日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2018年6月号   <<表紙イラスト>>  武部はつ子画:雨の中、紫陽花が咲き、葉の上にはカタツムリがいる。長靴の少女が傘をささず、嬉しそうに胸に抱えて、はしゃいでいる。散歩中の女の人が自分の傘をひらいて少女へ差し出し「なぜささないの…?」。犬も「?(はてな)」。少女は「だっておにゅうだもん…!」   <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●センターの頁(2〜4頁)   ●感謝報告(4〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆UEB(統一英語点字)の専門講習会を開講  当館と毎日新聞大阪社会事業団の主催による第31回専門点訳講習会・英語点訳コースを開講します。今回は2016年度から導入が始まっている新しい英語点字表記法UEB(統一英語点字)を全7回で学びます。ぜひご参加ください。  日時 7月3日〜8月28日(7月31日、8月14日を除く)毎週火曜日13時30分〜15時30分  講師 奥野真里(当館点字製作係職員)  費用 1,000円。テキスト「UEBベーシックマスター〜英語点訳の基礎」(2,600円)が必要。  お申込みは要項を請求の上、6月15日までに当館点字製作係(電話06-6441-1028)までどうぞ。  ◆点字・公共図書館の最新調査結果を公開  近畿視情協の今年度総会研修会で「公共図書館の障害者サービス」(国会図書館関西館・安藤一博氏)と「点字図書館実態調査」(堺市立点字図書館・原田敦史氏)の調査結果の発表と検討が行われます。日時は6月6日(水)2時45分〜4時30分。会場は当館4階会議室。参加費500円(加盟館職員等は無料)。お申込みは至急、近畿視情協事務局(電話06-6441-0015、当館代表)まで。  ◆中央区バリアフリー映画「この世界の片隅に」  毎年、当館が協力して行っている標記映画会で、今年は、第40回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞をはじめ数々の映画賞を受賞した話題作を音声解説、字幕付きで上映します。会場では、盲導犬とのふれあいやチャリティグッズの販売をはじめ、地域の施設・団体で作成された物品の紹介、販売ブースも設置します。  日時 6月23日(土)12時開場、13時開演  場所 大阪市立中央会館(大阪メトロ堺筋線・長堀鶴見緑地線「長堀橋」駅6番出口徒歩6分)  参加費 無料 定員 200人(先行受付100人)  先行受付方法 6月1日(金)9時15分から受付開始。当館総務係(電話06-6441-0015)までお申し込みください。※当日の入場席もありますが、満席になり次第、入場をお断りします。  ◆盲導犬チャリティコンサートは6月17日(日)  当法人の今年度チャリティコンサートは6月17日(日)、ザ・シンフォニーホールで開催します。出演は川畠成道さん他。チケット(3,500円)は3階総務係で発売中です。視覚障害者ご招待のアミティチケット(1,000円)もご協力ください。    <<センターの頁>>(2頁)   ●点字図書館の認知度の低さと相まって、利用度も伸び悩み   視覚障害者の生活に関する実態調査2件が発表  この度、わが国の視覚障害者の現状が垣間見える調査報告が相次いで発表されました。それによると、視覚障害高齢者の障害の重度化が進み、中途視覚障害者が「相談」に至るまでの期間が相変わらず長いこと、また医療機関や役所の点字図書館の認知度が低いことと相まって、点字図書館の利用度が伸び悩んでいることが推測される結果となっています。(館長 竹下 亘)  ◆高齢者の重度化とIT機器の利用度の低さ  1件目の調査は、厚生労働省が行った「平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」です。これは平成28年12月1日に全国2,400国勢調査居住区で行われたサンプリング調査ですが、5年毎に行われているので実態の変化を確認するには有用です。  それによると、障害者手帳を持つ在宅の視覚障害者は推計31万2千人(前回の23年調査では31万5,500人)。内、65歳以上は68.9%で前回の69.0%とほぼ変わりませんが、65歳以上の障害等級の割合は、1級が前回34.7%から今回42.3%、2級が28.8%から33.2%へと上昇しており、高齢者の障害が重度化していることが窺えます。  また、「日常的な情報入手手段」では、65歳未満の場合「テレビ」が76.7%で断然トップであるのに続いて、「家族・友人・介助者」、「ラジオ」、「携帯電話」、「スマートフォン・タブレット端末」、「パソコン」、「一般図書・新聞(ちらしを含む)・雑誌」と続き、「録音図書(デイジー)」は11.0%、「点字」は8.2%と利用率が低いのが残念でした。ただし、10年前の同じ調査では「録音・点字図書」が14.8%だったのに対して、今回の合計は19.2%ですので、利用は伸びていると言えます。  なお、IT機器の利用度では、65歳以上の場合、「携帯電話」が65歳未満の38.4%から16.0%、「パソコン」が21.9%から5.1%へ減少。「スマホ類」に至っては24.7%から1.7%へと激減しています。