日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2019年10月号   <<表紙イラスト>> 秋の登山で男の人が腰を下ろして大きなおにぎりをおいしそうに食べています。 その様子をじっと後ろで見つめる動物たち。 鳥やくま・キツネ・さる・うさぎ・たぬき・ネズミの7匹の動物たちが集まって「ごっくん・・・」と喉を鳴らして大きなおにぎりを狙っています。    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●センターの頁(2〜4頁)   ●感謝報告(5〜11頁、別ファイル)   ●報告の頁(12頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆ボランティア施設見学会で楽しく交流を!  毎年恒例のボランティア友の会施設見学会。今年は今話題の「大阪市立阿倍野防災センター」を訪ねます。地震をはじめさまざまな災害時の対応の仕方を体験を交えて学びます。見学後は、あべのハルカスでランチバイキングを楽しみながら交流を広めましょう。ぜひご参加ください。  日時 11月7日(木)11時15分(〜14時30分頃)  行先 大阪市立阿倍野防災センター(大阪メトロ谷町線「阿倍野駅」すぐ)  集合 阿倍野防災センター正面玄関前  定員 30人(先着順。定員で締め切ります)  費用 2,000円(食事代込)・現地で集金します  お申し込みは当館総務係(電話06-6441-0015)、または各フロアまで。申込締切は10月31日(木)。  ◆「盲導犬カレンダー」2020年版の発売開始!  毎年大人気の盲導犬チャリティ・カレンダーを10月中旬から当館3階総務係で発売します。ラブラドールのイラストを月替わりでデザイン。A4判(見開A3判)。定価1,000円(税込)。見本はhttp://www.guidedog-lighthouse.jp/で。通信販売は盲導犬訓練所(電話0721-72-0914)まで。  ◆10月19・20日は「日本ライトハウス展」へ  今年度の「日本ライトハウス展〜全国ロービジョンフェア2019」は10月19日(土)・20日(日)、難波御堂筋ホールで開催します。毎回、当館のボランティアの皆様に会場内のガイドをお願いしており、視覚障害の来場者から大変ご好評を頂いています。視覚障害者のニーズや最新機器にふれる絶好の機会でもあります。ぜひご協力をお願いします。お申し出は当館総務係まで。  ◆4階会議室の使用前後にカギの受け渡しを  9月より、管理上4階会議室を施錠することと致しました。ご使用の際は3階総務係でカギの受け渡しをお願い致します。また、会議室利用の際は、以下の遵守をお願いします。  @机や椅子を動かした時は元に戻す。A部屋を汚した場合は清掃する。B食事はご遠慮下さい。  ◆10月の休館予定  10月10日(第2木)、10月15日(火、月曜指定祝日の振替)=図書貸出と5階サービスフロア休室  10月19日(土)=日ラ展のため全館休館  10月22日(火)=祝日のため全館休館    <<センターの頁>>(2〜4頁)   ●録音図書の製作・貸出が60年!   黎明期の苦労と喜びをふり返り、さらに前へ  今月10月1日は、当館が録音図書の製作・貸出を始めてからちょうど60年の記念日に当たります。今日、録音図書は視覚障害者の読書手段の主流になり、郵送貸出とサピエ図書館からのダウンロードの両方で利用は伸びる一方ですが、ここに至るまでには、ボランティアと利用者、そして職員の語り尽くせない苦労や喜びがありました。60年を記念して、当時発行された当館のボランティア向け機関紙『窓』から、録音図書の黎明期の様子をひもといてみたいと思います。(館長 竹下 亘)  ◆全国3館目の「声の図書館」が開館  日本における視覚障害者向けの録音図書は、今から62年前の1957(昭和32)年、東京・国際基督教奉仕団のオープンリール・テープレコーダーによる「テープ・ライブラリー」に始まり、翌年には日本点字図書館が続きました。  日本ライトハウスも、1950(昭和25)年に米国から大量の「トーキングブック」(レコード盤)の寄贈を受けて以来、録音図書に関心を持っていましたが、東京に少し遅れて準備を始め、1959(昭和34)年9月11日に録音奉仕会を発足。10月1日、オープンレコーダー4台とテープ90巻で声の図書館を開設して、貸出サービスを開始しました。以来60年、録音機器やメディアは目まぐるしく変化しましたが、今日、当館が所蔵する録音図書は1万6千タイトルを超え、貸出数も年間9万5千枚に達するまでに発展しました。  