日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2022年1月号   <<表紙イラスト>> 大きな虎が「ヒック」としゃっくりをして眠そうにしています。 虎の左脇に抱えられた犬のポチは身動きが取れず慌てています。 「去年の“トラ”はあかんかったからな…」と、ぼやく虎のそばには倒れた徳利とおちょこ。 そばにいた女の子とお父さんは「やけ酒やね…」とその様子を見ています。    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●センターの頁(2〜4頁)   ●感謝報告(5〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆今年度のボランティア交流会・感謝式典を開催  当館では、毎年3月、ボランティアの皆様に日頃の感謝を表すとともに、交流を深める一日を設けています。残念ながら2020年は中止、2021年はオンライン開催となりましたが、2022年は下記の通り通常開催を実現したいと思います。  日時 2022年3月10日(木)13時〜16時  会場 玉水記念館大ホール  内容 感謝式典=活動歴20年・30年の方に感謝状贈呈、記念演奏=箏曲家竹内一(はじめ)さん、他  竹内さんは当館の利用者。箏曲の指導・演奏活動の他、点字楽譜もご指導いただいています。  当日は会食やバザーを無くし、定員2分の1以下で開催します。万一、コロナ禍で通常開催が困難になった場合は、オンライン開催とし、記念講演は別の内容を行います。  参加申込は、1月18日(火)以降に所属の各係か総務係(電話06-6441-0015)へお願いします。  ◆サービス部の開室・受付は10時〜16時  エンジョイ!グッズサロンと図書・情報係の開室・受付は12月から10時〜16時に拡大しました。但しサロンへの来室は事前予約をお願いします。  ◆専門講習会「テキストデイジー編集コース」開講  アクセシブルな電子書籍「テキストデイジー」の編集技術を、デイジー編集ソフトウェアPLEXTALK Producerを使用して学びます。  受講資格 日常的にWindowsパソコンを使用している方、講習会修了後、所属する施設・団体でボランティア活動ができる方  日程 2月5日(土)と2月12日(土)の全2回、10時〜16時  定員 10人 受講料 1000円(資料代)  申込 当館HP(http://www.lighthouse.or.jp/iccb/informations/informations-32305/)をご確認の上、1月5日(水曜)必着でお申込ください。  問合せ先 当館製作部電子書籍ユニット(電話06-6441-1035)  ◆1月の休館・休室について  1月6日(木)=サービス・ボランティア活動再開  1月8日(土)=製作部休室(10日月曜指定祝日の振替)  1月11日(火)=エンジョイ!グッズサロンと図書貸出休室(10日月曜指定祝日の振替)  1月13日(第2木曜)=エンジョイ!グッズサロンと図書貸出は書庫・在庫整理日のため休室。    <<センターの頁>>(2〜4頁)   ●新年のご挨拶〜日本ライトハウス創業百周年を迎えて  ◆百周年を新たな出発点とするために 館長 竹下 亘  年頭に当たり、日頃のご支援とご協力に感謝するとともに、本年が皆様にとって、より良い年となりますようにお祈り申し上げます。  本年、日本ライトハウスは創業百周年を迎えることになりました。当法人の創業は、1922年(大正11年)、岩橋武夫がエスペラントの学習書を点字出版したことに始まります。従って、百周年は、視覚障害者の方々への情報提供の歴史と言うことが出来ます。加えて、創業から10年後の1932年(昭和7年)には、岩橋武夫が自宅で点字図書の無料貸出を開始しましたので、今年は当館の事業開始九十周年にも当たります。  ここまで辿り着けたのは、長年に亘る数多くの利用者と、本誌にお名前と実績を刻んできたボランティアや支援者の皆様のお力添えのお陰です。職員一同、心からお礼申し上げます。  私どもは、この百周年を単なる祝い事に終わらせることなく、これまでの歴史をふり返り、現在の到達点と課題を吟味して、これからの新たな出発点としたいと願っています。