日本ライトハウス情報文化センター    「ワンブックワンライフ」2017年3月号   <<表紙イラスト>>  竹部はつ子画:桜の花びらが風に舞う中、大きな写真を囲んで眺める家族3人と犬。写真は、桜吹雪の舞う中、詰め襟の学生服を着たニキビ顔の男子がピースをし、卒業証書の筒を持ったお下げ髪でセーラー服の女子が涙を一粒流している。それを見ている男の子が「パパとママ?」。照れて頭をかく中年のパパとニコニコしているエプロン姿のママ。犬が「いいね…」。   《目次》   ●掲示板(1頁)   ●拡大掲示板(2頁)   ●学び、働き、暮らし、楽しむ〜豊かな人生を最新メディアで応援(3頁〜4頁) ●視覚障害児童生徒のための「音訳教材データベース」が完成(4頁)   ●感謝報告(5〜7頁、別ファイル)   ●報告の頁(8頁)   ●掲示板(1頁)  ◆第35回チャリティコンサートにご来場を  日本ライトハウスでは、毎年恒例の盲導犬育成支援チャリティコンサートを4月23日(日)午後、大阪市北区のザ・シンフォニーホールで開催します。今回はお馴染みのヴァイオリニスト和波孝よし(わなみ・たかよし)氏と新進気鋭のチェリスト辻本玲(つじもと・れい)氏、澤和樹(さわ・かずき)氏指揮による千里フィルハーモニア・大阪の出演で、ベートーヴェンの「ロマンス ヘ長調」、サンサーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調」、ドボルザークの「チェロ協奏曲ロ短調」、ブラームスの「交響曲第1番ハ短調」他を演奏します。ぜひご来場ください。視覚障害者の方々を招待するためのアミティチケットの購入にもご協力いただければ幸いです。  日時 4月23日(日)12時30分開場、13時30分開演。12時から会場窓口でチケットと座席指定券を引替。  会場 ザ・シンフォニーホール(JR福島駅から徒歩8分)  入場料3,500円。アミティチケット1,000円。  *チケットは当館3階総務係でも販売します。  お問い合わせは、月〜金曜日の9時〜18時に、募金事業部(電話06−6968−1030)まで。  ◆専門点訳・音訳講習会が開講30周年  1987年に毎日新聞大阪社会事業団主催、当館後援(主管)で始まった「専門点訳・音訳講習会」は新年度で30周年を迎えます。これまでに行った講習会は外国語、理数、東洋医学、楽譜等、合計29回・106コース。受講者は1,700人を超え、近畿各地の施設やグループで、視覚障害者の情報ニーズに応え、専門的な点訳・音訳活動を展開しています。これほど長期間かつ大規模な専門点訳・音訳講習会は全国でも例がありません。  この講習会は、元々、視覚障害大学生が点字教科書の入手に困っている状況が『点字毎日』で報道されたことを機に始まったもので、これまでも特に教材や専門書の点訳・音訳技術の向上・普及を柱としてきました。ここから理数、英語、東洋医学、古典、楽譜等の専門チームが生まれ、技術が継承されているのも大きな実績です。そこで新年度・第30回の講習会では、改めて教科書・教材の点訳と、図・表・グラフ等視覚的資料の音訳の2テーマに集中し、専門点訳・音訳のさらなる発展を図ります。2頁の要項をご覧の上、ぜひご参加ください。  ◆3月7日(火)はボランティア交流会のため、全館休館します。   ●拡大掲示板(2頁)  ◆専門点訳講習会「教科書・教材点訳コース」  既に点訳活動をされている方を対象に、図、表、写真等が多用されている教科書・教材を点訳するための専門技術を講習します。小学校から高校までの主要5教科を中心に、具体的事例を交えながら点訳の技術や知識を深めます。 日程 2017年7月14日〜9月15日までの金曜日(8月11日を除く) 内訳 @概論・講演(7月14日)は必須。それ以外は教科を選択して受講可。全回受講も歓迎。  @概論・講演:7月14日10時〜15時(4時間)  A国語:7月21日10時〜15時(4時間)  B英語:7月28日10時〜15時(4時間)  C算数・数学:8月4日10時〜15時(4時間)  D・E理科:8月18日、25日の2日間13時〜  16時(各3時間)  F・G社会:9月1日、8日の2日間13時〜  16時(各3時間) Hその他科目:9月15日13時〜15時(2時間) 講師 当館職員・教科書点訳ボランティア 定員 @概論・講演40人、A〜H各教科15人  申込み 当館点字製作係(電話06-6441-1028)へ要項を請求の上。