜16時30分、5日(土)10時〜14時  会場=当館4階会議室  ◆11月の休館・休室について  11月3日(木・祝日)=全館休館  11月10日(第2木曜)=エンジョイ!グッズサロンと図書貸出は書庫・在庫整理日で休室。  11月23日(水・祝日)=全館休館    <<ボランティアの頁>>(2頁〜3頁)   ●これからも繋いでいきたい!点訳と音訳の技術   澤田祐子さん、久保洋子さんにインタビュー(1)  点訳ボランティアの澤田祐子さんと音訳ボランティアの久保洋子さんは、当館の500人に及ぶボランティアの中でも特に長い経験と深い知識・技術をお持ちの方々です。それぞれ点訳と音訳の奥深さに惹かれ、図書製作に打ち込むとともに、後進の育成に力を尽くしてこられたお二人に点訳・音訳への思いと今後も繋いでいきたい技術について伺いました。(製作部長 久保田 文(あや))  ◆これからも質の高い点字図書を提供したい  Q.澤田さんはボランティア活動51年目を迎えられましたが、時代とともに感じている変化はありますか。  澤田 私がボランティアになった頃は、女性が子育てを一段落して手が空いたなという時に就職先が無くてね。だから、社会に繋がっていたい、何かをしたいという30代・40代の人たちが、ボランティアを始めたの。今は、初めていらっしゃる方のほとんどが60代。70代の人もいて……。皆、がんばっているんだけれど、長く活動するのが難しい方も多いですよね。体力的にも気力的にも。  人間、年を取ると間違いが多くなるでしょう。新人の方だけじゃなくて、ベテランだって、年をとってきたら昔はやらなかったような小さな間違いをするようになっちゃう。昔は2校したら大丈夫だったのが、この頃では3校しなきゃダメかもってなってきて……。昔より質の落ちた本を出してしまわないように、とても気をつけています。それから、今はパソコン入力だから校正も墨点字でやるでしょう。ボランティアが本当の点字に触れる機会が無くなってしまったというのも大きな変化ですね。  ◆誰が聞いてもわかる録音図書を作りたい  Q.久保さんは、お仲間の方々に、よく「音訳にのめり込んでここまで来た」とおっしゃっていますが。  久保 私は、目の見えない人のために本を読もうと思って日本ライトハウスに来ました。最初に校正をしたんですが、その時に、聞いている人にわからないようなルールをこちらが勝手に作っているように感じたの。  例えば、カッコの中はピッチを落とすとか、引用文はピッチを上げるとかって決まっていたんだけど、聞いているだけでは、なぜ急に声が上がったり下がったりするのかわからない。しかも、ほとんどの音訳者がピッチを下げると声が小さくなっちゃうから、その度にボリュームを上げ下げして聞かないとダメな時もあったくらい。それで、当時の職員に「盲学校ってテープの聞き方の授業あるの?」って聞いたら、「そんなもんあるわけないでしょ」って(笑)。  私たちが勝手に、ピッチを下げたらカッコですよってルールを決めても、聞き手がわからないのではダメだし、そもそも本の内容を一生懸命聞いている時に、そんなところに気を取られていたら集中できないんじゃないかなと思ったんです。それで、誰が聞いてもわかるような音訳、もし自分が目が見えなくなっても楽しく聞けるような音訳ができないかな、ということを考えたり言ったりしているうちに、どっぷりのめり込んで、今に至っています。  ◆大切なことは、視覚障害者の立場で点訳・音訳する姿勢  Q.伝えていきたい点訳技術、音訳技術とはどのようなものだと思われますか?  久保 原本の内容を、私たちが読むのと同じように利用者に伝わるように作る、それに尽きると思います。そのためにも、利用者と同じように音声で本を読む体験をして、誰のために読んでるのかを常に意識してほしいです。音訳を始めようと思ったら、1冊や2冊は音で本を読んでみること。それも小説とかではなくて、ちょっと理屈っぽいものをね。