日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2022年7月号   <<表紙イラスト>> 七夕のイラストです。 織姫と彦星が天の川で待ち合わせをしています。 織姫は「おそいじゃない…!!」と彦星に怒っています。 遅刻してきた彦星は「ごめん、星の電車に1本乗り遅れてん…」と困り顔で謝っています。 犬のポチは空を見上げてその様子を眺め、浴衣を着た女の子はそれぞれ「おりひめ」、「ひこぼし」と書かれた短冊を2枚持って微笑んでいます。    <<目次>>   ●掲示板(1〜2頁)   ●センターの頁(2頁・4頁)   ●利用者の頁(3頁)   ●感謝報告(4〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1〜2頁)  ◆専門音訳・点訳講習会3コースを9月開講  毎日新聞大阪社会事業団と当館共催の専門音訳・点訳講習会3コースを下記の通り開講します。お申込みは、いずれも当館ホームページ(http://www.lighthouse.or.jp/iccb/)で実施要項をご確認の上、お願いします。 ◆専門音訳「東洋医学コース」  日時 9月2日、9日、16日、30日、10月7日、14日の金曜日13時30分〜15時30分(9月16日のみ10時〜12時)・全6回 定員15人  受講料 1,200円 申込締切 7月30日(土)  問合せ先 当館録音製作係(電話06-6441-1017) ◆専門点訳「写真・図・イラスト点訳コース」  日時 9月6日、13日、20日、27日の毎週火曜日13時〜15時・全4回 定員15人  受講料 1,000円 申込締切 8月20日(土)  問合せ先 当館点字製作係(電話06-6441-1028) ◆専門点訳「教科書・教材点訳入門コース」  日時 9月24日、10月1日の毎週土曜日10時〜15時・全2回 定員15人  受講料 1,000円 申込締切 9月6日(火)  問合せ先 当館点字製作係(電話06-6441-1028)  ◆7月からのサービスと館内のボランティア活動  当館では、5月末から対面リーディングサービスを2部屋に分かれてZoom(ズーム)を利用し、パソコンの画面越しに行う方法で再開するなど、感染対策を徹底しながら、徐々にサービス提供と館内のボランティア活動を平常に戻しています。ボランティア活動のためのご来館については、各係で個別にお伝えしていますが、機器・用具サービスや図書貸出等は7月から以下のように行います。今後も感染状況に応じて、変更することがありますので、ご了承下さい。  @エンジョイ!グッズサロンと図書貸出=ご来館の際は必ず事前予約をお願いします。開館・電話受付時間は10時〜16時30分。  A会議室貸出と会議室での行事=定員2分の1以下で実施中。  ◆ご来館の際は以下の4項目をお守り下さい。@来館前に体温を測り、平熱よりも高い時や体調が優れない時は来館を控える、A石鹸による手洗いと手指消毒の励行、B不織布マスクの着用、C少人数での来館と必要最低限の在館。  ◆ライトハウス100周年記念行事を3月3日開催  新年号でお伝えした通り、今年、日本ライトハウスは創業100周年を迎えました。当法人は1922年(大正11年)、岩橋武夫がエスペラントの学習書を点字出版したことに始まります。1932年(昭和7年)には、点字図書の無料貸出を開始したので、今年は当館の90周年にも当たります。  当法人では、この100年の歩みを支えてくださった利用者やボランティア、支援者の皆様に感謝を表すとともに、当法人の101年目からの事業を展望することを目的に、来年2023年3月3日(金)、新大阪のメルパルクホールで100周年記念式典と記念行事を開催することにいたしました。  詳細は近づきましたら、本誌等でご案内しますので、ぜひ今からご来場をご予定下さい。  ◆「警報」発表時の館内活動の休止について  当館では、大阪市内に暴風警報か特別警報が出た場合、以下のように館内でのボランティア活動とサービス提供を休止させていただきます(職員は可能な限り出勤し、業務を行います)。 @午前7時現在、大阪市内に暴風警報か特別警報が出ている場合=午後1時まで休止 A午前10時現在、出ている場合=終日休止 B午前10時以降に出た場合=発表時点で休止 Cその他、館長が危険と判断した場合  ◆7月の休室について 【図書製作ボランティア活動】  7月16日(土)=18日(月曜指定祝日)の振替休室 【エンジョイ!