日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2021年4月号   <<表紙イラスト>> お花見のイラストです。 お父さん、お母さん、男の子、犬のポチが満開の桜の下でお花見をしている様子。皆でレジャーシートに座って大きなかごのお弁当箱のおかずを取り皿に分けて食べています。ポチは首にナプキンを巻いてお弁当の代わりに骨をくわえて嬉しそう。 桜の上にいるカラスは「早くこんな風景が見られるといいね…」と一家を眺めています。    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●利用者の頁(2〜3頁)   ●センターの頁(4頁)   ●感謝報告(5〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆館内ボランティア活動再開と感染対策のお願い  昨年12月から館内のボランティア活動と会議室利用を休止し、大変ご迷惑をおかけしました。大阪府の「緊急事態宣言」解除に伴い、3月3日から再開しましたが、以下をご確認ください。 ◆ボランティア活動の来館と会議室利用  「密」を避けるため、来館活動の日時指定や人数制限をお願いしています。所属係の指示に従ってご来館、会議室利用をお願いします。 ◆感染予防徹底のお願い  @来館前に体温を測り、平熱よりも高い時や体調に不安のある時は来館をお控えください。  A来館時は、石鹸によるこまめな手洗いと手指消毒をお願いします。  Bマスクの着用をお願いします。  C館内では他の方と出来るだけ距離を空け、食事中の会話や大きな声はお控えください。 ◆5階サービスフロアへのご来室について  視覚障害者機器・用具の相談・購入は、事前予約をお願いします。図書貸出係も含め電話受付と開室は当分の間、10時から15時(パソコンQ&Aとサピエサポートセンターの電話は16時まで)とさせていただきます。  ◆点訳ボランティア養成講習会(中級)を5月開講  当館で活動していただく点訳ボランティアを養成するため、標記の講習会を5月から開講します。すでに点字の基礎を学ばれた方を対象に、正確な点字図書の製作に必要な知識と技術を習得していただきます。  日程 5月11日から11月30日まで全15回 原則として隔週火曜日、10時〜12時  オリエンテーションと事前試験 4月20日(火)10時〜12時。必ずご参加ください。  受講料 無料(10月下旬までにWindowsパソコンと点訳用ソフト「点字編集システム」(有料)をご用意いただく必要があります。)  定員 10人  受講ご希望の方は要項(当館HPにも掲載)を請求の上、4月10日(土)までにお申し込み下さい。お問合せは点字製作係(電話06-6441-1028)まで。  ◆4月の休館・休室について  4月8日(第2木曜、書庫・在庫整理日)=5階サービスフロアと図書貸出サービス休止  4月29日(木・祝)=全館休館  ※5月2日〜5日の連休は暦通りです。    <<利用者の頁>>(2〜3頁)   ●「読書の喜び」のバトンを第二の故郷タイの人たちに   「アークどこでも本読み隊」を運営する堀内佳美さん  今年度のボランティア交流会では、タイで「アークどこでも本読み隊」を立ち上げ、10年以上、図書館運営と教育支援活動を展開している堀内佳美さんをゲストに迎え、高知のご自宅からオンラインで記念講演をしていただきました。講演では土佐弁も交えて、楽しく、興味深いお話を沢山伺いましたが、当日ご参加(ご視聴)いただけなかった皆様にも分かち合っていただくために、堀内さんに現地での活動の様子とご自身のこれまでの歩みや思いを綴っていただきました。  ◆「サワッディーカー(おはようございます)!」  コオロギたちが眠りにつき、山鳩やオニカッコウが鳴きかわし始める頃、バイクの音とともに、一人ずつ職員たちが出勤してきます。3月はまだ朝20度をきることも多いので、まずはみんなコーヒーやお茶を入れて温まります。朝日が差し込むオフィスの真正面はご近所の田んぼ。稲刈りの12月と7月頃には、刈りたての稲穂のうっとりするような香りが漂ってきます。  ここが私の職場、タイ王国北部、チェンマイ県プラオ郡にある「ランマイ図書館」です。