日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2022年8・9月号   <<表紙イラスト>> 金魚鉢のイラストです。 ガラスの金魚鉢の中を泳ぐ出目金に虎模様の猫が話しかけています。 虎猫は「ねえ、仲良くしない?」と舌なめずり。 出目金は「ふん、その手に乗るもんか…」とそっぽを向いています。 女の子と犬のポチはその様子を困り顔で見ています。    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●ボランティアの頁(2頁)   ●利用者の頁(3頁)   ●感謝報告(4〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆コロナ感染拡大に伴う「ご来館」について 7月中旬からコロナの感染が急激に広がり、予断を許さない状況になってきました。館内でのボランティア活動や会議室利用、サービス提供は感染対策を徹底しながら続ける方針ですが、ご来館時のお願いをまとめた「お知らせ」を同封しますので、ぜひご確認ください。(テキスト版では、以下に表記いたします。)  ◆新型コロナウイルス感染拡大に伴うご来館と館内活動についてのお願い  7月中旬から新型コロナウイルスの感染が急激に拡大しています。  当館では、これまで、大阪モデルの「赤信号」が点灯した場合、館内でのボランティア活動や会議室利用、サービス提供の利用制限を行ってきましたが、今後は「赤信号」になっても、感染対策を徹底しながら現状通り続ける方針です。  (ただし、国や大阪府・市から強力な指導が出された場合は、それに従います。)  ◆ご来館の際は、以下の遵守をお願いいたします。 @来館前に体温を測り、平熱よりも高い時や体調に不安のある時は来館をお控え下さい。検温を忘れた場合は、3階総務係で検温して下さい。 A濃厚接触(※)の疑いがある時は、大阪府の基準に従い、自宅待機して下さい。 B来館時は、こまめな手洗いと手指消毒の励行をお願いします。 C不織布マスクの着用をお願いします。食事等、マスクを外している時は、会話はしないで下さい。 D館内では出来るだけ他の方との距離を1m以上空け、大きな声での会話をお控え下さい。 E5階エンジョイ!グッズサロンと図書・情報係へのご来館は、事前に電話かメールで予約をお願いします。また、出来るだけ少人数でのご来館と短時間(最大1時間半まで)の滞在をお願いします。  ※濃厚接触とは=陽性となった方は、発症日 2日前の接触(無症状の方は検体採取日の2日前の接触)から療養終了日まで周囲の方に感染させる可能性があります。  この期間に接触した方のうち、次の範囲に該当する方は濃厚接触者となります。 @患者と同居、あるいは長時間(1時間以上)の接触(車内・航空機など)があった人 A手で触れることのできる距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策(マスクなど)なしで15分以上話をした人  ご不明な点は、総務係(電話06−6441−0015)へお尋ね下さい。  ◆日本ライトハウス展〜全国ロービジョンフェアを3年ぶりに、天満橋OMMビルで開催  当館では、西日本最大級の視覚障害者用具・機器展示会「日本ライトハウス展〜全国ロービジョンフェア2022」を10月28日(金)、29日(土)、天満橋のOMMビル2階ホールで開催します。今回は3年ぶりとなる会場開催で、35社・団体が出展。前回から3年の間に開発された話題の新製品も多数出品されます。入場無料。  日時 10月28日(金)11時〜16時(初日11時から)  29日(土)10時〜16時  場所 OMMビル2階ホールC(大阪市中央区)  交通 大阪メトロ谷町線「天満橋駅」北改札口か京阪本線「天満橋駅」東口から徒歩2分。OMMビル 地下2階連絡口からエレベーターかエスカレーター、階段でご入場ください。  ◆出展内容を紹介した「ガイドブック」(点字版、音声デイジー版、大きめの活字版、Eメール版)を事前にお送りします。お届けは、10月初旬。