応募者多数の場合は抽選。  ◆専門音訳講習会「視覚的資料音訳コース」  既に音訳活動をされている方を対象に、図、表、グラフ、写真等、視覚的資料の音訳に必要な技術、処理について講義、実習を行います。  講習内容 「視覚的資料の音訳とは(講義)」「グラフ、表、流れ図、系図、写真、漢字等の事例による実習」「利用者の講演」 日程 全2日間(各日10時〜16時)のコースを3コース実施(内容は3コースとも同じ)  第1回 6月7日(水)・8日(木) 第2回 6月29日(木)・30日(金) 第3回 7月7日(金)・8日(土)  講師 当館音訳ボランティア・理数チーム メンバー 受講資格 現在音訳活動中のボランティアで、 活動歴おおむね3年以上の方  定員 各回20人  申込み 当館録音製作係(電話06-6441-1017)へ要項請求の上。応募者多数の場合は抽選。  ◆「わろう座〜インドとスリランカの視覚障害青年を囲んで」にお集まりください  公益財団法人ダスキン愛の輪基金では、2000年から「アジア太平洋障害者リーダー育成事業」を行い、毎年、障害のある青年6人を日本に招き、10ヶ月間の研修を行っています。当館でも第1回から17年間、ほぼ毎年研修に協力していますが、今年はスリランカとインドの視覚障害男性2人が3月に来阪し、当館とリハビリセンターを拠点に研修することになりました。  スリランカの研修生はサンカ・ハシンタさん(30歳)で、網膜色素変性症で視力低下後、コロンボの大学を首席で卒業し、小中学校で英語教師を勤めています。インドの研修生はラムダス・シンハレさん(23歳)で、デリーの盲学校から大学で学んだ後、銀行に勤めています。  二人とも明朗快活。昨年9月の来日から3ヶ月間、日本語を学んだ後、個別研修に入り、「日本のことは何でも知りたい」と意欲満々です。  写真:清水寺で仏像を触るスリランカのサンカさんと、ジョギングを終え、水を飲みながら大笑いしているインドのラムダスさん。  この二人をゲストに迎え、3月25日(土)13時30分から16時、当館4階会議室で、「わろう座〜インドとスリランカの視覚障害青年を囲んで」を行います。日本語と英語まぜこぜ(通訳付き)で、二人からの話しを聞き、交流を深めたいと思います。参加無料。貴重な機会ですので、ぜひお集まりください。参加申し込みは当館総務係(電話06−6441−0015)までどうぞ。   <<センターの頁>>   ●学び、働き、暮らし、楽しむ〜豊かな人生を最新メディアで応援    一ツ橋綜合財団のご助成で、今年度も大きな成果(3〜4頁)  当館では、2005年度から公益財団法人一ツ橋綜合財団のご助成により、視覚障害者等情報提供事業の先駆的な取り組みとして、マルチメディアデイジー図書・教科書の製作・提供と、耳で観る映画「シネマ・デイジー」などの音声解説を推進しています。マルチメディアデイジー、テキストデイジーなどのアクセシブルな電子書籍の世界は、日本デイジーコンソーシアムの正会員として長年にわたり種を蒔きつづけてきた結果、電子出版の国際標準規格EPUB(イーパブ)と、当館が培ってきた視覚的資料(図・表・写真等)の音訳技術との融合により、新たなメディアを開発する段階に入っています。また、テレビ、映画の副音声製作に始まり、「シネマ・デイジー」に結実した音声解説事業は、各地の視覚障害者情報提供施設の指導・サポートを行った結果、製作施設が全国11か所に増え、さらなる広がりを見せています。一ツ橋総合財団の助成事業の今年度の主な成果をご報告します。(製作部長 久保田 文)   将来の夢を育める学校生活を願って  子供たちの就学、進学、社会生活に役立つ図書をマルチメディアデイジー化して、サピエ図書館や当館のダウンロードサービスから配信しました(今年度の実績予測は18タイトル。加えてテキストデイジーが60タイトル)。小学校で習得する漢字1006字すべてが登場する図書や、イラストと共に楽しく読める科学の本などは、文字と音声、あるいは画像と音声が同期するマルチメディアデイジーの利点が最も生きる分野です。  高等学校入学以来、マルチメディアデイジー教科書を提供してきた生徒が3年生に進級し、「大学の推薦入試に向けて定期試験でも良い成績を取りたい。