日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2021年8・9月号   <<表紙イラスト>> スイカ割りのイラストです。 入道雲が見える海辺の砂浜で、水玉模様のワンピースを着た女の子が目隠しをして、棒を振り上げながら「スイカ、どこ…?」と、スイカと反対方向に歩いています。女の子の歩く先には、女の子から逃げるカニと、砂に首から上だけ出して埋まっている男の子。男の子はスイカと間違えられそうになって「ぎょぎょっ!」と驚いて頭にかけているサングラスを落としそうになっています。犬のポチは女の子を止めようとワンピースの裾を口で引っ張っています。    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●ボランティアの頁(2頁)   ●利用者の頁(3頁)   ●感謝報告(4〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆グッズサロン20周年記念企画「トークイベント〜全国ロービジョンフェア2021」を開催  当館では、社会福祉法人読売 光と愛の事業団の共催で、10月9日(土)・10日(日)、標題行事を開催。Zoomミーティングを使い、話題の機器や用具、アプリなどの情報を盛り込んだトークイベント「どこまで言っても良いん会2021」を実施。5つのテーマを設け、全国から多彩なゲストを迎えて、最新情報の提供と双方向の意見交換を行います。詳しくは当館ホームページ(http://www.lighthouse.or.jp/iccb/)内の「エンジョイ!グッズサロン20thトークイベント特設サイト」か、本誌同封のチラシをご覧ください。  【主なプログラム】  9日(土)10:00〜11:30=テーマ@「最新のウエアラブルデバイス」、13:30〜14:30=テーマA「視覚障害者向けの機器・用具のお悩み相談」、15:30〜17:00=テーマB「移動支援の今そこにある未来」。  10日(日)10:00〜11:30=テーマC「iPhoneやアプリ特集(初級編)」、13:00〜14:30=テーマD「iPhoneやアプリ特集(中級・応用編)」。  ◆「警報」発表時の館内活動の休止について  大阪市内に暴風警報か特別警報が出た場合、以下のように館内のサービスとボランティア活動を休止させていただきます(職員は可能な限り出勤し業務を行います)。  @午前7時現在、大阪市内に暴風警報か特別警報が出ている場合=午後1時まで休止  A午前10時現在、出ている場合=全日休止  B午前10時以降に出た場合=出た時点で休止  Cその他、館長が危険と判断した場合  ◆8〜9月の休館・休室について  8月8日(日)〜16日(月)=エンジョイ!グッズサロンと図書貸出は夏期休室。この期間中、8月11日(水)のみ総務係は営業。  9月9日(第2木曜)=エンジョイ!グッズサロンと図書貸出は書庫・在庫整理日のため休室。  9月21日(火)=エンジョイ!グッズサロンと図書貸出は、20日月曜指定祝日の振替で休室。  9月23日(木・祝日)=全館休館。  ※本号は合併号。次号の発行は10月1日です。  ◆「新版UEBベーシックマスター 英語点訳の基礎」  2016年の初版発行以来、全国の点訳者から寄せられた質問を元に、いっそう分かりやすい丁寧な解説を目指し、本編の記述を随所で充実させた新版です(24頁増)。2019・2020年のUEB規則の小改訂にも対応。点訳練習文の多くを新しくし、ルールの理解を確実にする「ヒント」以外に新たに「語注」を付して、さらに学びやすいテキストになりました。UEBの記号を一枚にまとめた「別表」付き。UEBは勉強したことがあるけれど、もう一度基礎がためをしたいという方にもお勧めです。福井哲也著、A4判232頁、税込2,900円。解答集は点字版のみで750円。ご購入は、当館エンジョイ!グッズサロン(電話06-6441-0039)まで。  ◆専門点訳・音訳の講習会を9月に開講  毎日新聞大阪社会事業団と当館主催の専門講習会を以下の通り開催します。 ◆専門点訳「点字編集システム」実践コース  「点字編集システム」を使用されている方を対象に、便利な操作方法や校正機能について学びます。  日程 9月8日(水)、9日(木)の全2回、10時〜15時  受講料 1,000円  申込締切 8月27日(金)  詳しくは点字製作係(電話06-6441-1028)まで。 ◆専門音訳「小説の読み方」コース  小説や児童書などの会話文について、内容が伝わりやすい読み方の実技を1日で講習します。  日程 9月29日(水)、10月7日(木) 全1回を2回開催、10時〜15時  受講料 1,400円  申込締切 8月31日(火)  詳しくは録音製作係(電話06-6441-1017)まで。    <<ボランティアの頁>>(2頁)   ●点字の基本と、ロービジョン者の「見えにくさ」の一端を学ぶ   ボランティア友の会「ガイド体験会」がオンラインで開催  ボランティア友の会主催の「ガイド体験会」が6月24日に行われました。コロナ禍の中、ガイド体験の代わりに企画したZoomによる2つのミニ研修に、ボランティアと職員合わせて16人が参加。点字名刺の作成体験やロービジョンの方がどのように見えているのかを画像資料から学び、視覚障害者への理解を深めました。当日の報告を友の会世話人会代表の笠松幸彦(かさまつ ゆきひこ)さんに書いていただきました。  ◆点字名刺完成!…のはずが?  一つ目の研修「自分の点字名刺を作ってみよう」では、簡易点字器(プラスチック製の携帯型)を使って自分の名刺を作りました。6点のガイドが並んでいる点字器に紙を挟んで固定し、点筆(てんぴつ)という道具で紙に凹凸をつけて点字を打つことができます。点字を打つときの「プチッ」という音に快感を覚えたという人も。基本になる「あいうえお」の5文字から始まり、濁音や拗音(小さい「やゆよ」)の打ち方を教わりました。  点字の基本を教わったら、いよいよ自分の名前を名刺サイズのカードに打っていきます。打つ場所を間違えないように気を付けていても、打ってはいけないところに点を打ってしまったり、姓と名の間に1マス開けるのを忘れたり…。名前だけのシンプルな点字名刺が完成したら、パソコンのカメラに近づけて、講師が正しく打てているかをチェック。1番多かった打ち間違いは点字の凹と凸を間違えた鏡文字。名前を打ったはずが、意味不明な文字列になっていたりして、思わず笑いが起きる場面もありました。この6点を指で読む(目視でも)ことの難しさ、それと同時に点字は、視覚障害者にとってなくてはならない文字であることを実感しました。講師を務めてくださった友の会世話人の大安(オオヤス)徹雄さん、お疲れさまでした。 (写真)簡易点字器(希望者には貸し出します)と、点字の五十音表と点字の打ち方が書かれた資料「点字名刺の打ち方」(希望者には差し上げます。)  ◆画像資料を通して知る「見えにくい」世界  二つ目の研修はエンジョイ!グッズサロンの職員花田潤子さんによる「ロービジョン者の見えにくさを知ろう」。画像資料を見ながら、ロービジョンの方がどのように見えているのか、どう見えにくいのかを学びました。白濁や羞明(しゅうめい。まぶしくて見えない)、視野狭窄(一部分しか見えない)など、知識としては知っていたことも具体的な視界の例を見ると理解が深まりました。視野が欠けている状態は、視野の欠損部分が真っ暗になるわけではなく、そこにあるものを認識できないことなど、初めて知ったことも多くありました。その他、ロービジョンの見え方を自身で疑似体験できるスマホの見え方紹介アプリや、ロービジョン体験キット(エンジョイ!グッズサロンで販売中)を紹介いただきました。ただし、体験したことで視覚障害者の気持ちや全てを理解した気になるのは危険だということも同時に教わりました。ロービジョンの方の見え方は人それぞれで、「(この部分は)見えているようだな」と思っても実際は見えていなかったり、見えていないことにご本人が気づいていないことも多いからです。  