音だけでどういう風に理解できるのかなっていうのを、やってみる必要があると思います。  澤田 点訳も同じです。点字で読んだときにどうなのかを考えるっていうのが、とても大事。実際に点字に触れてみれば、全部の点字を触らないとわからないんだ、とか、図の中の点のちょっとしたズレや点間の長さでわかりにくくなるんだっていうことがわかるのよ。  点訳も音訳も、ボランティアが、これは目の見えない人が聞いたり触ったりするものなんだっていうことを最近忘れちゃっているように思います。これは、視覚障害の人にとっては困った状態になりつつあるということですよ。  ◆点訳者も音訳者も柔軟な思考力を  澤田 基本的なマス空けはきっちりしてほしいです。これは決まりがありますから。でも、レイアウトになると、決まりがあるようで無い。マニュアルに書いてあるだけの事例じゃできないことがいっぱい出てくるので、その時に、どうやったら見えない人がわかるかっていうことを考えられるようになっていただきたいの。……きっちりしなきゃいけないって思っていない人の方が良いのかも(笑)。  久保 音訳もそうです。決まっているのは、例えばタイトルの入り方とか、奥付はどこで読むかとか、そういうことだけで、他は決まりは無い。1冊1冊、違うんだから。自分で考えてやっていくしかない。  澤田 時々、「この間、澤田さんは(見出しは)6マスって言ったじゃないですか」って怒られるんだけど、「あの本は6マス見出しだけど、この本は8マス空けないと後で困るでしょ」とか、「あの本では仕方なく6マスにしたけど、今度の本は4マスにしても良いんじゃない」とか。すこーし頭を柔らかくして、これも有りだけどあれも有りっていう考えでやった方が、読む方にとっては良いように思うんです。  ◆お二人のプロフィール  澤田祐子さん 旧満州(中国東北部)出身。東京を経て吹田市に移り、1972年から当館の点訳ボランティアに。特に数学・算数や古典の点訳のエキスパートで、これまでに専門点訳講習会の講師を12回ご担当いただきました。また、1983年から「大阪YWCA点字子ども図書室」をボランティアで開設され児童の読書支援に尽力されています。  久保洋子さん 1985年から当館で活動。専門知識を活かして、第1回専門音訳講習会から14回、理数や図表の講習会をご担当いただき、専門音訳チーム「理数チーム」「東洋医学チーム」を牽引。数多くの専門書の音訳・校正に携わって来られました。コロナ禍を乗り越えて毎日のように来館され、録音ボランティアの相談に答えてくださっています。  ◆インタビューを終えて  点訳、音訳の難しさも面白さもよく知っているお二人。思わず笑ってしまうエピソードから、いかにして技術を継承していくべきか、というシビアな話まで、話題は尽きませんでした。次回は、校正者として様々な本に携わってきたお二人ならではのお話を掲載します。    <<利用者のページ>>(4頁)   ●ダスキン研修生は今(2)〜サモアのアリさん   点字製作係 大下 歩(おおした あゆみ)  ダスキン愛の輪基金の「アジア太平洋障害者リーダー育成事業」で来館した視覚障害研修生が今どんな活躍をしているかをインタビューする企画の2回目。今回は2年前の3月に来館し、日本語ペラペラで驚かされたサモア独立国のアリ・トミー・ヘーゼルマンさんの近況を紹介します。  Q.こんにちは。よろしくお願いします。  A.こんにちは!アリ(Ari)と申します。今33歳で、サモア独立国の首都アピアに住んでいます。全盲で、ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業の21期生として、2019年から1年間日本で勉強しました。  Q.日本語がとってもお上手ですね。  A.いえいえ。もっともっと上手になりたいです。今でも日本語のスクリーンリーダーを使い、サピエ図書館でシネマ・デイジーを聴いたり、NHKのニュースを毎日聴いたりしているんですよ。