日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2020年1月号   <<表紙イラスト>> 中央に袴を着た今年の干支のねずみが立って「健康にちゅーいしてね(ちゅういの文字は平仮名)」と言っています。 隣の着物を着た女の子と犬は「うまい!座布団1枚・・・!!」と、ねずみの鳴き声が入ったダジャレが通じて楽しんでいる様子。 ねずみの頭上に乗っている子猫には、シャレが分からず不思議そうな表情をしています。 お正月らしい大きな門松も飾ってあります。    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●センターの頁(2頁)   ●ボランティアの頁(3頁)   ●感謝報告(4〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆専門点訳講習会「理科、算数・数学」コース  毎日新聞大阪社会事業団との共催で標記の講習会を開講します。日本点字表記法の改訂に伴い変更された理科、算数・数学の点字表記について、従来の規則がどのように変更され、今後どのような配慮が必要かを学びます。  日時 2月27日(木)、3月12日(木)2回連続10時〜15時  講師 福井哲也(点字情報技術センター所長)  対象 理科、算数・数学点訳の経験者  参加費 1,000円  申込は点字製作係(電話06-6441-1028)へ要項請求の上、1月31日(金)までにお願いします。  ◆今年のボランティア交流会は3月27日(金)  毎年3月上旬に行なっているボランティア交流会ですが、今年度は少し遅めの3月27日(金)に決まりました。ゲストに横浜市立盲学校教諭で、東京パラリンピックの応援ソング「リアルビクトリー」を作り、全国で演奏活動をしている栗山龍太(りょうた)さんを迎えます。詳細は来月号でお知らせしますので、ぜひご予定ください。今年もバザー物品のご提供をよろしくお願いいたします。  ◆中山UD映画祭『岳(ガク)』にご招待!  公益財団法人中山視覚障害者福祉財団主催、当館協力の「中山UD映画祭Vol.5」が1月24日(金)13時から15時30分、神戸市立新長田勤労市民センター別館3階「ピフレホール」で開催。当館のわろう座映画体験会でも大好評だった『岳』を音声ガイド・日本語字幕付きでバリアフリー上映 します。『岳』は同名の人気コミックを原作に、山岳救助をリアルに描いたヒューマンドラマです。入場無料。視覚障害者の方が優先ですが、当館のボランティアもご招待します。当館3階総務係カウンターでチケットを差し上げますので、ご遠慮なくお申し出ください。  ◆1月の休館について  1月6日(月) 仕事始め(14時〜法人互礼会)  1月7日(火) ボランティア活動・サービス再開  1月9日(第2木曜、書庫・在庫整理日)5階サービスフロアと別館・図書貸出は休室  1月11日(土) 6階録音製作・8階電子書籍は休室(13日月曜指定祝日の振替)  1月14日(火) 5階サービスフロアと別館・図書貸出は休室(13日月曜指定祝日の振替)    <<センターの頁>>(2頁)    ●新年のご挨拶〜点字図書館の利用対象者の拡大を目指して 館長 竹下 亘   新年おめでとうございます。皆様の当館に対する日頃のご支援とご協力に感謝するとともに、本年が皆様にとってより良い年となりますようにお祈り申し上げます。  ◆読書バリアフリー法と点字図書館の課題  昨年は、「読書バリアフリー法」(視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律)が6月に施行されました。11月には、2020年度から5年間の具体的な施策作りのため、文部科学省と厚生労働省の主管で、関係16団体による「協議会」が開かれ、私も全視情協理事長として参加しました。その場では、点字図書館と公共図書館等の整備、サピエの強化、出版者による電子書籍出版と図書データ提供の促進、情報通信機器の開発・入手・習得支援など、さまざまな課題について意見発表と討議が行われました。  視覚障害者情報提供施設の代表として私が訴えたのは、点訳・音訳ボランティアの養成・活動支援と、サピエの運営費の補助増額による利用者協力金の無償化、簡単に使えて安定供給される情報通信機器の開発と普及などでした。