苦手な国語をもっと頑張りたい」と意欲的になってくれているのも大変嬉しい成果です。これからも、子どもたちが自分らしさを発揮して、学習やクラブ活動に積極的に取り組み、将来の夢を育むことができる学生生活を願って、ボランティアの方々と共に、質の高いマルチメディアデイジー、テキストデイジー、またテキストデータ製作に取り組んでいきます。  写真:「小学校学習漢字1006字がすべて読める漢字童話」(井上憲雄文・絵、本の泉社発行)の原本と、iPadに表示したマルチメディアデイジー版   映画を“耳で観る”楽しさを届けるために  当館が2007年度から開始した映画やテレビへの音声解説事業は、20人を超えるボランティアの協力の下、パソコンで音声解説を聞きながら映画を観る「音声解説CD付き映画DVD」や映画の主音声に音声解説を加えて編集した耳で観る映画「シネマ・デイジー」の製作・提供、そして視覚障害者団体等の依頼によるバリアフリー映画上映会の企画・実施などに結実しています(今年度の実績予測は製作15作品、上映会15作品)。  特にシネマ・デイジーは、林田茂主幹が全国視覚障害者情報提供施設協会「シネマ・デイジー検討プロジェクト」のリーダーを務め、シネマ・デイジーの製作に着手する全国の施設に対して製作に関する相談や助言、マニュアルの見直し、重複製作作品の検証を行い、作品数の増加と品質の向上に努めています。  また、昨年11月に開催した当館主催の第4回バリアフリー映画上映会では、博物館を舞台にした映画「ナイトミュージアム」の音声解説・日本語字幕付き上映に合わせて、国立民族学博物館准教授広瀬浩二郎氏のトークショーを併催し、来場した多くの方々に、より深く映画の世界に触れていただくことができました。 電子書籍と専門音訳の融合をめざして  さらに当館独自の先駆的な取り組みが、合成音声を使って読むアクセシブルな電子書籍と、図表等の視覚的資料の音訳技術の融合を目指すHyMe(ハイミー)事業です。今年度は、次項で紹介する「音訳教材データベース」システムを活用し、全国8人の音訳者による中学・高校の教科書の視覚的資料の音訳実験を行いました。また音訳処理が必要な箇所に音訳データを挿入した電子書籍HyMeの実用化に向けて、国内のデイジー再生機・ソフトウェアの主要メーカー3社にHyMe対応のバージョンアップを依頼中です。  写真:日本ライトハウス第4回バリアフリー映画上映会 「ナイトミュージアム」での広瀬浩二郎トークショー   ●視覚障害児童生徒のための「音訳教材データベース」が完成  文部科学省の調査研究事業が一区切り(4頁)  視覚支援学校などの特別支援学校や地域の学校で、点字・拡大教科書で教科学習をしている視覚障害児童・生徒の中には、発達障害や知的障害等により、点字や墨字だけでは「文章の理解が困難」「読み飛ばしをする」「意味の理解が難しい」といった生徒、あるいは中途障害や視力低下による点字使用への移行途中のため「点字だけでは授業についていけない」「拡大教科書の地図やフローチャートといった視覚的資料の全体像をつかみにくい」といった生徒が増えつつあります。  当館では、2013年度から文部科学省の調査研究事業を受託し、このような児童・生徒が点字・拡大教科書と併用するための「音訳教材」(肉声だけで情報を正しく伝える音訳技術を用いた音声教材)の研究・開発を続けています。この研究により、点字・拡大教科書を読みながら音声を聞くことで、本文の読み飛ばしをしなくなったり、点図の触読、墨字の視覚的資料の内容理解が進むことを明らかにすることができました。  今年度の文部科学省委託「音声教材の効率的な製作方法等に関する調査研究」事業では、3年前から開発に着手し、改良を重ねてきた「音訳教材データベース」を実用化できる段階にまでこぎ着けました。このデータベースにより、教科書の図・表・写真などの視覚的資料を音訳した音声データを蓄積し、教科、学年、出版社などで検索し、ダウンロードすることができます。  (「音訳教材」の研究成果は、当館ホームページ http://www.lighthouse.or.jp/iccb/ の「研究事業」のメニューからご覧いただけます。)  インクルーシブ教育の広がりとともに、視覚障害児童・生徒の学習環境も変化しています。