お申込みは、総務係(電話06-6441-0015)まで。  なお、この展示会は、大阪府の「感染防止策チェックリスト」に従って実施します。ご来場の際は、事前に当館のホームページをご確認いただくか、当館総務係にお問合せをお願いします。  ◆8〜9月の休館・休室について  8月11日(木)〜16日(火)=全館休館。グッズサロンと図書貸出は8月17日(水)まで休室。  9月8日(第2木曜)=エンジョイ!グッズサロンと図書貸出は書庫・在庫整理日で休室。  9月17日(土)=製作部点字・録音・電子書籍係は休室(19日月曜指定祝日の振替)。  9月20日(火)=エンジョイ!グッズサロンと図書貸出は休室(19日月曜指定祝日の振替)。  9月23日(金・祝日)=全館休館。  ※本号は合併号。次号の発行は10月1日です。    <<ボランティアの頁>>(2頁)   ●「鬼滅の刃」の“マンガ点訳”が大人気!   人物の動きや風景描写、特殊な場面の解説などに工夫  皆さんは「鬼滅の刃(きめつのやいば)」をご存じですか?大正時代を舞台に主人公の少年が鬼と化した妹を人間に戻すために鬼たちと戦う奇想天外なマンガで、アニメ化や映画化もされ空前のブームとなりました。当館では、2020年7月から“マンガ点訳”に取り組み、この7月まで全23巻を月毎に発表したところ、大人気を博し、サピエ図書館のダウンロードランキングで常に上位(60〜100回)を記録。点訳を担当された当館ボランティアの南 佳奈さんと栗栖 忍さんにお話を伺いました。(総務係 徳嶋 薫)  ◆Q.点訳する上で、特に苦労したのは?  A.台詞やキャプションはもちろんのこと、『画(え)』のみで説明されている登場人物の動きや場面転換も、文章に起こして点訳しています。作品の中で あえて多くを語らず、台詞のない風景描写や人物の表情だけで心情を表現している場面をどう点訳するかに悩みました。普段はあまり漫画を読むことがなかったので、インターネットのレビューなどを読んで理解を深めたり、個人の解釈を参考にしたりして。でも、レビューの解釈をそのまま使ってしまうと、レビューした人の解釈で作品を点訳してしまうことになるので、あくまで参考として、読み手側に解釈を委ねるように点訳することを心がけました。  他に工夫したのは、鬼が作った変形する建物や、上下左右に回転する部屋など特殊な場所が舞台になる戦いの場面の解説や、見開き頁を使って描かれた大画面の絵の勢いをどう表現するか(それとも特別なことはせずにそのまま文章に起こすか)、など悩む場面が多かったです。  ◆「鬼滅の刃」の点訳の一例  たんじろーたちが かたなを ふりあげた その とき、きぶつじが ふてきな えみを うかべる。  つぎの しゅんかん、 あしもとが くずれ ふらつく たんじろーたち。  すると とつぜん、あしもとに たくさんの しょーじ とびらが ひろがり むげんじょーが あらわれる。 *************  けいこちゅーを おもいだす たんじろー。  「くそども!」と きたない ことばを はなつ しなずがわの まわりを おはぎの においが ほわほわ ただよう。  「いい におい」と うれしく かんじる たんじろー。  ◆Q.「鬼殺隊」「鎹鴉」など“読めない”漢字は?  A.場面描写以外で苦労したのは、作品固有の名称関係でしょうか。主人公が所属する機関「鬼殺隊(きさつたい)」ならば、「きはおに、さつは殺人の〜」というように漢字や熟語を用いて解説を入れています。しかし、中には漢字や熟語自体が日常的に馴染みの無いものもあって大変でした。  点訳の途中、公式ファンブックが出版されていることを知ったので読んでみると、鬼殺隊の隊員が使う剣術の詳細や、作中では名前が出てこない登場人物の名前が載っていて、とても参考になりました。鬼殺隊の隊員が1人1羽、情報伝達のためにお供につれている「鎹鴉」も、作中では鴉としか呼ばれないのですが、1羽ずつ名前があることがファンブックで判明しました。ただ、点訳の終了後に名前を知った人物については「名前があったの!?もっと早く知りたかった〜!」とも思いました(笑)。  ◆Q.