日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2018年12月号   <<表紙イラスト>>  武部はつ子画:家族3人の頭には三角帽子。大きなケーキと鶏の丸焼きを真ん中にクリスマスのお祝いの真っ最中。息子がパーティクラッカーの紐を引く。「PON」と大きな音がして紙吹雪が舞う。お母さんは耳を押さえ、お父さんと犬はのけぞりながらビックリ。   <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●センターの頁(2〜4頁)   ●感謝報告(5〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆マルチメディアデイジー図書講演会を開催  特定非営利活動法人NaD(ナディ)主催、当館共催の第12回マルチメディアデイジー図書講演会「ぼくも読めたよ デイジー教科書Vol.3」が12月2日(日)13時から16時30分、当館4階会議室で開かれます。インクルーシブ教育に関する大阪市教育委員会の取り組みや地域の小学校3校での事例紹介を聞き、質疑と情報交換を行います。午前10時30分から12時にはマルチメディアデイジー図書(教科書)再生についての個別相談会(予約制、先着5人)も。参加費500円。お問い合わせは当館電子書籍係(電話06-6441-1035)まで。  ◆クリスマスチャリティコンサートにご参加を  当法人の後援団体・灯友会による盲導犬支援のためのクリスマスチャリティコンサートが12月16日(日)14時から、当館そばの北京料理徐園で開かれます。大阪音楽大学の学生で、全盲のソプラノ歌手辻本実里(みのり)さんと、ゴスペルグループ「ウェストサイドクワイヤ」の演奏。チケット3,500円(中華の軽食付き)。お申し込みは電話06-6961-5521の法人本部内、灯友会事務局まで。  ◆ヘレン・ケラー女史記念行事、満席のお詫び  11月23・24日に大阪市中央公会堂で開催した「ヘレン・ケラー女史没後50年を偲んで」はお陰様で盛会裡に終わりましたが、24日午後の記念式典は超満員となり、多くのボランティアや支援者、利用者の皆様のお申込みをお断りして誠に申し訳ございませんでした。お詫び申し上げます。  ◆年末年始の休館について  今年の仕事納めは12月28日、仕事始めは1月7日ですが、ボランティア活動とサービスは以下のように休ませていただきます。不統一で申し訳ありませんが、ご確認をお願いいたします。 全館休館 12月29日(土)〜1月7日(月) 全館開館 1月8日(火) 8階点字製作 12月22日(土)開室、12月26(水)〜28日(金)開室、1月12日(土)開室 8階電子書籍 12月22日(土)休み、12月26日(水)〜27日(木)開室、12月28日(金)休み、1月12日(土)休み 7階デイジー 12月22日(土)開室、12月26(水)〜28日(金)開室、1月12日(土)開室 6階録音製作 12月22日(土)「週刊新潮』作業のみ開室、12月26日(水)〜28日(金)開室、1月12日(土)休み 5階サービス 12月22日(土)開室、12月26日(水)開室、12月27日(木)〜28日(金)休み、1月12日(土)開室 別館図書情報 12月22日(土)休み、12月26日(水)開室、12月27日(木)〜28日(金)休み、1月12日(土)休み 4階会議室 12月22日(土)開室、12月26日(水)〜27日(木)開室、12月28日(金)休み、1月12日(土)開室 3階総務係 12月22日(土)開室、12月26(水)〜28日(金)開室、1月12日(土)開室     <<センターの頁>>(2頁)   ●神戸アイセンター・ビジョンパークを見学し、ランチで交流  ボランティア友の会施設見学会で盛り沢山の体験  当センターボランティア友の会では、毎年秋に「施設見学会」を行い、研修と交流を深めています。今年は10月29日、神戸のポートアイランドに昨年12月開設された神戸アイセンター・ビジョンパークを訪問しました。友の会世話人の高階秀男さん(電子書籍製作係)に報告していただきます。  集合前に雨が降り心配しましたが、集合後は穏やかな秋の日差しとなりました。