僕は外国語を学ぶのが趣味で、母語であるサモア語の他に、英語、フィジー語、ドイツ語、ヒンディー語などが話せます。  Q.来日前はどんな生活をしていましたか?  A.僕はサモアで生まれましたが、父の仕事の関係で9歳から14年間フィジーで暮らしました。点字は5歳からサモアで習いましたが、上達したのは9歳でフィジーの盲学校に入ってからです。サモア語やフィジー語の点字は、英語のアルファベット点字を使って表すんですよ。  高校は地域の学校に行きました。これは生徒がちゃんと社会に出るために盲学校が決めたルールなんです。僕が行ったのはインド人の高校でした。植民地時代、イギリスが畑で働かせるためにたくさんのインド人を連れてきたので、フィジーには今でもインド人が多いです。  高校ではいやな経験も良い経験もたくさんしました。数学の先生は黒板を読み上げてくれないし、僕に話しかけもしない。でもヒンディー語の先生は僕にヒンディー語のスピーチコンテストに出るよう勧めてくれて、僕はインド人以外の部でトロフィーをもらったんです!  Q.なぜ日本で勉強しようと思ったんですか?  A.ダスキン研修は、2期生であるフィジーのベロニカさんから聞きました。日本で学びたかったのは、まず障害者に関する法律のこと。サモアには、障害者に関して国が定める法律はまだ一つもないんです。それから駅などにある音声案内のことも知りたかったです。  Q.今はどんなお仕事をしていますか?  A.今年5月、サモア盲人協会の「障害インクルーシブ」分野の責任者になりました。仕事は視覚障害者の人権を守り、啓発すること。例えば地域の学校に通う視覚障害児の教材の点訳です。全国学力試験の時には問題を点訳し、生徒の回答は墨字に訳して教育省に送りました。  Q.これからサモアでやってみたいことは?  A.サモアでも街中に音声案内を広めたいです。あと、いろいろなウェブサイトをアクセシブルにしたい。サモア語のスクリーンリーダーを作れたらいいなと思ってます!  ◆歩(あゆみ)のつぶやき  礼儀正しく、陽気なアリさん。サモアの時間で夜10時からのインタビューを快く受けてくれました。日本での研修のことは、サモアの大学や日本大使館でも話しているとか。「外国の人を理解するには相手の文化や言語を学ばないと」という言葉は説得力がありました。(歩)    <<センターのページ>>(5頁)   ●銀幕の視覚障害者(2)〜「武士の一分(いちぶん)」  録音製作係 宇田 佑香  視覚障害者が登場する映画の中から、音声解説担当宇田職員が観て、心に残った作品をご紹介します。  「武士の一分」=山田洋次監督、2006年、121分  時は江戸時代、藩主の毒見役の務めで食べた貝の毒で失明してしまった下級武士、新之丞(しんのじょう)と、彼を献身的に支える妻、加世による愛の物語。  観ていてとりわけ気になったのは、目の見えなくなった新之丞が居間と縁側の間の敷居の上に座り込んでいる姿。また、客間に入る際、まず敷居を踏んで入室した後、手前から二つ目の畳の縁(へり)に手と足をかけながら正座をするのです。  ご承知の通り、敷居や縁を踏むことは、礼儀作法から外れるとされています。その理由は、「敷居の劣化で襖のすべりが悪くなるのを防ぐため」や「畳の縁と縁の隙間から武器を突き出して攻撃されるのを防ぐため」など諸説あります。「敷居を踏むのは家主の頭を踏むのと同じ」なんてことも、昔聞いたこともありましたっけ。  このような敷居や縁ですが、映画を観ているうちに、目の見えない人にとって、和室の敷居や縁は点字ブロックのような役割を果たしているのではないか?と、ふと気づきました。当事者の方、数名に聞いてみたところ、実際に位置取りの参考にすることはあるとの事。ただし、普段はあまり気にしないという 方が大半でした。  新之丞役は木村拓哉さん。子供の頃に剣道を習っておられたようで、見事な太刀捌きを披露しています。妻の加世役は元宝塚歌劇団の檀れい(だん れい)さん、退団後初の映画出演だったそうです。  