お二人それぞれが好きな場面は?  A.[南さん]感情を表に出すことが苦手な鬼殺隊員カナヲと炭治郎が銅貨投げ(コイントス)で駆け引きするシーン。「普段は戦闘で不意打ちできそうな状況でも、大声で名乗りを上げてから鬼に斬りかかる愚直な炭治郎の細やかな心遣いがこの場面では垣間見えました。」  [栗栖さん]物語の佳境に登場した強敵の鬼が、激闘の末に討たれて灰になりながらこれまでの人生を省みるシーン。「自ら鬼になる道を選ぶまでに至った肉親への劣等感と執心、最期まですれ違い続けた末に答えのない問いを投げかける様は心を揺さぶられました。」    <<利用者の頁>>(3頁)   ●特別寄稿 「愛盲」の同志、志願者たちへ   100周年の喜々と危機  広瀬 浩二郎(国立民族学博物館准教授)  今年は日本ライトハウスの創業100周年である。同じく大阪を拠点とする「点字毎日」も、本年が発刊100周年に当たる。大阪に住み、大阪で働く視覚障害の当事者としてはたいへん嬉しい。だが、僕の中にはこの記念すべき100周年を素直に喜べない気持ちもある。たしかに100周年はめでたいが、日本ライトハウスも「点字毎日」も200周年、いや150周年を迎えるころには、もしかするとこの世に存在しないのではなかろうか。医学、視覚を補う技術の進歩により、視覚障害という概念そのものが大きく変化していくのは間違いない。では、当事者の数の減少に伴い、点字をはじめ、視覚障害者が保持してきた文化も滅びてしまうのだろうか。  文化とは、人間が創り使い伝えてきた事物の総体である。近代の視覚障害者文化が岩橋武夫、中村京太郎(「点字毎日」初代編集長)などの努力により大阪で育まれてきたことに僕は誇りを感じる。視覚障害者文化を創り使い伝える過程において、たくさんの見常者(けんじょうしゃ)の同志がいたことも忘れてはならない。同志という語で僕が想起するのは米国出身の日本研究者、ドナルド・キーンである。「碧い眼の太郎冠者」とも称されるキーンさんは、日本人以上に日本を知り、愛した方だといえる。僕たち視覚障害者はキーンさんのような同志、「目の見える視覚障害者」をどうやって、どこまで増やしていけるのかを真剣に考えなければならないだろう。  僕は、視覚障害者文化とは「視覚に依拠しない生活様式」と定義している。視覚優位・視覚偏重の21世紀を生きる人類にとって、視覚障害者文化が果たすべき役割は小さくない。近年の福祉の発想では、視覚障害者を見常者化すること、つまり視覚中心の社会システムの中で全盲者・弱視者がどうにかこうにか暮らしていける道を示すことに力点が置かれている。この流れを追求していけば、視覚障害の消滅とともに視覚障害者文化は意味を失うことになる。  最新テクノロジーの恩恵により視覚障害者がいなくなっても、視覚障害者文化は残ってほしい、残るべきだと僕は願っている。聴覚や触覚を駆使して、さまざまな情報を入手・発信すること。全身の感覚を総動員して、白杖を片手に街を歩き回ること。これらは視覚障害者の得意技であり、脱視覚・非視覚型の文化の可能性を拓く実践と位置付けることもできる。  岩橋武夫が提唱した「愛盲」とは、単に“for the blind”、視覚障害者支援を訴えるものではない。愛盲には“of the blind”、すなわち当事者コミュニティの団結、「盲人自身が盲人を愛する」という願望が込められていた。日本ライトハウスが“for the blind”の枠を広げ、弱視や読字障害への支援も意識して、「情報文化センター」に名称変更した趣旨は理解できる。ただ、「盲人」を施設名称から外すことで、“of the blind”の愛盲精神が忘却されてしまう危機感を僕は抱いている。  本稿を読んでくださるボランティアの中には、「私たちは目の不自由な人のお手伝いができればいいので、視覚障害者文化とは関係ない」と思う方もおられるだろう。いうまでもなく、ボランティアの原義は「志願兵」である。「視覚障害者の権利拡充のために、いっしょに闘ってほしい」と、今日のボランティアに呼びかけるのは時代錯誤なのかもしれない。  でも僕は、ボランティアとは単純な支援者ではなく、やはり志願者なのだと言いたい。