日本ライトハウス情報文化センター        「ワンブックワンライフ」2016年12月号  <表紙イラスト:(武部はつ子画)> たくさんの飾りがついたクリスマスツリーを囲んでいる親子と犬。男の子がルンルンと機嫌良く両親にプレゼントを差し出そうとしている。内心は「ご期待に添えるかどうか・・・ちと心配・・・」。お父さんはちょっと照れ顔で、お母さんは手を口に当てて笑顔。   (目次) ◇掲示板 ◇センターのページ   子どもたちの好奇心を刺激する「点字雑誌」を目指して     『アミ・ドゥ・ブライユ』が創刊1周年   「声のかけ方」と「手の貸し方」の基本     駅や交差点で一人歩きの視覚障害者の方を見かけたら ◇報告のページ   ≪掲示板≫ ○盲導犬利用者の5.6%が「線路転落」を経験  今年8月、東京メトロ駅ホームで起きた視覚障害者の転落死亡事故を受け、当館では「一人歩きをしている視覚障害の方には進んで声かけを」と呼びかけていますが、この度、「盲導犬利用者の5.6%が線路転落を経験」という非常にショッキングな調査結果が明らかにされました。この調査は、当法人も加盟する全国盲導犬施設連合会が盲導犬利用者を対象に行ったもので、回答者540人(平均59.3歳、盲導犬利用歴8.8年)中、「線路転落」を経験した人は30人(5.6%)、ホームから足を踏み外したり、電車とホームの隙間に足を挟んだりした人は114人(21.1%)。さらに事故やけがには至らない「ヒヤリ・ハット」の経験者は、駅で213人(39%)、交差点・踏切で309人(57%)に上りました。もとより盲導犬は、視覚障害者が判断・指示して歩くもので万能ではありませんが、単独歩行より安全と思われる盲導犬歩行にしてこの数字は、駅や交差点がいかに危ないかを改めて明らかにしたものです。本誌2頁に視覚障害の方への「声のかけ方」「手の貸し方」の基本をまとめましたので、ぜひお読みください。 ○マルチメディアデイジー図書講演会を開催  当館ではNPO法人NaDとの共催で、第10回マルチメディアデイジー図書講演会「ぼくも読めたよ デイジー教科書」を12月4日(日)、当館4階会議室で開催します。10:30からデイジー図書再生方法の講座、13:15から講演会(現場の先生の事例報告)。定員70人。参加費500円。お問い合わせは、当館製作部電子書籍担当まで。 ○楊雪元さんがテノールと中国笛を演奏  点字楽譜利用連絡会の年1回の「つどい」が12月11日(日)13時から16時、当館4階会議室で開催。音楽家の楊雪元さんが出演します。お問い合わせは電話090-3464-1090の加藤俊和さんへ。 ○年末年始のボランティア活動について  12月24日(土)=図書貸出・用具販売最終日。  12月27日(火)=ボランティア活動最終日。  仕事納めは28日(水)です。  1月6日(金)=ボランティア活動と利用者サービス再開。業務は5日(木)から再開します。  1月7日(土)=全館開館。通常は9日月曜指定祝日の振替休館ですが、今回特別にボランティア活動、利用者サービスとも行います。   ≪センターのページ≫   子どもたちの好奇心を刺激する「点字雑誌」を目指して     『アミ・ドゥ・ブライユ』が創刊1周年  子どもたちの好奇心を刺激し、知識とコミュニケーションを広げることを目指す児童向け点字雑誌『アミ・ドゥ・ブライユ』が創刊1周年を迎えました。おかげさまで、個人と視覚支援学校のお申し込みにより限定100部は満杯で、余部はない状態。創刊1周年を記念して、『アミ・ドゥ・ブライユ』の内容、読者から寄せられたお便りをご紹介します。(点字製作係 奥野 真里)  『アミ・ドゥ・ブライユ』の内容と魅力  『アミ・ドゥ・ブライユ』は点訳・校正・編集に関わってくださるボランティアのご協力の下、隔月で100部発行し、全国の希望者(個人70人、学校30校)に無料でお届けしています。  特徴は、墨字の雑誌や書籍から、社会で話題になっているさまざまな情報をピックアップし、掲載していること。また視覚障害の先輩の活躍の紹介や点字のクイズなどオリジナルコーナーを設けていること。そして興味深い絵を点図にして掲載しているのも特長です。当初は、全国で、どれぐらいの読者に読んでもらえるのか不安でしたが、今では読者から予想を上回る反響をいただき、喜んでいます。  編集作業は、まず情報を収集することから始まります。雑誌を定期購読し、記事を選んだり、書店に足を運んで、ネタ探しをします。  例えば、最新第7号(2016年10月号)の主な記事は以下の通りです。  *何コレ?〜「人気ロボット!ペッパーが家族に?!」(ペッパーの図)  *ニュースイッチ〜「独立5年 戦闘激しい南スーダン」、「京都の金閣寺に七重の塔?」