60年前、1959年6月発行の『点訳の窓』には、「声の図書館発足」と題して、北村好男館長補佐のこんな巻頭言が載っています。(以下、引用文は抜粋編集。表記は原文のまま)。  引用開始 「声の図書館」−如何です?こんな言葉をお聞きになったことがありますか。  これが当館の仕事の新しい一部門です。最近ナガラ族と言う人が多くなると共に「読むより聞く」傾向が重視される世の中になりました。盲人の世界にもこの傾向は相当見られます。テレコーダー所有の盲人は増加の一途を辿っていますから、将来に於て当館の蔵書の10パーセントは「声の図書」になるのではないかと思います。日本には約十八万人の盲人がいますが、点字の解読者は三万人余と推定されています。戦時、戦後の混乱期に盲教育を受けられなかつた盲人、中途失明者等が点字を覚える機会を与えられずに過して来た為、盲人でありながら点字を理解出来ない人が余りにも多過ぎます。そこで、これらの人達に先ず聞くことにより本に親しんで頂く、という訳で、色々な朗読をテープレコーダーで録音し貸出すのが「声の図書舘」です。当館では昨秋より泉大津高校灯グループと天王寺高校有志グループの奉仕を得て、準備してきました。 引用終わり 写真:オープンレコーダーを囲んでの最初期の録音風景。5人の男女が本を片手にオープンレコーダーを囲んで座っています。(左端の青年は、今も現役講師の橋本勝利さん)  ◆苦労を超えて“うなぎ登り”の製作・貸出数  こうして始まった録音図書ですが、すべてが初めてですので、当然苦労は多かったようです。1年後の『窓』1960年10月号には、奉仕者の大森和子さんからこんな原稿が寄せられています。  引用開始 録音奉仕会が発足して早や一ケ年となるのに、当初の予想に反して、その実績ははかばかしくない。これは、標準語の意外な難しさと、録音設備に因るものと思われる。新会員の方が、自分達の思っていたものとは異つた日本語の難解さに“私達はプロになるのではないから”と脱落して行かれるのは、甚だ心外と云う他はない。  次に、録音設備の点についてであるが、録音途中で動かなくなるテープレコーダーには毎回泣かされる。一本のテープを完成するのに、殊に声のジャーナルの折等、各々が時間を繰り合わせても一堂に会する事が不可能な場合、各自都合の良い時に録音してその後編集となると、勢いテレコの酷使と相成る訳である。あまり性能のよくないテレコなら、何台あっても、現在の様な状態では、私達の努力は水泡に帰して居る。 引用終わり  こうした苦労を重ねながらも、録音図書の製作と貸出は目覚ましい勢いで伸びています。1年目の1959年度の製作数 113巻(貸出数不明)が3年目の1961年度には製作数515巻(貸出数4,947巻)、4年目の1962年度には製作数1,592巻(貸出数不明)とうなぎ登り。当時の録音図書の中心は、国内外の有名な小説や童話、放送劇、ラジオ番組などでしたが、『週刊朝日』などの記事を許諾を得て録音した月刊『声のジャーナル』なども発行され、人気を博しています。  ◆点字を読めない視覚障害者に読書の喜びを  当時の読者数は不明ですが、1962年10月の『窓』には、北海道の読者から「限りない感謝」と題してこんな手紙が寄せられています。  引用開始 私は二〇才を越してからの中途失明で、まるでかたきのように、点字の書籍にかじりついておりましても、指先は敏感になってくれず、今も読書とは言えません。はからずもそれがテープのおかげで満足できるとは、全く夢のようです。家族の者にも、特別な時間をさいて読んでもらうことは無理で、読んでくれたとしても満足することができません。ご奉仕の方々が苦労されて完成したテープを全く気がねなく、いつでも自分の時間をみて、スイッチ一つで聞ける満足、それは、とうてい感謝の気持ちを現すすべを知りません。 引用終わり  録音図書の登場により、中途失明や弱視の方が本を読めるようになったことは画期的なことでした。加えて特筆すべきことは、ハンセン病で点字触読が困難な視覚障害者の方々も本を読めるようになったことです。当館では1964年頃からハンセン病療養施設の視覚障害者の求めに応じ、全国に先駆けて録音図書の貸出を始めましたが、これも忘れてはならない出来事です。  今日では、視覚に障害のある方だけでなく、目は見えても読字が困難な方や身体障害の方も録音図書を読むことができる時代が実現しました。当館では60年の歩みを基盤に、これからもより良い録音図書の製作と、より多くの方々の利用に取り組んでいきたいと思います。   ●スポーツの指導法やプレーとの共通点に新鮮な驚き   視覚障害リハビリテーション基礎講習会を受講して  当法人の視覚障害リハビリテーションセンター養成部では毎年2回、「視覚障害リハビリテーション基礎講習会」を開講しています。これは全国の福祉・教育・医療機関等の職員を対象に、視覚障害リハビリテーションの初歩的な知識と、視覚障害者への接し方の基本について、3日間の講義と実技訓練を行うものです。今年7月末に行われた第22回講習会を受講する機会をいただきましたので、この研修で気づいたこと、得たものを報告させていただきます。(総務係 大岡亜希子)  ◆初めてなのに知っている!?  私にとっては初めての実践的なリハビリテーション講習会でしたが、3日間を通して「知っている・やったことがある」という感覚がずっとあり、不思議に思っていました。その謎が解けたのは講義中のあるお話を聞いた時でした。  その内容は、「リハビリテーションというものは、人生を豊かにするものなんです。決して、生命維持活動が出来れば良いというものではありません。ライトハウスの理念が木の幹だとして、利用者の方々が生き生きと生活出来るようになった花だとすると、リハビリテーションセンターの職員の役割は木の枝にあたります」という講師の先生の想いの込められたお話を聞いて、やっと謎が解けたのです。  私は前の職場で10年間、小学生にバスケットボールを指導する活動とその勉強をしていました。そうです。3日間の講義や実技は、スポーツの指導法の学びととても似ていたのです。  例えば、アイマスクでご飯を食べることは、試合をすることとよく似ています。器を手に取る前に、相手の情報を聞いて考えて作戦を立てます。相手の特徴を知り、食べる手順を考え、少しずつ口へ運びます。ただ、作戦通りにはいきません。アクシデントがあると、何がダメなのかをその場で判断して対応します。おかずがそれぞれ違うので、相手をよく見て自分の身体の動かし方を変えなければいけません。その繰り返しです。試合中は身体を動かしながら、次のことを考えて常に判断して対応する連続です。ご飯を食べながら、試合をする感覚になるなんて驚きでした。  また、手引き実習は、初めて一緒にチームスポーツをプレーする時とよく似ていました。まずは自己紹介。今から一緒にプレーする人と心を通わせるところから始まります。名前だけでなく、相手に自分のことを理解してもらいやすいようなことも追加して伝えます。次に利き手やその人の特徴を聞きます。そして、いざ歩き始めると、その人のリズムが分かります。歩幅、速度、慣れ、緊張や疲れといった具合です。よく見て、その人にあったペースを確認してコミュニケーションを取りながら進みます。  次は段差や溝といった障害物が出てきます。周りを見て「止まります。」「上り階段です。」などと声をかけます。声をかける内容とタイミングがとても重要になってきます。タイミングを間違えると転倒の原因になるからです。これは、パスを出す時に名前を呼ぶイメージとよく似ていました。急にボールが飛んできて仲間が驚いてキャッチミスをしないように先に声を掛けてからパスを出すイメージです。  手引き実習の内、一番難しかったことは下り階段でした。これは落ちてしまう可能性があるので、緊張感があり、2人の信頼関係が試されます。お互いを信頼していなければ、歩みを進めることは出来ません。ひと声かけたり、1歩進むだけで汗が流れました。話す言葉も「もう少し前へ」などと、曖昧なものでは危険に繋がります。「足1足分前へ移動してください」とはっきりと伝えるようにします。声かけを失敗した時には、出来るようになるまで何度もやり直しました。養成部の講師の先生は、細かい所が出来るまで何度も指導してくださいました。出来ていない部分に戻って繰り返すところも、とてもよく似ていると思いました。  手引きの最初は言葉がたくさん必要で、歩みはゆっくりでしたが、徐々に慣れてくると、言葉も短くなり、テンポ良く進んでも安心感が出てきます。そうすると、心が繋がったような気持ちになり、スポーツをプレーしているようにとても爽やかな気持ちになりました。  ◆新しく発見したこと  また、講習会に参加して新しく発見したこともありました。それは、「目の見えない・見えにくい人にとって日常の動作で難しいと感じる度合いは、晴眼者の想像と少し違う」ということでした。アイマスクをつけて室内歩行と食事を行いましたが、見えない状態で最も難しいと感じた動作は、「お茶をやかんから湯飲みに注ぐこと」でした。自分1人で注ぐと、やかんから出ているお茶の勢いや湯飲みに注がれた分量が分かりません。近くにいる職員の方へ「いま何分目位ですか?」