百周年の記念事業は目下計画中ですが、決まり次第お知らせしますので、ぜひご注目下さい。 (写真=情報文化センターのビルを背景に左から林田部長、橋口専務、竹下館長、久保田部長)  ◆図書製作のスキルアップを目指して 製作部長 久保田 文(あや)  当館製作部の今年のテーマは、「育成」です。  製作部では、400人を越えるボランティアの皆様が点字図書、録音図書、電子書籍の製作に打ち込んでくださっていますが、来館による活動の制限が長引く中、ボランティアの方々のスキルアップを支援する取り組みが十分できていないことが大きな課題になっています。  これを補うため、私どもは早期にZoomを導入し、こまめな打ち合わせや全国規模の講習会を開催するなど、オンラインのメリットを活用する努力を続けてきました。しかし、約2年を経た今、当館の誇る製作技術はボランティアの皆様お一人お一人が、職員や仲間と直接言葉を交わすことで得られる知識や気づきを、時間をかけて自分のものにして来られた成果だったと気づかされています。  今年は製作部の職員一同、初心に返り、ボランティアの方々と共にスキルアップする道を模索し、日本ライトハウスならではの質の高い図書の製作に努めて参ります。  ◆ピンチをチャンスに! サービス部長 林田 茂  「失ったものを数えるな。残されたものを最大限に生かせ。」昨年盛り上がったパラリンピックの父と言われるグッドマン博士の言葉です。私たちサービス部の職員一同は、コロナ禍により厳しい制限を受ける中、皆で知恵を出し合い、サービス提供を進めています。  昨年は幅広い情報発信の展開に取り組み、特にYouTubeの「ニポラチャンネル」では43番組を制作。スマホのアプリや機器・用具に関すること、白杖の使い方やガイドの仕方などを紹介しました。今ではチャンネル登録者が1300人を超え、テーマによっては1万回を超える視聴もありました。使い方はさまざまで、相談や電話の問い合わせとセットにしたり、講習前の予習用にしたり、今では利用者だけでなく、福祉関係者やボランティアの方々にも大事な情報ツールになっています。  今年も、厳しい状況下でも常に最善を考え、皆さんと一緒に歩みを進めたいと願っています。   ●さわるとわかる わかるとかわる!〜民族学博物館特別展へ  10月号でもご紹介した国立民族学博物館の特別展「ユニバーサル・ミュージアム〜さわる!“触”の大博覧会」を3人の職員で観覧しました。この特別展は、同館の広瀬浩二郎准教授がコロナ禍に抗し、「それでも僕たちは『濃厚接触』を続ける!」をテーマに企画。すべて触ることができる造形作品や文化財など280点を集めたユニークな博覧会でした。さまざまな素材と手法を用いた作品を通して体験した“触れ合い”文化の感想と様子をご報告します。(総務係 徳嶋 薫)  ◆全身がぞわぞわと泡立つ“触”の体験を堪能 大下 歩(おおした あゆみ)  その作品を見た瞬間、一緒に行ったお2人がたじろぐのが分かりました。私は俄然、興味を持ちました。いったい何があるんだろう?両手を伸ばして触ってみます。  それは、痩せた人間の体でした。1…2…3体。身を寄せ合っています。1体の足の先がなかったり、あちこち肌がえぐれていたりするのをいぶかりながら、上に向かって手を滑らせた私は、すぐに「ひっ!」とのけぞりました。  3体の首から上が合体し、大きな岩のようになっていたのです。しかもただの岩ではありません。胡桃大の丸っこい石を、でたらめに集めて固めたような。神社などで見る「さざれ石」の様相です。  その無秩序な感じが、私の「鳥肌スイッチ」を直撃しました。全身がぞわぞわと泡立ちます。それでいて不思議な磁力があり、怖いもの見たさにそろそろと手を伸ばしては、あわててひっこめることを繰り返しました。  3人で作品を鑑賞して気づいたのは、手で触るときと目で見るときとで、全体像を把握するプロセスが違うことです。下から上へ体を触っていって、岩のような頭部分には最後に行き着いた私に対し、他のお2人はまず頭部分がバーンと視界に飛び込んで来て、体の細かい部分には後から気づかれたようでした。  とはいえその頭部分は、そんな感じ方の違いをものともせずに、3人ともを見事にギョッとさせてくれました。お互いの感想をシェアすることで、「あ、ほんとだ!」「え、そうなの?」とおしゃべりも弾みました。 (写真=文中に登場する彫像「エクトプラズムの群像」を触る大下職員)  ◆「さわる」尊さ、「さわる」面白さ 宇田 佑香  施設に入って最初に待ち受けていたのが、歴史の教科書ではおなじみ、興福寺にある「仏頭」のレプリカです。私は仏像が好きで、少しマニア的なところがあるので、初っ端からテンションが上がってしまいました。幼い頃、両親に連れられて興福寺に現物を見に行ったことがあるのですが、もちろん触るのはご法度。少しでも手を伸ばそうものなら、親に手をひっぱたかれた記憶があります。レプリカではありますが、幼い頃に触ることができなかった「仏頭」に手が触れた瞬間、夢が叶ったような幸福感に包まれました。実際に触れてみると、眉から鼻先にかけての弧のアーチが見た目以上にしなやかで、深い感動を覚えました。  この感動を胸に観覧を進めていくと、2階に差しかかった辺りで、今度は数体の仏像が並んでいるのが目に入りました。全身が黒褐色で、一見シンプルに見えた仏像の足元に触れてみると、あらびっくり!念珠のような装飾品を何重もまとっていることに気づきました。続いて、金色のメッキが施されている仏像に触ってみると、曲線的で丸みのある手触りで、とてもやわらかい印象を受けました。見たときの印象と、触ったあとの印象が、全く違っていて、そのギャップに驚かされました。  今回の特別展で、「さわる」ことの尊さ、「さわって」気づく面白さを知ることができました。コロナ禍により様々な接触がはばかられるなか、「さわる」ことの魅力を知る機会を与えられたことをとても嬉しく思います。  ◆空想の自宅に置く石 徳嶋 薫  印象に残っているのはセクション1「彫刻を超克する」に展示されていた、世界中から集められたハートの形をした石たちです。一番大きい物で全長約60センチ、小さい物で約20センチくらいでしたでしょうか、ハートの形と一言に言っても、採掘されたときから形はほとんど変わっていないようで、細長かったり、厚みがあったり、ハートというよりは動物の骨のような形をしていたり…。床に設置されていたので、触るときは自然としゃがむ姿勢になりました。石の表面は研磨されていて、元の石の感触がほとんど分からなかったのが少し残念でしたが、つるつるしていて丸みを帯びていて、触っているうちに段々と愛着が沸いてしまいました。  そのせいか「この中で、もし自分の家の中に置くならどの石にするか」という話題になり、「これは大きいから夏の暑い日に、手や足を乗せてヒンヤリする用の石で、こっちは平べったいから上に花瓶を乗せて玄関に置いたら素敵かも」など空想の話で盛り上がりました。私は普段美術館に行っても、「展示されている絵を家に飾ったら」だとか、「この絵を部屋に飾りたい」等の考えはしないタイプなのですが、触ったことから身近に感じられたのかもしれません。  入場してから序盤は、展示品にさわるとき、心のどこかで遠慮している気持ちがありましたが、ここからさわることへのハードルが下がり、以降の展覧も楽しめました。   ●「ニポラチャンネル」をご活用ください   ボランティア活動に役立つ情報も製作・登録中!  当館サービス部では、オンライン動画共有サイトYouTubeに「ニポラチャンネル」を開設し、スマホの使い方やアプリの情報、白杖、時計、拡大読書器、ルーペなどの関連機器、グッズの使い方など、視覚障害者の方や支援者の方から問い合わせの多い事柄をテーマに5分から15分程度の情報番組を提供しています。  昨年12月現在、動画数は43に達し、続々と新しい番組を製作・登録しています。ここでは、その中から、ボランティアの方に特に役立ちそうなジャンルの動画をご紹介します。  ◆点字・録音図書に関する動画 *点字・録音(デイジー)図書の借り方について *プレクストーク〜PTR3とPTN3 基本編 *プレクストーク〜リンクポケット *プレクストーク〜録音の仕方や追加オプション機能について *ボイスオブデイジー番外編〜サピエ図書館ホームページから図書を検索・ダウンロード  ◆白杖歩行に関する動画 *白杖の紹介 *白杖を使って歩いてみよう *視覚障害者のガイド(手引き)の仕方  ◆その他  その他のジャンルとしては、視覚障害者の方に大好評の「視覚障害者向けの機器や用具」(16番組:拡大読書器やルーペ等の用具の紹介、機器の比較等)や、「iPhone(アプリ)に関する動画」(25番組:iPhoneの基本設定、操作やアプリ紹介等)もあります。  