ICT技術の発達により、障害のある児童・生徒がパソコンやタブレットで合成音声を用いて利用するデジタル教材が注目を集めていますが、視覚障害児童・生徒にとっては、図・表・グラフ・写真等の視覚的資料の情報が、学年、教科に応じたスピードと適切な表現で、過不足なく提供されることが必要であり、それは合成音声だけでは実現できません。また教科書の性質上、誤まった読み上げや説明の不備・不足も許されません。電子教材がいかに迅速に製作・提供でき、コストパフォーマンスに優れていたとしても、こうした配慮を加えていないものは、「教科書」「教材」とは呼べません。  当館ではこれからも、「音訳教材」が視覚障害児童・生徒の学習に必要不可欠なツールとなるよう、視覚的資料の専門音訳者の養成を進めるとともに、「音訳教材データベース」の運用を目指して、視覚障害教育の研究団体、視覚支援学校、教科書会社等と情報を共有しながら研究・開発を進めていく計画です。   ●報告の頁(8頁) ◆「サポート基本マナー」カードを作成  当館では「駅ホームや交差点などで一人歩きの視覚障害の方を見かけたら、進んで声をかけましょう!」と呼びかけています。でもそんな場面に出会った時、どのように声をかけ、手を貸したら良いか、躊躇する方は少なくないと思われます。そこで、本誌昨年12月号に掲載したイラスト付きの基本マナーを名刺大・4頁にまとめたカードを作成しました。基本的に当館でサポートの仕方を実習した方、実習経験のある方に差し上げます。ご希望の方は3階総務係までどうぞ。簡単なサポートの仕方も手ほどきしますので、お気軽にお申し付け下さい。  ◆読売新聞で『アミ・ドゥ・ブライユ』紹介  読売新聞1月24日付朝刊(大阪をはじめ近畿版)に、「子ども点字雑誌〜読む喜び」と題して当館発行の『アミ・ドゥ・ブライユ』が大きく紹介されました。満面の笑顔で本誌を読む女の子や点図の写真も入り、たいへん読みやすい記事だったため、大阪、奈良、西宮、三重などの新聞読者からお電話があり、激励のお言葉とともに貴重なご寄付をいただきました。当館では4月から発行部数を拡大し、当初来年2月までだった発行期間も延長していく方針です。  ◆工藤ゆう職員と瀧沢彰子職員が退職  電子書籍事業担当の瀧沢彰子職員が2月28日付、また音声解説担当の工藤ゆう職員が3月31日付で退職することになりました。二人とも今後の目標を持っての退職です。ボランティアの皆さんには担当職員が代わり、しばらくご迷惑をおかけしますが、快く送り出していただければ幸いです。  ◆あゆみ  2月  7日 見学:ハワイ大学Okuyama教授  11日 全館休館(祝日)  23日 見学:日本盲人職能開発センター  24日 わろう座映画会「7番房の奇跡」  28日 ダスキン18期研修生来館(〜4月1日)  ◆予定  3月  7日 全館休館:ボランティア交流会(玉水記念館)・情文職員会議  10日・11日 点訳・音訳体験オープンデー  11日 「音訳教材データベース」セミナー  14日 見学:シロアム視覚障害者福祉館  16・17日 ライトハウス評議員会・理事会  17日 全視情協・電子書籍研修会(玉水)  18日 見学:福島県点字図書館他  編集後記 バレンタインデーチョコはたとえ後 記 義理でも嬉しいものですが、今年は特に嬉しいプレゼントを頂戴しました。活動歴30年を超えるボランティアの方からチョコに添えて「道頓堀での活動中に救急車で運ばれてからお陰様で10年過ぎました。新たに気を引き締めて頑張ります」というメッセージを頂いたのです。実は私も慢性疾患を発症して、丸20年になりました。最近調子が悪く、心配して精密検査を受けたのですが、結果は「顕著な異常はなし」。節制は続けなければなりませんが、命を与えられていることに感謝し、“気を引き締めて”仕事に励みたいと思います。(竹) 奥付 ONE BOOK ONE LIFE 2017年3月号  発行 社会福祉法人日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘)  住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002)  TEL 06-6441-0015  FAX 06-6441-0095  E-mail info@iccb.jp  表紙絵 武部はつ子  発行日 2017年3月1日  定価 1部100円 年間購読料1,000円