一方、他の複数の当事者団体が異口同音に求めたのは、身体障害や読み書きの困難のある人達にも録音図書や電子書籍、そしてサピエや点字図書館の門戸を広げて欲しい、という要望でした。  これについては、本来、障害の有無を問わず、すべての人に開かれている公共図書館に「障害者サービス」を普及させることが第一ですが、それとともに、全国の点字図書館も利用対象者の拡大に努める必要があると思いました。  当館では、以前から障害者手帳の有無に関わらず、視覚に障害のある方には用具や機器の利用相談をはじめ図書の貸出や対面リーディング、サピエの利用登録を行っています。また文字の読み書きが困難な方や身体障害の方にも録音図書の来館貸出やサピエの利用受付をしています。  ところが、全国の多くの点字図書館では、身体障害者福祉法や設置自治体の規定、あるいは職員や予算が足りないという理由で、「障害者手帳を持つ視覚障害者」以外の方は、サピエの登録さえ受け付けない、という所が少なくありません。確かに、点字図書館が視覚障害者のサービスを優先するのは当然ですが、全国のボランティアが作成した貴重な録音図書や電子書籍を墨字の読書が困難な人たちと分かち合えることも素晴らしいことではないでしょうか。そこで、今後は国や地方自治体に制限規定の改正や予算増加を求めつつ、点字図書館の利用対象者の拡大に取り組んでいきたいと考えています。  ◆すべての人が情報を「おもやい」できる社会を  ところで、私は12月、山口県のボランティア団体の招きで講演に行きました。主催者から夕食に誘われた際、「色々な物を『おもやい』で食べましょう」と言われ、意味が分かりませんでした。辞書で調べると、「おもやい(もやい)」とは「分かち合う」「寄り添って共同で事を行う」という意味の方言で、「傘をおもやいでさす」「きょうだいで服をおもやいにする」のように使われるとのこと。用例は江戸初期に遡り、今も山口県などで使われているようです。  私は2013年以来、「情報共有」という言葉を掲げ、金科玉条にしています。しかし、長い年月、人々が日常生活で言い慣わしてきた「おもやい」という言葉は「共有」よりも温かくて、深みがあり、心に響くように感じました。今年は、この言葉を心に刻み、改めて、すべての人が図書をはじめとする情報を「おもやい」できる社会を目指して努力して参りますので、皆さまのいっそうのお力添えをお願い申し上げます。  写真:左から久保田部長、橋口専務、竹下館長、岡田部長(当館3階にて)    <<ボランティアの頁>>(3頁)   ●【見学日和〜知れば、知るほどおもしろい】視覚障害者支援の会クローバーの中川由希子さんを訪ねて   視覚障害に関係する施設や団体を訪問してご紹介する企画を6年ぶりに再開することになりました。第1回目は、阪神大震災をきっかけに結成された視覚障害者の外出介助ボランティア団体「視覚障害者支援の会クローバー」です。阿倍野の事務局に中川由希子代表を訪ねました。(総務係 大岡亜希子)  ◆クローバーで出来る事  「クローバー」は阪神大震災をきっかけに始まった民間の外出介助ボランティアグループです。20年間余りの活動を経て、更なる継続をするために組織の基盤強化をはかり、この4月に NPO法人として再出発されました。活動内容は「視覚障害者の方のおでかけの際に目の代わりをすること」です。利用者の方の申し込みを受けて、事務局がメンバーとマッチング。予定が合えば依頼成立です。年間同行件数は毎年増加していて、2018年度では約800件!ボランティアスタッフは約100人ほど在籍されていて、一番若い人は高校生です。  ◆クローバー結成のきっかけ  「はじめた時は、震災から1年ほどの活動のつもりだったんです。ところが、今も続いていて、気がつけば20年間余りも経っていて・・・」と笑顔で話してくださった代表の中川由希子さん。  1995年、阪神大震災でご自身も被災され、大切なご友人を亡くされました。そのことをきっかけに、「救われた私の命で何か出来ることがないか」という想いで、その年の3月に行われた情報文化センターのガイド講習会へ参加。その講習会でのつながりをきっかけにクローバーの結成を決意され、フルタイムの仕事をやめて68人の仲間と共に活動をスタートしました。  1年目は被災者の方に向けての活動であったため、罹災証明書の手続きのために役所へ行ったり、自宅から仮設住宅への引っ越しの依頼が中心でした。