日本ライトハウス情報文化センター   「ワンブックワンライフ」2017年8・9月号  <<表紙イラスト>>  武部はつ子画:夜空を見上げる浴衣姿の男の子と女の子。空は打ち上げ花火で覆われ、中央には二つの大きなハート型の打ち上げ花火が鎖のように繋がり、輝いている。そのハートを取り囲むように大輪の花火が3つ。男の子と女の子の間からもハートマークが出ている。隣の犬も空を見上げ「わ、いいね〜」。  <<目次>>  ●掲示板  ●センターの頁 専門点訳・音訳の受講者は全109コースで1,883人(2〜3頁)  ●感謝報告(3〜7頁、別ファイル)  ●報告の頁(8頁)  以下は本文です。   ●掲示板(1頁)  ◆關宏之監修「まんが人物伝 ヘレン・ケラー」  来年、没後50年を迎えるヘレン・ケラーの「まんが」による伝記(標題書)が、新創刊の角川まんが学習シリーズ第5巻として出版されました。監修には当法人常務理事の關(せき)宏之(ひろゆき)が当たり、ヘレン・ケラーの生涯と社会に与えた影響を明解・適確に表現。特に岩橋武夫との友情や日本での活動にも紙幅を割いた他、興味深い写真や逸話も多数紹介し、これまでにないヘレン・ケラー伝となっています。「まんが」という先入観を持たず、ぜひ一度お読みください。角川書店発行、159頁、税込918円。お求めは書店で。  ◆プレクストークの新機種発売にトラブル  国内でデイジー図書を聴ける単体機は(株)シナノケンシのプレクストークしかありません。同社ではメインの2機種を3月末で発売中止し、新機種2種を6月発売する予定でしたが、開発のトラブルで遅れ、再生専用機PTN3は7月末に発売(予定)。サピエ図書館へのネット接続と録音ができるPTR3は発売の目途が立っていません。購入予約された方はもちろん、新たにデイジー図書を聴こうとされている方もお待たせしており、当館でも対応に苦慮しています。  ◆8月〜9月の休館日について  8月11日(金)〜16日(水)=夏期休館。5階サービスフロアと図書貸出は17日(木)まで休室。  9月16日(土)=図書貸出、電子書籍は休室(18日ハッピーマンデーの振替休館日)。  9月23日(土)=祝日のため全館休館  9月30日(土)=日本ライトハウス展(〜10月1日)のため全館休館 <<センターの頁>>   ●専門点訳・音訳の受講者は全109コースで1,883人 毎日新聞大阪社会事業団の専門講習会が30周年(2〜3頁)  毎日新聞大阪社会事業団と当館の共催で毎年行っている専門点訳・音訳講習会が今年で30周年第30回を迎えました。この講習会は1987年度に始まり(90年度は休止)、受講者の合計は点訳が全42コース合計644人、91年度から加わった音訳が全66コースで合計1,239人に達しています。これほど長期間にわたり行われている専門点訳・音訳講習会は全国でも例がなく、当館をはじめ関西の点訳・音訳活動を発展させる上で欠くことの出来ない事業となっています。(館長 竹下 亘)     「専門点訳講習会」誕生のきっかけ  この講習会が始まったのは1987年秋。きっかけは『点字毎日』同年5月24日号に掲載された「点訳教科書の不足に悩む盲大生〜ますます必要になる条件整備」という記事でした。そこには、その年、関西の大学に入学した視覚障害学生は8大学12人(2年生以上13人)に上り、関東の倍。彼らの教科書の点訳は関西の各大学の点訳サークルや点字図書館などが支えているが、ニーズが多くて間に合わないという深刻な事態が報じられていました。そこで、専門点訳者を増やし、そうした点訳ニーズに応えられる態勢を整えるためにこの講習会が企画されたのです。  第1回の専門点訳講習会は、まず「外国語」(講師:森泰雄氏)と「理数」(加藤俊和氏)が行われ、第2回には「楽譜」(岩鼻(いわはな)啓三氏)、第3回には「数学」(澤田祐子(ゆうこ)氏)、後には「東洋医学」(与野福三(よのふくぞう)氏)などが加わりました。修了者は所属する施設やグループで活躍するとともに、当館を拠点に勉強と専門点訳を進めるためのグループ「ONE」(外国語)、「α」(理数)、「ドレミ」(楽譜、現在は「アンダンテ」等へ展開)等が結成され、関西の学生の依頼に応えて、教科書や教材の点訳が積極的に行われていきました。   「専門音訳講習会」も加わり、さらに発展  一方、当時、音訳の世界でも専門的な「処理」技術の講習が求められるようになってきました。