そして、視覚障害関連施設の現場で働く職員には、そんな同志たちを鼓舞する先達となる志を持っていただきたい。「より多く、より速く」というトレンドの下、現代人は視覚に過度に依存する生活を送っている。視覚に頼らない文化、「盲=目に見えない世界」を愛する精神が今こそ必要なのではなかろうか。視覚障害者文化の担い手となる志願者とともに、僕はライトハウス150周年、200周年があることを信じて、暗中模索の前進を続けよう。そう、前進とは視覚に惑わされず、全身を使って歩むことなのだ!  ※「視覚障害」に関する広瀬浩二郎さんの考えをまとめた最新刊『世界はさわらないとわからない〜「ユニバーサル・ミュージアム」とは何か』(平凡社新書)もぜひお読みください。   ●報告の頁(8頁)  ◆17校51タイトル2,492頁を超える教科書を提供  点字製作係では、蔵書とプライベート製作に加えて、各地の小・中・高校で学ぶ視覚障害生徒の教科書や教材の点訳を行っています。今年度も昨年11月から現在まで、本誌4〜5頁の「感謝報告」に掲載したように、小学校13校31タイトル(150冊)、中学校3校13タイトル(104冊)、高校1校7タイトルの合計2,492頁を製作し、提供することが出来ました。教科書の点訳は、高度な知識や技術、正確さとともに、締切に追われる大変な作業ですが、点字教科書なしには視覚障害生徒は就学出来ません。点訳ボランティアの皆様のご協力に心から感謝するとともに、今後もご協力のほどよろしくお願いいたします。  ◆参院選の音声版「選挙のお知らせ」を製作  7月10日に行われた参議院議員選挙で、当館では、全国52施設で構成する「音声版選挙公報製作プロジェクト」の事務局を久保田製作部長が担当。46都道府県の比例区と26府県の選挙区の「選挙公報」を音声デイジーとテープで製作しましたが、その内、4県の選挙区を当館のメディア製作センターデイジーユニットが担当しました。ごく短期間に、固有名詞、政治用語、キャッチコピーが頻出する「公報」をミスなく仕上げなければならないため、現場の緊張は大変なものがありますが、13人の音訳ボランティアの方々のご協力により、無事に完成することができました。心より感謝申し上げます。 あゆみ 【7月】 7日 サピエ研修会(全国オンライン) 9日 オープンデー(館内見学日、8人) 14日 ボランティア友の会ガイド体験会(16人)  サービス部休室(書庫・在庫整理日) 22日 ライトハウス職員全体会1回目(本部) 28日 見学:リハビリテーションセンター実習生 予定 【8月】 2日 ダスキン・ジャスミンさん研修(〜20日) 6日 オープンデー(館内見学日、要予約) 11日〜16日 全館休館(サービス部は17日まで) 19日 わろう座映画体験会 23日 見学:奈良県立盲学校 【9月】 2日 専門音訳「東洋医学」講習会開講 6日 専門点訳「写真・図・イラスト」講習会開講 8日 ライトハウス職員全体会2回目(本部) 15日 見学:福島県立視覚支援学校 17日 製作部休室(19日月曜指定祝日の振替) 20日 サービス部休室(19日月曜指定祝日振替) 24日 専門点訳「教科書・教材入門」講習会開講 編集後記 卵をよく食べる国は、1位はメキシコ、2位は一人年間331個の日本だそうです。長年コレステロールを気にして「卵は1日1個まで」と言われていましたが、健康な人なら積極的な摂取を心がけてください、と改められました。私はゆで卵の殻をうまく剥けなくて困っていましたが、ゆでる前に気室のある丸い方を恐る恐る一撃してから茹でたところ、毎回うまくいくようになりました。くれぐれも力余って割ってしまわないよう。朝食には卵料理を楽しんで、暑い夏を乗り越えましょう。(一) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2022年8・9月号  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2022年8月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円