ろくおん 通信 No.215号 発行日:2016年4月1日 発行:日本ライトハウス情報文化センター 録音製作係 発行責任者:竹下 亘  〒550-0002 大阪市西区江戸堀1−13−2  電話 06-6441-1017(録音製作係直通)  http://www.iccb.jp/ 主な見出し 1.聴いてわかる録音図書をつくるために(第28回) 2.もっと知ろう!「ウェブスタジオ・なにわ」(第6回) 3.わかる使える広がる!デイジー図書徹底解説(第2回) 4.デイジー編集ブラッシュアップコーナー 5.館からのお知らせ 主な見出し、終わり。 1. 聴いてわかる録音図書をつくるために(第28回) 記号の読みかたについて 久保洋子 今回は、記号の読みかたです。 活字の本の中には、?、!、……、( )、「 」など、いろいろな記号が使われています。記号はそれぞれ意味を持っているわけですが、それを音で表すのはなかなか難しいことです。 例えば、『!!!』とあるのを見れば、大いに強調したい、とても感激した、など筆者の気持ちが分かります。では、これを「感嘆符、感嘆符、感嘆符」と読んだとして、同じように気持ちが伝わるでしょうか。私たちの日常の音声表現の中に、記号を読むような表現は無いので、『!!!』を目で見るのと同じように伝えることは困難です。 それでは、どうしたらいいのか? 音訳とは、活字でどう書かれているかを伝えることではなく、活字を読んで得られる情報を、100%正しく伝えられるように読むことです。具体的な例をいくつかあげてみます。 見出しについている『!』、プラカードの『!』などは、「感嘆符」と読むことで強調の気持ちは伝わると思います。 例:『第一章 私たちは生きている!』『看板には、「本日大特価!!!」と書かれている。』 文中にしばしば出てくるもの、台詞の『!』などは、その都度考えてみてください。会話などでは語気を強める読みかたも、不自然でなければいいと思います。ただし、デイジープレイヤーでスピードを速めて聞いたりすると、多少の音の強弱や上がり下がりは分かり難くなりますので、その本の内容または文章の意味するところによっては、語気を強めるだけでは伝わらない場合もあると思います。 小説などの会話文では、記号を読むことで、物語の流れや雰囲気が壊れてしまうことがあります。本当に「感嘆符」、「疑問符」と読まなければ、会話の意味や場面の状況が伝わらないのか、その前後を、原本を見ずに聞いて確認してみてください。 『?』は、疑問文についている時は読まなくても意味が伝わります(読むとかえって分かり難くなったりすることもあります)。 例:『なぜ、私たちは歌うのでしょうか?』『質問1、地球から月までの距離は?』 一方、肯定文ともとれる文章についている時は、読まなければ意味が伝わりません。語尾を上げて読むというやり方もありますが、会話ではいいのですが、地の文では語尾を上げると不自然になる場合もあり、聞き手が注意深く聞いていないと伝わらないことになります。また、デイジープレイヤーのスピードを速めると語尾の上げ下げが分かり難くなることも、前述しました。 例:『今日は、とってもいい日?』『自称、クラスで一番ハンサム(?)な男の子です。』 会話文が続いている場面では、時々『「?」』や『「……」』など、記号だけのカッコがあります。間(ま)を取ることで分かるときにはそれで良いと思いますが、間(ま)だけでは分かり難いこともあります。 例えば、『「……」』は、「無言」と読む方法もあると思います。特に台本形式の場合は「花子、無言」などと読まなければ意味が伝わりません。『「?」』についても同様です。ただし、物語の場合は、話の流れを中断したり、テンポをおかしくしたりせずに雰囲気を伝えることも重要です。また、「無言」、「疑問符」と読んだときは、前の会話文に繋がっていると誤解されないようにしなければなりません。迷った時は、校正者、編集者、職員と相談し、文意が正しく伝わる読みを工夫してください。 読みかたを決めて読んだら、一度、その前後を長めに聞いてみて、不自然でないこと、文意がきちんと伝わっていることを確認してください。その時は、原本を見ずに音声だけを聞いてください。 2. もっと知ろう!「ウェブスタジオ・なにわ」(第6回) 〜ボランティアの皆さんから寄せられる質問などを、毎回少しずつ紹介しています〜 「ウェブスタジオ・なにわ」に関する疑問を少しずつ解消するこのコーナー。