今年のボランティア友の会施設見学会は、ボランティア29人と職員4人の33人で、神戸アイセンター・ビジョンパークを見学しました。  ビジョンパークでは、全盲の方がコンシェルジュとして案内してくださり、神戸アイセンターの構成や活動について伺いました。  神戸アイセンター病院のこと=最先端機器を使用しているが、特別な治療をするわけではなく標準治療のみで、紹介状は不要。  理研(理化学研究所)のこと=神戸アイセンター病院と連携して、iPS細胞を使った最先端の網膜再生医療研究と治療を行っている。  公益社団法人NEXT VISIONのこと=ビジョンパークを運営し、視覚障害者の社会復帰(参加)を進めているが、寄付で成り立っている。  「アイシー(isee!)運動」のこと=NEXT VISIONが進めている運動で、主目的は「社会から支えられる」側だった視覚障害者に「社会を支える」側になってもらうこと。  などの説明がありました。  神戸アイセンター病院では、医師が患者に必要な支援をカードに書くと、患者はそのカードを持ってビジョンパークへ行き、自分に必要な支援を体験できるようになっています。  私たちもビジョンパークで、スマートスピーカー、暗闇でもカラーではっきり見えるメガネ、目の前の文字を音声で読み上げてくれる「オトングラス」などの説明・実演を受けました。  スマートスピーカーは、話しかけると反応して検索結果を教えてくれたり、翻訳してくれたりと、パソコンやスマホを使えない人にも有用な機器であると思いました。話しかけても、無視して反応しないこともありましたが・・・。  その後、リーディングエリア(情報に出会う場)、シミュレーションエリア(教室や運転の体験の場)、アクティブエリア(体が動き心が躍る場)、リラクゼーションエリア(癒される場)、キッチンエリア(気づきと学びの場)を見学しました。アクティブエリアにはクライミングウォールがあり、見学終了後に、林田さんがアイマスクを付けて声の誘導で登り、視覚障害者がどのように登るのかを見せてくれました。(誘導するのが不慣れなため、的確な誘導ができず、完登するのに時間がかかってしまいました。)  アイセンターの詳細は、ぜひインターネットで「神戸アイセンター」「ネクストビジョン」「ビジョンパーク」などで検索して調べてください。そして、見えないことで困っておられる方に、このような素晴らしい施設のあることをお伝えいただければ幸いです。  最後は、参加者全員でアイシーポーズの記念撮影を行いました(写真上)。写真はビジョンパークのフェイスブックに掲載されましたが、「今日は日本ライトハウスのボランティアの方々が来てくださいました。笑顔でアイシーポーズ!」の説明がついています。  見学後に向かったのが、ポートアイランドにあるホテルパールシティ神戸のランチ。サラダ・オードブル・デザートなどのハーフブッフェで、メイン料理は魚でした。食べるのとおしゃべりで、あっという間の楽しい90分でした。   ●「てんやく広場」 から 「サピエ」 まで、30年間の歩みと課題(1)   全視情協第44回・岐阜大会の基調報告から  前号でご紹介したように、今年は「マラケシュ条約」と「改正著作権法」の成立と共に、「サピエ」の母胎である「てんやく広場」が誕生して30周年という記念すべき年でもあります。これを記念し、10月25〜26日、岐阜市で開催した第44回全国視覚障害者情報提供施設大会では、「『てんやく広場』誕生30周年〜『サピエ』のさらなる充実と発展を目指して」をテーマに掲げ、私が理事長として基調講演を行いました。その内容を今号から2回に分けてご報告します。(館長 竹下 亘)  ◆「てんやく広場」から「サピエ」までの歩み  1988年 「IBMてんやく広場」発足 「てんやく広場」は、日本アイ・ビー・エムの社会貢献事業として1988年(昭和63)年に誕生しました。同社は点訳ソフトを開発し、1991年までに全国101ヵ所の点字図書館やボランティア団体を「プリンティングセンター」として、PC1,500台と点字プリンターなどを寄贈。同社のホストPCと101センターをパソコン通信で結び、パソコン点訳の全国ネットワークを構築しました。  「広場」が革命的だったのは、一度に1冊しか作れなかった点字器や点字タイプによる点訳をパソコン点訳へ一気に転換し、全国に広めたに留まらず、全国の利用者とボランティア、施設・団体をパソコン通信で結び、サピエの原型を築いたことでした。