「困っている方をみかけたらお声がけを(ガイドの際には周りの環境の説明を)お願いします」「見にくい、見えないで困っている方がいらしたら、ぜひエンジョイ!グッズサロンをご紹介ください。実際に見て、聞いて、触っていただけます」という情報もお伝えいただきました。  短い時間でしたが、楽しく和気あいあいとした、非常に充実した体験会でした。  ◆館より:今回はガイド体験を実施できませんでしたが、YouTubeの「ニポラチャンネル」第36回に「視覚障害者のガイド(手引き)の仕方」をアップしています。ぜひご覧ください。    <<利用者の頁>>(3頁)   ●西日本豪雨の被災で直面した困難と、求められる支援  山崎 克枝(やまさき かつえ)  今年の夏もまた、大きな自然災害が起こりました。災害時に一際大きな困難に直面するのは、障害のある方々です。そうした困難を少しでも理解し、今後の支援に繋げられるように、3年前の西日本豪雨の被災体験を、当館利用者の山崎さんにふりかえっていただきました。(竹下)  ◆突然の水害で奪われた平穏な暮らし  音と触覚とわずかな光の世界で長年生きてきた私は、岡山県倉敷市真備町の自宅でマッサージの治療院を営みながら、リタイアした夫と高校生の息子と平穏無事に暮らしていました。けれども、その生活は、2018年7月の西日本豪雨による水害によって、突如終わりました。  7月6日午後10時、真備町全域に避難指示が出たのを機に、夫の車で家族とともに自宅から最も近い避難所だった岡田小学校に避難しました。当初、翌日には帰宅できると思っていたのですが、再び自宅の敷地に足を踏み入れたのは、それから3日後でした。浸水の痕跡は平屋建ての家屋の天井下20cmに達していました。一泊のつもりの避難所滞在は、その後、市内のアパートに移るまでの一か月間続きました。  ◆避難所で直面した困難と、求められる支援  避難所では、係の人から「視覚障害」と書かれたゼッケンをもらい身に着けていましたが、困ったのは、自分が手助けを必要としていることを周囲にどう示せばいいかわからなかったことでした。家族に頼れない状況下で、避難所断水時のトイレの用足し後の始末を手伝ってもらいたいと思っても、介助を頼むことのできる運営スタッフはどこにいるかわからず、面識のない周囲の避難者にそれを頼むのは抵抗がありました。結局、限界まで我慢した挙句、半狂乱で叫んで助けを求めました。その翌朝、知り合いのSさん夫婦の助言で、人の多い体育館からトイレがすぐ隣にある3階の教室に移りました。岡山県視覚障害者センターに電話で、白杖を持たずに避難したことを伝えると、その日のうちに白杖が届きました。夜になって3階の水道だけは復旧されたのはせめてもの幸運でした。  自宅の片づけは夫と息子ですることになりました。私は避難所を当面の仮住まいにと希望しました。食事や日用品が供給される避難所は、情報も確保しやすく、周囲に人がいるので私には過ごしやすいだろうという判断からでした。  早速、運営側に要望して、避難所内の配置説明をしてもらい、迷いながらも避難所内を一人で移動できるようになりました。弱ったのは突然の頻繁な記憶障害で、3階の教室に戻る途中の階段で急に自分の所在が分からなくなることでした。程なく、市の障害福祉課から支援の申し出があったので、階段の手すりにガムテープで階数のマーキングをしてもらいました。  被災直後の幸運は、避難所の運営に携わっていた校長先生が倉敷市役所内の教務課の住所を融通してくださったことです。避難所のあった真備町は郵便不通でしたが、郵送された支援物資を私は誰よりも早く受け取ることができました。  情報収集に関しては、国や県の支援情報は、岡山県視障センターや友人たちのメールで知ることができたのですが、こと避難所内での情報確保は期待したほどうまくできませんでした。掲示板の情報をメールなどで提供してほしいと要望したことがありましたが、それはかないませんでした。