日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2021年10月号   <<表紙イラスト>> 女の子が「“まつたけ”もろた夢見たよ〜♪」と、かごに入った5本の輝く松茸を見て、ハートマークを飛ばしている。 犬のポチは「正夢やったらええけど…ワン」と前足で頭をかきながら困り顔。    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●センターの頁(2〜3頁)   ●感謝報告(4〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆「トークイベント」はYouTubeで視聴できます  「トークイベント〜どこまで言っても良いん会」はいよいよ10月9日(土)・10日(日)開催です。Zoomによる参加は10月6日が締切ですが、視聴だけならYouTubeライブでもご覧いただけます。次のURLかQRコードからお入りください。https://bit.ly/nlt2021z  【スケジュール】  9日10:00〜11:30=@最新のウエアラブルデバイス、13:00〜14:30(前号の開始時刻は誤りでした)=A視覚障害者向けの機器・用具のお悩み相談、15:30〜17:00=B移動支援の今そこにある未来。  10日10:00〜11:30=CiPhoneやアプリ特集(初級編)、13:00〜14:30=D同(中級・応用編)。  ◆専門点訳・音訳講習会の日程変更について  緊急事態宣言のため、3つの専門講習会の開催日程を以下のように延期しました。 *点字編集システム実践コース=11月24日(水)・25日(木) *小説の読み方コース=10月20日(水)/21日(木) *テキストデータ作成コース=10月5日(火)/23日(土)  ◆みんぱくで「さわる!“触”の大博覧会」  吹田市の国立民族学博物館では、特別展「ユニバーサル・ミュージアム〜さわる!“触”の大博覧会」を11月30日まで開催中です。大きな特徴は、すべての展示品を触ることができること。同館准教授、広瀬浩二郎(ひろせ こうじろう)氏の企画の下、「歴史にさわる」「風景にさわる」「音にさわる」など6テーマに分けて、さまざまな素材と手法を用いた作品を集め、「視覚を使えない不自由」ではなく、「視覚を使わない解放感」の体験を呼びかけています。コロナ禍で失われた“触れあい”の文化に手を伸ばしてみませんか。水曜休館(11月3日は開館し4日休館)。観覧料880円(障害者手帳所持者と同伴者は無料)。オンライン予約を推奨。ご来場の際は同館のホームページ(https://www.minpaku.ac.jp/)をご確認下さい。  ◆10月の休館について  エンジョイ!グッズサロンと図書貸出は以下の通り休室します。その他は暦通りです。  10月9日(土)=トークイベント開催のため  10月12日(火)=10日(日)トークイベントの振替  10月14日(木)=書庫・在庫整理日    <<センターの頁>>(2〜3頁)   ●減ることのない「プライベートサービス」への期待   個人の依頼に応えて点訳、音訳、テキストデータ化の取り組みを  当館では、ボランティアの皆様の尽力で、点字・録音の図書や雑誌、アクセシブルな電子書籍を蔵書化し、貸出やサピエ図書館等から提供しているのと並行して、個人の利用者のご依頼に応え、希望される本や書類などを点訳、音訳、またはテキストデータ化する「プライベートサービス」をおこなっています。年間7万点余りの出版物の内、今なお点訳・音訳・電子書籍化されるのは2万点に満たない中、「プライベートサービス」に期待される役割は非常に大きなものがあります。その製作・提供現状と今後の課題をお伝えしたいと思います。(総務係主任 谷口由紀)  ◆プライベートサービスの概要  当館の点訳、音訳、テキストデータ化のプライベートサービスの対象は、大阪府内に在住・在勤・在学の視覚障害等の方で、製作を希望する資料は、ご本人にご用意いただきます。  製作費用は無料ですが、完成した点字の印刷やCDでのお渡しは、実費をいただいています。  受付は当館5階サービス部(エンジョイ!グッズサロン)で、直接ご来館もしくは資料を郵送いただき、ご相談に応えています。  