その結果、当時の利用者からは「町角の本屋さんが帰ってきた」「“積ん読”の楽しみが得られた」と絶賛されました。  1994年 @個人利用者の点訳データの直接利用開始、A国立国会図書館「点字図書・録音図書総合目録」試験稼働 この2つの機能は画期的でした。@では個々の視覚障害者もPCで点字データを検索・入手できるようになり、Aでは全国の点字図書館等に所蔵されている点字・録音図書を検索し、貸出依頼できるようになりました(翌年開始の「オンラインリクエスト」で、貸出依頼がパソコン通信でできるようになりました)。これは今日のサピエでも基本となっている重要な機能です。  1996年 IBMから独立し、自主運営を開始 独立当初は技術面、財政面での自立の苦労が続きました。また1996年から当館がホスト事務局を引き受け(1998年から「ないーぶネット事務局」)、2010年のサピエ誕生まで担当しました。  1998年 「ないーぶネット」に改称。全視情協が運営を担当/プレクストーク1号機発売/国の補正予算でデイジー図書製作・配付、再生機配付(〜2001年)  この年は、録音図書のデジタル化元年となりました。合計3,181タイトルのテープ図書がデイジー化され、全国の点字図書館に配付(当館の録音ボランティアも約200タイトルを製作)。また発売されたばかりのデイジー再生機も8千台が全国の視覚障害者へ提供されました。デイジー図書はまだネット配信されませんでしたが、点字と音声のデジタル化の基盤が固まりました。  2001年 インターネット版「ないーぶネット」始動  2004年 「びぶりおネット」(デイジー録音図書のネット配信)を日点と当館が開始  2007年 著作権法改正で、録音図書データの公衆送信が認められる  2010年 国の補正予算で「サピエ」誕生(会員=個人6,105人、205施設・団体)/テキストデイジー登録開始/著作権法改正で録音図書等の利用対象者拡大  2011年 マルチメディアデイジー登録開始  2014年 シネマ・デイジー登録開始 (写真)初期のIBMの点訳システム。点字ディスプレイの上に専用点字キーボードを載せて使用中 ◆図「サピエの仕組み」  ※数字は2017年度末  (図の説明) *大きな3つのグループA、B、Cがあり、それぞれが矢印で結ばれています。 Aは、サピエ図書館 点字図書データ 19万8141タイトル 録音図書データ 8万846タイトル テキストデイジー等 5541タイトル 全国所蔵目録 70万2147タイトル Bは、視覚障害者情報提供施設・ボランティア団体・公共図書館等 施設・団体 368箇所 ボランティア 2万人 C は、視覚障害者等 視覚障害者(164万人) 知覚や読み障害のある人 上肢障害、眼球運動障害等 164万人の内、サピエ直接利用登録者 約1万6015人                               *A、B、C、3つのグループの関係がそれぞれ矢印で示されています。 BからA インターネットを介して、図書検索、着手・完成データ登録 AからB インターネットを介して、ダウンロード CからB 電話・Eメール・手紙・FAX・窓口依頼等を介して、図書検索依頼、貸出依頼 BからC 電話・Eメール・窓口等を介して、図書検索回答、図書貸出 CからA インターネットを介して、図書検索、貸出依頼 AからC インターネットを介して、ダウンロード、ストリーミング  *Aの横に「国立国会図書館 視覚障害者等用データ送信サービス」のグループがあり、Aと両向き矢印で結ばれています。 「てんやく広場」から30年間の到達点  前頁の2001年以降は駆け足になりましたが、必要な条件が着実に整備されて2010年のサピエ誕生に至りました。そして、サピエ誕生から8年が経ち、今日のサピエは上記の図に書き込んだとおり、会員施設・団体数まもなく400、支えるボランティア約2万人、視覚障害等の直接利用登録者1万6千人(点字図書館等を通しての利用登録者は約8万人)、登録データ合計約30万タイトル、年間のダウンロードタイトル数は点字75.1万、音声298.9万、テキストデイジー20.4万に達し、すべてが今も増え続けています。  