日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2022年3月号   <<表紙イラスト>> 卒業式のイラストです。 梅の花が咲く学校で、花柄の袴を着て卒業証書の入った筒を持った女の子が「卒業です…」と片目から涙を流しながらも、笑って左手をこちらに振っています。 女の子の隣で犬のポチは「おめでたいけど ちとさびしい…ワン」とハンカチで涙を拭っています。    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●センターの頁(2〜4頁)   ●感謝報告(5〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆ボランティア交流会の開催を延期  今年度のボランティア交流会は3月10日、玉水記念館で開催する予定でしたが、コロナの感染状況から延期を決めました。今回は14人のボランティアの方々に20年・30年の感謝状をお贈りする予定でしたので、残念でなりません。日程の再決定はなかなか困難ですが、出来れば、3月中旬から下旬に「ボランティア世話人会」を開いて日程と内容を決め、改めてお伝えしたいと思います。不明瞭で申し訳ありませんが、開催をお待ちいただき、ぜひご参加ください。  ◆「赤信号」点灯中のご来館について  当館では、大阪モデルの「赤信号」点灯に伴い、1月26日から4階会議室の貸出と講習会等の会場開催、対面リーディングの休止を決定しました。再開は「黄信号」に変わった後、決定した上で、お伝えします。当館へのご来館については、以下の通り、お願いいたします。  *来館でのボランティア活動については、各係にご確認ください。  *5階エンジョイ!グッズサロンへの来室は必ず事前予約をお願いします。  ◆「サピエ」が3月7日から28日まで全面停止  当館の図書製作・利用者サービスに欠くことのできない「サピエ」がシステムの全面更新のため、3月7日(月)から28日(月)まで、全面的に停止します。停止期間中は個人会員の利用ができなくなるのに加え、施設や団体でも図書検索やデータのダウンロード等が行えなくなります。当館の貸出は在庫のある図書のみとなり、他館との相互貸借もできません。録音や点字の雑誌は代替手段を使い、利用者への貸出を続けます。ボランティアの方にもご迷惑をかけることがあるかと思いますが、ご了承ください。  ◆3月の休館・休室について  3月10日(第2木曜)=エンジョイ!グッズサロンと図書貸出は書庫・在庫整理日のため休室。  3月25日(金)・26日(土)=図書・情報係はサピエ再開準備のため休室。  3月31日(木)=エンジョイ!グッズサロンは年度末の棚卸しのため休室。  ◆初心者対象の点訳ボランティア講習会を開講  当館では、新しく点訳活動に加わってくださる方を養成するための「点訳ボランティア養成講習会」を5月から開講します。事前知識は不要です。点字に興味のある方、点訳ボランティアに関心のある方はぜひお申し込みください。  なお、新年度の「音訳ボランティア養成講習会」は既に定員に達しました。ご容赦ください。ご希望の方には6月開講の早川福祉会館点字図書室の講習会をご紹介します。  ◇点訳ボランティア養成講習会(初級)  日時 5月19日〜7月28日(毎週木曜日)午前10時〜12時(試験後、中級を9月1日〜12月15日に開催)  申込締切 4月15日(金)、定員10人  説明会と事前試験 4月21日(木)10時〜  お申込みは、実施要項をご請求の上、点字製作係(電話06-6441-1028)までどうぞ。  ◆第35回専門点訳・音訳講習会を続々開催  毎日新聞大阪社会事業団と当館では、今年度も多彩なテーマの専門点訳・音訳講習会を下記の通り開催します。所属団体は問いませんので、ぜひ奮ってご参加ください。  ◇専門点訳講習会  @英語点訳(UEB)コース=2019年に国際標準となったUEB(統一英語点字)を講習。6月〜8月、全6回(1回2時間)、定員15人。  