(北山大塔想像図)  *ときめきトピックス〜「ハロウィンて何だろう?」「秋のキャラクター最新情報!!」「おしゃれなコが持ってるかばんの中身」  *雑学サイエンス〜「脳と記憶の秘密」(脳と、大脳の図あり)、「走るのが速くなる」  *おもしろレキばな〜「石田光成」  *ジャック・イン・ザ・ボックス〜「in black and white」「sell like hot cakes」  *アミ読・今読〜「ルドルフとイッパイアッテナ」「盲導犬になれなかったスキッパー」  *脳トレクイズ〜「三角探し」(図付き)  記事選びの際は、特に読者が読んだ時に雑誌として情報が古くなっていないか、点字で読んで面白いか、などに常に注意を払っています。  また記事を選ぶ際には、「読者のページ」に寄せられる感想やお手紙を頼りに、読者の希望や関心に沿った誌面作りを心がけています。  「お便り」に表れた読者の興味・関心  『アミ・ドゥ・ブライユ』の主なコーナー別に寄せられたお便りを紹介してみましょう。  「何コレ?」〜驚きの科学  *カメレオンの図があったけど、舌がすごく長くてびっくりしました。ギチベラという魚は知らなかったけど、ギチベラの口は面白いと思いました。キノコの話では、松ぼっくりに生えるニセマツカサシメジや、オニフスベは50cmの大きさになるのは初めて知りました。でも、セミタケの生える場所を知って一番びっくりしました。表紙の絵がかわいいと思います。(女子)  *「動物の歯をチェック」が面白かったです。びっくりしたのはホホジロザメの歯が獲物を食べると抜けちゃうことです。動物の歯は触われないので知れてよかったです。(小5女子) 「脳トレクイズ」〜オリジナルのクイズ  *本が届くと、すぐ読み終わってしまうほど、とても楽しみで、この本が大好きです。私は、脳トレクイズのコーナーが一番好きです。もっと載せてほしいです。(小5女子)  「ニュースイッチ」〜話題のニュース・情報  *「アミ・ドゥ・ブライユ」を読み始めて知らなかった事をたくさん知りました。ニュースイッチでのニュースの分かりやすい説明が印象的です。「セブンティーン」が自分で読めるようになったのも嬉しかったです。(中3女子)  「雑学サイエンス」〜雑学知識のコーナー  *いつも楽しい本をありがとうございます。ぼくが初めて知ったのは、雑学サイエンスのガムとチョコレートをいっしょに食べると溶けちゃうことです。実際にやると、ほんとに溶けたのでびっくりしました。あと、オクラは英語だと初めて知りました。ちなみにお父さんも初めて知ったそうです。(小4男子)  「ときめきトピックス」〜アイテムや芸能  *今流行りの曲やCDのことが知りたいです。(小5男子、小6男子)  *「2016上半期ヒットランキング」では、今の流行りの映画などが知れてよかったです。 (小5男子、小4女子)  「アミ読・今読」〜点字による読書をお薦め  *僕は、本が好きなので、「アミ読今読」を読むのが楽しみです。(小6男子)  *「図書館ネズミ」は読んだことがありました。読んだとき面白いと思いました。(小5女子)  「働く先輩」〜視覚障害の先輩の活躍を紹介  *「働く先輩」で女性の先輩も載せていただきありがとうございました。私も将来、しっかり働けるように頑張りたいです。(中3女子)  その他  *面白くて分かりやすくて楽しい雑誌だと思いました。4号の「妖怪ウォッチの仲間たち」と脳トレクイズが楽しかったです。「妖怪ウォッチ」は最終回と書いてあったけど、またいつか載せてください。(小5女子)  *星座占いが面白かったです。4コマ漫画を載せてくれると嬉しいです。(小5女子)  *オリンピックの話では、シンクロナイズドスイミングの様子が図でよく分かりました。(中3女子)  1周年を記念して、「読者交流会」を開催  『アミ・ドゥ・ブライユ』は、このように熱心な読者に支えられています。そこで、創刊1周年を記念して、初の「読者交流会」を12月23日に開催することにしました。特別ゲストに、関西(滋賀県)出身で、今年のリオデジャネイロ・パラリンピックの競泳でメダル4つを獲得した木村敬一さんをお招きし、世界で活躍する先輩の話を聴くとともに、普段は会えない読者同志の交流の輪を広げてほしいと願っています。  今後も、読者の声に耳を傾け、どのような情報が子供たちの好奇心をかき立てるのかを考慮しながら、楽しく、知的な刺激に富んだ点字雑誌を届けていきたいと思います。   「声のかけ方」と「手の貸し方」の基本     駅や交差点で一人歩きの視覚障害者の方を見かけたら  「駅や交差点で一人歩きしている視覚障害者の方には進んで声かけを」と、10月号の本誌でお願いしましたが、実際に視覚障害者の方を見かけた時、どう声をかけて、どう手を貸せばいいのか戸惑われる方も多いはず。