この映画は、日本で初めて音声解説付きのプリントがされたとのこと。当館でも、玉水記念館で行った初のバリアフリー映画会で上映され、今日の「音声解説」事業の端緒となったと聞きました。販売中のDVD・ブルーレイディスク共にバリアフリー字幕・音声ガイド対応。店によってはレンタル、配信サイトでも観られます。   ●報告の頁(8頁)  ◆全視情協大会にハイブリッドで393人が参加  全視情協(全国視覚障害者情報提供施設協会)の今年度第47回大会が10月12日と13日、肥後橋の玉水記念館を拠点に、会場参加とオンラインで開催。全国の点字図書館82館をはじめ公共図書館、ボランティア団体など111施設・団体から393人が参加しました。メインテーマは2題で、全体会1「読書から誰ひとり取り残さないバリアフリーの図書館を目指して」では、利用者拡大に向けて様々な取り組みをしている点字図書館と公共図書館、そして両者を活用している利用者の発表と意見交換が行われました。また、全体会2「視覚障害者が必要とする情報をいかに届けるか〜点字文化の価値を改めて考える」では、点字図書の貸出が次第に減少する中、必要とされる点字資料を製作・提供している実践が紹介され、意見が交わされました。今回、特に点字で情報を活用している利用者や視覚支援学校の教員、リハビリ施設の職員の発表が示唆に富み、深く考えさせられたので、ぜひ改めてご紹介したいと思います。  ◆鉄道弘済会・朗読録音奉仕奨励賞を6人が受賞  鉄道弘済会が主催する今年度・第52回朗読録音奉仕者・西日本地区表彰で、朗読録音奉仕奨励賞を当館の岩田真智子さん、岡ア節子さん、川端砂代子(さよこ)さん、川辺洋子さん、佐藤保子さん、立上敦子(たつかみ あつこ)さんが受賞され、9月30日、館内で贈呈式が行われました。奨励賞は活動歴5年未満で、積極的に音訳活動に取り組んでいる 方が対象です。皆さんのご受賞をお祝いするとともに、今後、当館の録音図書製作の中核として活躍されることを期待したいと思います。 あゆみ 【10月】 12日〜13日 全視情協大会(玉水記念館) 14日 見学:大阪ライオンズクラブ 15日 オープンデー(館内見学日、4人) 28日〜29日 日本ライトハウス展(全館休館) 予定 【11月】 1日 「点字の日〜日本点字制定記念日」 3日 全館休館(祝日) 4日 V友の会施設見学会(神戸ライトセンター) 4〜5日 灯友会バザール(当館4階) 10日 サービス部休室(書庫・在庫整理日) 12日 オープンデー(館内見学日、要予約) 16日 全視情協近畿ブロック・音訳指導員養成講習会(玉水記念館) 16〜17日 日本ライトハウス理事会・評議員会 23日 全館休館(祝日) 25日 見学:日本ライトハウス養成部受講生 編集後記 全視情協が移転したビルのエレベータに電子パネルがあり、毎日、「今日は○○の日」と告知されます。たとえば、「寅さんの日」(8月27日、第1作公開日)など軽い内容が多く、思わず微苦笑させられます。そう言えば、10月10日は「目の愛護デー」でした。また、10月15日は「国際白杖の日」、11月1日は「点字の日〜日本点字制定記念日」と、秋は私達に関係の深い記念日が続きます。日本ライトハウスも1922年(大正11年)「秋」に創業し、今年創業100周年を迎えましたが、それが何月何日だったのか不明なのは残念です。ただ、記念日は、それを祝うだけでなく、現状を見つめ直し、明日からの生き方を問い直す出発点だと思いますので、気持ちを新たに歩みたいと思います。(竹) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2022年11月号  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2022年11月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円