こうして30年をかけて、情報共有を願う人と組織をデジタルとインターネットで結んだ、世界に類のないアクセシブルな図書館システムが実現したのです。  ここで改めて、サピエが30年間で到達した実績から、注目すべき数字を並べてみましょう。  ◆サピエの年間製作点数は墨字書籍の23%  墨字書籍の年間出版点数 78,113点 *総務省統計局2016年。  サピエの年間新着登録点数 17,946点 ※サピエの登録点数の内訳は点字9,249点、録音7,263点、テキストデイジー1,394点、他。  ◆個人利用登録者数は101倍  1994年度→2017年度 101倍  点字図書館の利用登録者 1.4倍  ダウンロード数2,515倍、他館貸出も16倍  図書ダウンロード数  2,515倍  点字図書館の「館間」貸出数 16倍  点字図書館の「個人」貸出数 1.9倍 以上、少々大げさかも知れませんが、30年間でこれほど多くの利用者が多くの図書を利用できるようになったことは確かです。加えて点字図書館の利用も増えていることが注目されます。次号では、「サピエ」の今後の課題を考えます。   ●報告の頁(8頁)  ◆対面リーディングボランティアの集い開催  今年度2回目となる当館対面リーディングボランティアの集いが11月8日午後開催され、16人が参加されました。第1部では「視覚に障害がある方も楽しめる映画について」をテーマに、林田主幹が講師を務め、シネマ・デイジーや音声解説を体験した後グループに分かれて実際の映像に解説をつけてみる実習を行いました。第2部は意見交換会として、対面リーディングの活動上困っていることなどを出し合い、交流を深めました。参加者からは、「音声解説の製作の仕方が新鮮だった」「対面で写真等の説明をする際の工夫に共通点があり、参考になった」などご好評を頂きました。 ◆阪急電鉄が視覚障害者理解と接遇を研修 駅ホームでの転落事故が相次ぎ、視覚障害者が安全に鉄道を利用できる環境整備が求められる中、当館では阪急電鉄株式会社の依頼に応え、社員研修を受託。サービス部の岡田部長らが講師を担当し、視覚障害者の基本的理解と鉄道駅利用上の注意点、適切な声かけや誘導の仕方などについて、1回50分間の研修を延べ7回実施。同社の運輸部門の監督者と本社スタッフ合計600人が受講するという全国でも例のない大規模な研修となりました。同社の取り組みに敬意を表し、こうした研修が全国の公共交通機関に広まることを期待したいと思います。  あゆみ 【11月】 8日 対面リーディングボランティアの集い 10日 オープンデー(館内見学日、6人) 13日 見学:生活訓練等指導者養成課程 23・24日 「ヘレン・ケラー女史没後50年を偲んで」(大阪市中央公会堂、全館休館) 28日 見学:朗読ボランティア陽声(城陽市) 29日 日盲社協・相談支援者研修会(〜30日) 30日 法人理事・評議員会(本部)  予定 【12月】 8日 オープンデー(館内見学日、要予約) 13日 近畿視情協ボランティア・職員研修会(玉水記念館) 22日 振替休館日(一部休業。詳細は1頁) 26日 図書貸出、機器・用具サービス最終日 28日 仕事納め 【1月】 7日 仕事始め(14時から休館:本部互礼会) 8日 全館ボランティア活動・サービス再開  編集後記 母方の故郷、山形は果物の宝庫。春から秋まで、桜桃、西瓜、葡萄、林檎、洋梨と空(飽)くことなく楽しめます。そんな中、最近虜になっているのは、葡萄の名産地高畠町(たかはたまち)で生産されている発泡性葡萄酒(「嘉(よし)」という名の2種類)。長年、スペイン産のCAVA(カバ)を愛飲してきましたが、はるかにフルーティで繊細です。ぜひ年末年始の祝宴などにご賞味下さい。(竹)  ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2018年12月号  発行 社会福祉法人日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015     FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2018年12月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円