2010年に私が立ち上げた非営利団体「アークどこでも本読み隊(通称アーク)」は、ここを拠点に、プラオ郡の人たちに本を貸し出したり、移動図書館サービスをおこなったりしています。また、周りの山にある2か所の村で、山岳少数民族の子どもたちのための幼児教育センター、「太陽の家」と「笑顔の家」も運営しています。  図書館に4人、センターに3人の常勤スタッフがいて、みんな タイ人です。一人だけいる日本人、かつ視覚障碍者である私の役割は、アークを支える7人のスタッフにハッピーに働いてもらえる職場を作ることと、活動の潤滑油である「お金」を探してくることです。  「目が見えないのに、タイの田舎で図書館?しかも全部墨字の本なんですか?すごいですね!」。私が自分の仕事について説明すると、日本人もタイ人もほとんど皆さんそう言って驚かれます。でも、私がこの地でこの仕事をするのは、自分ではとてもしっくりきているんです。  ◆原動力は今も受け続けている「読書の喜び」  高知県で育った幼少期、私の周りには、私と本をつないでくれる大人たちがいました。保育園から帰ってくると、ホットカーペットに寝っ転がって、「小公女(しょうこうじょ)」等を少しずつ読んでくれた祖父。4歳で扁桃腺炎で入院した時、忙しい中、「家なき子」を録音してきてくれた母。盲学校の寮で、土曜日に、腹話術の人形と一緒にやってきて、童話を読んでくれたボランティアのおばちゃんたち…。そんな一人ひとりが、私の物語世界につながる扉を少しずつ開いてくれました。  そして、大人になってからも、私の読書ライフは、たくさんの手や声に支えられています。今年出版されたばかりの小説をサピエからダウンロードして、バンコクのアパートで晩御飯を作りながら聴けるということ。コロナにより、活動先のタイに戻れなくなってしまってから、地元の点字図書館を通して借りてくる点字の本が、大きな癒しになってくれたこと。その陰には、どこかの録音スタジオで、おうちの居間で、図書館の事務所で、何千、何万時間も働いてくださっているボランティアさんたち、職員さんたちがおられます。  私が「アーク」をタイで立ち上げ、10年余り続けてこられたのは、こうして現在に至るまで受け取り続けている「読書の喜び」のバトンを、私の第二の故郷となったタイの人たちに渡すお手伝いがしたい、という気持ちが強かったからです。特に、一人で図書館に来ることが難しい方へのサービス提供は、活動をチェンマイ県プラオに移した2011年当時から取り組んできました。高知県のキュウリ農家で育った私は、15歳になるまで、自分一人で外出することは全くといっていいほどありませんでした。そんな中で、腹話術と絵本のおばちゃんたちのように、自分から訪ねてきてくれる人がいると、ひときわうれしかったんです。  早ければ幼稚園から親元を離れて、共同生活をしている少数山岳民族の子供たちの寄宿舎での移動図書館。高齢で障害を負った方への訪問貸出。重度の脳性麻痺で、一度も学校へ行ったことのない女の子への絵本のお届け。きらびやかな成功談にも、華々しい数字にも結びつくことがあまりありませんが、このような活動にこそ、アークの存在意義があると思っています。  ◆私もGiverになれる…かも?  末っ子で、7人家族に守られて育った私には、不満がありました。  「お手伝いしたいの?じゃあ、何もしないで。それが一番のお手伝い」  八つ 上の姉のように、台所や客間で活躍したくてねだると、必ずそう言われたのです。私は、ぶーっと膨れるしかありませんでした。  「わたしだってやりたいのに」「わたしは、やってもらうばっかり?」  そんな気持ちが積み重なって、高校生の頃から、社会開発、国際協力といった分野にむくむくと興味がわいてきました。  国際協力について本を読んだり、人の話を聞いたりする中で、「援助する側」が、ついつい上から目線で「援助される側」に接してしまう、という問題があることを知りました。その時、偉そうにも「私ならそんなこと絶対にしない!」と思ったのです。手伝ってもらう側、Give&Takeで言えば、Takeの方の気持ちが、自分にはよくわかると思ったからです。あれからなんと20年!さすがに、そんなに簡単にGive&Takeのバランスが保てるわけではないことはわかってきました。でも、障害分野じゃなくても、不便でもどかしいことが山のようにあるけれど、全盲である私だからこそできる「草の根国際協力」がある、というのは、今でも信じています。  ◆コロナがもたらしたピンチとチャンス  コロナ禍は、のんきな私のところにもちゃんとやってきました。2020年3月にビザの申請のために帰国したきり、タイに戻れなくなってしまったのが事の発端です。今まで毎月のように行って(おこなって)いた講演活動、資金集めのイベントも、去年はほとんどできませんでした。動き回ることでエネルギーをチャージしてきた私自身にとっても、しんどい波が何度も訪れました。お金もないのにやる気も出ない…。こんなことは初めてでした。ですが、うれしいことに、やっぱり明けない夜はないようです。今年に入って、自分の中で「なんとかしなきゃ」が、だんだん「なんとかしたい、いや、しよう!」に変わってきたのです。今まで何年も連絡を取っていなかった友達や恩師から便りが届いたり、タイにいた時にはつながる機会の少なかった日本、そして地元高知の個人や団体と少しずつ、つながれるようになってきました。これこそ、コロナがくれたチャンスであり、ご縁だと感じています。  最後になりましたが、私を含む、多くの視覚障碍者の生活を陰ひなたとなって支えてくださっている日本ライトハウスのボランティア、支援者の皆様に、この場を借りて深くお礼申し上げます。「ボランティア友の会」でお話しさせていただいたり、寄稿させていただいたりしたことを、大変光栄に存じます。「コープ・クン・マーク・カー(ありがとうございました)!」  ※館からのご案内:「アーク」へのご支援は、http://www.alwaysreadingcaravan.org/japanese/index.php をご覧ください。    <<センターの頁>>(4頁)  ◆日本初の牧師の肖像から高村光太郎、ヴォーリズの作品まで  肥後橋周辺の歴史や芸術に触れてみませんか  本誌がお手許に届く頃は、桜の花が満開だと思います。1年近く外出自粛を強いられ、憂鬱な日々が続きました。まだ感染予防は続けなければなりませんが、心と体の健康のため、密でない野外を歩くのは良いのではないでしょうか。当館のある肥後橋はオフィス街の真ん中ですが、周辺には、歴史や芸術を“触って観る”ことのできるモニュメントが少なくありません。当館への往来時や休憩時間に立ち寄ることをお勧めしたい「名所」をいくつかご紹介しましょう。(館長 竹下 亘)  ◆十和田湖畔の「乙女の像」が御堂筋に?  当館南隣のホテル、リーガプレイス肥後橋の南壁には、澤山保羅(さわやまぽうろ)(1852年〜1887年)の肖像のレリーフがあります。彼は日本初の牧師で、明治11年、この地(当時の町名は土佐堀裏町)に梅花女学校(現梅花学園)を創設しました。まなじりを決した表情からは意志の強さが偲ばれます。(写真)澤山保羅のレリーフ像  肥後橋と淀屋橋を結ぶ土佐堀通り北側の歩道には、羽織袴姿の初老の男性が椅子に座っているブロンズ像があります。これは、現在の民生委員の前身である方面委員制度を創設した元大阪府知事、林市蔵です。日本ライトハウスや点字毎日を含め、先進的な福祉事業の多くが大阪から始まっていることを誇りに思います。(写真)林市蔵像  淀屋橋交差点から南側の御堂筋の歩道は「御堂筋彫刻ストリート」という名称で、28体の彫刻が飾られ、自由に触って見ることが出来ます。ロダンの彫刻など世界的な名作が数多く並ぶ中で、一押し(いちおし)なのは、高村光太郎の「乙女の像」です。これは、裸の女性二人が向かい合い掌をかざしている作品で、青森県の十和田湖畔にある有名な光太郎最後の作品の試作品だそうです。本家は台座が高く、触ることが出来ませんが、こちらは2分の1の大きさで、存分に触って観ることができます。場所は、淀屋橋交差点から東側の歩道を南へ300m下った所にあります。(写真)乙女の像  ◆街角に残る大正期の名建築(跡)  当館の東向かいには、大同生命本社があります。ここは、NHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」の主人公のモデル、広岡浅子が嫁いだ加島屋(カジマヤ)の跡地です。現在は19階建てのビルが建っていますが、先代のビルは、明治から昭和初期、滋賀県近江八幡を拠点に西洋建築とキリスト教とメンソレータムを広めたW.M.ヴォーリズ(広岡浅子の親戚の夫)が設計し、大正14年に落成した名建築でした。