事務局も無かったため、情報文化センターの2階に段ボール箱1つ分だけ間借りして、電話も取り次いでもらっての活動でした。クローバー創設にあたり、活動内容を知ってもらうために、被災者が多くいる六甲の盲老人ホーム千山荘(センザンソウ)へチラシの手配りに行かれたことも、懐かしそうに話してくださいました。  ◆これからについて  活動が1年ほど経ったときに、「被災していないけれど、手引きをお願いできないか」といった依頼があり、だんだんとその割合が増えていきました。今では毎日40〜50通ほどのメールのやりとりをするほどに依頼が増えて、中川さん一人ではコーディネート作業が難しくなり、NPO法人化することに決定しました。コーディネート専門の職員を迎えて、今年度の4月から再出発されました。活動内容に変更はなく、今でも利用者の方からは、交通費の実費と、電話通信代100円のみしか頂いていないそうです。「NPO法人化して事務局費用を賄うために、支援者の輪を広げていかないといけないんです」と中川さん。  電話からメール中心に、被災者の外出介助からお出かけの案内へ、そしてNPO法人化へ。時代が変わっても「視覚障害者の方の外出のお手伝いが少しでも出来れば」という中川さんの温かい想いは変わりません。  クローバーではボランティアや支援者の方を募集しています。また、ボランティア交流会や研修といったイベントも実施しています。  お電話・HPでお問い合わせください。  クローバー URL https://osaka-clover.org/  電話 06-6654-9064(火・土10:30-16:00)  写真:利用者とボランティアの交流会の様子。利用者とボランティアの方がチームごとにゼッケンを着て着席している。    <<感謝報告の頁>>(4頁)   ●藤野高明(たかあき)氏の講演会を開催〜点字の唇読(しんどく)で切り開いた人生に学ぶ  ◆「障害者は不幸ではないのか?!」  12月14日、当館点字製作係の主催で開催した藤野氏の講演会には約30人が参加。重厚な内容を明るく、軽やかに語られるお話しに引き込まれた。  開始早々、藤野氏から私たちに投げかけられたのは、「障害者は不幸にあらずという言葉は、本当にそうなのだろうか?」という重い問いかけ。その問いは、戦災で障害を負ったご自身の経験にあるという。小学2年生の夏、米軍の不発弾を何も知らずにいじっていたところ、突然暴発し、一瞬にして視力と両手首から先を失った。  奇しくも、藤野氏の実家は福岡県立盲学校(当時)の近くにあり、見えなくなる前から盲学校の存在を知っていた。ただ、まさか自身が視覚障害になるとは思いもよらなかった。点字の触読ができず、三療の職に就くことも難しいという理由で、盲学校への転入を拒否された藤野氏は教育を受けられないまま、眼の治療のため入院。そこで入院中の盲学校の生徒から点字を教えてもらう。点字が合理的な規則で作られていることを知り、面白くなり、瞬く間に吸収していった。さらに勉強への意欲が芽生えた。また、ハンセン病療養施設での体験を元にした小説「いのちの初夜」を読み聴かせてもらったことが、社会の障壁に立ち向かう力を与えてくれた。  ◆点字の唇読と粘り強い努力で障壁を突破  20歳の時、ようやく大阪市立盲学校(当時)の中学部2年に転入。そこで大きな出会いが待っていた。点字の唇読である。当初は読み取りにかなり時間がかかった。しかし、習うより慣れろで、徐々にスピードを上げていった。学習意欲も旺盛で、勉強が楽しくて仕方がなかった。やがて大学受験を目指し、障壁を乗り越えて入学・卒業。教員資格を取得し、大阪府の高校・世界史の教員採用試験に合格したが、障害を理由に配属が決まらず、結局、採用期限切れとなった。だが、交渉して再受験のチャンスを獲得。そして、ついに大阪市立盲学校への赴任が決まった。  点字を指で読む人に比べると、唇読は断然遅い。加えて、どうしても下を向いて読むため姿勢が悪くなる。さまざまな工夫を重ねて、30年余り教職に打ち込んだ。(また、障害者の権利と平和を守る運動などにも積極的に取り組まれました。)  まもなく盤寿(バンジュ)(81歳)。将棋や音楽観賞が趣味という藤野氏は、今も活発に活動されている。「障害者は不幸であることに違いはないが、障害者だからこそ経験できたこともたくさんある。