A写真・図・イラスト点訳コース=今日重要性を増す視覚的情報を点訳するための実践講習。7月、全2回(1回4時間)、定員15人。  B教科書・教材点訳入門コース=地域の小・中学校等に通う生徒の学習に欠かせない教科書、教材等の点訳の基礎を講習。8月、全2回(1回4時間)、定員15人。  ◇専門音訳講習会  @東洋医学コース=視覚障害者の就労・学習にニーズの高い東洋医学書の音訳を講習。全6回(1回2時間)、定員15人。  A古典コース=日本の古典を音訳するための基礎知識を講習。全6回(1回2時間)、定員15人。  B小説の読み方コース=音訳図書の利用で、最も人気の高い小説の読み方の基本を講習。全1回(4時間)を2コース開催。定員各12人。  ◆点字考案200周年記念事業がオンライン公開  ルイ・ブライユが1825年に点字を考案してからまもなく200年。これを記念するプレイベント「第1回点字考案200年記念講演会&シンポジウム」が3月19日(土)13時〜16時、大阪と東京の2会場で開かれ、YouTubeで公開されます。講演「韓国点字法に学ぶ〜立法経過とその後の状況」(シロアム視覚障害者福祉館常務理事 チェ・ドンイク氏)と、シンポジウム「これからの点字への期待〜新たな輝きを求めて」(日本点字図書館館長 長岡英司(ひでじ)氏、四天王寺大学名誉教授 愼英弘(しん よんほん)氏、大阪府立高校教諭 山本宗平(ソウ ヘイ)氏 他)。視聴自由。YouTubeの視聴用アドレスはhttps://youtu.be/a-PmJcQj7Rkです。    <<センターの頁>>(2〜4頁)   ●一ツ橋綜合財団のご助成で、今年度も先駆的事業に成果   アクセシブルな電子書籍やシネマ・デイジーの普及を目指して  当館では、毎年、公益財団法人一ツ橋綜合財団から多額のご助成をたまわっています。今年度も、この助成金とボランティアの皆様のご協力により、当館が全国を先導するアクセシブルな電子書籍や「シネマ・デイジー」の製作・提供、オンライン会議システムZoomを活用した講習会・講演会などを実施することができました。今年度の主な実績をご報告します。(製作部長 久保田 文(あや))  ◆アクセシブルなデジタル教科書を製作・提供  当館がマルチメディアデイジー(以下、MMD)教科書の製作・提供を始めて13年になります。この間、学校教育法の一部改正や電子書籍のメジャー規格EPUBのアクセシビリティ化が進み、小・中学校の教科書については、国に委託されたデータ管理機関からEPUB形式のデータが提供されるようになりました。  この流れを受け、当館でも今年度からMMD教科書に代わり、EPUB MediaOverlays(メディアオーバーレイ)(MMDとほぼ同じ仕様のEPUBで文字と音声が同期している)形式のデジタル教科書の製作・提供を始めました。本来ならば、データ管理機関から提供されている教科書のEPUBデータに音声を付与するだけでデジタル教科書が出来上がるはずなのですが、残念ながら、データ管理機関からのデータはレイアウトや1ページ当たりの情報量の配慮が不十分で、読み書きが困難な子どもたちが見やすく、分かりやすくするための、追加の編集作業が必要です。時間はかかりますが、今後も培ってきたスキルを活かし、アクセシブルなデジタル教科書を製作・提供していきます。  ◆時代に沿った就学・就労支援のために  就学児から大学生までを対象としたMMD図書は、新型コロナウイルスの感染、SNS上でのいじめや犯罪トラブルなど、現代の子どもたちが直面している問題に対し、正しく知ってほしい知識の本を中心に選定し、約10人のボランティアの方々のご協力のもと、製作いたしました。  当館のMMD図書は、肉声と合成音声を併用して製作しています。絵本・読み物などは肉声のみで製作しますが、図書の性質(内容)、対象年齢、図表等の視覚的資料の役割などを考慮した上で、ハウツー本や就労支援の本の一部は、視覚的資料は肉声で音訳し、本文は合成音声を使用するという方法で製作しています。