日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2018年1月号   <<表紙イラスト>> 「戌」と書かれた凧と立派な門松の前に5匹の犬。目パッチリの子犬、フサフサの毛にリボンでおめかしの犬、毛を逆立てた犬に背後から覆いかぶさられて目をつぶる犬、「これやめんか〜っ」と仲裁に入る犬、羽織袴を着た犬がニッコリして「わんダフルな年になるといいね…(ハートマーク)」    <<目次>>   ●掲示板(1頁)   ●センターの頁(2〜3頁)   ●ボランティアの頁(3〜4頁)   ●感謝報告(4頁〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁) ◆楊 雪元さんをゲストにボランティア交流会  毎年3月、ボランティアと職員が集う「ボランティア交流会」を3月8日(木)、玉水記念館で開催します。今回は、情熱的なテノールと驚異的な笛で活躍する全盲の音楽家、楊雪元(ようせつげん)さんを11年ぶりにゲストに迎えます。楊さんは中国で日本語を学んだ後来日し、京都芸術大学大学院を卒業後、各地で演奏活動を行っています。当日は活動歴30年・20年以上のボランティアの皆様への感謝状贈呈、友の会総会、ちょっと贅沢なお弁当を開きながらの歓談、恒例のバザーなど盛り沢山です。ぜひご参加ください。  日時 3月8日(木)午前10時〜午後3時頃  会場 玉水記念館(肥後橋駅8番出口すぐ)  会費 1,000円(お弁当代)  10:00 感謝式典  10:30 演奏会:楊雪元さん(テノールと笛)  11:45 ボランティア友の会総会  12:15 昼食、受賞者の一言、ほか  14:00 バザー(収益は友の会活動費に充当)  参加申込は2月末までに3階総務係(電話06-6441-0015)へ。当日は全館休館です。バザー物品も受付中ですので、ご協力をお願いします。 ◆日本点字図書館の長岡英司館長が来阪・講演  近畿視情協の今年度職員研修会が1月25日(木)13時30分から16時、当館4階で開かれ、日本点字図書館の長岡英司(ひでじ)館長が「視覚障害者と情報」と題して講演します。長岡氏は12歳で失明。大学院で数学を専攻し、電子機器メーカー勤務を経て、国立のリハビリ施設で電子計算機の職業訓練を指導。筑波技術大学で26年間教育に携わった後、一昨年、日本点字図書館に迎えられました。講演では、「情報」に関する長岡氏取り組みと思いを語っていただきます。会員以外の方は参加費500円。参加申し込みは近畿視情協事務局(電話06-6441-0015・当館代表)まで。 ◆前田綾子さんのラジオ放送がネット配信中  録音ボランティアの前田綾子さんが出演したNHK「視覚障害ナビ・ラジオ〜音訳誕生60年」がインターネットでいつでも聴けます。URLは、http://www.nhk.or.jp/heart-net/images/special/2017/11/shikaku_20171126.mp3 です。 ◆2月10日(土)は部分休館 11日(祝日)の振替で、図書貸出と対面リーディングは休止します。点訳、録音等の予定は各係でご確認下さい。   <<センターの頁>>(2〜3頁)   ●新年のご挨拶〜人と人とのつながりを大切にする一年に 館長 竹下 亘 謹んで新年のお慶びを申し上げます。皆さまの日頃のご協力とご支援に感謝するとともに、本年が皆さまにとってより良い年となりますようにお祈り申し上げます。 さて、本年はヘレン・ケラーが亡くなって50年となります。当法人ではこれを記念して、11月23日(金・祝日)と24日(土)、大阪市中央公会堂で「ヘレン・ケラー女史と岩橋武夫〜女史没後50年を記念して」と題した行事を開催することになりました。 (写真省略)ヘレン初来日時(1937年)の写真。左から岩橋夫人キヲ、武夫、ヘレン、ポリー・トムソン ヘレン・ケラーは1880年6月27日、米国アラバマ州に生まれました。1歳7ヶ月で髄膜炎により全盲ろうになりましたが、6歳の時、家庭教師に迎えたアン・サリバン(当時20歳)の教育により再び「言葉」を獲得。サリバンの全身全霊を傾けての介助の下盲学校、聾学校、ハーバード大学女子部に学び、卒業後はさまざまな社会活動を行いました。54歳の時、当時36歳の岩橋武夫がヘレンを訪ねて、友情を深めるようになり、彼の強い求めに応えて、1937年(昭和12年)初来日。岩橋と共に全国を講演して回り、視覚、聴覚をはじめとする障害者に生きる自信を奮い起こすともに社会に障害者理解と支援を訴えました。さらに1948年(昭和23年)、岩橋を助けるため再び来日し、全国キャペーンを展開。それが1949年、わが国初の身体障害者福祉法の施行をもたらしました。岩橋が56歳で亡くなった翌年1955年(昭和30年)には彼を追悼するため三度来日。そして、50年前の1968年(昭和43年)6月1日に87歳で逝去しました。(二人の長年に亘る深い交流は、当法人90周年の記念出版「往復書簡〜日本の障害者福祉の礎となったヘレン・ケラー女史と岩橋武夫」に詳述されています。)  