一方、「録音図書」は11.4%で65歳未満よりわずかながら利用率が高まり、「点字」は7.4%と微減に留まっていますので、高齢者には特に点字・録音が有用だと言えるように思います。 【表】「日常的な情報入手手段」(数字は%)  ※以下の表は、情報入手手段別に、調査年と年代別の割合。H28年は65歳未満と65歳以上、H18年は全年齢。 −−− テレビ  H28年・65歳未満:76.7  H28年・65歳以上:58.3  H18年・全年齢:66.0 家族・友人・介助者  H28年・65歳未満:53.4  H28年・65歳以上:56.6  H18年・全年齢:55.7 ラジオ  H28年・65歳未満:41.1  H28年・65歳以上:40.6  H18年・全年齢:49.3 携帯電話  H28年・65歳未満:38.4  H28年・65歳以上:16.0  H18年・全年齢:7.1 スマホ・タブレット  H28年・65歳未満:24.7  H28年・65歳以上:1.7  H18年・全年齢:6.6  ※H18年の選択肢は「HP、電子メール」 パソコン  H28年・65歳未満:21.9  H28年・65歳以上:5.1  H18年・全年齢:6.6  ※H18年の選択肢は「HP、電子メール」 一般図書・新聞(ちらしを含む)・雑誌  H28年・65歳未満:16.4  H28年・65歳以上:16.0  H18年・全年齢:26.9 録音図書(デイジー)  H28年・65歳未満:11.0  H28年・65歳以上:11.4  H18年・全年齢:55.7 点字  H28年・65歳未満:8.2  H28年・65歳以上:7.4  H18年・全年齢:14.8  ※H18年の選択肢は「録音・点字図書」 表終わり −−−  ◆課題は医療機関や役所の認知度の低さ  2件目は、日本盲人会連合が行った「視覚障害者が日常生活を送る上で必要な支援に関する調査研究」です。これは、視覚障害者の外出時の事故が相次ぐ中、全国均一で、安定的な生活訓練(歩行訓練)が提供される必要があるという問題意識から関係機関と当事者(生活訓練を受けたことのある115人)に調査を行ったものです。  当事者のアンケート結果で注目されるのは、「手帳取得から相談までの期間」が「3年以上」が約25%、「10年以上」は約23%に上っていたことです。さらに、大変残念だったのは、「医療機関から紹介された機関」が、「役所(福祉課)」の約42%、「訓練施設」の約17%に対して、「点字図書館」はわずか約8%。また「役所から紹介された機関」でも、「訓練施設」の約12%に続いて、「点字図書館」は約9%に留まっていたことです。  当館としては、医療・行政機関はもちろん、中途視覚障害者をはじめとする多くの視覚障害者に、もっと“情報提供施設”が提供している多様なサービスを伝えて、説明し、一人でも多くの方々に、豊かな情報や支援サービスを利用していただけるように努めたいと思います。    <<センターの頁>>(3頁)   ●メガネ型のウェアラブル端末に高まる期待   「オトングラス」と「MW10」のご紹介  当館5階のサービス部では、常に有用な視覚障害者機器・用具の発掘・提供に努めていますが、最近、視覚障害者の方々の関心を集めているのはメガネ型のウェアラブル端末です。中でも注目を浴びている「オトングラス」と「MW10 (エムダブルテン)」をご紹介します。(サービス部長 岡田 弥)  ◆文字を音声で読み上げる「オトングラス」  オトングラスは最近はテレビや新聞でも取り上げられて話題となっている、文字を音声で読み上げてくれるメガネです。メガネ型端末(レンズは入っていません)の真ん中にカメラがついており、フレームの左側についているボタンをポチッと押すと、メガネの前にある文字(書籍に限らず、看板や掲示物、品物などの印刷された文字)を合成音声で読み上げてくれます。こういった作業はスマホで写真を撮ってアプリを使えばできることなのですが、読みたいものを目の前に持ってきて、ボタンを押せばいいという簡単操作が魅力です。  開発したのは、その名も株式会社OTON GLASSの島影社長。社長のお父さんが脳梗塞から失読症になり、それを助けるために開発されたというものです。お父さんは幸いにもリハビリによって回復してオトングラスは不要になったけれども、せっかくの機器を視覚障害者のためにと頑張っておられます。  問題は価格です。現在は約40万円という本体価格に加えて、使用時はWi-Fi環境が必要になるため、外出時にはインターネットの接続機器やスマートホンでの中継等が必要になります。低コスト化を目指して改良中で、当館にもデモ機がないのですが、ぜひ応援して、一般販売の際には取扱いができるようにと思っています。  写真:オトングラス メガネをかけている女性。メガネの左のツルに装置が埋め込まれ、そこからケーブルが伸びている。*Photo:KIOKU Keizo*  ◆暗いところでも明るく見える「MW10」  MW10は光学機器メーカーのHOYA株式会社が開発した暗所視支援機器で、暗いところでも明るく見えるというツールです。こちらは少し厚みがあってメガネ型というよりはゴーグル型です。これまたメガネのフレームの真ん中にカメラが付いており、そのカメラで映した映像の光を増幅して、レンズの中のスクリーンに投影します。従来の赤外線を使った暗視メガネとは違い、カラーで綺麗に見えます。