AI技術を活用した合理的な製作方法ですが、機械に任せても良い部分と、人間による音訳でなければならない部分の見極めを誤ることなく、これからも当館ならではの質の高い図書の製作を続けていきたいと思います。 (写真=「13歳からの『ネットのルール』」の原本と、端末に表示されたMMD図書)  ◆「シネマ・デイジー」とバリアフリー上映体験会  コロナ禍により、来館でのボランティア活動を制限せざるを得ない中、約20人のボランティアの皆さんとともに、13作品の耳で観る映画シネマ・デイジーを製作。「サピエ図書館」を通して全国に配信するとともに、デイジーCD図書として貸し出すことができました。  また、バリアフリー上映体験会を、当館の「わろう座」で2回、神戸アイセンターで1回(NEXT VISION主催)開催し、徹底した感染対策のもと、合計約120人の 方に映画を楽しんでいただきました。  ◆オンラインで広がる「学び」と「繋がり」  コロナ禍に伴い導入したオンライン会議システムZoomをフル活用し、各種講習会や定例勉強会を続けることができました。また、昨年12月には当館のボランティアの方々を対象にした特別講演会「今こそ話そう!読書バリアフリー法とボランティア活動」を、会場参加とオンラインの2方法で開催し、約70人の 方にご参加いただき、ご好評をいただきました。  さらに、今月下旬には、当館発行の児童向け点字雑誌『アミ・ドゥ・ブライユ』の読者交流会を全国に向けてオンライン開催する予定です。 (写真=オンライン公開された特別講演会「今こそ話そう!読書バリアフリー法とボランティア活動」の会場風景)   ●映画体験を共有する面白さ=映画の「環」の広がりを願って  録音製作係 宇田 佑香(うだ ゆうか)  前頁の「一ツ橋綜合財団」の報告に記した通り、「音声解説」は、当館の主要事業の一つです。昨年10月からその担当となった宇田職員に、映画に対する熱い思いを書いてもらいました。(竹下)  ◆「スタンド・バイ・ミー」に魅せられて  私が映画鑑賞を始めたのは高校3年生の2月でした。大学受験を終えて暇を持て余していた私は、何となく近所のレンタルビデオショップに入りました。「青春映画の金字塔!」と手書きの可愛らしいポップに目が留まり、そのポップに勧められるがまま、映画「スタンド・バイ・ミー」(ロブ・ライナー監督)のDVDを借りました。  家に持ち帰って見るや否や、妙な感覚にとらわれました。どこか懐かしいような、昔の夢を見ているかのような。アメリカ人でもなければ少年だった経験もないのに、アメリカの田舎町でわんぱく少年時代を過ごしたことがあるかのような錯覚に陥ったのです。  この日から、暇さえあればレンタルショップで映画のDVDを物色する日々が始まりました。1日に3本観る日もしばしば。日本史を学ぶつもりで受験した大学も、映像学を専攻することに。こうして、私の映画人生は幕をあけました。  ◆北京では「映画」でコミュニケーション  とは言いつつも、大学の4年間ずっと映画について学んでいたわけではありません。第二外国語で履修した中国語にハマり、2年生の夏休みに北京へ短期留学。霞んだ空気、広大な土地、豪華絢爛な装飾…。出会うもの全てに魅了された私は、アルバイト代をつぎ込み、翌年2月から約半年間、再び北京へ留学しました。  現地の人とのコミュニケーションの架け橋になってくれたのは「映画」でした。「チャウ・シンチーの映画、面白いよね」と言うと、「中国人はみんな好きだよ!」「日本でも人気なの?」との声が。「『少林(ショウリン)サッカー』はスポーツ映画?それともカンフー映画?」「『カンフー・ハッスル』のダンスシーン面白いよね!」と、チャウ・シンチーの話題で盛り上がりました。  他にも、日本の映画通の間で定評のあるハリウッド映画「ショーシャンクの空に」(フランク・ダラボン監督)は、中国でも「あれは良い映画だ!」と複数の声が上がり、中国人とアメリカ映画で意気投合。ちなみに日本映画では、「海街diary」(是枝裕和監督)が結構人気でした(私 調べ)。  こうして私は「映画」を話題にコミュニケーションを図るという技を覚え、中国語も自然と上達していきました。  