現在、敷地内には旧ビルを飾ったテラコッタ(装飾タイル)と、現ビルの触れる模型と点字の説明板が置かれています。(写真)ヴォーリズ記念物  また、玉水記念館から西へ100mにある赤煉瓦造りの日本基督教団大阪教会もヴォーリズ設計事務所の歴史的建造物(大正11年竣工)です。  最後に、肥後橋と西梅田の間にある堂島アバンザビル(ジュンク堂が入居)の前庭に、石造りの重厚な門が建っているのをご存じでしょうか。これは1922年(大正11年)、この地に竣工した旧大阪毎日新聞社の玄関をモニュメントとして残したものです。奇しくもこの年は、この新社屋で『点字毎日』が産声を上げ、同じ大阪の地で岩橋武夫が点字出版を行った日本ライトハウス創業の年でもあります。当館の往来時に通られた際は、ぜひこの門をくぐってみてください。(写真)大阪毎日新聞玄関跡  (手で触れる際はタオル等をご用意下さい。)   ●報告の頁(8頁)  ◆ボランティア交流会に約100人が参加  3月11日、当館会議室で2020年度のボランティア交流会が開かれ、オンラインで約70人、会場で29人が参加しました。感謝式典では、ご出席いただいた活動歴20年・30年を迎えたボランティア8人に橋本理事長より感謝状を差し上げ、皆様から思いのこもったスピーチを頂いた後、堀内さんの記念講演(2頁参照)が行われました。 (写真)当日ご出席の受賞者(敬称略):前列左から活動歴30年の木下正義(点字)、森田幸子(対面)、前年度ご受賞の麓孜子(ふもと あつこ)(対面)。後列左から竹下館長、橋本理事長、活動歴20年の大桑久美子(録音)、矢切素子(やぎり もとこ)(録音)、柳本絹子(録音)、西田惠美子(電子書籍)。30年の夛田禮子(ただ れいこ)さん(録音)は当日Zoomでご出席いただきました。  ◆ボランティア友の会世話人会の役員を選出  ボランティア交流会の当日午前中に2020年度最後の世話人会が開かれ、2021年度の役員選出などが行われました。午後の交流会には新任の世話人も加わり、オンラインでご紹介しました。今年度の第1回世話人会は4月8日に開かれ、世話人の顔合わせと引継が行われます。今年度も皆様のご協力をお願いいたします。 (写真)世話人の皆様(敬称略):後列左から留任の池本滋子(対面)、植田美穂子(録音)、大安徹雄(おおやす てつお)(点字・書記)、奥幸子(録音)、尾崎一恵(音声解説・会計)、田中恵子(録音・監査)、笠松幸彦(かさまつ ゆきひこ)(電子書籍・代表)、前列左から退任の鴻上真理(こうがみ まり)(点字)、松谷富子(まつたに とみこ)(対面)、新任の木虎真紀(点字)、南礼子(みなみ れいこ)(対面)。2年間世話人を務めて下さった鴻上さん、松谷さんにお礼申し上げます。 あゆみ 【3月】 11日 ボランティア世話人会  ボランティア交流会・記念講演会  専門点訳講習会・表と書式コース開講  職員会議 12日 わろう座映画体験会(セント・オブ・ウーマン) 13日 盲導犬育成事業50周年記念フェスタ 27日 オープンデー(館内見学日、4人) 31日 サービスフロア休室(年度末棚卸し) 予定 【4月】 8日 5階サービスフロアと図書貸出休室(書庫・在庫整理日)  ボランティア世話人会 10日 オープンデー(館内見学日、要予約) 29日 全館休館(祝日) 編集後記 お彼岸にお墓参りに行ってきました。昨年から感染予防のため、お寺での法要は読経の最中に各々で焼香のみ行うことになっており、そそくさとお寺を後にしました。帰り道、ツバメが飛んでいるのを見かけました。ツバメは春になると、フィリピンやベトナム、マレーシアなど南の方からはるばる日本へやってきて、夏の時季を日本で過ごします。桜の時季が終わって、ゴールデンウィーク前に渡ってくると記憶していましたが、もう来ていました。今年も日本で繁殖し子育てをし、秋口には家族みんなで南へ帰って行くのでしょうか。暑い夏を予感させる春のお彼岸となりました。(一) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2021年4月号  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2021年4月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円