また、サピエ図書館に登録されているパソコン点訳図書データの点字打ち出しやフロッピーディスクでの提供もしています。  ◆利用(提供)件数とご依頼の内容  2020年度の利用件数は122件(点訳25件、音訳23件、テキスト化14件、点字印刷60件)でした。新型コロナウイルスの影響で図書・情報サービスが一時休止したこともあり、件数は2019年度の208件と比べ大幅に減りましたが、内容は専門書の依頼が多く、1件1件に高い技術と長時間の取り組みが必要なものとなっていました。  ご依頼内容には以下のようなものがあります。  ・学習参考書、問題集  ・資格取得のためのテキスト  ・取扱説明書  ・社会学、宗教、工学など専門分野の資料  ・楽譜など  製作のご依頼は新しい図書ばかりではありません。古い本はサピエ図書館を探しても見つからないことも多く、「昔読んだ本をもう一度読みたい」と製作を依頼される場合もあります。また、「長年大切に持っていた(墨字の)図書がやっと読めた」と喜ばれる利用者の方もおられました。  ◆「1日も早くお渡しすること」を目指して  特に取扱説明書や学習参考書などは、「1日も早く必要」という場合が少なくありません。  プライベートサービスでは、利用者の方が必要な時機に提供できることを目指し、蔵書の製作とは異なる段取りで製作をしています。  その一つの取り組みとして、対面リーディングサービスとの連携があります。ご希望の本を持ってきていただき、対面で目次を確認。より優先度の高い部分を先に確認してから製作するなどの対応もしています。ただし、現在はコロナ禍で対面リーディングサービスが休止中のため、この方法が取れないのが残念です。  ◆多様なニーズは今後も継続  全国の視覚障害者情報提供施設でもほとんどが点訳、音訳等のプライベートサービスを実施しています。当館でおこなっているサービス以外にも、カセットコピーや点字シールの製作など、多様な依頼が寄せられているようです。  今年6月、「改正障害者差別解消法」が公布されました。今後は公共団体だけでなく民間事業者にも「合理的配慮」の提供が義務化され、発行する印刷物等を視覚障害者等が読める形で提供することが求められるようになりますが、細やかな対応を必要とする「生活にすぐ必要な書類・資料」等の点訳、音訳、テキストデータ化のご依頼は、まだまだ減ることはありません。  今後もプライベート製作のご相談をした際は、ぜひご協力くださるようにお願いいたします。   ● いつでも、どこでも「新しいこと」との出会いを楽しみに!  点字製作係 大下 歩(おおした あゆみ)  当館では、今春、新しい職員を迎えました。英語と西語が堪能。“お笑い”が大好きな、館内最年少の新人です。コロナ禍でボランティアの皆さんはもちろん、職員との交流も限られる中、日々、点字図書の製作に励んでいます。彼女のみずみずしい自己紹介をお届けします。(竹下)  ◆大阪初日の異文化体験は「わらびもち」売り  「わらびいーもちー。冷めたーいわらびもち」  窓の外から流れてきた聞きなれない呼び声に、私は引っ越しの後片付けを放り出してマンションを飛び出しました。耳をそばだてながらウロウロするうち、すぐ近くの公園で音の正体を発見!  わらびもちを売るキッチンカーでした。  「車体は迷彩柄で、荷台に黄色い壁と屋根が付いてるよ」と、一緒に来ていた母。大きなお玉を持ったおじさんが、わらびもちを桶からがっぽり掬ってはパックに詰めています。  迷わず一つ買い求めながら、私は体の芯がカッと熱くなるのを感じていました。鼓動が速まり、あらゆる細胞が活性化していくようです。  何か今まで知らなかった新しい物に出くわしたとき、決まって訪れる感覚です。  そう、わらびもちを売る車なんて私の地元にはありませんでした。同じ日本なのに、引っ越し初日にして異文化に遭遇です。そしてそれは、私の望むところでした。  私はこの6月、神奈川県の実家を離れ、日本ライトハウス情報文化センターで触読校正のお仕事を始めました。点字の本を作ってみたかったのはもちろんですが、根っこには「新しいことに出会いたい!」という衝動がありました。今までやったことのないお仕事をしてみたい。せっかくならこれまで住んだことのない土地で。何か新しいことを知った時って、栄養満点のご飯を食べた時みたいに、血液が浄化されて健康になる気がするのです。  ◆コスタリカではナマケモノと仰天の出会い  思えば2年前、ダスキン愛の輪基金の海外研修生として中米コスタリカに一年留学した時も、バネになったのはそんな漠然とした衝動でした。そして、実際、そこでの日々は、期待をはるかに超える「新しいこと」に満ち満ちていました。  一番初めの忘れられない出来事は、インターン先のオフィスに野生のナマケモノが遊びに来たことです。一生の大半を高い木の上で寝て過ごす動物なのに、オフィスのそばの金網、それも私の顔の高さにまで下りてきてくれました。  急いで駆け寄り、おそるおそる伸ばした手の先にその体が触れた時、感動のあまりヘナヘナと地面にしゃがみこんだことを覚えています。  頭の先からお尻まで、70センチぐらいでしょうか。すんなりとした手足で、背中を下にして金網にぶらさがっていました。午前中降ったスコールのせいで全身の長い毛がごわごわと固まっているのに、手足の先の3本の太いかぎ爪だけは水をはじいて、まるでお湯で戻す前の乾燥マカロニのような手触りでした。  「ナマケモノが来るなんて初めてだよ」。オフィスで長く働く先輩たちに言われました。コスタリカの土地に歓迎してもらえたようで、とてもうれしかったです。 (写真)屋外に設置されている金網ににぶら下がっているナマケモノに手を伸ばす大下職員  ◆「新しいこと」を一つずつ楽しみながら  この原稿が皆さんの目に触れる頃は、ライトハウスに来て4ヶ月になります。まだまだわからないことだらけで、先輩方から毎日学ばせていただいています。これからも、「新しいこと」を一つずつ楽しみながら成長していきたいです。   ●報告の頁(8頁)  ◆8月19日から9月末(予定)まで開館を縮小   大阪府における4回目の緊急事態宣言に伴い、8月19日(木)から当館の閉館時刻を16時30分に早め、館内活動を一部休止するなどの対応を取りました。緊急事態宣言が終了した場合、10月から講習会と会議室利用などを定員2分の1以下で再開する予定ですが、今後も感染状況によって随時対応を変えますので、ご了承ください。  ◆10月から普通郵便の配達日が縮小へ  日本郵便株式会社は、今月から「普通扱いの郵便物、ゆうメール」の土曜日配達を休止し、「お届け日数」も段階的に1日程度繰り下げると発表しました。当館では、火曜日から土曜日、視覚障害利用者に点字・録音図書を発送していますが、特に週の後半に貸出申込があった場合、配達が土・日を挟んで、月曜日以降になる可能性がある上、来年1月以降は、配達が現在より1日程度遅れるとのことです。視覚障害者の方々の読書が不便になるだけでなく、当館とボランティアの皆さんとの書類送付にも影響がありますので、ご承知おきください。 あゆみ 【8月】 8日〜16日 全館夏期休館(11日は部分開館) 【9月】 2日 ボランティア世話人会 9日 グッズサロンと図書貸出休室(整理日) 21日 グッズサロンと図書貸出休室(20日の振替) 23日 全館休館(祝日) 予定 【10月】 2日 オープンデー(館内見学日・要予約) 9日・10日 オンライントークイベント〜全国ロービジョンフェア2021 12日 グッズサロンと図書貸出休室(10日の振替) 13日〜14日 全視情協高知大会(オンライン) 14日 グッズサロンと図書貸出休室(整理日) 編集後記 1年半もの間、家族や友人との交流もままならない中、時折、海外のわが子のような青年から連絡が来るのはとても嬉しいことです。プエルトリコのエライネは、30年前、キューバで親しくなった図書館司書の娘ですが、自著を点字にしたいという相談があり、昨年、ダスキン研修で来館したサモアのアリ君からは、持ち帰った日本の点字器具や資料を自国の若者達に紹介しているとの報告が。また、2017年に来館したインドのラムダス君からは4年ぶりに連絡があり、新妻と赤ちゃん共に元気で、銀行勤務の傍ら、盲学校でボランティアで日本語を教えているとのこと。彼らと再会して親しく語り合える日が1日も早く来ますように。(竹) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2021年10月号  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2021年10月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円