この留学は、映画の底知れぬ力と可能性を知るきっかけともなりました。たとえ言語の壁があったとしても、お互いに同じ映画体験を共有していることがわかれば、距離がグッと縮まるのです。そして、この「映画体験を共有する」面白さ=映画の「環」を広げたいという想いが、このときぼんやりと芽生えたのです。  ◆広がれ!映画の「環」  現在、ご縁があって、当館の録音製作係職員となり、“耳で観る”映画「シネマ・デイジー」の製作やバリアフリー上映会の運営に携わらせてもらっています。ご承知の方も多いでしょうが、大きく言うと、今までふつうに映画を観ることが困難だった方々に、映画体験の場を提供するというお仕事です。  まだまだ勉強中で、ボランティアの皆さんの巧みな言葉選びに唸るばかりです。上映会では、映像と音声の同期がうまくいくかどうか緊張しっぱなしです。  ある日、利用者の方から「あなたの仕事が私の希望です」と、メールをいただきました。こんなにも心の暖まることはありません。始業前にたまに読み返して、「よし!頑張ろう」と自分にエンジンをかけています。  映画の「環」がもっともっと広がりますように。   ●報告の頁(8頁)  ◆2021年度点訳ボランティア養成講習会終了  昨年6月に開講した「点訳ボランティア養成講習会・中級コース」が1月25日に終了し、6人の 方が修了されました。これから、それぞれ活動曜日を決めて点訳活動を開始され、コロナ感染が落ち着けば来館して、ペア校正等をしていただきます。今後のご活躍を期待します。 (写真=修了者の皆様(敬称略)。前列左から安達恵美子、市川道子、越川由美子、前田朱実、松山千英、本岡直樹。後列左から講師の土橋貞子(ツチハシ テイコ)、鴻上真理。職員の奥野真里、久保田文(あや)。)  ◆音訳ボランティア野村昭子さんの追悼文集が出版  当館の音訳ボランティア野村昭子さんが録音作業の後、肥後橋駅で不慮の事故により亡くなられてから2年が経ちました。その追悼文集「おはなしを届けに〜野村昭子さんの思い出」がこのほど上梓され、ご主人の野村俊三(としみつ)様から当館に10冊のご寄贈を受けました。野村昭子さんは明石市で4人のお子さんを育てながら公務員を定年まで勤めた後、2003年から地域の図書館や公民館、保育所などで「読み聞かせ」活動を始め、2008年からは当館の音訳講習を受講して録音ボランティア活動も開始。その温かい人柄と“読み”の力で数え切れない子ども達や保護者、職員、ボランティアの仲間から慕われました。追悼文集には、そうした50人余りの方々の思い出と惜別の言葉が寄せられ、野村さんの生前のお姿が生き生きと浮かび上がってきます。6階録音製作係に置いていますので、ぜひお読みください。 (写真=地域の小学校でストーリーテリングをする野村さん) あゆみ 【2月】 15日 ボランティア友の会世話人会(臨時) 予定 【3月】 7日 サピエ全面停止(〜28日) 10日 エンジョイ!グッズサロンと図書貸出休室(書庫・在庫整理日) 12日 オープンデー(館内見学日・要予約) 25日・26日 図書貸出休室(サピエ再開準備) 31日 エンジョイ!グッズサロン休室(年度末棚卸し) 編集後記 先日、気持ちの切り替えができずモヤモヤと考え落ち込んでいたら、「イヤなことは忘れてしまえばいいねんで」と10才の男の子が教えてくれました。彼の言う通りです。思わず笑ったら、モヤモヤが飛んで行ってしまいました。この男の子、なかなか面白い。半年ほど前だったでしょうか、話の流れで「さすがにぼくはもう子どもじゃないからね」と言った時がありました。「子どもじゃなかったらなぁに?」と聞くと、堂々と胸を張ってこう返事をしました。「しょーねん!」(点) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2022年3月号  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2022年3月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円