グッズサロンと図書貸出】  7月14日(第2木曜)=書庫・在庫整理日  7月19日(火)=18日(月曜指定祝日)の振替休室 ※3階総務係と4階会議室は、上記の日も開室    <<センターの頁>>(2頁・4頁)   ●サピエの利用者拡大と公的情報の提供〜全視情協の今年度事業計画   全国の点字図書館とボランティア団体等で組織する特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会(全視情協)の事務局が4月、当館内から近隣ビルに移転したことはお伝えしましたが、理事長は竹下館長、録音委員長は久保田部長、サピエサポートセンターはエンジョイ!グッズサロンが担当するなど、当館の担う役割は引き続き大きなものがあります。特に今年度は、読書バリアフリー法により厚生労働省のサピエ運営補助金が4,400万円に倍増し、全視情協が視覚障害者等の情報保障に果たすべき責任が増す中、2022年度の総会が6月下旬に開かれ、以下のような事業計画が決まりました。 テーマ 運営体制の強化とサピエのさらなる発展  ◆重点事業  1.読書バリアフリー法「基本計画」の推進=障害者手帳を持たない視覚障害者や読書困難者、身体障害者等に向けたサピエの利用拡大の取り組み、公共図書館等との連携強化、電子書籍の出版・販売・データ提供の働きかけ、点訳・音訳・電子書籍製作ボランティア等の養成・活動支援の強化とボランティアの地位向上  2.運営体制の強化とコロナ禍における諸活動の展開=事務局員3人の新規雇用(合計6人)と事務所の独立。オンラインを活用した大会、研修会、委員会活動等の充実  3.島根あさひ事業所の安定的運営=PFI刑務所の訓練生による点訳・録音事業の継続  ◆新規事業  1.地域の公共図書館等に向けたサピエ図書館の研修会開催事業=全国10ヶ所で全視情協加盟施設が地域の公共図書館・学校図書館等に対してサピエの研修事業を実施  2.サピエの新ポータルサイトの開設と災害支援や福祉関係情報等の持続的発信=@災害、感染症等、命に関わる情報をはじめ、視覚障害者にとって重要な公的情報のアクセシブルな形での発信、A視覚障害に関する基本情報や相談先の紹介、Bサピエ停止時の緊急情報提供等  3.AIスピーカーによるサピエ図書館スキルの開発と普及=パソコンやスマホ等による利用が困難な人も簡単に使えるシステムの実現  このような全視情協の取組について、関心を持っていただければ幸いです。(館長 竹下 亘)   ●銀幕の視覚障害者(1)〜「5パーセントの奇跡〜嘘から始まる素敵な人生」  録音製作係 宇田 佑香   古今東西、視覚障害者が登場する映画は数多あります。そんな中から、映画好きが高じて当館の音声解説担当になった宇田職員が観て、心に残った作品を不定期連載でご紹介します。(竹下)  ◆「5パーセントの奇跡〜嘘から始まる素敵な人生」=マルク・ローテムント監督、2017年、ドイツ映画、111分  95%の視力を失った青年が、夢だったホテルマンになろうと奮闘する、実話を基にしたハートフル・エンターテインメント。  舞台はミュンヘンの5つ星ホテル。高級ホテルはなんだか非日常的な贅沢感があって、「画面映え」するのです。素敵な挿入歌も相まって、なんともお洒落な作品に仕上がっています。  見どころは、主人公の青年サリヤの夢に向かってひたむきに努力する姿です。サリヤは、弱視であることを隠してホテルマンの採用試験を受けるのですが、次から次へと試練が立ちはだかります。一つ一つ果敢に乗り越えようと頑張る姿に、胸が熱くなります。  もう一つ、外せない見どころは、周りの人のサポートです。95%の失った視力を努力だけで補うのは、やはり限界があります。また、サリヤは努力家であるが故に、猪突猛進になってしまうことがあります。そんな彼を、同僚や家族がどのようにサポートしていくのか、ぜひ注目していただきたいポイントです。  コロナ禍も2年を越えたこの頃、おうち時間の過ごし方もマンネリ化しているのではないでしょうか?ちょっと刺激的なシーンもあり、おうち時間のスパイスにちょうどいい作品です。  販売中のDVD・ブルーレイディスク共に、バリアフリー字幕・音声ガイド対応。店によってはレンタルもあるようです。    <<利用者の頁>>(3頁)   ●点字との出会いで広がった新しい世界  中島 千恵  初めまして、私は中島千恵と申します。住友病院の病棟で10年間、眼科の患者さんと関わっていた看護師です。