ヘレン・ケラーと言えば、盲ろう唖の障害を克服した「聖女」と賞賛されたり、本来サリバンを指した「奇跡の人」がヘレンの肩書に誤解されたりしていますが、ヘレンの人生はそのような美辞麗句では語り尽くせないほど豊かで、深いものであり、その活動が今日の世界にもたらした影響は計り知れないものがあります。  この度、私も改めてヘレン・ケラーの自伝(22歳と49歳の時に書いたもの。岩橋武夫訳「わたしの生涯」などとして出版)を読み返してみました。そこで再認識したのは、ヘレンが指文字(片手でアルファベット26文字を表し、手のひらに文字を綴る方法)を中心とするコミュニケーション手段により多くの人々と交流し、指文字と点字と浮き出し文字により古今東西の書物に親しみ、さらに例えばシカゴ万博で3週間にわたり、ありとあらゆる展示物を「むさぼるように」触察するなど、外界の事物を視聴覚以外の感覚を駆使して感じ取ることで、たぐいまれな思想と感受性を育んでいったということです。  中でも感動を覚えたのは、ヘレンが6歳で「ウォーター(水)」という言葉を取り戻したことに始まり、物の名前をどんどん覚えていく過程で、突然「真理」に目覚めたという述懐です。へレンがサリバンにスミレを摘んで渡すと、サリバンはヘレンを抱き寄せ、手のひらに「ヘレンのことを愛しているわ」と綴ります。そこから「愛」とは何かという会話を交わす中で、ヘレンは感じ取ったというのです。「その瞬間、美しい真理が、私の脳裏にひらめいた−−私の心とほかの人の心は、見えない糸で結ばれているのだ、と。」と(小倉慶郎訳)。  このようにヘレンの成長を導き、その人生を支えたのは人と人とのつながりであり、関わりでした。言い換えれば、指文字や点字によるコミュニケーションや情報共有なしに、ヘレン・ケラーの人生はありませんでした。今年はこの当たり前のことを心に刻み、人と人とのつながりの大切さを土台として、引き続き「情報共有社会」の実現を追い求めていきたいと思います。  なお、ヘレン・ケラーの自伝は、新潮文庫(22歳の自伝)や角川文庫(22歳と49歳の自伝の合本。岩橋武夫訳)などから出版されています。また当館3階の「ボランティア友の会文庫」にも数種類所蔵していますので、お読みいただけます。ご希望の方は3階総務係までどうぞ。   <<ボランティアの頁>>(3〜4頁) ●規則依存症にならずに、考える点訳・音訳を 近畿視情協のボランティア研修会で多彩な研修 近畿視情協(近畿視覚障害者情報サービス研究協議会)の2017年度ボランティア・職員研修会が昨年12月7日、玉水記念館で開かれました。近畿各地の点字図書館や公共図書館などで活動されているボランティアや職員170人以上が参加し、点訳、録音に関する提言や最新情報、意見交換が行われました。当日参加した当館の職員から主な内容をご報告します。 「易しい言葉の中には悪魔が潜んでいる」  午前の全体会では、点字情報技術センターの福井哲也所長が「のびやかな気持ちで、考える点訳・考える音訳〜規則依存症にならないために」と題して講演。「正確に読む(書く)ことの難しさ」と「点訳注・音訳注による字の説明を考える」という2本柱に分け、豊富な具体例を引きながら、心構えや注意点を説き明かされました。特に印象に残ったのは「易しい言葉の中には悪魔が潜んでいる(平易な言葉こそ、見過ごさず調べる)」「広い視点を持ち、言葉だけでなく全体を考える」「規則には、訳がある。それを理解した上での規則違反はあり得る」、「正確に読む(書く)ための最後の砦は、しっかりした『校正』を行うこと」といった警句の数々です。また興味深かったのは、鉄道の「山手線」の読みが戦前「やまのて」、終戦直後「やまて」、1971年から「やまのて」と、時代とともに変遷してきた経過を、四代目柳亭痴楽の落語「恋の山手線」を紹介しながら説明されたことで、参加者は笑いながらも大きく頷いていました。日々、日本語そのものと、的確な説明の難しさを痛感している私にとっても貴重で、短く感じた1時間半でした。(点字製作係 稲田久美)   「日本点字表記法」の変更点を学ぶ  午後は「点字」と「録音」に分かれて分科会が行われました。点字では、日本点字委員会副会長で、京都ライトハウス情報製作センター所長の渡辺昭一氏を講師に、現在、2018年11月発行の予定で改定が進められている「日本点字表記法」の主な変更点を学びました。改定と言っても、大幅な規則の変更ではなく、これまでよりも規則を分かりやすくするために説明文を見直し、記号類の用法を始め各用例の変更・追加などが行われます。日本点字委員会では改定案に関する意見を募集中で、2018年2月末まで受け付けます。(なお「点訳の手引き」も2019年に改定出版されます。それに伴い、当館で扱っている規則も順次改定し、変更点に関する勉強会を行う予定です。詳細は、点訳曜日担当者会議等でお知らせします。) 分科会の後半は、「点訳ボランティアと職員による情報交換会」が行われ、日ごろの取り組みや製作に関する課題を共有することが出来ました。(点字製作係 奥野真里) 読者の声から録音図書の質の向上を考える  「録音」分科会では、「みなおそう!