と何度も聞いてようやく適量を入れることが出来ました。これは、実際にアイマスクを使ってやってみるまで、食事をするよりも難しい動作だとは気がつきませんでした。きっとこのように目の見えない方と晴眼者で認識の違いがあるので、「何かお困りのことはありますか?」と聞いてみる必要があるんだな〜、と実感しました。  3日間、講師の先生は交代しても、他の先生は全員教室の後ろに座り、お互いの講義で学びを深めたり、盛り上げておられました。養成部は大変すてきなチームだと感じました。  3日間で得たことを大切に、これからの業務に励んでいこうと思います。   ●報告の頁(12頁)  ◆全視情協(ぜんしじょーきょー)栃木大会のシンポを動画配信  全視情協(特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会)の全国大会が10月3〜4日、宇都宮市で開かれ、当館から職員9人が参加。今回は特に「読書バリアフリー法」の検討の他、点訳、音訳の専門的な研修、「サピエの将来像」や「ボランティアの養成、活躍、連携」をテーマにしたシンポジウムなどを行います。シンポジウムはYouTubeで動画を中継(大会後も継続配信)し、全視情協のホームページ(http://www.naiiv.net/)からご覧いただけます。ぜひご視聴ください。  ◆ふれあい文庫の「さわって読む絵本展」  てんやく絵本ふれあい文庫の創設35周年記念「さわって読む絵本展」が10月29日(火)〜11月10日(日)、大阪市天王寺区のクレオ大阪中央3階研修室2で開催されます(11月5日(火)は休館)。11月4日午後には岩田美津子代表の講演も。問い合わせは、電話06-6444-0133(水〜土13:30〜16:30)の同文庫へ。  ◆水野さんと谷澤さん、八田さんが表彰  公益財団法人鉄道弘済会の今年度第49回朗読録音奉仕者全国表彰に当館の水野順子さん、また西日本地区表彰・朗読録音部門に谷澤耀子さん、DAISY編集部門に八田芙未子(フミコ)さんが選ばれ、9月末、東京と大阪で授賞式が行われました。5年前に地区表彰を受けられた水野さんは、活動歴34年余り1,626時間224タイトル(専門書800時間107タイトル)の実績が高く評価。また谷澤さんは30年余り1,622時間195タイトル(専門書769時間103タイトル)、八田さんは活動歴22年の内、DAISY編集16年余り1846時間250タイトル(専門書614時間93タイトル)の実績が評価されたものです。お三方のご受賞をお祝いするとともに、今後ますますのご活躍をお祈りいたします。  ◆図書・情報係に河上泰子を採用  当館では、8月1日付でサービス部図書・情報係の職員として河上泰子を採用しました。アルテ別館に勤務し、図書貸出業務を担当します。よろしくお願いいたします。  あゆみ【8月】 1日〜2日 大阪南視覚支援学校生・職場体験 6日 日本ライトハウス杯視覚障害者囲碁大会 9日 岩橋明子会長「お別れの会」(ホテルニューオータニ、260人) 10日〜15日 夏期全館休館 30日 わろう座映画体験会「ミスター・ルーキー」  あゆみ【9月】 5日 ボランティア友の会世話人会 12日 対面リーディング基礎講習会(15人) 21日 オープンデー(館内見学日、6人)  予定【10月】 3日〜4日 全視情協(ぜんしじょーきょー)大会(宇都宮市、9人) 9月 見学:草笛会 10日 サービス部休室(在庫・書庫整理日) 11日 避難訓練 12日 オープンデー(館内見学日、要予約) 15日 サービス部休室(月曜指定祝日振替) 19日〜20日 日本ライトハウス展(全館休館) 25日 わろう座映画体験会「岳(ガク)」 編集後期 当館の清掃を担当されているIさんが時折、可愛い袋に入った小銭を募金としてお持ちくださいます。事情を伺うと、近所の小学生の女の子と親しくなり、自分が“こんな所で働いている”と話したところ、お小遣いを貯めては、募金として預けられるそうです。今回も、袋には「すこしですがワンちゃんに」と書き添えられていました。こんな素直な気持ちに触れると心が洗われます。私も見ならわなくては!(竹) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2019年10月合併号  発行 社会福祉法人 日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2019年10月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円