そこで、これだけは知っておいてほしいという「声かけ」と「手の貸し方」の基本をイラスト入りでまとめました。大切なことは、出会った方の希望や意向を尊重すること。コミュニケーションを基本に、安心・安全なサポートを心がけましょう。(館長 竹下 亘)  @ なるべく正面から声をかけ、無理なくできる範囲で、手を貸しましょう。  A 「どのように手を貸せばいいですか?」と聴いてください。経験があってもなくても、その場で、相手に教えてもらいましょう。  B 基本は、相手の半歩先に立ち、「ひじ」をもってもらい、一緒に歩きます。  C 段差、階段、スロープ、エレベーター、電車等、 障害があるときは、必ずいったん立ち止まって、「下り階段を降ります」などと説明しましょう。  ◎ 以下のことは厳禁です。お気をつけください!  白杖をつかむ  盲導犬に触る 身体をつかむ  ◆ 危なくない場所をスイスイ歩いている人には、無理に声をかける必要はありません。鉄道の場合、駅員に頼めばサポートしてもらえます。 【イラスト&レイアウト:名賀知子】     ≪報告のページ≫ ○9周年を迎えた「音声解説」に実りの秋  当館では2007年、TV「きらっといきる」の音声解説の受託製作を開始し、続いて初のバリアフリー映画会「武士の一分」を開催したのを皮切りに、音声解説の普及に取り組んできました。11月18日、玉水記念館で開催した第4回日本ライトハウスバリアフリー映画会にも百数十人が来場され、盛り上がりましたが、音声解説着手9周年を迎えた今年の秋は、これまでの取り組みが大きな実りを迎える出来事が相次ぎました。  1番目は、スマホ等で映画の音声解説と字幕が利用できるシステムUDCast(ユーディーキャスト)が開発され、これから多くの映画がいつでも音声解説付きで楽しめるようになったこと。  2番目は、カンヌ映画祭グランプリ受賞の河P直美監督が音声解説を題材にした最新作「光」を製作し、当館も協力したこと。公開は来年ですが、再度賞を取れば、音声解説の認知度が高まることが期待されます。  3番目は10月29日、米国の音声解説の草分けJ・スナイダー博士を迎えて、国際シンポジウムを行ったこと。感銘を受けたのは、米国では映画や芝居、テレビのみならず、博物館や結婚式、告別式などでも音声解説が行われるようになっており、博士はオバマ大統領主催のホワイトハウスのパーティでも音声解説を担当。音声解説は視覚障害者だけでなく、すべての人にとって有用であり、社会の隅々にまで広めるべきものであると訴えられたことでした。  私たちはこれからも、社会と生活のあらゆる場面に音声解説が普及するように、取り組みを続けていきたいと思います。 ○録音ボランティアの松田知子さんが逝去  当館録音ボランティアの松田知子さん(大阪市)が先頃亡くなられました。まだ64歳という早すぎるご逝去でした。松田さんは2009年に音訳講習会を受講され、家庭録音で「大阪食文化大全」などを製作してくださいました。心からご冥福をお祈りします。   あゆみ  【11月】 10日 ボランティア友の会世話人会 12日 図書展(ホテルアウィーナ大阪) 16日 見学:大阪市立都島中学校PTA 17日 対面リーディングVの集い 18日 第4回バリアフリー映画会(玉水) 24日 見学:大阪南視覚支援学校PTA 25日 V友の会見学会(神戸アイライト協会)    専門音訳・音声解説コース開講    わろう座「手で観る仏像展」(〜26日) 予定  【12月】 4日 マルチメディアデイジー図書講演会 7日 近畿視情協ボランティア研修会(玉水) 10日 オープンデー(館内見学日) 23日 「アミ・ドゥ・ブライユ」読者交流会 24日 図書貸出、用具・機器サービス最終日 27日 ボランティア活動最終日 28日 仕事納め  【1月】 5日 仕事始め 6日 ボランティア活動、利用者サービス再開 7日 全館開館   編集後記  旧JR福知山線の武田尾廃線跡に行ってきました。この時期、武庫川の渓谷美と鮮やかな紅葉を見ることができます。5月頃から改修工事が行われ11月15日正式に一般開放されました。枕木が残る道、真っ暗なトンネルに歴史を感じます。秘湯と呼ばれる武田尾温泉もありますよ。(茂) =ONE BOOK ONE LIFE 2016年12月号= 発行 社会福祉法人日本ライトハウス情報文化センター(館長 竹下 亘) 住所 大阪市西区江戸堀1-13-2(〒550-0002) TEL 06-6441-0015 FAX 06-6441-0095 E-mail info@iccb.jp 表紙絵 武部はつ子 発行日 2016年12月1日 定価 1部100円 年間購読料1,000円