「ニポラチャンネル」をご覧になるには、当館のホームページ(http://www.lighthouse.or.jp/iccb/)からアクセスするか、インターネットのGoogleやYahooなどの検索エンジンで「ニポラチャンネル」と検索すると上位にヒットします。  動画一覧で表示される番組の並びはアトランダムですので、チャンネルのトップ画面から「再生リスト」をクリックすると、上記の「ジャンル」別に再生・視聴できます。チャンネルを登録しておくと、動画が探しやすく、更新のお知らせ機能もありますので、ぜひご登録下さい。チャンネルの利用は無料です。   ●報告の頁(8頁)  ◆講演会「読書BF法とボランティア活動」に70人  当館では昨年12月11日、当館のボランティアを対象に標題の特別講演会を開催。竹下館長の「読書BF法の内実とボランティア活動の価値」と、福井副館長の「AIには出来ない!意味内容を伝える点訳・音訳・電子書籍」をZoomと会場参加でおこなったところ、合計70人が参加しました。竹下は読書BF法の問題点を、福井はAI(人工知能)の限界を指摘した上で、共に、書籍や文書を正しく点字や音声、電子書籍に置き換えるには、人の知恵を絞った工夫と努力が不可欠なことを強調し、ボランティアのさらなる研鑽と協力をお願いしました。福井の講演は本誌2月号に掲載する予定ですので、ご期待ください。 (写真=講演会「読書BF法とボランティア活動」の会場の様子。前方のスクリーンにZoomの画面が共有されている。)  ◆「暗所視支援眼鏡」を今年も全国9校に寄贈  日本ライトハウスでは「盲学校の生徒に星空を」をスローガンに、今年も暗所視支援眼鏡HOYA MW10(テン) HiKARI(ヒカリ)のクラウドファンディング(インターネットによる寄附募集)を行ったところ、全国84人の方から合計3,178,000円のご寄附を頂き、9校に寄贈することができました。この事業は故岡田弥(あまね)サービス部長が始めたもので3年3回目。寄贈先は合計26校になり、今後も希望校に贈り続けたいと考えています。ご厚志を賜った皆様に心からお礼申し上げます。  今回の寄贈先は以下の9校。静岡県立沼津視覚特別支援学校、北海道札幌視覚支援学校、群馬県立盲学校、山梨県立盲学校、大分県立盲学校、愛知県立名古屋盲学校、愛知県立岡崎盲学校、岡山県立岡山盲学校、岐阜県立岐阜盲学校。 あゆみ 【12月】 2日 全視情協サピエ研修会(〜3日) 11日 特別講演会・読書BF法とボランティア活動 16日 見学:福岡市立点字図書館 18日 オープンデー(館内見学日、7人) 24日 サービス最終日 25日 ボランティア活動最終日 28日 仕事納め 予定 【1月】 5日 仕事始め 6日 全館ボランティア活動・サービス再開 8日 製作部休室(10日月曜指定祝日振替) 11日 サービス部休室(10日月曜指定祝日振替) 13日 ボランティア世話人会  エンジョイ!グッズサロンと図書貸出休室(書庫・在庫整理日) 15日 オープンデー(館内見学日・要予約) 20日 見学:大阪医専 編集後記 新しい年の目標は決めましたか?去年の私の目標のひとつに、洗剤を使う量をなるべく減らそう、というのがありました。SDGsも考えて、今年も継続しようと思います。洗剤を減らすことを意識すれば、すすぎのときなどに無駄に水を使う量も減らせるかもしれません。人と自然に優しい洗剤を見かけるようになりました。ココナッツやヤシの実など植物油脂を原料に、台所用にも衣料用にも、トイレやお風呂、家具、洗車など住居用にも共通して使えるようです。今までそれぞれ使い分けていたのはなんだったのか?SDGsの17の目標の中の「14・海の豊かさを守ろう」「15・陸の豊かさも守ろう」を意識して一年を送りたいと思います。(一) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2022年1月号  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2022年1月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円