日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2022年6月号   <<表紙イラスト>> 梅雨のイラストです。 雨が降る中、池の中央で、2輪の菖蒲がおしゃべりをしています。 「あら 雨よ…」「うふん、お肌潤うわ…♪」 池に浮かんでいる蓮の葉に乗っているカエルは話の内容がわからないのか「?」を浮かべています。 池のほとりでは水玉模様の傘をさした女の子と犬のポチが歩きながら池の様子を眺めています。    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●センターの頁(2頁)   ●ボランティアの頁(3頁)   ●利用者の頁(4頁)   ●感謝報告(5〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆「ガイド体験会」で声のかけ方、手の貸し方を  ボランティア友の会では、例年「ガイド体験会」を開催し、視覚障害の方へのガイドの基本を実習しています。コロナ禍のため一昨年は中止、昨年はオンライン開催でしたが、今年は3年ぶりに実施します。今回は当館の利用者にもご参加いただき、日常生活での困り事や、工夫なども伺います。街角で視覚障害のかたに出会った時、落ち着いて、適切な声かけやガイドが出来るように、ぜひ一度ご参加ください。  日時 7月14日(木)13時〜15時30分  場所 当館4階会議室と当館周辺  講師 当館サービス部職員  申込 3階総務係(電話06-6441-0015)  申込締切 6月30日(木) ※先着20人で締切  ◆専門音訳講習会「古典」と「小説の読み方」開講  毎日新聞大阪社会事業団と当館主催の専門音訳講習会2コースの受講者を募集します。  申込は、いずれも当館ホームページ(http://www.lighthouse.or.jp/iccb/)で実施要項をご確認の上、お願いします。  問合せ先 録音製作係(電話06-6441-1017) ◆専門音訳講習会「古典」コース  さまざまな音訳に対応できるよう漢文や古文、古文書の読み方と音訳技術の講習を行います。  日程 毎回土曜日。6月25日午後、7月2日午前、7月9日午後、7月23日午後、7月30日午前と午後。時間は、午前は10:00〜12:00、午後は13:30〜15:30。  講師 当館音訳古典チームメンバー  受講料 1,200円 定員 15人  申込締切 6月11日(土) ◆専門音訳講習会「小説の読み方」コース  小説や児童書などの会話文について、内容が伝わりやすい読み方の実技を1日で講習します。  日程 8月4日(木)、8月26日(金)10時〜15時 全1回4時間を2回開催  講師 前田綾子さん(当館音訳ボランティア)  受講料 1,400円 定員 各回12人  申込締切 6月30日(木) ◆6月の休室と特別行事について  6月9日(第2木曜)=エンジョイ!グッズサロンと図書貸出は書庫・在庫整理日のため休室。  6月19日(日)=日本ライトハウス・チャリティコンサート(ザ・シンフォニーホール)  ◆PR動画「サピエ図書館で読書の喜びを!」公開  全視情協では、サピエ図書館をもっと多くの方々、特に障害者手帳を持たない視覚障害の方や本を読むのが困難な読字困難、身体障害の方に知っていただくため、PR動画「サピエ図書館ですべての人に読書の喜びを!」を製作し、インターネットでの公開を始めました。  動画は21分間で、映像やイラストを交えてサピエ図書館の概要から利用できるメディア、音声デイジー等の再生の様子、視覚・読字・身体障害の利用者の生の声などを紹介しています。  動画は全視情協のホームページでご覧いただけます(http://www.naiiv.net/)。ぜひ一度ご覧いただくとともに、読書困難な方をはじめ、お知り合いにもご紹介ください。  ◆バリアフリー2022で「目のコーナー」を開催  当館では、「バリアフリー2022〜第28回高齢者・障がい者の快適な生活を提案する総合福祉展」で、3年ぶりに「目の見えない方・見えにくい方のための展示コーナー」を開催します。  日時は6月8日(水)から10日(金)の10時から17時。会場は大阪市住之江区のインテックス大阪(大阪メトロ南港ポートタウン線「中ふ頭駅」から徒歩5分)。今回は、スポーツメーカーミズノの超軽量白杖、視覚障害者向け歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」など新製品を含め、14社が出展。