そこで、1991年度の第4回から「専門音訳」も加わり、まず「英語」(古谷(ふるたに)穹子(たかこ)氏)と「図表」(久保洋子氏)が行われ、後には「理数」(久保洋子氏)、「東洋医学」(片山一夫氏)、「パソコン」(中本和代氏)などが開講。こちらも修了者は関西各地の施設やグループで活躍するとともに、当館を拠点に「英語」、「理数」、「東洋医学」、「古典」などの専門チームを結成し、研鑽を重ねながら専門書の音訳に取り組み、今日の当館の録音活動の柱となっています。   点訳・音訳環境の変化と、これからの目標  専門講習会開始から30年が経ち、点訳・音訳の状況も変わりました。教科書・教材については、2008年施行の「教科書バリアフリー法」に先立ち、2004年度から小・中学校における点字教科書は国により保障されるようになりました。教科書点訳連絡会の2016年度調査では、小学生13人に60種、中学生4人に15種の点字教科書を提供されています。しかし、その内実は、当館の点訳ボランティアを含め全国各地の専門点訳者が締切に追われながら、日夜、点訳・校正に励んでいるのが実態です。また大学等でもほぼ9割で点訳・墨訳が提供されています(日本学生支援機構の2015年度調査では、全盲学生143人が学ぶ53校中48校で実施)。しかし、これも必要な教科書・教材がすべて点訳されている訳でなく、点訳作業も大半は各地の施設やボランティアが担っているのが実状です。  一方、音訳についても、中途視覚障害やロービジョンの方が増える中、専門書の音訳の必要性は高まる一方ですが、それに対応できる技術を持った音訳者は決して多いとは言えません。  当館では今後も、専門点訳・音訳講習会を柱に技術の向上・普及を図るとともに、専門点訳・音訳技術の適正な評価と位置づけを社会に求め、点訳・音訳に携わる人や組織が安定的に活動できる環境整備に取り組みたいと思います。   30年間に開講したコース数と受講者数(コース名、回数、人数の順)  (専門点訳)  外国語 7回 115人  理・数 12回 138人  楽譜 7回 91人  触図・触知 8回 132人  教科書 1回 60人  東洋医学 3回 41人  試験 2回 43人  古典 1回 12人  パソコン 1回 12人  合計 42回 644人  (専門音訳)  理数 4回 52人  英語 7回 88人  東洋医学 8回 127人  図表 9回 164人  パソコン 7回 100人  古典・文学 6回 117人  音声表現 4回 200人  音声解説 5回 130人  その他 16回 261人  合計 66回 1239人   第30回は教科書と視覚的資料をテーマに開講  今年度の講習会では、30年の歩みと現在の課題を踏まえて、「教科書・教材点訳コース」と「視覚的資料音訳コース」を開講しました。  「教科書・教材点訳コース」の初回では、受講者60人が現役学生2人から生の声を聴きました。  京都市の大学院で物理を専攻する寺西修二さんは、小学校高学年から視力が低下し、中学受験では問題が読めなかったために不合格となり、盲学校に進学。点字の習得には迷いがありましたが、学友が点字で勉強しても疲れを見せない姿を見て、点字の習得を決意。中3の1学期に、墨字より点字を早く読めるようになったことを実感したのが、「点字を受け入れ、自分を肯定した瞬間となった」という経験を話されました。  また西宮市の大学院で社会学を専攻する山岸蒼太(そうた)さんは、両親が地域の小学校入学を希望した際、教育委員会に点字教材の提供を求めないなどの誓約書を提出して入学許可を得たことや、小・中・高では2教科のみ価格差保証制度で点字教材を購入し、あとは個人で手配した経験を紹介。「点訳された教材は一部屋を埋める量に達し、これまでの点訳ボランティアさんに感謝している」と述べる一方、点字離れの心配については、「点字や音声、テキストデータなど多様な手段から必要に応じて選択できる社会であることに意義がある」と訴えられました。  一方、「視覚的資料音訳コース」は、録音図書において不可欠な、図、表、写真、漢字等、視覚的資料の内容を音声で適切に伝えることを目的に開講。2日連続全10時間を3回実施し、延べ62人が受講。当館の音訳ボランティアである久保洋子さん、木村純子さん、福島博子さんが講師を務め、概論と実習により、絵・写真、漢字、記号、流れ図、系図、各種グラフ、表の読み方について学びました。