前回に引き続きウェブ校正票についてです。今回は「こんな時どうする?」にお答えします。 ■音訳者の場合 Q1.校正者から「校正なし」の校正票が届いたら A1. (1)通信欄に「何もありません」と記入されている場合 そのまま、何もしなくて大丈夫です。音訳データは編集者に届きます。 (2)通信欄にも校正行にも何も記入されていない場合 (1)と同じです。そのまま、何もしなくても大丈夫です。 (3)校正行の1行目に「何もありません」と表示されている場合 校正票をダウンロードし、[修正済音訳データを送信する]で該当の音訳ファイルを送信する。 Q2.編集者から「校正なし」の校正票が届いたら A2.そのまま、何もしなくて大丈夫です。 Q3.校正票に修正済みのチェックを入れ忘れたら A3.校正者にウェブスタジオ・なにわの連絡票などで、「訂正しましたがチェックを入れ忘れました」と、連絡しましょう。 Q4.修正済音訳データを送信した後で、新たに修正したい箇所が見つかったら A4.編集者からの校正票が届いてから対処します。手順は以下の通りです。 @Recdiaでその箇所を修正録音し、備忘のため手元にメモを残しておく。 A編集者から校正票が届いたら、校正票を確かめる。 Bその箇所が校正票にあがっていなかったら、その箇所を訂正したことを編集者に伝える。 C修正済音訳データをアップする。 Q5.校正票がなかなか届かなかったら A5.以下のケースが考えられますが、不安な場合は職員にご相談ください。 (1)校正者が決まっていない。⇒ 製作依頼詳細画面 で確認できます(ろくおん通信No.214参照)。 (2)校正者が校正内容を検討中。 (3)校正者が、音訳データが届いていることに気づいていない。 ■校正者の場合 Q1.校正票送信後、記入もれに気がついたら A1. (1)音訳者が修正データをアップする前の場合 連絡票などで、追加があることを伝え、その箇所も修正録音してもらう。 (2)音訳者が修正データをアップした後の場合 編集者にそのことを伝え、校正票に記入してもらう。 Q2.校正が終わったあと、校正票の経過を見るには A2.校正者がアップした校正内容がその後どうなっているか、ときどき校正票を確認することは、今後の校正の参考になります。以下の手順で、校正票の経過を見ることができます。 @「ウェブスタジオ・なにわ」のトップページで、「校正票一覧」をクリックする。 A「校正票一覧」画面で、「製作図書名」をクリックする。 B「校正票詳細」画面が表示される。 右上「通信欄」の内容や、音訳者が修正されたかどうか、編集者からの校正内容などが確認できます。 3. わかる 使える 広がる!デイジー図書徹底解説(第2回) デイジー図書のしくみを解説しながら、どのように利用されているかをご紹介する新コーナー、今回は、「フレーズ」についてです。 デイジー図書における「フレーズ」 録音された音声は、文と文の切れ目のところに息つぎの間(ま)ができています。この、間(ま)から次の間(ま)までの音声のかたまりが「フレーズ」です。 1フレーズは「音声のかたまり+間(ま)」で成り立っていて、長さは数秒〜十数秒。デイジー図書製作では、この「フレーズ」を基本単位として、編集していきます。編集では、この間(ま)を長くしたり、短くしたりすることや、微かな口中音をカットしたりすること、読み直した語句を入れ替えることなどが簡単にできますが、編集者は、必ず音訳者と相談の上、調整しています。 図 図終わり デイジー編集ソフトウェア『PRS Pro』の画面で表示されるフレーズ。画面上部にセクション(見出し)が並び、選択しているセクション内のフレーズが、下部に表示される。 フレーズの活用法  普通にデイジー図書を聞く場合、「フレーズ」を意識することは殆どありませんが、デイジープレイヤーでフレーズを1つずつ送っていくと、言葉の切れ目、切れ目で再生されるので、以下のような便利な使いかたができます。 @前のフレーズに戻って聞き直したり、先のフレーズに飛んで聞くことができる。 Aグループの印の付いているフレーズに飛んだり戻ったりして聞くことができる。 Bデイジープレイヤーで再生中、読みかけの本にしおりを挿むようにフレーズにしおりの印を付け、聞き直しの目印にできる。 ワンフレーズ化とは?  デイジー編集では、小さなフレーズをいくつか結合して1つのフレーズにすることがあります。この作業を「ワンフレーズ化」と呼んでいます。