特別ブースでは、昨年テレビで放映された「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール」で使われた機器や用具を紹介します。  入場無料。当日入場も出来ますが、事前登録を推奨。https://www.tvoe.co.jp/bmk/visitor/でお手続きください。    <<センターの頁>>(2頁)   ●視覚障害者の読書量と読書手段などを知る手立てに   国会図書館の「視覚障害者等を対象にした読書アンケート調査」公開  視覚障害等の方々が“実際にどのような読書をしているか”は、点字・録音・電子書籍の製作や対面リーディング・図書貸出・ICT機器の利用支援サービスなどを行う上で、基礎とすべき情報です。しかし、これまで、そうした実態調査は間接的か部分的にしか行われてきませんでした。そんな中、国立国会図書館が実施した「視覚障害者等を対象にした読書及び情報行動に関するアンケート調査」の結果が発表されました。貴重な内容ですので、主な結果をご紹介します。(館長 竹下 亘)  ◆全盲の人を中心に読書困難者739人から集計  この調査は、2021年秋、日本視覚障害者団体連合など国内の障害者5団体を通して、739人の回答を集計。回答者の障害は、全盲(251人・34.0%)、ロービジョン(162人・21.9%)、上肢障害や全身性障害等(118人・16.0%)、ディスレクシア(読字が困難な人、103人・13.9%)。年齢は、6歳から89歳で、50代から70代が6割弱。回答者の選定は、ICT利用者や中高年に偏らないように留意したそうですが、男女比が65%対35%、出生時から障害のある人が30%、障害者手帳取得後21年以上の人が61%など、中途障害のロービジョン者が増え続けている視覚障害者の現状とややずれている感は否めません。  ◆サピエ利用者の73%が年間21冊以上を読書  「この1年間で読んだ本や雑誌等の冊数」は、「21冊以上」が25.6%で最多。一方、「読んでいない」は20.7%。ただし、これを図書館の利用経験とクロス集計すると以下のようになります。  *公共・学校図書館等の利用経験のある人  「21冊以上」64.6%、「読んでいない」18.4%  *点字図書館の利用経験のある人  「21冊以上」72.5%、「読んでいない」11.5%  *サピエ図書館の利用経験のある人  「21冊以上」73.1%、「読んでいない」14.6%  視覚障害者等の場合、点字図書館やサピエ図書館の「利用経験のある人」が圧倒的にたくさん本を読んでいることが分かります。  また、「今後読みたい本のジャンル(複数回答)」では、「小説・エッセイ」が60.9%で最多。続いて「趣味・実用」41.3%、「歴史・地理」と「医学・自然科学」が同率で31.3%でした。  「どういう目的で本を読みたいか」については、「趣味・娯楽」が74.2%で最多。続いて「日常生活に必要な情報を得るため」56.6%、「友だちや知人と話題を共有するため」36.8%でした。  ◆「読書を諦めたことのある」視覚障害者は7割  重要な設問は、「自分が読むことができる形式(紙、電子書籍等)で本が入手できずに読むのを諦めたことがあるか」でした。回答を全体と障害別に分けると以下のようになります。  *諦めたことが「よくある」「ときどきある」  59.8%(全盲70.4%、ロービジョン66.0%、上肢・全身性障害36.8%、ディスレクシア50.5%)  *諦めたことが「ほとんどない」か「まったくない」  40.2%(全盲29.6%、ロービジョン34.0%、上肢・全身性障害63.2%、ディスレクシア49.5%)  全体では大差がありませんが、視覚障害者の「諦めたことがある」率の高さが目立っています。  ◆電子書籍、音声デイジーへの高い関心  また、「読書形式(紙、電子、点字、音声等)」について「これまでに読んだ形式」と「これから読みたい形式」を問う設問では、「電子書籍(EPUB等)」や「音声デイジー」を「これから読みたい」という人が46〜47%で特に多かった他、「オーディオブック」への関心が高めでした。  この他、「情報を得るために重要としている手段(複数回答)」では、「テレビ(一般放送)」が71.6%で最多。続いて「パソコン」66.3%、「スマートフォン・タブレット端末」64.0%でしたが、視覚障害者の割合もほぼ同じで、ICTの利用が想像以上に広がっていることが分かりました。  この調査報告は、ネットで「国立国会図書館 情報行動」と検索すると上位に表示されます。    <<ボランティアの頁>>(3頁)   ●2021年度の「ボランティア交流会」を玉水記念館で開催  当館からボランティアの皆様への日頃の感謝を表すとともに、ボランティアと職員の交流を深める「ボランティア交流会」が4月28日午後1時から3時30分、3年ぶりに近隣の玉水記念館を会場に開催され、約70人が集いました。  本来は2021年度の交流会で3月の予定でしたが、コロナ禍により延期。従来は午前10時から午後3時頃まで、感謝式典に始まり、記念講演や演奏会、ボランティア友の会総会、昼食を囲んでの懇談と受賞者のスピーチや館の報告、そして友の会バザーなど盛り沢山なプログラムでしたが、今回は感謝式典に続き、友の会世話人会メンバー(本誌8頁に掲載)と新任職員の紹介、記念演奏会に絞った内容となりました。  感謝式典では今回(前年度)、活動歴30年以上を迎えられた方4人と20年以上の方10人(本誌4月号でご紹介)の内、出席された8人の 方に橋本照夫理事長から感謝の言葉と共に感謝状を贈呈しました。式典後のスピーチでは、皆さん、ここまで続けて来られたことやボランティアのお仲間への感謝、思い出に残る出来事などを語られ、満場の拍手を受けておられました。  また、記念演奏会では、大阪市の箏曲家で、当館の点字楽譜の顧問もしてくださっている竹内一(はじめ)さんが出演。お琴で名曲や 時には歌謡曲のさわりを奏でながら、幼少期の音楽との出会いから盲学校で琴を習い始めるまでの微笑ましいエピソード、高等部で音大への進学を志し、箏曲の大師範に弟子入りしてからの稽古の苦労、さらに短大入学後、点字楽譜がない中で毎週新しい曲を習得する苦闘と大学に編入学するまでの辛苦、そして2013年、ついに宮城会琴・三絃大師範になるまでの歩みを飾らない言葉で語られ、音と言葉で心に響く演奏会となりました。   ●利用者の頁(4頁)   ダスキン研修生は今(1)〜ベトナムのフォンさん  点字製作係 大下 歩(おおした あゆみ)  当館では、1999年から「ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業」に協力し、これまでに30人の視覚障害研修生を迎え入れてきました。彼らが今どんな活躍をしているのか、自らも海外研修の経験のある大下職員にインタビューしてもらい、不定期連載することにしました。(竹下)  ◆国連開発計画職員として活躍中のフォンさん  ダオ・トゥ・フォン(Dao Thu Huong)さんは、ベトナム出身の37歳。ハノイで母と二人暮らし。12歳の頃、全盲になり、2011〜12年、26歳の時、ダスキン研修生として来日。当館にも訪れ、インクルーシブ教育を中心に色々な研修を体験しました。現在、国連開発計画(UNDP)職員として活躍中です。  ◆盲学校と一般校で学び、英語通訳に  小学校は、地域の一般校に入りました。でも4年生のとき、視力が落ちたので、盲学校に移って点字やパソコンを習いました。高校は、地域の一般校に戻りました。点字の教科書は、あちこちの盲学校から取り寄せました。足りない分は、家族や友達が音読したのを録音してくれて。宿題は、文系の科目はパソコンのデータで出し、理系の科目は答えを先生に口頭で伝えていました。大学では英語教育を専攻しました。在学中にサマリタンズ・パースという、災害支援や障害者支援などをする国際NGOが開いたチャリティコンサートを手伝ったんです。そのご縁で、「卒業したらうちで働かないか」と言われ、英語の通訳をすることになりました。  ◆アクセシビリティを学んだ日本研修  日本に行ったのは、就職して1年経った頃です。研修テーマは、「日本のインクルーシブ教育について」。10カ月の滞在中、日本ライトハウスの他、大阪の小学校や神奈川県の盲学校にも行きました。盲ろうの東大教授 福島先生と日本語の指点字で話すチャンスもありました。日本の教育は、視覚障害児にとってとてもアクセシブルでした。たくさんの点字の教科書とサピエ図書館の本。触ってわかるミニチュア模型も豊富です。あちこち旅行したのも良い思い出です。植物園や博物館、お花見にスキー。竹下館長のお家にも5日間泊めてもらいました。  ◆デイジー教科書製作を経て国連職員に  まず所属のNGOに通訳として復帰しました。そして、マルチメディアデイジー教科書を作る団体「リフト・ユー・アップ」をハノイで立ち上げました。2014年から2年間は、オーストラリアの大学院でコミュニティ開発を学びました。  2019年には、世界各国で開発途上国の経済、社会的発展のためのプロジェクトを進めている国連開発計画(UNDP)に転職しました。最近取り組んだのは病院でのプロジェクトです。そこには車椅子用のトイレがなく、リハビリのための機器類も2階に置いてありました。そこで、院長たちに働きかけて、状況を改善しました。  ◆読者の皆さんへのメッセージ  私のこれまでの話をシェアする機会をいただけてうれしいです。今、私がこうして障害者の権利を守る仕事が出来ているのは、日本でいろいろな経験をして刺激をもらったからです。どうもありがとう。また日本に行ける日を心待ちにしています!  <インタビューを終えて>  フォンさんは、物腰柔らかでありながら、とても真面目で熱い人でした。「学び」を大事にしているなと。「昔はもっと上手だったんだけど」と言いながら、流暢な日本語でも話してくれました。日本で出会った人や場所の名前を次々挙げて懐かしんでいたのも印象的でした。(歩)   ●報告の頁(8頁)  ◆今年度の「ボランティア友の会世話人会」のご紹介  今年度の世話人会がスタートしました。世話人の任期は原則2年で、奇数月の第2木曜日に世話人会を開催。館との情報・意見交換やボランティア交流会、ガイド体験会、施設見学会などの企画・実施を担当します。皆さんの代表ですので、ぜひご支援ご協力をお願いします。 (写真=世話人の皆さん(敬称略)。前列左から植田美穂子(録音・代表)、大安徹雄(おおやす てつお)(点字・書記)、尾崎一恵(音声解説・会計)、池本滋子(対面・会計監査)。後列左から山田理子(電子書籍・新任)、向井民子(対面・新任)、木虎真紀(点字)、田中恵子(録音)、奥幸子(おく さちこ)(録音)。)  ◆全国の図書館の障害者サービスの実態を調査  全視情協(全国視覚障害者情報提供施設協会)が厚生労働省の委託でおこなった「点字図書館等におけるアクセシブルな書籍等の提供体制及び製作状況に関する調査研究事業」の報告書が発行され、5月初旬、全国の図書館等に配付されました。この調査は、全国の公共図書館310ヶ所、点字図書館81ヶ所、視覚支援学校図書室58ヶ所から集めた「アクセシブルな図書等の製作」「サービス提供」「ボランティア等の養成・活動」「ICT機器の情報提供や利用支援」等の状況をまとめたもので、今後の視覚障害者等の読書環境の改善の基本資料となることが期待されます。主な内容は改めて本誌でも紹介したいと思います。  ◆ボランティアの飯村康志さんがご逝去  図書・情報係で貸出作業をお手伝いくださっていた飯村康志さんがご病気のため、4月12日、ご自宅で亡くなられました。飯村さんは、当館の音訳ボランティア飯村紀子さんのご夫君で、1998年から録音製作係のコピー作業等をお手伝いくださり、2008年からは図書・製作係の貸出作業も並行してお手伝いくださいました。また、2015年度と2016年度にはボランティア友の会の世話人もお引き受けくださいました。20年余りに亘るお力添えに感謝し、心からご冥福をお祈りいたします。  ◆人事異動のお知らせ  当館では4月から5月、以下の職員採用を行いました。どうぞよろしくお願いいたします。  *サービス部図書・情報係 大西純代  *製作部メディア製作センター デイジーユニット 廣政史佳(ひろまさ ふみか) あゆみ 【5月】 7日 視覚障害者ICTサポート講習会開講 12日 サービス部休室(書庫・在庫整理日)  ボランティア友の会世話人会  情報文化センター職員会議(15:30〜17:00) 14日 オープンデー(館内見学日、5人) 19日 点訳ボランティア養成講習会開講 25・26日 日本ライトハウス評議員会・理事会 予定 【6月】 8〜10日 バリアフリー展(インテックス大阪) 9日 エンジョイ!グッズサロンと図書貸出は休室(書庫・在庫整理日) 11日 オープンデー(館内見学日、要予約) 19日 日本ライトハウスチャリティコンサート 編集後記 友人からいただいた胡蝶蘭が今年も花を咲かせ、2ヶ月位きれいに咲いてくれています。次の年も、その次の年も咲くとは思っていませんでしたが、ボランティアのIさんに、「お水をやっていれば毎年咲くよ」と教えていただき、週に一度、水やりをして過ごしています。別館でも、情文の新館開館祝いにいただいた胡蝶蘭を職員の方が大事に育てて、毎年咲いているそうです。意外に強く、寿命も長いですね。胡蝶蘭は「蝶」を含む名前や高貴で清楚な雰囲気を持つ姿から「幸福が飛んでくる」「純粋な愛」という花言葉を持ちます。世界に早く幸せが飛んできてほしいと願う毎日です。(一) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2022年6月号  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2022年6月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円