また、当法人点字情報技術センターの福井哲也所長による講演では、固定観念にとらわれず、ケースに応じた柔軟なアレンジを望む、という利用者の立場からのメッセージが具体的事例を通して伝えられました。修了後、受講者からは「目から鱗が落ちた」「これまで抱えてきた疑問が解消された」といった感想が多く寄せられました。  今後も、ぜひ専門点訳・音訳講習会に関心を持っていただき、皆さんの点訳・音訳技術を深め、広げてくださるようにお願いいたします。   ●報告の頁(8頁)  ◆デイジー録音版の「病因指南」が完成  当館の(音訳)東洋医学チームでは、鍼灸の碩学片山一夫先生のご指導の下、古今の鍼灸の専門書を録音しています。この度、総勢13人が数年をかけて音訳・校正・編集した岡本一包子(いっぽうし)の「病因指南」が完成しました。同書は江戸時代の鍼医で、近松門左衛門の実弟である著者が中風、痛風等120余りの病気を詳説した大著。本誌5頁中央に掲載したボランティアの皆さんが白文の漢文を読み下し、綿密な校正・編集を重ねて25時間52分に及ぶ録音図書を仕上げました。特に昨年1月に亡くなられた森和子さんが最後まで編集に打ち込んでいた記念の本でもあります。今後、多くの鍼灸師の方に読んでいただければ幸いです。  ◆九州北部豪雨で視覚障害者も被災  7月初旬の九州北部豪雨の後、福岡点字図書館職員などの被災地訪問により、少なくとも3人の全盲の方が被災されたことが分かりました。40代男性=自宅と鍼灸院が土砂で埋まり、親類宅に避難。昼間片づけに通っているが、1階は骨組みだけの有様。70代男性=東峰(とうほう)村の自宅が浸水し、20km離れた旅館に避難。初めての一時帰宅を同伴介助。水浸しになった自宅は乾いてはいたが、住める状態でない。90代女性=松末(ますえ)地区の自宅で被災。小学校に避難したが、移動が大変なので、日頃利用していたデイケア施設にショートステイで避難。−−異常気象が続く中、平素から災害時の視覚障害者の支援態勢を整える必要があります。    【訂正】 今年のボランティア交流会で活動歴30年以上の感謝状をお贈りした鈴木栄子(ひでこ)さんのご紹介に不備がありました。お詫びするとともに再掲載します。  鈴木栄子さん 小説を中心に様々なジャンルの図書の音訳・校正作業をしてくださっている。「技術者たちの敗戦」、「残酷なチョコレート」、「日本人にとって聖なるものとは何か」等を音訳。2013年度鉄道弘済会西日本地区表彰(朗読の部)受賞。  あゆみ 【7月】 6日 ボランティア友の会世話人会 8日 オープンデー(館内見学日、4人) 14日 専門点訳「教科書・教材」講習会開講 19日 全視情協シネマ・デイジー製作研修会 (〜20日、福岡市、林田) 27日 見学:サピエ研修会参加職員    全視情協サピエ研修会(〜28日、天満橋、竹下、岡田、松本他10人) 30日 日本ライトハウス職員全体研修会  予定 【8月】 2日 全国・情報機器指導者講習会(〜4日) 11日 夏期全館休館(〜16日。サービスフロアと図書貸出は17日まで) 25日 わろう座映画体験会 26日 法人役職者研修 【9月】 1日 灯友会バザー(〜2日、4階会議室) 7日 ボランティア友の会世話人会 16日 図書貸出、電子書籍のみ休室 23日 祝日のため全館休館 30日 日本ライトハウス展(〜1日、全館休館)  編集後記 59歳の誕生日直前に人生初体験。電車で吊革を持って立っていたら、男子学生が「席を替わりましょうか?」。丁重に断りましたが、そんなに高齢に見えるのか?!と大衝撃。しかもその2日後、明らかに年上の女性から同様のお申し出が。高齢者の仲間入りしたことを自覚して、節制しなければと思い始めています。(竹) ONE BOOK ONE LIFE(ワンブックワンライフ) 2017年8・9月号 発行 社会福祉法人日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘) 住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)     TEL 06-6441-0015     FAX 06-6441-0095     E-mail info@iccb.jp 表紙絵 武部はつ子 発行日 2017年8月1日 定価 1部100円 年間購読料1,000円