デイジープレイヤーには、フレーズ移動という機能がありますので、ワンフレーズ化することによって項目移動が可能になるなど、便利な使いかたができるようになります。ただし、ワンフレーズ化をし過ぎるとかえって使いにくくなるケースもありますので、注意が必要です。編集者は常に、より使い勝手の良いデイジー図書になるよう、考えながら編集をしています。 (1)必ずワンフレーズ化しているもの(3つ) @第1セクション(タイトルセクション)の第1フレーズ『書名+副書名』:第1声でどんな図書かがわかります 《例》「ろくおん通信 215号」 「DAISYへの道 デジタル録音図書からアクセシブルな電子書籍へ」 A目次の各項目『項目+ページ番号』:項目ごとに移動して聞くことができます。 《例》「第1章 デイジー(DAISY)とは 3ページ」 「第2章 デイジーコンソーシアムの発足 12ページ」 B本文中の各見出し『見出し+ページ番号』:見出しがひとかたまりで聞こえます。 《例》「第7章 読む権利を求めて 120ページ」 (2)ワンフレーズ化すると使いにくいもの ・ホームページアドレス ・メールアドレス ・参考文献 ・住所 ・料理の材料、作り方 など 途中で戻って聞き直そうとすると項目の先頭まで戻ってしまい、何度も最初から聞き直さなければなりません。例えばホームページアドレスの場合、常に「http://」から、料理なら、「材料・・・」「作り方・・・」から聞くことになってしまいます。 4. デイジー編集ブラッシュアップコーナー 再生機でのフレーズ移動がスムーズに行えるよう、編集では以下の配慮が必要です。 @セクションの最終フレーズに「無音フレーズ」をプラスしたときは、ビルドブックの後、必ず結合する。 ※結合後のポーズの数字が「00」となっても支障はありませんが、ポーズ長を表示させたい場合は以下の2つの方法があります。 *ツール → 「ポーズ時間検出」をクリック *「フレーズ分割」で、無音部分の最後をほんの少し「切り取り」 → 「削除」する A音声インポート時、20秒、30秒など長いフレーズが多くみられる場合は、「ノイズレベル」や「ポーズ時間」の設定を変更して、インポートをやり直す(バックノイズなどの影響で、フレーズが切れないことがあります)。 B音声インポート時、「無音フレーズ」が数多くできる場合も、設定を変更してインポートをやり直してみる(微かな口中音などを音声と感知してフレーズができていることがあります)。 Cフレーズの「結合」「切り取り」「貼り付け」「削除」などの作業のあとは、「連続再生」(ショートカットキーF5)で、流れがスムーズかを確認する。 D本文中の無音フレーズはそのままでよいが、無音フレーズに「ページ」や「グループ」の印を付けないよう注意する。 5.館からのお知らせ ★休館日のお知らせ 4月29日(金)、5月3日(火)〜5日(木) ※4月30日(土)は開館いたします。 ★第29回専門音訳講習会「古典コース」開催 毎日新聞大阪社会事業団と当館が共催する、すでに音訳ボランティア活動中の方を対象とした講習会です。本講習会では、近畿在住のボランティアの方を対象に、漢文や古文書の読みかたと音訳技術の習得を目指します。 講習会名:専門音訳講習会「古典コース」 内容:漢文、古文、古文書の読みかたと音訳技術について 日程:2016年5月21日・28日、6月4日・11日・18日・25日(いずれも土曜日) 13時〜15時 講師:古典チーム(当館専門音訳チーム) 定員:15人 対象者:いずれかの施設・団体・グループで音訳活動中のボランティアで、古典の音訳を始める方 申込方法:申込用紙を当館ウェブサイトからダウンロードし、ファクスまたは郵送で録音製作係までお送りください。 ※申込用紙は録音製作係にあります。 受付期間:2016年4月5日(火)〜4月26日(火) ※応募者多数の場合は、各施設・団体・グループで人数を調整していただきます。 お問い合わせは、録音製作係(メール:rec@iccb.jp、電話:06-6441-1017)まで ★「PRS Pro」のバージョンアップについて ご自宅のパソコンに、デイジー編集ソフトウェア「PRS Pro」をインストールされている方は、最新バージョン2.05.04.00にアップグレードしてください。 アップグレード用のCDを録音製作係でご用意していますので、職員にお声掛けください(アップグレード時にはCDキーが必要です)。 以上