網膜色素変性症などで夜盲の症状がある方の夜間の行動の可能性を広げることが期待されています。  写真:MW10 ゴーグル状のメガネに手元で操作できるリモコンが付いている  当法人では、開発途上からこの機器に関わってきましたが、レンズの中のスクリーンがかなり小さいため、中心部が明るく見える代わりに周辺の視野が大きく制限されるという難点もあります。特に歩行時には周辺視野が重要なため、使い方のトレーニングを受けた上で白杖と併用することが必須であると提言しています。  こちらも価格が40万円ほどで、使用トレーニングは別料金と、費用負担が大きいものになっていますが、今後、特例補装具として補助が出る可能性があります。当館では、MW10の関西での販売店になるとともに、デモ機による体験や使用トレーニングの申し込みも受け付けています。危険性についての注意を充分に喚起しつつ、視覚障害者の可能性を広げる新たな機器として応援していきたいと思っています。    <<センターの頁>>(4頁)   ●木塚前理事長の追悼式を挙行 〜 お人柄を偲び、貴重な遺産を分かち合う  当法人では、本年2月9日、82歳で逝去された木塚泰弘前理事長の追悼式を5月12日、玉水記念館で執り行いました。全国から旧友、教え子、教育や福祉などさまざまな分野で交流のあった方々、そして当法人役職員など80人余りが参列。橋本理事長の挨拶、略歴紹介に続いて、生前の格調高いスピーチと奥様のご挨拶の録音を聴いた後、十数人の方が公私にわたる思い出を語り、そのお人柄を偲び、早すぎるご逝去を惜しみました。  木塚前理事長は非常に知的で、高い理想の人であるとともに、とても温かく、楽しい方でした。当館でも特に情報機器、点字、電子書籍事業において多大なご指導を賜るとともに、多くの職員が親しくお付き合いいただきました。心からご冥福をお祈りするとともに、貴重な遺産を受け継いでいきたいと思います。   ●報告の頁(8頁)  ◆「アミ・ドゥ・ブライユ」の発行を継続  当館と点字情報技術センターでは、点字指定のご寄附を元に、全国ほぼ唯一の子ども向け点字雑誌「アミ・ドゥ・ブライユ」(隔月刊)を2015年10月から発行し、全国100人余りに無償で届けています。予算上、今年2月の第15号で終刊する予定でしたが、新たなご寄付と読者の希望に応えて発行継続を決め、4月に第16号を発行することができました。製作にご協力くださっているボランティアと御寄付者に感謝申し上げます。  ◆2018年度V友の会世話人会がスタート  3月31日のボランティア友の会第1回世話人会で小倉玲子さんが代表に選任され、今年度の世話人会がスタートしました。皆様ご協力をよろしくお願いします。  写真 世話人会の皆さん(敬称略)。前列は新任の方々で左から点字の小泉憲一、録音の三原佳子、図書・情報の小林弘子、音声解説の川添美智子。後列は左から点字の雪岡加奈子(書記)、録音の小倉玲子(代表)、橋本万里(会計)、対面の増尾明子、電子書籍の高階秀男。対面の大村登子さんはご欠席でした。  ◆一ツ橋綜合財団から今年度も多額のご助成  当館では、公益財団法人一ツ橋綜合財団(相賀(おうが)昌宏代表理事)より2005年度から毎年多大なご支援を頂いています。今年度も「マルチメディアデイジーによる図書と教科書の制作・提供、耳で観る映画『シネマ・デイジー』など音声解説事業の普及・充実、電子書籍『HyMe(ハイミー)』の研究」に対して多額のご助成を賜りました。このご厚志を基に、引き続いてアクセシブルなメディアの普及に取り組んで参ります。  あゆみ 【5月】 9日 音訳V養成講習会B開講 10日 ボランティア友の会世話人会    点訳V養成講習会(前期)開講 11日 専門音訳「英語コース」開講 12日 木塚前理事長追悼式(玉水記念館)    視覚障害者ICTサポート講習会開講 19日 オープンデー(館内見学日、参加4人) 29日 ガイド体験会(友の会世話人会主催) 31日 わろう座映画体験会(「永い言い訳」)  予定 【6月】 6日 近畿視情協総会・研修会 9日 オープンデー(館内見学日、要予約) 13日 全視情協・新任研修会、総会(〜14日) 15日 専門音訳「東洋医学コース」開講 17日 チャリティコンサート(ザ シンフォニーホール) 23日 中央区バリアフリー上映会(中央会館)  編集後記 昨夏から時々、家の生け垣の剪定や草抜きに勤しんでいます。数十年間、庭を管理していた母が出来なくなったので、近所迷惑が心苦しくて、仕方なく始めたのですが、始めてみると、パソコン画面から離れて、草木や土に触れ、切り方、抜き方を色々工夫したり、ミミズやムカデが現れて「ギャーッ」と叫んだり、整えた後の様子に自己満足して写真を撮ったりと、なかなか楽しく、達成感を覚える作業。これが老後の趣味と健康法になるかしらん、と思いながら草を抜いています。(竹) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2018年6月号  発行 社会福祉法人日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015     FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2018年6月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円