スマホのアプリを利用する方法は技術的には可能でしたが、実際には、常に倦怠感があってできませんでした。痛烈に感じたのは、被災して生じた問題を何でも相談できる総合インフォメーションセンターがあればどれほど良かったことだろう、ということでした。  ◆3年を経て、今も続く「たいへん」な日々  避難所を出て、私は家族と倉敷市内のアパートに移りました。引っ越ししてほどなく、岡山視覚障害者協会から歩行訓練士を派遣してもらえたので、比較的早く新しい環境になじむことができました。現在は、出身の関西に戻り、被災後、肺を患い車いす使用となった夫と二人で3年前の「たいへん」の続きを生きています。   ●報告の頁(8頁)  ◆館内ボランティア活動と会議室利用を再開  当館では、大阪府の緊急事態宣言に伴い4月22日(木)から6月19日(土)までボランティアの方々の館内活動と会議室利用等を休止しましたが、6月22日から定員2分の1以下での館内活動を再開。ひっそりしていた館内が息を吹き返しました。なんとか感染状況が悪化せず、顔を合わせての活動が続けられますよう願うばかりです。 (写真)6月下旬から再開された音訳講習会とICTサポート講習会の様子。受講者は間隔を空けて着席している。  ◆「ホーム転落をなくす」ポスター掲示のお願い  「ホーム転落をなくす会」(https://stoptenraku.jimdofree.com/)が啓発ポスターをリニューアルし、掲示や配付の協力を呼びかけています。イラストは当館のチャリティ事業にもご協力いただいている片岡朋子さんの作品です。A3とA2のポスターとポストカードがあります。当館3階窓口に置いていますので、お持ち帰り下さい。 (画像)「ホーム転落をなくす会」の啓発ポスター。視覚障害者への声かけのポイントがイラストで描かれている。  ◆友の会バザー物品の寄贈について  5月号でお諮りしたボランティア交流会のバザー用品は、長年お付き合いのある西区の地域活動支援センターcafe MILLO(カフェ ミロー)様にお引き取りいただきました。活動に役立ててくださるとのことですので、ご了承ください。 あゆみ 【7月】 10日 オープンデー(館内見学日、3人) 14日 専門点訳・点字編集システム入門コース開講 16日 法人新任職員研修(午前9人、午後10人) 24日 電子書籍・テキストデータ作成講習会開講 予定 【8月】 7日 オープンデー(館内見学日、要予約) 8日〜16日 全館夏期休館 11日は総務係のみ開室 【9月】 2日 ボランティア世話人会 8日 専門点訳・点字編集システム実践コース開講 9日 5階エンジョイ!グッズサロンと図書貸出休室(書庫・在庫整理日) 11日 オープンデー(館内見学日、要予約) 21日 5階エンジョイ!グッズサロンと図書貸出休室(20日祝日の振替) 23日 全館休館(祝日) 29日 専門音訳・小説の読み方コース開講 編集後記 今年の近畿地方は、梅雨入りは5月16日頃で観測以来一番早くなりましたが、梅雨明けはほぼ平年並みとなりました。梅雨が明けると朝から夏空が広がっています。夏をテーマにした曲がどんどん思い浮かびました。子供の頃に母と歌った「夏の思い出」、「われは海の子」…。井上陽水の「少年時代」、THE BOOMの「島唄」、サザンの「いとしのエリー」、ミスチルの「花火」、スピッツの「渚」、ゆずの「夏色」…。雨上がりには、「虹の彼方に」(Over the Rainbow、ミュージカル「オズの魔法使い」の劇中歌)も素敵な曲です。楽しく口ずさんで、コロナ禍の二度めの夏を乗り越えていきましょう。(一) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2021年8・9月号  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2021年8月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円