録音図書〜利用者の視点から」と題して、録音図書の質の向上について検討、協議しました。全国の利用者からサピエ事務局に寄せられた録音図書に対する要望の内容を確認した後、「当事者の読書体験から」と題して、録音図書の愛読者お二人からお話を伺いました。  まず水谷昌史さん。強い訛りや読み癖、過剰な演技などが気になることがあるそうです。代わりにテキストデイジー版を、合成音の読み誤りがあることは承知の上で利用することもあるそうですが、やはり肉声できれいに読まれたものの方が良いとのこと。「そのまま耐えて聞くか、読書を諦めるかの悲しい選択を迫られることがある。製作側の都合ではなく、利用者のためを考えて作ってほしい」と求められました。  また1年間に200タイトルを読むという村上京子さんは、録音図書で読書の楽しみを取り戻した体験を話され、「文字をただ読むのではなく、本1冊の内容を届けるつもりで作ってほしい」と要望されました。訛りはあまり気にしないが(雰囲気にマッチしていて楽しめたこともある)、本の装丁や固有名詞の漢字の説明(例えば一族で似たような名前の登場人物がいる場合)など、本のイメージが膨らむような情報がもっとあれば良いな、と思っているそうです。  お二人の間でも意見が分かれたように、録音図書に求めることは一人一人異なることがあります。けれども、お話の中には「続けて聞いていれば慣れる」「耐える」「諦める」など、読者に負担を強いているとも感じられる言葉も聞かれました。聴く人に読書を楽しんでいただけるような録音図書を作らなければならないと感じた分科会でした。(録音製作係 木田陽子)   <<センターの頁>>    ●報告の頁(8頁)  ◆点訳ボランティア講習会で17人が修了 昨年4月から始まった点訳ボランティア養成講習会が12月9日終了。17人が修了され、15人が当館で点訳を始めることになりました。近年、受講者が減り、苦慮していましたが、今回は多くの方が修了されて嬉しい限りです。今後のご活躍を期待します。 (写真省略)修了式の記念撮影。修了者は以下の皆さんです(敬称略、50音順)。生嶋貞夫、大安徹雄、木虎真紀、木下共子、小池雅子、小泉憲一、澤由佳、田智子、中西智子、西尾純子、永薮直子、西田恵美子、春江由美子、平澤敦子、深尾優子、藤井康代、松本稔子。  ◆「教点連」が社会貢献者表彰を受賞  当館の奥野真里主任が事務局長を務めるNPO法人全国視覚障害児童・生徒用教科書点訳連絡会(教点連)が先頃、社会貢献支援財団の社会貢献者表彰を受賞しました。同連絡会は全国のボランティアグループや関係施設30ヶ所が加盟し、地域の学校で学ぶ生徒用の点字教科書の製作を進めています。当館点字製作係のボランティアの皆さんが点訳してくださっている点字教科書もこの連絡会を通して全国で活用されています。  ◆ボランティアの岩井正雄さんがご勇退  1年前まで図書貸出をお手伝いいただいた後、早川福祉会館で作業ボランティアを続けてくださった岩井正雄さんが12月末、93歳を機に勇退されました。岩井さんは早川で1984年に点訳ボランティアを始められ、当館の専門点訳講習会受講後、プライベート点訳、そして貸出作業をお手伝くださるようになり、友の会の世話人もお引き受けくださいました。心から感謝するとともに、今後の健やかな毎日をお祈りします。  ◆本誌の発送ボランティアを募集  本誌の発送ボランティアを募集しています。毎月月末の金曜日を中心に午前中封入作業を行っています。お手伝いいただける方は総務係までお尋ねください。  あゆみ  【12月】 3日 第11回MMD図書講演会(NaD共催) 7日 近畿視情協V研修会(玉水記念館) 9日 点訳ボランティア養成講習会修了式    オープンデー(館内見学日、参加3人) 28日 仕事納め  予定  【1月】 5日 仕事始め 6日 サービス再開 11日 ボランティア世話人会 13日 オープンデー 25日 近畿視情協・職員研修会  編集後記 池井戸潤原作のTVドラマ『陸王』が終わってしまい、ちょっぴり陸王ロスな今日この頃を送っています。『下町ロケット』などでもそうですが、同筆者の小説に共通しているのは、どんな逆境に置かれても、しぶとく・粘り強い・諦めない人たちの姿です。逆転劇にはいつもながらにスカッとします。それと、陸王で印象深かったのがシンボルのトンボで、登場する会社のマークに使われていました。トンボは、前にしか進まず引かないところから勝ち虫とも言うそうです。新年を迎えにあたり、引く日もあるかもしれないけど、粘り強く前を向いて進んでいきたいです。(茂)  ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2018年1月号  発行 社会福祉法人日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015     FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2018年1月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円