いろいろあったけど、私は人に恵まれ、今の自分があるのだと思う」と振り返られた言葉が胸に響いた。(点字製作係 奥野真里)   ●報告の頁(8頁)  ◆朗読劇再演とハンドベルの音色に魅せられて  灯友会(トウユウカイ)と当法人主催の朗読劇「Helen〜ともしびをかかげて」&クリスマスハンドベルコンサートが12月7日、玉水記念館で開催。朗読劇は昨年のヘレン・ケラー女史没後50年の記念企画の際にご好評いただいたこともあり、再演が実現しました。ハンドベルの美しい音色から始まり、朗読劇では「奇跡の人とは、誰かの事を大切に思う、生きる人すべてのことであること。人と人が出会うということは素晴らしい奇跡だ」というメッセージが込められていました。  当日は300人を超える来場者があり、視覚障害の方やボランティアの方、関係者に楽しんでいただけたのはもちろんですが、中には小学生、中学生のお子さんや、今回初めてライトハウスの行事に来てくださった方も多数おられました。これをきっかけに、また新たな奇跡の輪が広がっていくことを願ってやみません。(林田)  ◆近畿視情協のボランティア研修会に160人  近畿視覚障害者情報サービス研究協議会の今年度ボランティア・職員研修会が12月5日、玉水記念館で開かれ、当館のボランティアや職員も含め、160人余りが参加しました。午前は、岸博実氏(京都府立盲学校非常勤講師)の講演「京都盲唖院の挑戦と京の町衆」が行われ、日本最初の盲学校の盲教育への創意工夫とともに、今日(コンニチ)のボランティア活動の源流とも言える京都の市民の応援協力の姿が解き明かされ、参加者に深い感銘を与えました。午後は分科会に分かれ、点訳は「記号類の使い方」、録音は「音声表現技術と校正技術を同時に学ぶ」をテーマに、中身の濃いワークショップが行われました。  ◆当館3階の全視情協事務局が新体制  当館3階総務係の奥に、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会の事務局があります。昨年まで神奈川事務所と当館の2ヶ所で業務を行っていましたが、神奈川在勤の前事務局長が退任したため当館に統合。長年、事務局を担当してきた正井和子さんが事務局長に就任するとともに、新たに『点字毎日』勤続34年の石川昌宏さんが事務局員に加わり、サピエ事務局担当の西井敦子さんと3人で業務を行っています。当館とも密接に連携しながら、全国の図書製作とサービスの向上、サピエの発展に取り組んでいますので、お知りおきください。  あゆみ【12月】 1日 第13回マルチメディアデイジー講演会 5日 近畿視情協V・職員研修会(玉水記念館) 7日 朗読劇「Helen〜ともしびをかかげて」&クリスマスハンドベルコンサート(玉水記念館) 14日 藤野高明(タカアキ)氏 講演会 21日 オープンデー(館内見学日、3人) 24日 わろう座映画体験会「ホームアローン2」 27日 仕事納め  予定【1月】 6日 仕事始め(法人互礼会) 7日 ボランティア活動・サービス再開 9日 サービス部休室(在庫・書庫整理日) 11日 録音製作・電子書籍係休室(13日振替) 14日 サービス部休室(13日振替) 18日 オープンデー(館内見学日、要予約) 編集後期 年明けの楽しみは、今年の大河ドラマ『麒麟がくる』です。どうしても麒麟と言えばビールを思い浮かべてしまいますが、中国に伝わる伝説上の動物で、慶事の前に現れると言われているそうです。しかしながら慶事とは似つかわしくない動乱の戦国時代を舞台に、史実の少ない明智光秀を主人公にあてているのも、ちょっと謎めいています。「本能寺の変」にはいくつもの説があるのをどのように描かれるのかも興味をそそりますね。私は誰かが残した格言や名言が気になったりするのですが、光秀の残した句に「心知らぬ人は 何にとも言はば謂へ 身をも惜まじ 名をも惜まじ」とあります。「人にどう思われようと、自分の信念を貫くぞ」という潔さを感じます。(茂) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2020年1月  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2020年1月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円