しかし、7年前に今の医療でははっきりした病名もわからないまま、約1年間で全く目が見えなくなりました。見えないからといって、真っ暗ではありません。深い霧の中にいるような白い世界にいます。想像もできないびっくりな出来事でした。今はご縁があって本誌の封筒詰めのボランティアをさせていただいています。そんな私が、「点字」と出会ったおかげで経験することのできた新しい世界を少しご紹介したいと思います。  ◆たった2文字の点字が何回触っても読めない  私が関わった眼科の患者さんは、手術や点滴治療を受けておられる、見えづらい患者さんがほとんどで、全く見えない患者さんと関わったのはお二人ほどです。街なかで白杖を持っている方や盲導犬と歩いている方 に出会い、声をかけるという経験もありませんでした。見えていたときの私は、お恥ずかしい話ですが、点字に興味がなく、知識もありませんでした。自分が見えなくなり、初めて点字に出会ったのです。  私がそんな点字と出会い、読み書きを教わったのは、鶴見区にある日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンターです。最初は、目が見えないから仕方なく点字を学び始めました。点字のひらがなの50文字はすぐに覚えることができました。点字の知識が深まるのは、とても嬉しかったです。しかし、たった2文字の単語の点字を指先で何回触っても読めない、知識があっても読めないのです。見えていたらすぐに読めるのに!何でこんなに苦労せなあかんねん!すごく情けなくて、悔しくて、イライラしていました。皆さんが読んでいる文字(墨字)は視野に入る何文字かを一度に認識できますが、点字は指先に触れたところしか認識できません。それも目が見えて文字を見ていただけに、とても歯がゆくて仕方なかったです。  また、一緒に学習していた生まれながら目の不自由な人が、ものすごい速さで点字を読んでいったり、トン・トンと音を立てて点字を打っていく姿に、すごい!と憧れながらも、「点字ができるのは、生まれながら目が不自由な人に、神様が与えた特殊な能力なんだ!私には無理だ!」とひがんで、努力してもできない自分のことを納得させようとしていました。今、思えば、点字ができるようになると、目の不自由な人たちの仲間に入ることを認めることになると、心のバリアを作っていたのかもしれません。  ◆ベルギービールと「一マス空け点字」が突破口  ある日、職員さんの一人が、そんなイライラしている状況の私を見かねたのか、私の好きな物を聞いてくれました。ビールが好きだと答えると、早速、ベルギービールの種類をたくさん点訳した点字用紙を持って来てくれました。しかも、私の点字が読める力もきちんと分かってくれており、「これなら、中島さん、読めると思うよ」と、点字が連なって並んでいるのではなく、1字毎に一マスずつ空けて点字を打ってくれたのです。ベルギービールの種類が知りたい気持ちもあり、一マス ずつ空いていれば、何とか読むことができました。それに、私のために、わざわざ工夫してくれた点字用紙が嬉しくて、ぜひ読もう!という気持ちになりました。  段々読めてくると、点字を読むのが楽しくなってきました。読むのに時間は要し、肩は凝りますが、点字の由来が、軍隊が使用していた暗号からだったように、点字が読めたときは、何か秘密の暗号を解いたような、ワクワクした気持ちになります。文字を読んでいた時には、味わったことがない気持ちです。今は、読む 能力もアップしており、一マス空けなくても、読めるようになっています。点字を読むことに諦めかけていた時、好きな物を聞いてくれて、能力も把握してくれて、イライラして学ぶのではなく、興味を持ちながら、点字の読む学習をサポートしてくれた職員に感謝です。  ◆点字で「般若心経」を写経し、金剛峯寺に奉納  点字の読み書きができたおかげで、昨年の秋、「点字般若心経」という本に出会い、般若心経を覚えて、唱えることができました。その後、高野山真言宗の総本山金剛峯寺で、何回も打ち間違えて、悪戦苦闘しましたが、見えていた時にもしたことがなかった写経を点字で初めて行い、素敵な仲間と一緒に奉納することができました。きっと、見えていれば、経験していない出来事のように思います。点字は、仏教に触れる機会をくれて、素敵な人とのご縁をくれています。  点字は、医療という現場で頑張って仕事をしていた私に、より広い視野をくれているように思います。点字に関して、まだ若葉マークの私ですが、これから先も、点字の不思議な魅力で、秘密の暗号を解いていきたいと思います。   ●報告の頁(8頁)  ◆ダスキン・アジア障害者リーダー22期生が来館  ダスキン愛の輪基金主催の「ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業」が3年ぶりに再開され、第22期生5人が4月末に来日。12月まで関東と関西で研修が行われることになりました。今回の視覚障害研修生はフィリピンのジャスミン・センテアノ・アンビオンさん(女性、全盲、31歳)。ICTが得意で、視覚障害者の雇用や起業などを学びたいとのこと。8月初旬から当館に来館・研修する予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします。  ◆「障害者情報アクセシビリティ施策推進法」が施行  障害者のあらゆる場面における情報の取得利用と意思疎通を進めるための法律「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が5月末、成立・施行されました。これは、読書バリアフリー法では「書籍・雑誌」に限定されていた情報保障を、日常生活におけるあらゆる場面で実現して行くことを目指す法律です。基本理念としては、@障害の種類・程度に応じた手段の選択、A地域に関わらない等しい情報保障、B障害者でない者と同一内容の情報を同一時点で保障、C情報通信技術の活用、が謳われています。また、基本的施策として、@情報取得等に関する機器等の開発と入手・利用支援、A防災・防犯及び緊急の通報の整備、B自立した日常・社会生活を営むために必要な分野の施策の整備、C障害者からの相談・障害者に提供する情報提供への配慮、などが定められています。ただし、この法律は拘束力のない理念法のため、今後、当事者や関係団体が行政機関などに対して点字や音声等での情報提供や、当事者の情報発信を認めるように求めて行く必要があります。  ◆近鉄郡山駅の踏切内で視覚障害者が接触死亡  旧聞ですが、4月25日18時過ぎ、奈良県の近鉄郡山駅南200mにある踏切の中で、白杖を持った50歳の全盲女性が電車に接触し、亡くなられる事故がありました。この方はライトハウスの利用者で、残念でなりません。事故後、現場確認したブルックの会によると、踏切手前の道路4ヶ所に敷設されていた点字ブロックは半分以上が剥がれ、摩耗も激しく、足での検知はほぼ無理な状態。この方は、「踏切の手前と自分の位置を誤認された」可能性があるのではないかとのことでした。事故後、点字ブロックは付け替えられ、6月初旬には「エスコートゾーン」が踏切内の道路の左右に1列ずつ敷設されました。(点字ブロックは黄色、30cm四方の点状で、横3枚×縦2枚を4ヶ所に敷設。エスコートゾーンは白色、45cm四方に多数の点が打たれたもので通常、横断歩道に敷かれています。)踏切は全国に無数にありますので、踏切の安全確保が少しでも進むことが望まれます。 あゆみ 【6月】 4日 専門点訳講習会UEBコース開講 5・6日 電話交換機・電話機全面更新工事 8〜10日 バリアフリー展(インテックス大阪) 9日 サービス部休室(書庫・在庫整理日) 11日 オープンデー(館内見学日、4人) 19日 日本ライトハウスチャリティコンサート 予定 【7月】 7日 サピエ研修会(全国オンライン) 9日 オープンデー(館内見学日、要予約) 14日 ボランティア友の会ガイド体験会  サービス部休室(書庫・在庫整理日) 編集後記 昨年暮れから時折、原因不明の腰痛(臀部の痛み)に悩まされています。休日は自宅でゴロゴロし、“このまま隠居するしかないかな”と気鬱な日々でした。ところが、最近通い出した鍼の先生に「原因は老化と運動不足によるお尻の筋力不足。このままだと歩けなくなりますよ。治すには休日も休まず、登山か自転車漕ぎをするしかない」と言われてギャフン!「吉田山には散歩に行くのですが」と訊くと、「あれは丘でしょ」とガツン!妻と一緒に足腰を鍛えて、長く続くかも知れない老後を健康に過ごせるように心がけたいと思います。(竹) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2022年7月号  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2022年7月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円